著作物とは?
定義・要件・種類・
具体例などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものをいいます。
著作権法では、言語の著作物や音楽の著作物など、多様な著作物について規定しています。
この記事では、著作物の概要について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年3月9日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
著作物とは
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。(著作権法2条1項1号)
「著作物」の例
著作物は、世の中にたくさん溢れています。イメージしやすいものとしては、例えば、アーティストが作った音楽や、画家が描いた絵画、大ヒットした映画といったものが思いつくのではないかと思います。もっとも、著作物は、これらのものに限らず、例えば、皆さんが、日頃スマートフォンで撮影している写真や動画、子どもが書いた絵も、著作物にあたると考えられています。
詳細については、「著作物の種類・具体例」でも説明します。
「著作物ではないもの」の例
一方、単なる事実やデータは著作物にあたりません。例えば、毎日の天気や気温を記録したデータや、「東京タワーの高さが333メートル」であるという事実は、著作物にあたりません。
また、アイデアそれ自体も著作物にあたりません。例えば、「主人公が海賊王を目指して仲間と一緒に冒険をする」というストーリー自体は、アイデアにとどまると考えられますので、著作物にはあたりません。
著作物の要件
次に、「著作物」といえるための要件について見ていきます。
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいい(著作権法2条1項1号)、著作物といえるためには、以下の4つの要件を満たす必要があると考えられています。
①思想又は感情を含むこと
②創作したものであること
③表現したものであること
④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
以下、各要件について詳しく見ていきます。
①思想又は感情を含むこと
まず、著作物といえるためには、著作者の何らかの「思想又は感情」が含まれている必要があります。「思想又は感情」は、表現者の何らかの考えや気持ちが表れていれば足りると考えられています。
一方、前述のとおり、単なる事実やデータには、「思想又は感情」が含まれていませんので、本要件を満たさず著作物にあたりません。著作権法においても、
- 事実の伝達にすぎない雑報
- 時事の報道
が著作物に該当しないことが確認的に規定されています(著作権法10条2項)。
なお、「事実の伝達」にとどまらない記事作成者の意見や評価なども含まれた、新聞やニュース記事は著作物にあたりえます。
また、最近では、Midjourney というAIを活用した画像の自動生成サービスや、ChatGPT というAIを活用したチャット形式での検索サービスが流行しており、「AIが創作した生成物に著作権は認められるか?」という点が問題となることも多いですが、AIが自律的に生成したものには、「思想又は感情」が含まれていないとして、著作物に該当しないと考えられています(一方、人間がAIを道具として利用して創作したものは、著作物に該当すると考えられています)。
②創作したものであること
著作物と認められるためには、創作性が必要です。
創作性については、一般的には著作者の何らかの個性が表現されていれば足りると考えられており、誰にも思いつかないような高度な創作性が求められるわけではありません。そのため、子どもが描いたイラストなどにも、創作性は認められます。
一方で、他人の著作物を模倣しただけの場合や、誰が表現しても同じ表現となるありふれた表現(例:「いつもお世話になっております」などのあいさつ)については創作性が認められません。
なお、例えば、プログラムの著作物について、「プログラムの表現に選択の余地がないか、あるいは選択の幅が著しく狭い場合には、作成者の個性の表れる余地もなくなり、著作物性を有しないことになる」といった裁判例があるように(知財高判平18年12月26日判時2019号92頁)、創作性について表現の選択の幅の問題として捉える考え方もあります。
③表現したものであること
著作物と認められるためには、表現したものであることも必要です。
「表現したもの」といえるためには、頭の中にアイデアやイメージがあるだけでは足りず、人の五感で感知し得る程度に具体的なものとなっている必要があります。著作権法が、アイデアや思想・感情自体を保護せず、表現のみを保護することは、「思想・表現二分論」などといわれています。
④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
最後に、著作物と認められるためには、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属することが必要です。厳密にこれら4つのいずれの分野に属するかを特定する必要はなく、広い意味で、文化的所産(人間の文化的活動で生み出された物:一点物の絵画など)にあたればよいと考えられています。
一方で、工業製品などの産業的所産(人間の経済活動で生み出された物:工業製品など)については、特許法や意匠法などが保護していますので、本要件との関係が問題となります。
いわゆる応用美術の著作物性が問題となることが多いです。
純粋美術 | 個別に製作された絵画・版画・彫刻の如く、思想または感情が表現されていて、それ自体の鑑賞を目的とし、実用性を有しないもの |
応用美術 | 実用品に美術あるいは美術上の感覚・技法を応用したもの |
応用美術に関し、例えば、知財高判平26年8月28日判時2238号91頁は、以下のとおり判示し、著作物としての保護を否定しています。
実用目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては,上記2条1項1号に含まれる「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることはできないのであるから,これは同号における著作物として保護されない |
