法務になるには?
採用の傾向・必要なスキル・役立つ資格・
勉強方法などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

法務(企業法務担当者)になるためには、特別な資格は不要です。しかし、法律に関する資格を保有していると、法務として採用されやすくなります。

また、入社する前から基本的な法律の知識を備えていることは、法務として採用されるための必須条件です。自分で資格試験などの勉強をしたり、eラーニングを活用したりして、法律的な素養を高めましょう。

この記事では法務になりたい方に向けて、法務採用の傾向、法務に必要なスキル、就職活動の際に役立つ資格、法律の勉強方法などを解説します。

ヒー

「法務として働くには、やっぱり司法試験に合格したり、ロースクールを出ないとダメ?」と聞かれました。そんなことないと思いますが、どうなんでしょう?

ムートン

企業の法務部で働くには、特別な資格などは必要ありません。どんなスキルや資格があると採用されやすいか、ご紹介していきます!

※この記事は、2024年12月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

法務になるには何をすべき?

法務になるためには、法務の業務内容について理解し、必要な知識を習得しておくことが望ましいです。

特別な資格は不要ですが、法律に関する資格を保有していると、法務として採用されやすくなります。

法務の業務内容とは

法務の業務内容としては、以下の例が挙げられます。

法務の業務内容(例)

・他部署からの法律相談
・契約書のレビュー、ドラフト
・ガバナンス(株主総会対応、取締役会対応など)
・紛争対応(クレーム対応、訴訟など)
・コンプライアンス(社内規程の整備、従業員研修、内部通報窓口の設置など)
・法令調査
・労務、労働問題(労働基準法対応、ハラスメント対応など)
・知的財産権(特許、実用新案、商標、意匠、著作権など)
・債権回収、債権管理
など

これらの業務については、実務に出てから学ぶことも多い一方で、前提として幅広い知識が必要になります。必要な知識を着実に身に付けていけば、法務担当者として企業に採用される可能性が高まります。

ムートン

法務の業務内容に関する詳細は、以下の記事をご参照ください。

法務になるのに特別な資格は不要|ただし持っていると採用に有利になる面も

法務担当者になるためには、原則として特別な資格は必要ありません。
資格がなければできない業務も一部存在しますが(弁護士業務や司法書士業務など)、企業の法務担当者として行うべき業務の大半は、特に資格を保有していなくても行うことができます

ただし、法律系資格を保有していると、法律に関して一定以上の知見を有するという証明になります。法務としてキャリアアップを目指すのであれば、法律系資格の取得にもチャレンジしてみるとよいでしょう。

企業における法務採用の傾向

法務担当者を採用する企業には、その規模に応じて大まかな傾向があります。
大企業では有資格者を中心とする即戦力採用中小企業では総務なども兼任する総合力採用を志向するケースが多いです。

大企業の場合|有資格者を中心とするスペシャリスト採用

大企業は多くのステークホルダーを有するため、コンプライアンスを徹底することが求められます。取引量に応じた法務業務の量も多く、法務担当者を複数名雇用するのが一般的です。

特に大企業では、弁護士資格を有する人で法務部門を固めるケースがしばしば見られます。
全員ではなくても、法務担当者として一定数の弁護士資格保有者を雇用する企業は、ここ最近増えてきました。
コンプライアンスの要請が強く、かつ有資格者向けに好待遇を用意できる大企業ならではの傾向と言えるでしょう。

弁護士資格を保有していなくても、大企業に法務担当者として就職できる可能性がないとは言えません。しかし、有名大学の法学部を卒業している、同業他社で法務をしているなど、スペシャリストとなり得る人材を欲する傾向があります。

ムートン

法務の新卒採用を行っている会社は、大企業に多い傾向があるといえます。

中小企業の場合|総務なども兼任する総合力採用

中小企業では、法務を含めたバックオフィスの人材を豊富に雇用できるだけの経済的な余力がないケースが多いです。そのため法務だけでなく、総務・会計・人事なども兼ねることのできるゼネラリストを採用する傾向にあります。

大企業とは異なり、法務に関連するキャリアや資格を有していなくても、中小企業の法務担当者として採用される可能性は十分あります。
業務範囲は法務に限らない場合もありますが、幅広い業務を経験する中で、ビジネスパーソンとしてのスキルを高めることができる点も、中小企業の法務担当者として働くことのメリットと言えるでしょう。

