【2026年10月施行】
社会保険「106万円の壁」撤廃のポイント
|社会保険の加入要件と
企業・人事が準備すべきこと

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汐留社会保険労務士法人社会保険労務士
企業の労働保険・社会保険各種手続きや給与計算代行をするほか、えるぼし・くるみん認定取得の支援など女性活躍推進にも注力している。 また、社内YouTubeやX(旧Twitter)を通じて法改正情報や試験対策をわかりやすく発信し、社労士をより身近に感じていただけるよう活動している。
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この記事のまとめ

2026年10月から、年金制度改正に伴う社会保険適用拡大により、短時間労働者の加入基準が見直され、「106万円の壁(月額8.8万円の賃金要件)」が撤廃されます。

改正の柱は、次の3つです。
①「月額8.8万円以上」の賃金要件撤廃と、「週20時間以上」を軸とした加入基準への集約
②被保険者数に応じた企業規模要件の段階的縮小(2035年10月に全事業所へ適用拡大)
③手取り減や就業調整を緩和するための「保険料調整制度(特例措置)」の創設

企業は施行に向けて、対象となる短時間労働者の洗い出しや人件費シミュレーションを行うとともに、労働条件通知書や就業規則の見直しを進めておくことが大切です。必要に応じて、対象従業員への丁寧な説明・周知の場を設け、手取り額や将来の保障変化に関する個別相談体制も整理しておきましょう。

今回の改正を単なるコスト増加や法令対応で終わらせるのではなく、短時間労働者が壁を意識せずに能力を発揮できる働き方の見直し機会として活用することで、従業員の納得感や働きやすさを高め、人材の確保・定着にもつなげていきましょう。

ヒー

2026年10月から「106万円の壁」がなくなると聞きました。社会保険の加入要件はどう変わるのでしょうか?

ムートン

「月額8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されます。週20時間以上などの加入要件と、企業が準備すべき対応を確認しましょう。

※この記事は、2026年10月8日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

目次

2026年10月から短時間労働者の社会保険の加入要件はどう変わる?

2026年10月の年金制度改正により、短時間で働く方の社会保険の加入基準が、これまでの『賃金(年収)』から『働く時間』を中心としたルールへ大きく変わります。
2026年10月以降は、「月額8.8万円以上(年収約106万円以上)」かどうかは加入判定に用いず、以下の基準で判断します。

①週20時間以上かどうか
②2か月超の雇用見込み
③学生かどうか
④企業規模要件

これまで『106万円の壁』として扱われていた給料の条件がなくなりますので、企業としても新たな加入要件を正しく把握しておきましょう。

「月額8.8万円以上」の賃金要件が撤廃へ|新たに加入対象となる人は?

社会保険の加入判定に用いられてきた「所定内賃金が月額8.8万円以上(年換算約106万円)」という賃金要件は、2026年10月に撤廃されます。これにより、原則として月額賃金にかかわらず、その他の加入要件を満たす短時間労働者が加入対象となります。

これまでは、短時間労働者の基本給や固定手当などの所定内賃金が月額8.8万円以上であることが必要で、残業代などは含めずに判定していました。そのため、時給や手当の内容によって加入の有無が分かれ、年収106万円を意識して働く時間を調整するケースも見られました。

改正後はこの金額基準がなくなり、労働時間などの要件を満たす方が加入対象となります。人事担当者は、これまで「月額8.8万円未満のため対象外」としていた従業員についても、改めて加入要件を確認しましょう。
※最低賃金の減額特例の許可を受けている一部の方については、賃金が月額8.8万円未満の場合の特例的な取扱いがあります。

「週20時間以上」など、引き続き確認が必要な加入要件

賃金要件が撤廃されても、すべてのパート・アルバイトが社会保険に加入するわけではありません。短時間労働者については、主に次の要件を確認します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 2カ月を超えて雇用される見込みがあること
  • 学生でないこと(※定時制・通信制・夜間学級の学生等は対象)
  • 特定適用事業所(企業規模要件を満たす企業)に勤めていること

契約上「週20時間以上」であれば、実際の月額賃金がいくらであっても加入義務が生じます。
なお、通常の労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が4分の3以上である場合は、この短時間労働者の要件とは別に加入を判断します。

企業規模要件は段階的に縮小、2035年10月に撤廃

2026年10月の改正では、賃金要件が撤廃される一方、企業規模要件は変更されていません。企業規模要件は、今後、次のスケジュールのとおり段階的に縮小・撤廃されます。

企業規模要件の縮小・撤廃

・2026年9月まで: 従業員数 51人以上
・2026年10月: 「月額8.8万円」の賃金要件撤廃(51人以上企業に適用)
・2027年10月: 従業員数 36人以上 へ拡大
・2029年10月: 従業員数 21人以上 へ拡大(常時5人以上の個人事業所全業種も対象)
・2032年10月: 従業員数 11人以上 へ拡大
・2035年10月: 企業規模要件の完全撤廃(全事業所へ適用)

ここでいう人数は、単純な在籍人数ではありません。基本的には、厚生年金保険の被保険者数で判断します。
現在は50人以下の企業であっても、数年内には確実に適用対象となります。自社の被保険者数を把握し、該当時期をシミュレーションしておくことが重要です。

「106万円の壁」と「130万円の壁」の違い・注意点

実務において従業員から寄せられる相談で最も混同されやすいのが、「106万円の壁」と「130万円の壁」の構造的な違いです。

106万円の壁とは

短時間労働者が勤務先の社会保険に加入するための賃金要件(月額8.8万円以上)を、年収に換算した呼び方でした。今回、その賃金要件が撤廃されました。

130万円の壁とは

家族の健康保険の被扶養者として認定される際の収入基準です。原則として年間収入130万円未満であることが必要で、60歳以上の方や一定の障害がある方は180万円未満、19歳以上23歳未満の方は、被保険者の配偶者を除き150万円未満となります。収入以外にも、生計維持などの要件があります。

ヒー

手取りに影響がある「130万円の壁」はまだあるんですね。

ムートン

「賃金要件がなくなったので、扶養のまま収入を増やせる」と誤解されないよう、両者を分けて説明することが大切です。

社会保険の適用拡大で企業と従業員にどのような影響がある?

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