商標の区分とは?
区分が違えば登録可能?
商品とサービスの区分45種類も
一覧で分かりやすく解説!
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※この記事は、2024年10月18日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
商標の区分とは
商標を出願する際は、商標を使用する商品・サービス(「指定商品」、「指定役務」といいます)の「区分」も決めなければなりません。
商標登録の基本
商標登録をする際は、ロゴやネーミングといった商標だけでなく、「〇〇という商品に〇〇という商標を使用します」といったかたちで、その商標をどのような商品・サービスに使うかも指定します(商標法6条1項)。
商標権は、商標と、その商標を使用する商品・サービスとの組み合わせで構成され、指定した商品・サービスが商標の権利範囲を定めるものになります。したがって、商標を使用する商品・サービスは、その内容および範囲が明確に把握できるように記載されている必要があります。商品・サービスを指定する際に用いられるのが「区分」です。
区分とは
区分とは、商品・サービスを一定の基準によってカテゴリー分けしたものです。
「類」と呼ぶこともあり、「区分」と「類」は同じものを指します。区分は、第1類から第45類に分けられており、第1類から第34類までが商品のカテゴリー、第35類から第45類までがサービスのカテゴリーです。
区分は、商標登録出願において、商品・サービスを指定する単位であり、出願その他の手続き上または事務上の便宜のために定められたものです。商品・サービスの指定は、政令で定める商品・サービスの区分に従って行わなければなりません(商標法6条2項、商標法施行令別表)。
ただし、商品・サービスの区分は、商品・サービスの類似の範囲を決めるものではありません(商標法6条3項)。商品・サービスの類似範囲と区分とは無関係であり、同じ区分の商品・サービスであっても非類似とされるものもあれば、別の区分の商品・サービスであっても類似とされるものもあります。
区分が違えば登録は可能か
他人の登録商標と同じまたは似た商標(同一または類似する商標)を登録しようとした場合、指定した商品・サービスが、その他人の登録商標の指定商品等と類似するときは、原則として登録は認められません。
ただし、商品・サービスの区分と、商品・サービスの類似範囲とは無関係です。商品・サービスの類似範囲を決めるのは、あくまでも商品・サービスの内容です。つまり、指定した商品・サービスが、その他人の登録商標の指定商品等と異なる区分であっても、必ず非類似とされるわけではなく、実体的な審査により類似の商品・サービスであるとして登録が認められない可能性もある点に注意が必要です。
区分や記載方法を調べる
区分を調べる
指定する商品やサービスがどの区分に含まれているかを調べたい場合、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)商品・役務名検索」で検索する方法があります。
検索キーワードの「商品・役務名」欄に、指定する商品やサービスの名称を入力し、「検索」を実行すると、入力したキーワードを含む商品・サービス名、および区分が一覧表示されます。
また、「類似商品・役務審査基準」から、区分、指定商品・指定役務を参照することもできます。
記載方法を調べる
特許庁に提出する書類(「商標登録願」、一般的には「願書」といいます)の書き方や様式は、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)「商標登録出願書類の書き方ガイド 書面による出願手続について」で詳細に説明されています。
- 記載の一例
-
✅被服を製造販売しているお店の場合
【第25類】
【指定商品(指定役務)】被服✅工務店の場合
【第37類】
【指定商品(指定役務)】建築一式工事,建築工事に関する助言✅居酒屋の場合
【第43類】
【指定商品(指定役務)】飲食物の提供✅警備会社の場合
【第45類】
【指定商品(指定役務)】施設の警備,身辺の警備※指定商品(指定役務)を列記するときは全角コンマ(,)で区切る。
なお、指定する商品・サービスならびに商品・サービスの区分は、複数指定することができます。出願時に特許庁に支払う手数料(出願料)は、指定した区分数によって異なります。
区分および商品・サービスを指定する際の留意点
商品・サービスの中には、似たようなものであっても材質や用途などによって区分が分かれる場合があります。また、区分が分かれることによって、その商品やサービスの概念に含まれる商品・役務の内容が異なる場合があります。
区分やその区分内で指定する商品・サービスの内容を間違ってしまうと、意図しない権利となりかねません。出願の際は、使用する商品・サービスの材質や用途などをよく確認してから、区分および商品・サービスを指定しましょう。
- 材質によって区分が複数に分かれる例
-
✅「菓子」に関連する商品について
・第29類 菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)
例:「甘栗」や「焼きりんご」等の商品
・第30類 菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)
例:「キャンデー」や「ビスケット」等の商品
- 用途によって区分が複数に分かれる例
-
✅商品「除菌剤」について
・「第1類 工業用除菌剤」、「第3類 洗濯用除菌剤」、「第5類 除菌剤(工業用のもの及び洗濯用のものを除く。)」 (工業用、洗濯用、これら以外、で区分が分かれる。)✅サービス「食品の展示会の企画・運営または開催」について
・「第35類 食品の販売促進のための展示会の企画・運営又は開催」、「第41類 教育・文化のための食品の展示会の企画・運営又は開催」 (販売促進のためのものと、教育・文化のためのもので区分が分かれる。)
商品・サービスの区分(全45類)一覧表
以下では、実際に区分を調べる際に参照すべき区分の分類について、一覧を示します。詳細は「類似商品・役務審査基準」に記載されています。
商品の区分(第1類~第34類)
区分 | 主に含まれるもの |
---|---|
第1類 | 工業用、科学用、農業用の化学品、商品の製造に用いられる化学品 |
第2類 | 塗料、着色料、腐蝕防止剤、染料 |
