地方税法とは?
地方税の種類・納付の時期と方法・
納付しなかった場合のペナルティなどを
分かりやすく解説!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 契約書関連印紙税額一覧表 |
- この記事のまとめ
-
「地方税法」とは、都道府県および市町村が賦課する税金について定めた法律です。
・住民税(道府県民税・市町村民税)
・事業税
・地方消費税
・不動産取得税
・自動車税
・軽自動車税
・固定資産税
・都市計画税
など、多岐にわたる税目が定められています。地方税の納付を怠ると、本税とは別に延滞金・過少申告加算金・不申告加算金・重加算金が発生するほか、滞納処分によって強制的に徴収が行われます。納付義務がある地方税を確認して、漏れなく申告・納付を行いましょう。
この記事では地方税法について、地方税の種類・納付の時期と方法・納付しなかった場合のペナルティなどを解説します。
※この記事は、2023年7月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…地方税法
目次
地方税法とは
「地方税法」とは、都道府県および市町村が賦課する税金について定めた法律です。
地方自治の原則に基づき、各都道府県および市町村の財源は、主に各自治体が徴収する税金によって賄われています。
担税力(=税金を負担する能力)に応じて公平に税を課すため、地方税法では、
- 住民税(道府県民税・市町村民税)
- 事業税
- 地方消費税
- 不動産取得税
- 自動車税
- 軽自動車税
- 固定資産税
- 都市計画税
など、多岐にわたる税目が定められています。
国税と地方税
日本において課される税金は、課税を行う主体に着目して「国税」と「地方税」の2つに大別されます。
総務省ウェブサイト「地方税の仕組み」
国税は、国が賦課・徴収する税金です。所得税・法人税・消費税が代表的で、それ以外にも相続税・贈与税・登録免許税・印紙税・たばこ税などが国税に当たります。
国税に関するルールは、所得税法・法人税法・消費税法など個別の法律で定められているほか、国税通則法や国税徴収法によって共通するルールが定められています。
地方税は、地方公共団体(都道府県・市町村)が賦課・徴収する税金です。住民税・事業税・固定資産税などが地方税に当たります。
地方税に関するルールは、地方税法にまとめて定められています。
地方税に関する5つの原則
地方税の賦課・徴収に関するルールは、以下の5つの原則を基に定められています。
① 応益性の原則
住民は地方公共団体の行政サービスによって利益を受けるため、その利益に応じた税を負担すべきとする考え方です。
② 安定性の原則
行政サービスへの需要や経費はコンスタントに発生するため、景気変動に左右されず、地方公共団体が安定して税収を確保できるようにするという考え方です。
③ 普遍性の原則
地方公共団体が一定水準以上の行政サービスを提供できるように、特定の地域に税収が偏ることなく、どの地方公共団体も普遍的に税収を得られるようにするという考え方です。
④ 負担分任の原則
地方税は、住民が共同体運営に必要な負担を分かち合う「地域の会費」的な性格を持つという考え方です。
⑤ 自主性の原則
地方自治の理念を反映し、地方公共団体が自らの判断と責任において課税権を行使すべきという考え方です。
地方税の種類
地方税法において、地方税は以下の3種類に分類されています。
① 道府県の普通税
② 市町村の普通税
③ 目的税
道府県の普通税
「普通税」とは、使途を特定せず一般経費に充てるために課される税金です。道府県と市町村は、いずれも普通税を課すことができます(東京都と特別区については後述)。
道府県が課す普通税には、以下の種類があります。
① 道府県民税(法23条以下)
住民、および道府県内に所在する法人に対して課されます。一般に、市町村民税と併せて「住民税」と呼ばれています。
② 事業税(法72条以下)
特定の事業を営む住民、および(事業の種類を問わず)道府県内に所在する法人に対して課されます。
③ 地方消費税(法72条の77以下)
課税事業者である住民、および道府県内に所在する課税事業者である法人に対して課されます。国税である消費税と併せて、「消費税」と総称されるケースが多いです。
④ 不動産取得税(法73条以下)
道府県内に所在する不動産を取得した者に対して課されます。
⑤ 道府県たばこ税(法74条以下)
道府県内で製造たばこを販売する事業者に対して課されます。市町村たばこ税と併せて、たばこの価格に上乗せされているのが通常です。
