談合(入札談合)とは?
定義・カルテルとの違い・
種類・事例などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

談合(入札談合)とは、国などが行う入札に際し、複数の入札参加者が事前に相談して、どの入札参加者がいくらで受注するかなどを決めてしまう行為です。

談合が行われると、事業者間の競争の原理が排除され、不当に事業者が利益を得ることになるため、談合は、刑法独占禁止法などで禁止されています。

この記事では、談合とカルテルの違い、談合の仕組み、談合に対する規制法、談合を防止する手段などについて、分かりやすく解説します。

ヒー

談合って、何法で禁止されているんですか?

ムートン

独占禁止法・刑法など、さまざまな法律で禁止されていますよ。この記事で勉強していきましょう。

※この記事は、2023年7月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 独占禁止法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
  • 官製談合防止法…入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律

談合(入札談合)とは

談合(入札談合)とは、地方公共団体などが行う入札に際し、複数の入札参加者が事前に相談し、受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為をいいます。

入札とは

入札とは、公的機関が物品などの調達を行う際に、民間事業者から参加者を募り、その中から、最も有利な条件を提示した事業者と契約を締結する方法のことです。

公的機関の財源は税金であるため、より良いもの・より安いものを調達しなければなりません。入札のかたちをとることで、事業者間の競争を促し、取引の公正性・透明性を確保できます。

【談合のイメージ】

談合は、入札における公正かつ自由な競争を阻害する行為であるため、刑法独占禁止法などにより禁止されています。

談合とカルテルとの違い

談合とカルテルは、ともに同業者同士が連絡をとりあい、相談して価格などを決める行為です。では、談合とカルテルは、何が違うのでしょうか。

カルテルとは、同種の事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき「商品の価格」「販売・生産する数量」などを共同で取り決める行為です。

カルテルには、事業者同士で、

  • 商品の価格を決定する価格カルテル
  • 生産・販売する数量を決定する数量カルテル

などがあります。

価格カルテル

価格カルテルが形成されると、市場には、カルテルにより決定された価格に従った商品しか提供されなくなります。

その結果、消費者は、カルテルがなければ事業者間で競争原理が働き、安く買えるかもしれなかった商品を、カルテルにより決定された高い価格で買わなくてはならなくなります。

【価格カルテルのイメージ】

数量カルテル

数量カルテルの場合も、本来ならより多くの商品が提供されることにより価格が安くなるはずだったのに、提供量が減ったことにより価格が下がらず、結果的に本来よりも高い価格が維持されることとなります。

【数量カルテルのイメージ】

このように、カルテルは市場競争の原理を排除して、本来より高い価格を維持することで、購入者の犠牲の下に事業者が利益を得る行為であるため、不当な取引制限として独占禁止法により禁止されています。

これに対し、談合は、国や地方公共団体が行う入札に際して、入札事業者間で行われる入札価格等の相談であり、一般的な市場に対するものではない点にカルテルとの違いがあります。

しかし、談合は、入札参加者が共同して受注予定者や応札価格を決定するため、競争原理が働かず、通常よりも高い価格により落札される可能性もあることから、カルテルと同様、不当な取引制限として禁止されています。

談合のしくみ

談合は、一般的に以下の2段階で行われます。

①基本合意
入札参加者で話し合って、入札談合の一般ルールを取り決める。例えば、受注予定者や応札価格の決定方法などを取り決める。

②受注調整行為(個別談合)
個々の入札の場面で基本合意に従って受注予定者と応札価格を決定し、談合参加者にその結果を伝える。

談合では、このような段階を経て個々の入札での受注予定者や応札価格を決定し、入札の際には、受注予定者が談合で決定した応札価格で入札し、それ以外の入札参加者が、談合で決定した応札価格より高い価格で応札します。