応用美術の論点については、まだ最高裁の判断はなく決着はついていませんが、著作物として認められる場合が限定される可能性があるといえます。
著作物の種類・具体例
著作権法10条1項各号では、以下の種類の著作物が例示されています。
著作物の種類 | 例 | |
---|---|---|
① | 言語の著作物(1号) | 小説、論文、俳句 |
② | 音楽の著作物(2号) | 楽曲、楽曲を伴う歌詞 |
③ | 舞踊・無言劇の著作物(3号) | 日本舞踊、バレエ、無言劇(パントマイム) |
④ | 美術の著作物(4号) | 絵画、彫刻 |
⑤ | 建築の著作物(5号) | ビル、タワー、神社 |
⑥ | 図形の著作物(6号) | 地図、図面 |
⑦ | 映画の著作物(7号) | 劇場用映画、アニメ、ゲーム |
⑧ | 写真の著作物(8号) | 風景写真、肖像写真 |
⑨ | プログラムの著作物(9号) | コンピューター・プログラム |
どの種類の著作物にあたっても、著作権法上の著作物として保護されますが、例えば、以下のように、どの種類の著作物にあたるかにより、保護範囲が異なる場合がありますので、留意が必要です。
・言語の著作物についてのみ口述権が認められる(著作権法24条)
・美術の著作物や未発行の写真の著作物についてのみ展示権が認められる(著作権法25条)
・美術の著作物については、原作品の所有者による展示に関する権利制限(著作権法45条)や、公開の美術の著作物等の利用に関する権利制限(著作権法46条)が規定されている
など
その他の特殊な著作物
以上は、一般的な著作物について見てきましたが、この後は、少し特殊な著作物について見ていきます。
二次的著作物
二次的著作物とは、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」をいいます(著作権法2条1項11号)。
二次的著作物といえるためには、原著作物に創作的な表現が付加されている必要があります。例えば、漫画の映画化、小説の翻訳本、アニメキャラのぬいぐるみは、二次的著作物にあたります。
二次的著作物については、二次的著作物に対する保護はその原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさないとされており(著作権法11条)、また、原著作物の著作者も、二次的著作物の著作者が有するものと同一の権利を専有するとされています(著作権法28条)。
以上のように、二次的著作物は、原著作物を素材とする著作物であることや、著作者以外の者(二次的著作物の原著作物の著作者)も権利を有する点において、少し特殊な著作物といえると考えられます。
編集著作物
編集著作物とは、編集物でその素材の選択または配列に創作性を有するものをいいます(著作権法12条1項)。
編集著作物として認められるためには、その素材自体は著作物であってもなくても問題ありません。例えば、百科事典、新聞紙面の構成、ウェブサイトのデザインは、編集著作物にあたりえます。
なお、編集著作物の素材に著作物が含まれていても、編集著作物としての保護は、素材である個々の著作物には及びません(著作権法12条2項)。このため、編集著作物の素材である個々の著作物が利用されたにすぎない場合は、編集著作物の著作者は著作権侵害を主張できません(利用された個々の著作物の著作者は著作権侵害を主張できます)。
データベースの著作物
データベースの著作物とは、データベースでその情報の選択または体系的な構成に創作性を有するものをいいます(著作権法12条の2第1項)。
データベースの著作物についても、編集著作物と同様、その素材自体は著作物であってもなくても問題ありません。例えば、顧客データベースや、文献データベースは、データベースの著作物にあたりえます。
また、データベースの著作物についても、編集著作物と同様、データベースの著作物としての保護は、素材である個々の著作物には及びません(著作権法12条の2第2項)。このため、データベースの著作物の素材である個々の著作物が利用されたにすぎない場合は、データベースの著作物の著作者は著作権侵害を主張できません(利用された個々の著作物の著作者は著作権侵害を主張できます)。
共同著作物
共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物で、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいいます(著作権法2条1項12号)。
共同著作物として認められるためには、各人の寄与にそれぞれ創作性が認められる必要があり、仮に、多くの人によって創作されているように見えても、創作性が認められる寄与をしているのは1人だけであり、他の人は補助をしているに過ぎないといったような場合には、通常の(単独)著作物となります。
例えば、2人で執筆した小説などは共同著作物に該当します。一方で、2人で執筆していても、例えば、前編は○○さんが執筆し、後編は××さんが執筆したというケースでは、誰がどこを書いたのか明確に分離して利用できるため、共同著作物に該当しません(このような著作物は、統合著作物などと呼ばれます)。
共同著作物については、著作物に係る権利が2人以上で共有されますので、著作物の利用にあたり制限が生じます(著作権法64条、65条)。
2人以上の者が共同して創作することや、著作物の利用にあたり制限が生じることから、少し特殊な著作物と位置付けてもよいかと考えられます。
保護を受ける著作物
以上、さまざまな著作物について見てきましたが、日本の著作権法により保護されるためには、ただ「著作物」にあたるだけでは足りず、以下のいずれかに該当する必要があります(著作権法6条)。
① 日本国民の著作物(1号)
② 最初に日本国内で発行された著作物(2号)
③ 条約により日本が保護の義務を負う著作物(3号)
権利の目的とならない著作物
また、以下に該当するものは、たとえ著作物に該当するものであっても、著作権法により保護されません(著作権法13条)。
① 憲法・法令(1号)
② 国や地方公共団体などが発する告示・訓令・通達など(2号)
③ 裁判所の判決・決定・命令・審判、行政庁の裁決・決定(3号)
④ ①~③の翻訳物や編集物で、国や地方公共団体等が作成するもの(4号)
この記事のまとめ
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