フェアユースとは?
米国における法理や
日本における取り扱いなどを
分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「フェアユース(=fair use)」とは、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用したとしても、公正な利用であれば著作権侵害は成立しないと主張する抗弁(反論)のことです。
米国において19世紀にフェアユースの法理が確立されましたが、日本の著作権法ではフェアユースの法理は採用されていません。
その反面、日本の著作権法では、著作物を無許諾で利用できるケースが具体的に列挙されています。この記事では「フェアユース」について、米国における法理や日本における取り扱いなどを解説します。
※この記事は、2024年8月7日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…著作権法
目次
フェアユースとは
「フェアユース(=fair use)」とは、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用したとしても、公正な利用であれば著作権侵害は成立しないと主張する抗弁(反論)のことです。
米国において19世紀にフェアユースの法理が確立されましたが、日本の著作権法ではフェアユースの法理は採用されていません。
米国におけるフェアユースの法理|4つの要素
米国では、1841年の「Folsom v. Marsh 判決」(マサチューセッツ州連邦巡回裁判所)において、フェアユースの法理が確立されました。
米国におけるフェアユースの法理(米国著作権法107条)では、以下の4要素を判断指針として、著作物の利用が公正なものであるかどうかを判断します。
- フェアユースの法理
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① 利用の目的と性格
著作物の利用に営利性がある場合は、フェアユースを否定する方向に働きます。
反対に、著作物の利用に営利性がない場合は、フェアユースを肯定する方向に働きます。② 著作権のある著作物の性質
事実を伝えるだけの著作物(例:学術論文)や、単純な機能を果たすだけの著作物(地図)である場合は、フェアユースを肯定する方向に働きます。
反対に、芸術性を多分に帯びた著作物である場合は、フェアユースを否定する方向に働きます。③ 著作物全体との関係における利用された部分の量および重要性
利用部分が少ない場合や、利用部分が著作物の核心的内容に触れていない場合は、フェアユースを肯定する方向に働きます。
反対に、利用部分が全体に対してかなりの割合を占める場合や、利用部分が著作物の核心的内容に触れている場合は、フェアユースを否定する方向に働きます。④ 著作物の潜在的利用または価値に対する利用の及ぼす影響
複製物の利用が著作物の市場(潜在的市場を含む)に悪影響を及ぼす場合は、フェアユースを否定する方向に働きます。
日本の著作権法には、フェアユースに相当する規定はない
日本の著作権法では、米国におけるフェアユースの法理に相当する包括的な規定は設けられていません。その反面、著作物を無許諾で利用できるケースが具体的に列挙されています。
どのようなケースにおいて著作物を無許諾で利用できるのかについては、後述します。
日本において、著作物を無許諾で利用できる主なケース
日本の著作権法に基づき、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できるケースとしては、以下の例が挙げられます。
- 著作物を無許諾で利用できるケースの例
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① 私的使用目的の複製
② 図書館等における複製・記録・提供
③ 引用
④ 教育目的の掲載・複製・公衆送信
⑤ 時事問題・時事的な事件に関する論評・報道
⑥ 政治上の演説等の利用
⑦ その他
私的使用目的の複製
個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において著作物を複製する場合は、原則として著作権者の許諾を得る必要がありません(法30条1項)。
ただし、「家庭内その他これに準ずる限られた範囲」は狭く限定されています。
例えば会社の同僚間での共有や、友達同士での共有などの目的で著作物を複製する場合は、著作権者の許諾が必要です。
また、以下のいずれかに該当する場合には、私的使用目的の複製であっても著作権者の許諾を得る必要があります。
・公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合
・コピーガードの回避等を自ら行った上で、またはすでに行われたことを知りながら複製する場合
・インターネット上にアップロードされた海賊版コンテンツを、著作権を侵害するものであると知りながら複製する場合
など
図書館等における複製・記録・提供
図書館などの施設においては、以下のいずれかに該当する場合には営利を目的としない事業として、著作権者の許諾を得ることなく著作物を複製することができます(法31条)。
・利用者の求めに応じて、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分の複製物を一人につき一部提供する場合
※全部の複製が認められるものもある
※一定の要件を満たす特定図書館等では、著作物の公衆送信も可能
・図書館資料の保存のため必要がある場合
・他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合
引用
著作物は、以下の要件を満たす方法による場合に限り、著作権者の許諾を得ることなく引用して利用することができます(法32条)。
- 引用する著作物が公表されていること
- 引用の必要性が認められること
- 引用部分とそれ以外の部分が明瞭に区別されていること
- 本文と引用部分が主従の関係にあること
- 引用する著作物を改変しないこと
- 出典を明記すること
教育目的の掲載・複製・公衆送信
以下の教育に関する目的による場合は、一定の要件を満たすことを条件に、著作権者の許諾を得ることなく著作物を利用できます。
- 教科用図書等への掲載等(法33条~33条の3)
- 学校教育番組の放送・教材掲載(法34条)
- 学校などの教育機関における複製・公衆送信(法35条)
- 試験問題としての複製・公衆送信(法36条)
時事問題・時事的な事件に関する論評・報道
新聞紙または雑誌に掲載して発行された政治上・経済上・社会上の時事問題に関する論説については、著作権者の許諾を得ることなく転載や放送などが認められています(法39条)。
また、時事的な事件の報道を目的とする場合は、報道の目的上正当な範囲内において、その事件に関する著作物を著作権者の許諾を得ることなく利用できます(法41条)。
公開の演説等の利用
公開して行われた政治上の演説などは、「演説集」のような形で同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、著作権者の許諾を得ることなく利用できます(法40条1項)。
また、国や地方公共団体の機関などにおいて行われた公開の演説・陳述は、報道の目的上正当と認められる場合には、著作権者の許諾を得ることなく、雑誌への掲載や放送などが認められます(同条2項)。
その他
上記のほか、以下の場合には、一定の要件を満たせば、著作権者の許諾を得ることなく著作物を利用できます。
- 付随対象著作物(「写り込み」部分など)の利用(法30条の2)
- 検討の過程における利用(法30条の3)
- 著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用(法30条の4)
- 視覚障害者・聴覚障害者等のための複製等(法37条・37条の2)
- 営利を目的としない上演等(法38条)
- 裁判手続等における複製(法41条の2第1項)
- 立法・行政・司法の目的のための内部資料としての複製(法42条)
- 審査等の手続における複製(法42条の2第1項)
- 行政機関情報公開法等による開示のための利用(法42条の3)
- 公文書管理法等による保存等のための利用(法42条の4)
- 国立国会図書館法に基づく複製(法43条)
- 放送事業者等による一時固定(法44条)
- 美術の著作物等の原作品の所有者による展示(法45条)
- 公開の美術の著作物等の利用(法46条)
- 美術の著作物等の展示に伴う複製等(法47条)
- 美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(法47条の2)
- プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(法47条の3)
- 電子計算機における著作物の利用に付随する利用等(法47条の4)
- 電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(法47条の5)
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