その結果、事前の談合で決めたとおりの価格で受注予定者が落札できます。

入札参加者が談合を行う理由は、主に以下の2つです。

【受注予定者のメリット】
あらかじめ話し合いで入札価格を決めるので、競争原理が働かず、正当な価格よりも高額な価格で受注できる。

【他の参加者のメリット】
基本合意に基づき談合のメンバーで持ち回りで受注することから、どこかのタイミングで確実に受注することができる。

談合の種類

談合には、一般的な入札談合官製談合の2つがあります。

入札談合

一般的な入札談合とは、前述したとおり、入札に際し、複数の入札参加者が事前に相談し、受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為をいいます。

一般的な入札談合では、入札に参加する可能性がある事業者の中だけで談合が行われます。

官製談合

これに対し、官製談合とは、発注者側の者(=公的機関の者)が自ら入札談合をさせたり、入札談合に関与したりする行為をいいます。

官製談合は、

  • 入札事業についての予算執行をスムーズに行いたいため
  • 民間企業に再就職したOB等の依頼を断れないため
  • 自己の利益を得るため

など、さまざまな動機で行われます。

また、発注者側の関与者も、発注担当者・地方公共団体の長・政治家など、さまざまです。

談合の方法

実際に行われていた談合の方法として、例えば以下のようなものがあります。

  • 入札前に「○○研究会」などといった受注予定者を決定するための会合を開催して、受注予定者を決定する方法
  • 過去の入札での指名実績および受注実績をもとに一定の算定方法により算出した点数が最も低い者から優先的に受注予定者を定める方法
  • あらかじめ定めた順番により受注予定者を定める方法
  • 当番幹事が指名業者間の話し合いの司会を行い、指名業者から受注希望の有無を聴取して話し合いによる円満解決への助言等を行う方法
  • 入札による発注を行う機関から落札予定者となったとの連絡(いわゆる「天の声」)を受けたものが受注予定者となる方法

談合が禁止される理由

入札では、原則として最も安い価格を定めたものが受注権を得ます。そのため、入札に参加する事業者は、本来、受注を目指して独自の判断で入札価格などを決定します。

しかし、談合が行われると、事業者の独自の判断ではなく、事前の事業者間の話し合いで、入札価格等が決定されるので、事業者間の競争が生じません。そして、競争原理が働けばより低い金額でより品質の良い工事や物品を調達できたかもしれない可能性が失われてしまいます

ムートン

このように、談合は、入札において、競争原理を排除して、事業者が不当に利益を得る行為であるため、税金のムダづかいにもつながります。また、公共の利益にも反する行為なので、健全な事業活動も停滞させてしまいます。

そのため、談合や談合に関する行為は、刑法や独占禁止法・官製談合防止法により禁止されているのです。

談合に関する規制法

1|刑法

公共工事の入札や公の競売などで、公正な価格を害する」または「不正な利益を得る」目的で「談合」すると、談合罪にあたります。(刑法96条の6第2項)

談合罪の要件

談合罪に規定される「公正な価格」とは、競売または入札で、談合がされずに自由な入札がされていれば形成されたであろう価格のことです。

「不正な利益」とは、談合によって得る金銭などの経済的な利益が、不当に高額なものをいいます。また、落札者が入札参加者に「祝儀」を支払うような場合も、その額が社会通念上の「祝儀」の程度を超えているような場合には、「不正な利益」にあたる可能性があります。

談合罪違反の効果

談合罪に該当する行為をした場合、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、または、その両方が科されます。

また、国や地方公共団体などは、入札等により指名を受けることができる資格者について一定の基準を設けており、談合罪を犯した事業者は、その基準に従い指名停止処分(一定期間、その事業者の入札参加を認めない処分)を受けることがあります。

談合に関するその他の刑罰

談合そのものに対する刑罰ではないものの、それに関係するものとして、公契約関係競売等妨害罪があります。

公契約関係競売等妨害罪は、偽計または威力を用いて公の競売または入札について公正を害すべき行為をしたものに科される刑罰です。(刑法96条の6第1項)

ヒー

「偽計」「威力」って何ですか?

