カルテル(企業連合)とは?
談合との違い・種類・問題点・
罰則・処分事例などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

カルテル企業連合)」とは、複数の事業者が競争を避けることを目的として行う、価格・生産計画・販売地域などに関する協定です。カルテルは市場における健全な価格形成を阻害し、商品やサービスの購入者の利益を害するため、独占禁止法によって「不当な取引制限」として禁止されています。

独占禁止法に違反するカルテルを形成した場合、排除措置命令・課徴金納付命令・被害者に対する損害賠償・刑事罰の対象となります。ただし課徴金については、公正取引委員会に対して自主的に報告した企業を対象とする減免制度(リーニエンシー)が設けられています。

この記事ではカルテルについて、基本から分かりやすく解説します。

ヒー

「あのカルテルの事例、社内向けに簡単に説明してもらえない?」と法務依頼がありました。そもそもカルテルって何が問題なのでしたっけ?

ムートン

カルテルは競合する事業者が、秘密裏に価格などに関する協定を結ぶことです。健全な競争が害されると、購入者・消費者がその害を被ることになるため禁止されています。例も挙げて説明しましょう。

※この記事は、2023年7月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 独占禁止法・独禁法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

カルテル(企業連合)とは

カルテル企業連合)」とは、複数の事業者が競争を避けることを目的として行う、価格・生産計画・販売地域などに関する協定です。カルテルは商品やサービスの購入者の利益を害するため、独占禁止法によって「不当な取引制限」として禁止されています。

カルテルの目的と問題点(禁止されている理由)

カルテルの目的は、本来であれば競合関係にある事業者同士が、互いに競争を避けて商品やサービスの価格を高く維持し、不当に多額の利益を得ようとすることにあります。

市場における健全な競争原理が働いていれば、各事業者は企業努力によって、高品質の商品やサービスを手頃な価格で提供しようとするでしょう。購入者は、より高品質で安価な商品やサービスを選択する傾向にあるため、それを提供できない事業者は淘汰されていきます。

カルテルは、こうした健全な競争原理が働かないように、事業者の間で価格生産計画販売地域などをあらかじめ決めてしまいます。そうすれば、事業者はコストをかけて商品やサービスの改良をすることも、他社との間で値下げ競争をすることも不要となるため、多くの利益を得られるという仕組みです。

しかし、カルテルによって事業者が利益を得る一方で、購入者は粗悪な商品やサービスを高値で買わされる不利益を被ります。購入者の犠牲の下で、事業者が不当な利益を得る事態を防ぐため、カルテルは独占禁止法により「不当な取引制限」として禁止されています。

カルテルと談合(入札談合)の違い

カルテルと同じく、独占禁止法により「不当な取引制限」として禁止されている行為が「談合入札談合」です。

カルテルは事業者が販売する商品やサービスを対象としていますが、談合は公共入札を対象としています。
すなわち、談合は、国や地方公共団体などが発注する公共工事や、物品の公共調達に関する入札に当たって、複数の事業者が事前に受注者と受注価格を決めてしまう行為です。

入札談合もカルテルと同様に、事業者間での競争をなくして多くの利益を得ることを目的としています。その一方で、発注者である国や地方公共団体などが不当に不利益を被るため、入札談合はカルテルと同じく「不当な取引制限」として禁止されています。

カルテルとトラスト・コンツェルンの違い

カルテルは異なる事業者同士の合意に基づきますが、事業者間の競争をなくすために行われる、さらに強力な形の企業結合として「トラスト」と「コンツェルン」が挙げられます。

トラスト」とは、同一業種の複数の企業が、合併や持ち株会社の設立などを通じて、資本的に結合することをいいます。「企業合同」と呼ばれることもあります。
カルテルは独立した事業者間で行われるのに対して、トラストは参加する事業者が同一の企業またはグループ会社となってしまうのが大きな特徴です。

コンツェルン」とは、トラストよりもさらに幅広い範囲の企業が、株式保有や役員の派遣などを通じて重層的に結合することをいいます。

カルテルは独占禁止法によって「不当な取引制限」として禁止されていますが、トラストとコンツェルンは一律で禁止されているわけではありません。事業支配力が過度に集中することとなる場合や、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合などに限って禁止されています(独禁法9条以下)。