第3類 | 洗浄剤、化粧品、せっけん類、歯磨き(医療用のものを除く) |
第4類 | 工業用油、油脂、燃料、ろうそく |
第5類 | 薬剤、サプリメント、乳児用食品 |
第6類 | 卑金属、卑金属製品、未加工の金属、半加工の金属 |
第7類 | 加工機械、原動機、原動機の部品 |
第8類 | 手動工具(掘削、形削り、切削、穴あけのような作業を行うためのもの) |
第9類 | 情報処理用、電気制御用の機械器具 |
第10類 | 医療用機械器具、医療用品 |
第11類 | 照明用、調理用、冷却用などの器具 |
第12類 | 乗物、その他の移動用の装置 |
第13類 | 火器、火工品 |
第14類 | 貴金属、宝飾品、時計 |
第15類 | 楽器、それらの部品、付属品 |
第16類 | 紙、紙製品、事務用品 |
第17類 | 電気絶縁用の材料、材料用のプラスチック |
第18類 | 革、旅行用品、馬具 |
第19類 | 金属製でない建築材料 |
第20類 | 家具、プラスチック製品 |
第21類 | 家庭用器具、台所用器具、化粧用具、ガラス製品 |
第22類 | ロープ製品、織物用の原材料繊維 |
第23類 | 自然材料製または合成の織物用の糸 |
第24類 | 織物、家庭用の織物製カバー |
第25類 | 被服、履物、帽子 |
第26類 | 裁縫用品、髪の装飾品 |
第27類 | 床敷物、織物製でない壁掛け |
第28類 | おもちゃ、ゲーム機、運動用具、ビデオゲーム機 |
第29類 | 動物性の食品、加工食品 |
第30類 | 植物性の食品(果実および野菜を除く)、調味料 |
第31類 | 加工していない陸産物、生きている動植物 |
第32類 | アルコールを含有しない飲料、ビール |
第33類 | ビールを除くアルコール飲料 |
第34類 | たばこ、喫煙用具、マッチ |
サービスの区分(第35類~第45類)
区分 | 主に含まれるもの |
---|---|
第35類 | 広告、事業の管理、小売、卸売 |
第36類 | 金融、保険、不動産の取引 |
第37類 | 建設、設置工事、修理 |
第38類 | 電気通信(人と通信可能にするサービス、放送およびデータ伝送のためのサービス) |
第39類 | 輸送、物品の梱包、保管、旅行の手配 |
第40類 | 物品の加工、処理 |
第41類 | 教育、訓練、娯楽、スポーツ、文化活動 |
第42類 | コンピュータ、ソフトウェアの設計、開発 |
第43類 | 飲食物の提供、宿泊施設の提供 |
第44類 | 医療、美容、農業のサービス |
第45類 | 冠婚葬祭、警備、法律事務 |
願書に記載する商品・サービスの具体例
願書に記載する商品・サービスの表示が不明確であったり、政令で定める商品・サービスの区分に従ったものでないときは、商標登録を受けることができません(商標法6条1項・2項)。
ここでは願書に記載する商品・サービスの具体例について紹介します(参考元:特許庁「指定商品・指定役務を記載する際のよくある間違い及び商品・役務名のQ&A」)。
✅インターネットで使用する商標の場合
インターネットを利用して「何を」行うかによってどの区分(類)を指定するか異なります。
例:第9類「インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル」
第35類「インターネットによる広告」
第38類「インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信」
第41類「インターネットを利用して行う音楽の提供」
第42類「インターネットを介したクレジットカードの不正利用検出のための電子的な監視」
第45類「インターネットドメイン名の登録に関する法律業務」
✅ウェブサイトのタイトルに使用する商標の場合
ウェブサイトを利用して「何を」行うかによってどの区分(類)を指定するか異なります。
・ウェブサイトが自社商品のみを販売するケース
例:第3類「化粧品」など
・小売店が仕入れで取り揃えた商品の販売に伴うサービスをウェブサイトで行うケース
例:第35類「インターネットウェブサイトを介して行う家具の小売または卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」など
・特定のサービスに関する情報を提供するケース
例:第35類「インターネットウェブサイトによる企業経営に関する情報の提供」
第39類「インターネットウェブサイトによる旅行の予約に関する情報の提供」など
✅「コンテンツ」を提供するサービスに使用する商標の場合
「コンテンツ」には、「放送やインターネットで提供されるテキスト・音声・動画などの情報の内容」等の意味が含まれます。このため、「コンテンツ」の内容を明確にしてサービスを指定する必要があります。
例:第41類「電子出版物の提供」
第41類「インターネットを利用して行う映像の提供」
第41類「インターネットを利用して行う音楽の提供」
第41類「放送番組の配給」
第38類「電気通信によるデジタル音楽の通信」
✅「情報の提供」に関するサービスに使用する商標の場合
原則として、提供する情報の内容に対応するサービスと同じ区分(類)において採用されます。
例:第35類「ウェブサイト経由による事業に関する情報の提供」
第36類「保険情報の提供」
第37類「建設工事に関する情報の提供」
第44類「医療情報の提供」
✅「施設の提供」に関するサービスに使用する商標の場合
国際分類上、施設の性質・用途によって異なる区分(類)になります。
例:第41類「運動施設の提供」
第41類「娯楽施設の提供」
第43類「高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)」
第44類「入浴施設の提供」
第45類「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」
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参考文献
特許庁 類似商品・役務審査基準[国際分類第12-2024版対応]
特許庁 商品及び役務の区分解説[国際分類第12-2024版対応]
特許庁 指定商品・指定役務を記載する際のよくある間違い及び商品・役務名のQ&A
独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)「商標登録出願書類の書き方ガイド 書面による出願手続について