ムートン

偽計とは「人を欺くこと」です。一方、威力とは「言葉や行動などで圧力をかけ、人の意思を制圧すること」です。

例えば、入札参加者に談合を持ち掛けたが相手方が応じなかった場合、その相手を脅迫して談合に参加させようとしたときには談合罪は成立しませんが、公契約関係競売等妨害罪が成立します。

【公契約関係競売等妨害罪のイメージ】

2|独占禁止法

独占禁止法も、談合を不当な取引制限として禁止しています。(独占禁止法3条)

独占禁止法違反の要件と具体例

独占禁止法で不当な取引制限として禁止される談合は、以下の3つの要件を満たすものです。(独占禁止法2条6項)

①共同して相互にその事業活動を拘束する
②公共の利益に反する
③一定の取引分野における競争を実質的に制限する

①「共同して相互にその事業活動を拘束する」とは、相互に認識し、歩調をあわせる意思の連絡が形成され、その結果、談合参加者の事業活動が事実上拘束されることをいいます。

②「公共の利益に反する」とは、公正かつ自由な競争に反することをいいます。

③「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは、談合参加者らの意思で、当該入札市場における落札者および落札価格をある程度自由に左右できる状態をもたらすことをいいます。

公正取引委員会では、「公共的な入札に係る事業者および事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」において、入札に関し事業者および事業者団体が行う可能性のある行為の独占禁止法違反該当性について、参考例として、以下のような分類をのせています。

同指針では、以下の行為の独占禁止法上の問題点についてより詳しい説明が記載されていますので、参考にすると良いでしょう。

【受注者の選定に関する行為】
(1)原則として違反となるもの・受注予定者等の決定
(1)に関連し、違反となるおそれの強いもの・受注意欲の情報交換等
・指名回数、受注実績等に関する情報の整理・提供
(1)の違反行為に含まれるもの・入札価格の調整等
(1)の決定を容易にしたり、または強化等したりするために行われるものだが、それ自体独立で違反となる場合があるもの・他の入札参加者等への利益供与
・受注予定者の決定への参加の要請、強要等
(2)違反となるおそれのあるもの・指名や入札参加予定に関する報告
・共同企業体の組合せに関する情報交換
・特別会費、賦課金等の徴収
(3)原則として違反とならないもの・発注者に対する入札参加意欲等の説明
・自己の判断による入札辞退

【入札価格に関する行為】
(1)原則として違反となるもの・最低入札価格等の決定
(1)の手段等となる行為として違反となるおそれが強いもの・入札価格の情報交換等
(2)違反となるおそれがあるもの・入札の対象となる商品または役務の価格水準に関する情報交換等
(3)原則として違反とならないもの・積算基準についての調査
・標準的な積算方法の作成等

【受注数量等に関する行為】
(1)原則として違反となるもの・受注数量、割合等の決定
(2)原則として違反とならないもの・官公需受注実績等の概括的な公表

【情報の収集・提供、経営指導等】
(1)原則として違反とならないもの・入札に関する一般的な情報の収集・提供
・平均的な経営指標の作成・提供
・入札物件の内容、必要な技術力の程度等に関する情報の収集・提供
・経常共同企業体の組合せに関する情報提供
・共同企業体の相手方の選定のための情報聴取等
・経常共同企業体の運営に関する指針の作成・提供
・独占禁止法についての知識の普及活動
・契約履行の必要性に関する啓蒙等
・国、地方公共団体等に対する要望または意見の表明
・発注者に対する技術に関する情報の一般的な説明

参考元|公正取引委員会「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(一部抜粋・編集)

独占禁止法違反の効果

独占禁止法違反については、以下のような措置が科されます。

①罰則
②排除措置命令
③課徴金納付命令
④その他(損害賠償・指名停止処分)