法務として働くために必要な知識やスキル

法務担当者に求められる知識経験は、実務の中で身に付けていけば問題ありません。

しかしそれ以前に、法務担当者として企業に就職するためには、以下のような知識やスキルを身に付けておくことが望ましいです。

  • 基本的な法律の知識
  • ビジネスに関する知識
  • 文書作成のスキル

基本的な法律の知識

専門的な法律の知識は実務の中で身に付ければよいですが、基本的な法律の知識については、法務担当者として就職する段階で身に付けていることが期待されます。

企業に就職する場合は、民法会社法を重点的に勉強しておくとよいでしょう。行政書士宅地建物取引士など、法律系の資格の勉強をすることも、基本的な法律の知識の習得につながります。

ビジネスに関する知識

法務担当者としての就職を目指すためには、ビジネスに関する知識を身に付けておくに越したことはありません。役員や別部署の従業員とコミュニケーションをとる際には、ビジネスに関する知識が必要になるためです。

基本的な会社組織や業界、取引やサプライチェーンに関する知識について、ニュース・新聞などから積極的に情報を取得するほか、興味のある業界で活躍する人と話をしたり、書籍を読んだりして、ビジネスに関する知見を深めましょう。

ヒー

法務でも、一般常識や社会・経済に関する知識が仕事の役に立つことが多くあります!

文書作成のスキル

法務担当者は、さまざまな場面で文書を作成することになります。以下に挙げるのは、法務担当者が良く作成する文書の一例です。

・契約書
・社内規程
・コンプライアンス研修の資料
・社内稟議向けの説明文書
など

多くの企業では、業務用PCのOS(オペレーティング・システム)にWindowsが採用されています。そのため、文書作成はMicrosoft Wordで行うのが一般的です。
また、作成する文書の内容や目的によっては、Microsoft ExcelMicrosoft PowerPointを使用するケースもあります。

これらの文書作成ソフトにまだ慣れていない方は、法務担当者として就職してから困らないように、ある程度操作に習熟しておきましょう。

法務に関連する主な資格

法務担当者としての就職を目指す際には、以下のような資格を保有していると有利に働きます。

  • 弁護士
  • 弁理士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士
  • 知的財産管理技能士
  • ビジネス実務法務検定

弁護士

弁護士は、法律に関する業務を幅広く取り扱う国家資格です。
法科大学院修了または予備試験合格を経て司法試験に合格し、約1年間の司法修習を修了すると、弁護士として登録することができます。

法務担当者として就職するに当たり、弁護士は最も有利な資格です。外資系企業や日系の大企業の法務部への就職も現実的になります。
ただしその分、弁護士資格を取得するのはかなり大変です。数年単位で時間を確保できる方であればチャレンジしてみましょう。

弁理士

弁理士は、特許などの知的財産に関する業務を取り扱う国家資格です。弁理士試験に合格すると、弁理士として登録することができます。

弁理士資格は、特にメーカーコンテンツ系企業の法務部に高いニーズがあります。また、中規模以上の法律事務所の知財担当者としても、弁理士資格保有者は重宝されます。
また、弁理士資格は取得が難しく、一定以上の法的知見を有することの証明になるため、上記以外の企業にも法務担当者として採用されやすくなるでしょう。

弁理士試験の合格はかなり高いハードルですが、知的財産に関心がある方はチャレンジしてみるとよいでしょう。

司法書士

司法書士は、主に登記や供託に関する業務を取り扱う国家資格です。試験を受けて法務大臣の認定を受ければ、1件当たり140万円以下の紛争案件を取り扱うこともできます。
司法書士試験に合格し、約4カ月間の新人研修を修了すると、司法書士として登録することができます。

司法書士資格保有者は、一般企業の法務部門に加えて、中規模以上の法律事務所のパラリーガルなども就職の選択肢に入ってきます。
司法書士資格取得の難易度は高いので、取得できれば法務担当者としての就職にはかなり有利に働きます。

行政書士資格を取得した後のステップアップとして、司法書士資格にチャレンジするという方も多いです。司法書士に関心がある方は、段階を踏んでチャレンジしてみましょう。

行政書士

行政書士は、官公庁に提出する書類など、法律文書の作成業務を取り扱う国家資格です。行政書士試験に合格すると、行政書士として登録することができます。

行政書士試験は、法律系資格の登竜門として位置づけられています。弁護士・弁理士・司法書士に比べると、行政書士資格の取得難易度は低めです。
その一方で、士業として確立されていて信頼性が高い資格なので、法務担当者としての就職を目指している方が行政書士資格を取得する価値は大いにあります。