カルテルの主な種類と具体例

カルテルは「ハードコア・カルテル」と「非ハードコア・カルテル」の2つに大別されます。

ハードコア・カルテル

ハードコア・カルテル」とは、競争の実質的な制限のみを目的としたカルテルです。

ハードコア・カルテルには、主に以下の種類があります。

① 価格カルテル
② 市場分割カルテル
③ 数量制限カルテル
④ 設備制限カルテル
⑤ 技術制限カルテル

価格カルテル

価格カルテル」とは、商品やサービスの販売価格やその上限・下限について合意するカルテルです。事業者間における価格競争をなくし、商品やサービスの価格を高く維持することを目的としています。

(例)
部品Xについて大部分のシェアを占めるA社とB社が、その販売価格を一律1万円とすることを合意した。

市場分割カルテル

市場分割カルテル」とは、商品やサービスの販売地域を複数の事業者が分割して、各自の担当地域において独占状態を発生させるカルテルです。同一地域における事業者間の競争をなくすことを目的としています。

(例)
部品Xについて大部分のシェアを占めるA社とB社が、A社は東日本地域、B社は西日本地域に対してのみ部品Xを供給することを合意した。

数量制限カルテル

数量制限カルテル」とは、複数の事業者が合意に基づき、共同して商品の生産量や販売量を制限するカルテルです。市場への供給量を減少させることで、商品の価格を高く維持することを目的としています。

(例)
部品Xについて大部分のシェアを占めるA社とB社が、1年間における部品Xの製造・供給数量を、両社とも1万個に限定することを合意した。

設備制限カルテル

設備制限カルテル」とは、商品やサービスの供給などに用いる設備の能力を制限するカルテルです。供給量を抑制することで、商品やサービスの価格を高く維持することを目的としています。

(例)
部品Xについて大部分のシェアを占めるA社とB社が、部品Xを製造するための機械の生産能力を、1日当たり300個までに限定することを合意した。

技術制限カルテル

技術制限カルテル」とは、商品の生産などに用いる技術の開発・利用を制限するカルテルです。技術の制限により商品の生産・供給能力を抑制することで、商品やサービスの価格を高く維持することを目的としています。

(例)
部品Xについて大部分のシェアを占めるA社とB社が、部品Xの製造に当たって同一の方法を用いることを合意した。

非ハードコア・カルテル

非ハードコア・カルテル」とは、競争の実質的な制限とそれ以外の目的を併有するカルテルです。

(例)
・複数の事業者が、共同で研究開発を行った商品を販売する
・規格化および標準化を進めるため、商品の仕様について複数の事業者が統一的なルールを形成する
・生産コストを抑えるため、競合他社からOEM供給を受ける
など

非ハードコア・カルテルについては、競争を実質的に制限する効果を有するかどうかにつき、メリットの側面も踏まえた上で総合的な検討により、「不当な取引制限」に当たるかが判断されます。すなわち非ハードコア・カルテルは、独占禁止法違反に当たるものと、そうでないものの両方があり得ます。

カルテルは「不当な取引制限」|独占禁止法違反に当たる

不当な取引制限」に当たるカルテルは、一律禁止とされています(独禁法3条)。

「不当な取引制限」とは、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、以下の①および②の要件を満たす行為をいいます(独禁法2条6項)。

① 事業者が、他の事業者と共同して対価の決定・維持・引き上げ、または数量・技術・製品・設備・取引の相手方の制限など、相互にその事業活動を拘束し、または遂行すること
② ①により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること

不当な取引制限に当たる行為は、「カルテル」と「入札談合」の2つに大別されます(前述)。

カルテルで独占禁止法違反をした場合の罰則(ペナルティ)

独占禁止法違反(=不当な取引制限)に当たるカルテルを形成した場合は、以下のペナルティを受ける可能性があります。

独占禁止法違反の罰則(ペナルティ)

① 排除措置命令
② 課徴金納付命令
※課徴金減免制度(リーニエンシー)あり
③ 被害者に対する損害賠償
④ 刑事罰

排除措置命令

公正取引委員会は、カルテルの当事者である事業者に対して、当該行為の差止めなど、違反行為を排除するために必要な措置を命ずることができます(=排除措置命令。独禁法7条1項)。