⑥ ゴルフ場利用税(法75条以下)
道府県内に所在するゴルフ場の利用者に対して課されます。
⑦ 軽油引取税(法144条以下)
軽油の納入が行われる道府県において、軽油の引き取りを行う事業者に対して課されます。
⑧ 自動車税(法145条以下)
自動車の主たる定置場が所在する道府県において、自動車の所有者に対して課されます。
⑨ 鉱区税(法178条以下)
鉱区が所在する道府県において、鉱業権者に対して課されます。
⑩ 道府県法定外普通税(法259条以下)
道府県は、あらかじめ総務大臣に協議して同意を得ることにより、地方税法に定められるもの以外の普通税を課すことができます。
市町村の普通税
市町村が課す普通税には、以下の種類があります。
① 市町村民税(法292条以下)
住民、および市町村内に所在する法人に対して課されます。一般に、道府県民税と併せて「住民税」と呼ばれています。
② 固定資産税(法341条以下)
固定資産(土地・家屋・償却資産)が所在する市町村において、所有者として登記または登録がされている者に対して課されます。
③ 軽自動車税(法442条以下)
原動機付自転車・軽自動車・小型特殊自動車・二輪の小型自動車の主たる定置場が所在する市町村において、所有者に対して課されます。
④ 市町村たばこ税(法464条以下)
市町村内で製造たばこを販売する事業者に対して課されます。道府県たばこ税と併せて、たばこの価格に上乗せされているのが通常です。
⑤ 鉱産税(法519条以下)
鉱物の掘採の事業につき、当該事業の作業場が所在する市町村において、鉱業者に対して課されます。
⑥ 特別土地保有税(法585条以下)
土地の投機的取引を抑制するため、一定規模以上の土地につき、その土地が所在する市町村において、所有者または取得者に対して課されます。ただし、2003年度分以降の特別土地保有税については、新たな課税が停止されています。
⑦ 市町村法定外普通税(法669条以下)
市町村は、あらかじめ総務大臣に協議して同意を得ることにより、地方税法に定められるもの以外の普通税を課すことができます。
目的税
普通税とは異なり、特定の目的のために課される税を「目的税」といいます。道府県と市町村は、いずれも目的税を課すことができます(東京都と特別区については後述)。
目的税には、以下の種類があります。
① 狩猟税(法700条の51以下)
鳥獣の保護および狩猟に関する行政の実施に要する費用に充てるため、道府県が課す目的税です。道府県知事の狩猟者の登録を受ける者に対して課されます。
② 入湯税(法701条以下)
環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設、消防活動に必要な施設の整備や観光の振興に要する費用に充てるため、市町村が課す目的税です。鉱泉浴場における入湯客に対して課されます。
③ 事業所税(法701条の30以下)
都市環境の整備・改善に関する事業に要する費用に充てるため、人口30万人以上の市などが課す目的税です。該当する市内に所在する、一定規模以上の事務所・事業所などに対して課されます。
④ 都市計画税(法702条以下)
都市計画事業・土地区画整理事業に要する費用に充てるため、市町村が課す目的税です。都市計画域の市街化区域内に所在する土地・家屋につき、その所有者に対して課されます。
⑤ 水利地益税(法703条など)
水利事業・都市計画法に基づく事業・林道事業などの実施に要する費用に充てるため、道府県または市町村が課す目的税です。該当地域内における土地・家屋の所有者に対して課される場合があります。
⑥ 共同施設税(法703条の2)
共同作業場・共同倉庫・共同集荷場・汚物処理施設などに要する費用に充てるため、市町村が課す目的税です。該当施設の利用者に対して課される場合があります。
⑦ 宅地開発税(法703条の3)
宅地開発の整備に要する費用に充てるため、市町村が課す目的税です。都市計画域の市街化区域内で宅地開発を行う事業者に対して課される場合があります。
⑧ 国民健康保険税(法703条の4など)
国民健康保険に関する特別会計において負担する費用に充てるため、市町村が課す目的税です。国民健康保険の被保険者である世帯主に対して課される場合があります。
⑨ 法定外目的税(法731条以下)
道府県または市町村は、あらかじめ総務大臣に協議して同意を得ることにより、条例で定める特定の費用に充てるため、地方税法に定められるもの以外の目的税を課すことができます。
東京都・特別区における地方税の特例
