コンサルティング契約書とは?
作り方や盛り込むべき条項・締結時の注意点などを解説!
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- この記事のまとめ
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コンサルティング契約とは、コンサルタントが委託者に対して、事業・経営等に関するコンサルティング(アドバイス)を提供する内容の契約です。「アドバイザリー契約」などと呼ばれることもあります。
コンサルティング契約を締結することで、企業は自社内部にはない視点を経営に取り入れることができます。また、未知の分野・取引に関する水先案内人として、コンサルタントを活用できる点も大きなメリットです。
コンサルティング契約を締結する際には、コンサルティング業務の範囲や提供方法、報酬などについて明確に規定し、コンサルタントとの間のトラブルを予防するように努めましょう。
この記事では「コンサルティング契約」について、締結する場合の例や企業側にとってのメリット、盛り込むべき契約条項などを解説します。
(※この記事は、2022年3月22日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
目次
コンサルティング契約とは?
「コンサルティング契約」とは、コンサルタントが委託者に対して、事業・経営等に関するコンサルティング(アドバイス)を提供する内容の契約です。
コンサルティング契約を締結する主な目的
コンサルティング契約は、自社だけでは解決が難しい経営課題などを、外部のコンサルタントの協力を得ながら解決することを目的として締結されます。
特に、経営不振に陥った企業や、新規事業の検討を行う企業では、コンサルティング契約に対するニーズが発生することが多いです。
コンサルティング契約は「委任契約」と「請負契約」のどちらに当たるか
コンサルティング契約に基づき、コンサルタントが委託者に対して提供するサービスは、契約内容によって異なります。そのため、コンサルティング契約を「無名契約」(民法で定められた類型以外の契約)と位置付ける考え方も有力です。
コンサルティング契約を、あえて典型契約(民法で定められた類型の契約)として整理するならば、「委任」(民法643条)又は「準委任」(民法656条)となります。委任は法律行為を、準委任は法律行為でない事務(仕事)を、それぞれ委任者が受任者に対して委託する内容の契約です。
委任契約・準委任契約の目的は、一定の行為・事務の委託そのものであるのが通常で、何らかの仕事の完成を目的としているわけではありません。この点、仕事の完成を目的としている「請負」とは異なります。
なお、委任契約・準委任契約・請負契約の違いをもっと詳細に知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
コンサルティング契約は、「コンサルティング(アドバイス)」という行為・事務の提供自体を目的としており、何らかの仕事の完成を目的としているわけではありません。そのため、コンサルティング契約は「請負」ではなく、「委任」又は「準委任」と整理されるのです。
コンサルティング契約とアドバイザリー契約の違い
コンサルティング契約とアドバイザリー契約は、名称が違うだけで、本質的な違いは特にありません。いずれもコンサルタント(アドバイザー)が委託者に対して、何らかの事項について助言を行う内容の契約です。
コンサルティング契約もアドバイザリー契約も、具体的な助言業務の内容等は、契約の定めによって決まります。そのため、契約の名称ではなく、業務内容等をどのように設計するかのほうが重要です。
コンサルティング契約を締結する場合の例
コンサルタントとの間でコンサルティング契約を締結するのは、委託者となる企業における以下のニーズがきっかけになることが多いです。
事業の抜本的な改善を図る場合
企業の経営が傾いた際、経営不振の原因がどこにあるのかわからないケースがよくあります。
闇雲に経営努力を行っても、ポイントを外していては、効果的な経営改善は期待できません。そこで、コンサルタントを起用して事業分析を行ってもらい、抜本的な事業の見直し・改善を目指すことが選択肢となります。
新規事業を立ち上げる場合
企業が新規事業に取り組む場合、市場分析や事業内容の設計などに、膨大な検討が必要となります。
効率的な新規事業戦略を考案することに加え、立ち上げにかかるマンパワーの不足を補うことを目的として、コンサルタントが起用されるケースが多いです。
M&A取引の検討を開始する場合
他社とのM&A取引を検討する場合、相手方とのマッチング・スキーム設計・契約交渉など、長期間にわたって多大な労力を割いた調整・交渉が行われます。
当事者の企業は、M&Aについてのノウハウを十分にもっておらず、上記のプロセスを自社だけでこなせないことが多いです。その場合、M&Aコンサルティング会社に仲介業務を依頼することが、円滑なM&Aの実行を目指すために有力な選択肢となります。
日常的に経営のアドバイスを求めたい場合
特に具体的な課題が発生していなくても、優秀なコンサルタントに経営に関する日常的な相談をしたいという目的で、コンサルティング契約を締結するケースもあります。
この場合は、月額報酬制の顧問契約の形態をとることが一般的です。
企業がコンサルティング契約を締結するメリット
コンサルティング契約に基づき、コンサルタントから様々なアドバイスを受けることは、企業にとって以下のメリットがあると考えられます。
- 企業がコンサルティング契約を締結するメリット
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✅ 自社の問題点を発見できる
→コンサルタントが集中的に企業分析を行うことで、自社の経営における真の問題点を突き止められる可能性があります。✅ コンサルタントの幅広い経験・知見を活かせる
→幅広い業界・業種の企業を分析し、深くまで関与したことのあるコンサルタントの経験・知見を活用すれば、自社の問題に対する効果的な解決策が見つかる可能性が高まります。✅ 外部からの視点を経営に取り入れることができる