【①罰則】
違法な談合の行為者行為者が所属する事業者に、以下の罰則が科されます。

・行為者個人(独占禁止法89条1号)
  5年以下の懲役・500万円以下の罰金

・行為者が所属する事業者(独占禁止法95条1項)
  5億円以下の罰金

・談合の計画を知っていながらその防止に必要な措置を講ぜず、または談合行為を知っていながらその是正に必要な措置を講じなかった法人の代表者(独占禁止法95条の2)
  500万円以下の罰金

【②排除措置命令】
違法な談合があった場合、違法状態の除去、競争秩序の回復や再発防止を目的として、違反行為を速やかに排除するよう命ずる行政処分である排除措置命令が科されます。(独占禁止法7条1項)

【③課徴金納付命令】
さらに、課徴金納付命令が科されることがあります(独占禁止法7条の2)。

課徴金とは、違反行為者に経済的不利益を与えることにより、違反行為をさせないようにする制度です。

違反行為をした事業者は、対象商品または役務の売上額等を基準として独占禁止法に定められた一定の算式に従って計算された金額を課徴金として国庫に納めなければいけません。

④その他】
なお、独占禁止法違反の行為に起因して被害を被った被害者は、違反者に対して損害賠償請求ができ、違反者は、故意・過失を問わず責任を負わなければなりません。(独占禁止法25条)

また、国や地方公共団体などは、入札等により指名を受けることができる資格者について一定の基準を設けており、独占禁止法に違反した事業者は、その基準に従い指名停止処分を受けることがあります。

3|官製談合防止法

官製談合防止法は、官製談合を防止するために、2003年に施行された法律です。

官製談合防止法では、国や地方団体などの発注機関の役員や職員が、入札、競り売りその他競争により相手方を選定する方法(以下「入札等」といいます)に関し入札談合等関与行為を行った場合、公正取引委員会が改善措置要求を行えることが定められています。(官製談合防止法2条5項、3条、4条、5条)

対象となる発注機関は以下のとおりです。

  • 地方公共団体
  • 国または地方公共団体が資本金の2分の1以上を出資している法人
  • 特別の法律により設立された法人のうち、国または地方公共団体が法律により、常時、発行済株式の総数または総株主の議決権の3分の1以上に当たる株式の保有を義務付けられている株式会社(政令で定めるものを除く。)

また、入札談合等関与行為に当たるのは、以下の4類型の行為です。

① 談合の明示的な指示
② 受注者に関する意向の表明
③ 発注に係る情報の漏えい
④ 特定の入札談合のほう助

さらに、入札等の公正を害する行為を行った発注機関の役員や職員に対する罰則も定められています。

以下で詳しく見ていきましょう。

官製談合防止法違反の要件

前述した入札談合等関与行為のうち、①談合の明示的な指示とは、「事業者または事業者団体に、入札談合等を行わせること」をいいます。(官製談合防止法2条5項1号)

官製談合防止法に定める「入札談合等」とは、発注機関が入札等により行う契約の締結に関し、事業者が他の事業者と共同して落札者や落札価格を決定したり、事業者団体が入札に参加しようとする事業者にそのような行為を行わせること等により、独占禁止法3条または8条1号の規定に違反する行為をいいます。

例えば、発注担当職員が事業者の会合に出席し、事業者ごとの年間受注目標額を提示し、その目標を達成するよう調整を指示する行為などが①談合の明示的な指示に当たります。

入札談合等関与行為のうち、②受注者に関する意向の表明とは、「入札等により行う契約の相手方となるべき者をあらかじめ指名することその他特定の者を契約の相手方となるべき者として希望する旨の意向をあらかじめ教示し、または示唆すること」をいいます。(官製談合防止法2条5項2号)

例えば、以下のような行為です。

  • 発注担当者が受注者を指名する
  • 受注してほしい事業者名をあらかじめ教示する

入札談合等関与行為のうち、③発注に関する秘密情報の漏えいとは、「入札や入札等により行う契約に関する情報のうち、特定の事業者または事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる情報であって秘密として管理されているものを、特定の者に対して教示し、または示唆すること」をいいます。(官製談合防止法2条5項3号)