地方税法において、道府県に関する規定は都に、市町村に関する規定は特別区(=東京23区)に準用されるのが原則です(法1条2項)。したがって原則的には、道府県が課す税は都が、市町村が課す税は特別区が課すことになります。
ただし東京23区では、以下の税は特別区ではなく、都が課すものとされています(法734条・735条)。
- 法人の市町村民税
- 固定資産税
- 特別土地保有税(2003年度分以降は課税停止)
- 法定外普通税
- 事業所税
- 都市計画税
- 法定外目的税
また、東京都では道府県民税が「都民税」と呼称されており、東京23区では市町村民税も都民税に包含されます。
主な地方税の納付時期・納付方法
主な地方税の納付時期および納付方法は、以下のとおりです。
地方税の種類 | 納付時期 | 納付方法 |
---|---|---|
道府県民税・市町村民税(住民税) | 個人:賃金から毎月特別徴収、または6月・8月・10月・1月の年4回 法人:事業年度終了日の翌日から2カ月以内(中間申告あり) | 個人:賃金からの特別徴収、または自治体から届く納付書に従って支払う 法人:中間申告・確定申告により納付する |
事業税 | 個人:8月・11月の年2回 法人:事業年度終了日の翌日から2カ月以内(中間申告あり) | 個人:自治体から届く納付書に従って支払う 法人:中間申告・確定申告により納付する |
地方消費税 | 個人:3月31日(中間申告あり) 法人:事業年度終了日の翌日から2カ月以内(中間申告あり) | 中間申告・確定申告により納付する |
不動産取得税 | 所有権の取得から半年~1年後(自治体によって異なる) | 自治体から届く納付書に従って支払う |
自動車税・軽自動車税 | 5月31日 | 自治体から届く納付書に従って支払う |
固定資産税・都市計画税 | 5月・7月・12月・2月の年4回 | 自治体から届く納付書に従って支払う |
事業所税 | 個人:3月15日 法人:事業年度終了日から2カ月以内 | 確定申告により納付する |
国民健康保険税 | 年8回~10回程度の分割納付(自治体によって異なる) | 自治体から届く納付書に従って支払う |
地方税の納付を怠った場合のペナルティ
地方税の納付を怠ると、以下のペナルティを受けることになってしまいます。
①延滞金・過少申告加算金・不申告加算金・重加算金が発生する
②滞納処分が行われる
延滞金・過少申告加算金・不申告加算金・重加算金が発生する
納期限までに地方税を納付しないと、以下のペナルティによって、より多くの税金を納めなければならなくなってしまいます。
① 延滞金
納期限までに税金を納めない場合に、本税に対して一定の割合で課されます。2022年1月1日から2023年12月31日までの期間については、納期限の翌日から1カ月が経過するまでは年2.4%、それ以降は年8.7%です。
② 過少申告加算金
期限内申告について、修正申告や更正処分により税額が増えた場合に課されます。増えた税額のうち、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額までの部分についてはその10%、超過部分については15%です。
ただし正当な理由がある場合や、更正を予知せずに修正申告がなされた場合は、過少申告加算税が課されません。
③ 不申告加算金
期限後申告・決定があった場合や、期限後申告・決定について修正申告または更正処分がなされた場合に課されます。増えた税額のうち、50万円までの部分についてはその15%、超過部分については20%です。
ただし正当な理由がある場合や、期限後1カ月以内にされた一定の条件を満たす期限後申告については、不申告加算金が適用されません。また、更正・決定を予知せずに修正申告・期限後申告がなされた場合は、不申告加算金が5%に軽減されます。
④ 重加算金
税の申告について仮装・隠蔽があった場合に課されます。期限内に申告している場合は増えた税額の35%、申告しなかった場合または期限後申告の場合は増えた税額の40%です。
ただし、過去5年以内に不申告加算金または重加算金を課されたことがあるときは、重加算金が10%加算されます。
滞納処分が行われる
地方税や延滞金を納付しないと、督促状の送付や納付の催告が行われます。督促状や催告を無視していると、最終的には滞納処分が行われ、財産や給与債権が差し押さえられることになってしまいます。
地方税には猶予制度が設けられているので、納付が困難な場合には、滞納処分を受ける前に自治体へご相談ください。
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 契約書関連印紙税額一覧表 |