排除措置命令の対象事業者および内容は、公正取引委員会のウェブサイト公表されます。

排除措置命令に不服がある場合は、東京地方裁判所に対して取消訴訟を提起することができます(行政事件訴訟法3条1項・8条、独禁法85条1号)。
取消訴訟の出訴期間(=排除措置命令があったことを知った日から6カ月)を経過するか、または取消訴訟の棄却判決が確定すれば、排除措置命令が確定します。

課徴金納付命令

公正取引委員会は、カルテルの当事者である事業者に対して課徴金納付命令を行うことができます(独禁法7条の2)。

カルテルを含む不当な取引制限に対する課徴金額は、原則として以下の式により算定します。

課徴金額=違反行為の実行期間における売上額・購入額等の合算額×10%+違反行為の期間中の経済的利益※

※対象商品・役務を供給しないまたは購入しないことに関して得た金銭(談合金)等

ただし例外的に、違反事業者およびそのグループ会社が全て中小企業の場合は、課徴金算定率が4%となります。

また、

  • 違反行為を10年以内に繰り返した(子会社や合併後の法人などによる違反も対象)
  • 違反行為において主導的な役割をした(企図して依頼するなど)

のいずれかをした場合には、課徴金額が1.5倍になり、両方に当たる場合には、課徴金額が2倍になります(独禁法7条の3)。

課徴金減免制度(リーニエンシー)

独占禁止法では、競争制限行為に関する自主的な報告を促すため、課徴金減免制度リーニエンシー)を設けています。

公正取引委員会に対して、カルテルに参加したことを自主的に申請した事業者は、以下の減免率によって課徴金の減免を受けることができます(独禁法7条の4)。

<調査開始前の申請>
申請順位減免率
1位全額免除
2位20%
※協力度合いに応じて最大40%を加算
3位~5位10%
※協力度合いに応じて最大40%を加算
6位以下5%
※協力度合いに応じて最大40%を加算
<調査開始後の申請>
申請順位減免率
最大3社
※調査開始前の申請と併せて5社まで
10%
※協力度合いに応じて最大20%を加算
それ以下5%
※協力度合いに応じて最大20%を加算
ヒー

調査開始前の1位は全額免除!? 課徴金を払わなくていいってことですか?

ムートン

そのとおりです。2位以下との差も大きく、先駆けて自主的な報告をすることにメリットを設けています。

被害者に対する損害賠償

カルテルによって他社や消費者に損害を与えた事業者は、被害者に対してその損害賠償しなければなりません(独禁法25条1項)。通常の不法行為とは異なり、故意または過失がなくても責任を免れない「無過失責任」とされています(同条2項)。

ただしカルテルにつき、訴訟を通じて損害賠償を請求できるのは、排除措置命令が確定した後に限られます(独禁法26条1項)。また、排除措置命令が確定した日から3年が経過すると、損害賠償請求権が時効消滅します(同条2項)。

刑事罰

不当な取引制限および確定した排除措置命令に従わない行為は、刑事罰の対象とされています。それぞれの法定刑は以下のとおりです。

不当な取引制限5年以下の懲役または500万円以下の罰金(独禁法89条1項1号)
※法人・団体について、両罰規定により5億円以下の罰金(同法95条1項1号・2項1号)
確定した排除措置命令に従わない行為2年以下の懲役または300万円以下の罰金(同法90条3号)
※法人・団体について、両罰規定により300万円以下の罰金(同法95条1項4号・2項4号)

カルテルに対する処分事例

公正取引委員会ウェブサイトでは、カルテルに対して排除措置命令および課徴金納付命令が行われた事例が公表されています。事例の詳細はリンク先をご参照ください。

事例①|中部電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社、中国電力株式会社、九州電力株式会社、九電みらいエナジー株式会社および関西電力株式会社の6社が、不当な取引制限の禁止(独禁法3条)の規定に違反する行為を行っていたもの。

公正取引委員会ウェブサイト「(令和5年3月30日)旧一般電気事業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について」

事例②|リニア中央新幹線に係る地下開削工法による品川駅および名古屋駅新設工事の指名競争見積の参加業者が、不当な取引制限の禁止(独禁法3条)の規定に違反する行為を行っていたもの。

公正取引委員会ウェブサイト「(令和2年12月22日)東海旅客鉄道株式会社が発注するリニア中央新幹線に係る品川駅及び名古屋駅新設工事の指名競争見積の参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について」
ムートン

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