例えば、本来、事業者に対して公開していない予定価格を漏洩したりする行為がこれに当たります。

入札談合等関与行為のうち、④特定の入札談合のほう助とは、「特定の入札談合等に関し、事業者、事業者団体その他の者の明示若しくは黙示の依頼を受け、またはこれらの者に自ら働きかけ、かつ、当該入札談合等を容易にする目的で、職務に反し、入札に参加する者として特定の者を指名し、またはその他の方法により、入札談合等をほう助すること」をいいます。(官製談合防止法2条5項4号)

例えば、事業者から依頼を受け、特定の事業者を入札参加者として指名したり、事業者の作成した割付表を承認し、入札談合を容易にしたりする行為などがこれに当たります。

官製談合防止法違反の効果

発注機関の役員または職員が、入札談合等関与行為を行った場合、公正取引委員会は、発注機関の長に対して改善措置を要求することとなります。

改善措置要求を受けた発注機関は、必要な調査を行い、入札談合等関与行為を排除するための改善措置を講じなければなりません。(官製談合防止法3条、4条、5条)

また、発注機関の役員または職員が、その所属する発注機関が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者などに談合を唆したり、事業者などに予定価格などの入札等に関する秘密を教示することなどの方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、5年以下の懲役または250万円以下の罰金が科されます。(官製談合防止法8条)

談合の具体例(事例)

ムートン

ここからは、過去に問題となった具体的な談合の事案を見ていきましょう。

多摩談合事件

この事件は、多摩地区に営業所を置くゼネコンのうち33社が、

  • 受注希望者間の話し合いによって、受注予定者を決める
  • 受注すべき価格は受注予定者が決定し、それ以外の者は受注予定者がその価格で受注できるように協力する

という基本合意を行い、対象となる土木工事72件のうち31物件(約43.1%)を、基本合意に基づいて落札・受注したとして独占禁止法違反となった事件です。

この事件は、最高裁判決において、「独占禁止法違反の要件と具体例」で記載している「不当な取引制限」の要件の認定基準を示したものとして有名です。

平成24年2月20日最高裁判決(抜粋)
「本件基本合意は,前記2(5)イのとおり,各社が,話合い等によって入札における落札予定者及び落札予定価格をあらかじめ決定し,落札予定者の落札に協力するという内容の取決めであり,入札参加業者又は入札参加JVのメインとなった各社は,本来的には自由に入札価格を決めることができるはずのところを,このような取決めがされたときは,これに制約されて意思決定を行うことになるという意味において,各社の事業活動が事実上拘束される結果となることは明らかであるから,本件基本合意は,法2条6項にいう「その事業活動を拘束し」の要件を充足するものということができる。そして,本件基本合意の成立により,各社の間に,上記の取決めに基づいた行動をとることを互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成されたものといえるから,本件基本合意は,同項にいう「共同して…相互に」の要件も充足するものということができる。」

「法が,公正かつ自由な競争を促進することなどにより,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としていること(1条)等に鑑みると,法2条6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,本件基本合意のような一定の入札市場における受注調整の基本的な方法や手順等を取り決める行為によって競争制限が行われる場合には,当該取決めによって,その当事者である事業者らがその意思で当該入札市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいうものと解される。」

裁判所HP内最高裁判所判例集

北海道庁農業土木談合事件

この事件は、北海道上川支局発注の農業土木工事について行われた官製談合事件で、官製談合を防止するための法律である官製談合防止法を制定するきっかけとなったものです。

この事件では、北海道庁が道内における業者の年間受注目標額を設定し、各支庁を通じて落札予定者と予定価格を業界団体に伝えることで土木工事を落札させており、公正取引委員会が2000年に処分を行っています。