→外部コンサルタントの客観的な視点を取り入れることで、長年会社の内部にいる人では思いつかないような解決策を考案できる可能性があります。✅ 未知の分野・取引に関する水先案内人を得られる
→新規事業やM&Aなど、不慣れな分野に取り組む際にも、コンサルタントの知見を活用することで、スムーズに検討を行うことができます。
コンサルティング契約書に盛り込むべき主な条項
コンサルティング契約はオーダーメイド性が強いため、契約内容をきちんと作りこんでおくことが大切です。
コンサルティング契約に盛り込むべき主要な条項について、それぞれの概要とチェックポイントを解説します。
コンサルティング業務の内容・範囲
最も基本的な事項として、「何に関してコンサルティングを行うのか」を定めておく必要があります。経営全般に関するコンサルティングなのか、それとも特定の取引に関するコンサルティングなのか、コンサルティング業務の対象を明確化しておきましょう。
また、コンサルタントが「やらなくてよいこと」を明記しておくことも、コンサルティング業務の範囲を明確化する観点から有効です。
コンサルティングの提供方法
「コンサルティングを提供する」とひと口に言っても、その提供方法は様々です。コンサルタントが口頭で質問に答える形をとる場合もあれば、レポート等を作成して委託者に提出する場合もあります。
契約でコンサルティングの提供方法を明記しておけば、サービスの内容に関して、委託者とコンサルタントの認識が共有され、トラブルの防止につながります。何をもって「コンサルティングが提供された」とするかを、コンサルティング契約にはっきり定めましょう。
コンサルティング報酬の額・支払方法等
コンサルティング報酬については、以下の事項を定めておきます。
プロジェクト単位のコンサルティングの場合は、着手金・成功報酬制が採用されるケースが多いです。一方、顧問契約方式の場合は、固定月額報酬制・タイムチャージ制などが考えられます。報酬の計算方法に疑義が生じないように、契約の中できちんと規定しておきましょう。
成果物に関する知的財産権の帰属
コンサルタントがレポートなどの成果物を作成する際には、成果物に関する知的財産権の帰属についても、コンサルティング契約でルールを定めておくべきです。
コンサルタント作成の資料は、基本的には委託者の内部で用いられるため、その知的財産権についても委託者に帰属するものと定めるのがよいでしょう。その一方で、コンサルタントの名称を付した形での外部公表は差し控えるべき旨の遵守事項を規定することもあります。
再委託の可否
コンサルタントが調査・検討を行う際、外部業者に対してその一部を再委託するケースがあります。
コンサルティングに関しては、コンサルタントが責任を持って最終チェックを行う前提であれば、再委託を認めることの弊害は少ないと考えられます。そのため、契約上も再委託が認められていることが多いです。
ただし、全く見知らぬ業者に再委託されるのは不安だという場合には、再委託先の業者に関する情報の事前開示を要する旨を規定しておくのがよいでしょう。
契約期間
プロジェクト単位のコンサルティングであれば、契約期間は基本的にプロジェクト終了時までとなります。ただし、何をもってプロジェクトが終了したと評価するかが曖昧になりやすいため、「〇週間前の通知によって契約を終了できる」旨の規定を設けておくのがよいでしょう。
顧問契約の場合は、一定期間(1か月など)ごとの自動更新方式とするケースが多いです。自動更新方式を採用する場合には、契約終了に関する手続(〇週間前の通知など)についても定めておきましょう。
秘密保持
委託者はコンサルタントに対して、自社に関する情報を詳細に開示します。そのため、コンサルタントに対して適切な秘密保持義務を負わせることが極めて重要です。
具体的には、以下の内容をコンサルティング契約に規定しておきましょう。なお、別途秘密保持契約を締結することも考えられます。
契約の解除
契約期間満了時に加えて、相手方に契約や法令への違反等があった場合には、コンサルティング契約を解除できるようにしておくべきです。
コンサルティング契約において想定される解除事由の例としては、以下のものが挙げられます。
損害賠償
いずれかの当事者の債務不履行により、相手方に損害が発生した場合の処理ルールも定めておきましょう。コンサルティング契約の場合、コンサルタントに課される損害賠償責任は、コンサルティング報酬の範囲内に限定されるケースが多いです。
- 損害賠償の範囲の定め方
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✅ 民法の原則どおりとする場合
→「相当因果関係の範囲内で損害を賠償する」など✅ 民法の原則よりも範囲を広げる場合
→「一切の損害を賠償する」など✅ 民法の原則よりも範囲を狭くする場合
→「直接発生した損害に限り賠償する」、損害賠償の上限額を定めるなど
反社会的勢力の排除
コンプライアンスに関する社会的意識の高まりを受けて、コンサルティング契約中に反社会的勢力の排除に関する条項(反社条項)を規定するケースが多くなっています。
反社条項の主な内容は、以下のとおりです。
なお、反社チェックの基本については以下の記事も併せてご参照ください。
準拠法・合意管轄
委託者とコンサルタントのいずれかが多国籍企業の場合、準拠法についての定めを置くこともあります。日本語で締結するコンサルティング契約の場合は、準拠法も日本法とするのが一般的です。
また、万が一当事者間でトラブルが発生した場合に備えて、第一審の管轄裁判所をあらかじめ合意しておくとよいでしょう。
合意管轄については、以下の関連記事で解説しています。
コンサルティング契約書にかかる印紙税について
コンサルティング契約は、原則として印紙税の課税文書ではないため、収入印紙を貼付する必要はありません。
ただし、「請負」(何らかの仕事の完成を目的とする契約)の要素が含まれている場合などには、例外的に印紙税が課されることもあります。印紙税が課税されるかどうかは、契約の名称ではなく、契約の具体的な内容によって決まる点に留意しましょう。
この記事のまとめ
コンサルティング契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
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