宅地建物取引士

宅地建物取引士は、宅地や建物の売買の媒介などを取り扱うために必要な国家資格です。不動産会社の経営者や従業員などは、宅地建物取引士の取得が必須とされるケースが多いです。

宅地建物取引士試験は、行政書士試験と並び、法律系資格の登竜門とみなされています。資格取得の難易度は、行政書士よりも宅地建物取引士の方が低めです。
不動産業界に就職しない方でも、他の法律系資格へのステップアップとして、あるいは法律に関する知識を証明する手段として、宅地建物取引士の取得にチャレンジしてみましょう。

知的財産管理技能士

知的財産管理技能士は、知的財産の管理に関する国家資格です。1級から3級までが設けられています。

弁理士とは異なり業務独占権は認められないものの、知的財産管理技能士を取得すれば、知的財産に関する法的知識を有することの証明になります。
弁理士よりも資格取得の難易度は低く、特に3級は合格率が高くなっています。法務就職を希望していて、知的財産に関心がある方は、知的財産管理技能士3級からチャレンジしてみましょう。

ビジネス実務法務検定

ビジネス実務法務検定は、東京商工会議所が主催している検定試験です。ビジネスに関する実践的な法律知識を問う試験が行われており、1級から3級までが設けられています。

ビジネス実務法務検定に合格していると、法務担当者としての就職活動において高い評価を得られる可能性があります。特に3級の合格率は高くなっているので、法務未経験の方でもチャレンジしやすいでしょう。

法務として働くための知識を身に付ける方法

法務担当者として働くためには、以下の方法で知識を身に付けましょう。就職活動において有利に働くことがあるほか、実際に法務担当者として就職した際には、身に付けた知見を活用できます。

  • 法務に関連する実務経験を積む
  • 資格試験の勉強をする
  • 法学部や法科大学院で勉強する
  • 法律に関する書籍を読む
  • eラーニングで実務を学ぶ

法務に関連する実務経験を積む

法務部門以外の部署で働いていても、法務に関連する実務経験は積めることがあります。例えば、契約・労務・知的財産・コンプライアンスなどには、法務担当者でなくても関わる機会があるでしょう。

関連する業務の部署内でのとりまとめを積極的に引き受けたり、「自分が法務担当者だったら……」と考えながら日々の業務に取り組めば、法務実務に関する知見を深めることができます。

資格試験の勉強をする

法務業務に資格は必須ではありませんが、法律系の資格を保有していれば法務担当者として採用されやすくなります。

時間がある方は宅地建物取引士や行政書士、あまり時間がとれない方はビジネス実務法務検定など、自分の状況に合わせた資格を選んでチャレンジしてみましょう。

法学部や法科大学院で勉強する

法律の知識を深めたいなら、法学部法科大学院で勉強するのも有力な選択肢です。法学部や法科大学院を修了していれば、法務担当者としての就職活動において高く評価される傾向にあります。

働きながら通える夜間部を設置しているところもあるので、本腰を入れて法律の勉強をしたい方は、法学部や法科大学院への入学もご検討ください。

法律に関する書籍を読む

以下のような法律に関する書籍を読むことも、法務担当者に求められる知見を深める観点から有益です。

法律に関する書籍の例

・基本書
→民法や会社法などの基本的な法律について、法学者が体系的に解説した書籍です。

・逐条解説
→法律の条文を順番に詳しく解説した書籍です。

・実務書
→弁護士などの実務家が、実務における法律上の留意点などを解説した書籍です。

・判例集
→代表的な裁判例や、時事的に重要と思われる裁判例などをまとめた書籍です。

など

eラーニングで実務を学ぶ

法務担当者としての就職を目指すに当たっては、オンライン学習教材であるeラーニング」を活用することも効果的です。eラーニングでは、法律やコンプライアンスに関する幅広い知識を、オンラインで手軽に学ぶことができます。

法務の知識を動画で学べる「Legal Learningには、法務の実務を学べるさまざまなコンテンツが掲載されています。法務になるために実用的な知識を身に付けたいと考えている方は、「Legal Learning」の活用をご検討ください。

ヒー

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