日本道路公団が発注する鋼橋上部工工事における事例

この事件は、日本道路公団が発注する鋼橋上部工工事において、公団OBが競争入札の落札予定者を選定した「割付表」の提示を受け、その割付表に従い発注していた事件です。

この事件は、公団退職者の再就職先を確保する目的をもって組織的に行われたものであり、当時の後段副総裁等の幹部が独占禁止法違反で逮捕され、懲役刑となったほか、官製談合防止法に基づき、日本道路公団総裁に対し改善措置要求がなされました。

談合を行わない(防止する)ために注意すべきポイント

上記のとおり、「談合」は、独占禁止法などで禁止される犯罪であり、談合を行った場合、行った者が処罰されるだけでなく、事業者自体も処罰対象となり、また、公共工事の指名停止を受けるなど、事業者への影響も非常に大きくなります。

そこで、自社や自社の社員の談合行為を防止するため、以下のような対策をとると良いでしょう。

① 入札等に参加する際の行動規範等の社内ルールの明確化
② 社員への教育
③ 入札等に関与する社員と情報を共有し、談合を防止するための組織づくり

①入札等に参加する際の行動規範等の社内ルールの明確化

談合は犯罪行為ですが、組織ぐるみ業界ぐるみで行われるものも多くあります。

また、古くからの「慣行」として行われているものについては、当事者になっていてもそれが犯罪行為であることに気づきにくいこともあります。

そこで、自社がそのような談合に加担しないように、入札等に参加する際の行動規範禁止行為などを整理し、社内ルールとして定めるとよいでしょう。

社内ルールを作成する際は、上記記載の公正取引委員会作成の指針も参考にしてみてください。

②社員への教育

同業の事業者間では協会団体主催の会合などにおける「情報交換」も多く行われ、談合にあたらない「情報交換」は、会社にとって有益なものです。

しかし、談合は、事業者団体の交流会の名目で行われることもあるため、適法な「情報交換」と違法な「談合」との差を担当者がきちんと認識していないと、情報交換のつもりで知らず知らずのうちに談合行為を行っていたということもありえます。

そこで、談合を行わないための社員教育が重要となります。

社員教育にあたっては、社内教育用の資料を作成し、定期的に以下のような内容について研修をおこなうと良いでしょう。

  • 談合とは何か
  • 入札等に参加する際の社内ルール
  • 談合と適法な情報交換の違い
  • 談合に当たる行為の具体例
  • 談合した場合の罰則・不利益

③入札等に関与する社員と情報を共有し、談合を防止するための組織づくり

上記のように社内ルールを作成し、研修を行ったとしても自己の営業成績向上などの目的で談合を行おうとする社員が出ないとも限りません。

また、談合は、複数の会社間で行うものですから、自ら積極的に談合を企画していなくとも、つながりのある同業他社から勧誘され、談合に参加してしまうおそれもあります。

そこで、担当者が談合を意図したり、談合に勧誘されたりした際に、会社側がそれを察知し、談合を未然に防止するために、入札に関する他社とのつながりの状況を上司が常に把握し、談合を防止できるような体制を作ることも肝心です。

例えば、

  • 入札に関し情報交換を行った場合には、その日時や相手、内容を必ず報告させ情報を共有する
  • 危険な兆候を察知したら、以後、複数担当とするか、上司が同席する

など、談合を防ぐための社内体制をつくると良いでしょう。

おわりに

談合は、競争の原理を排除して、不当に事業者が利益を得る行為であるため、刑法、独占禁止法や官製談合防止法により禁止されています。

本記事を参考に、談合とはどのようなものか、どのような行為が談合に当たるか、談合を行った場合、どのような罰をうけるのかをよく理解し、自社や自社の担当者が談合を行わないような社内体制を整えると良いでしょう。

ムートン

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参考文献

公正取引委員会事務総局「入札談合の防止にむけて」令和4年10月版

公正取引委員会「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律ガイドブック 知ってなっとく独占禁止法」

公正取引委員会「入札談合等関与行為防止法について」

泉水文雄著『独占禁止法』有斐閣、2022年