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知財部とは? 業務内容・必要なスキル などを分かりやすく解説!

西田聡子弁理士

西田聡子弁理士

(公開:2022/09/22)

この記事を書いた人

松田誠司 弁護士 (1).jpg

弁理士・博士(工学) 西田聡子

インハウスハブ東京法律事務所

大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了
2007~17年 特許庁審査第四部にて、情報処理(情報セキュリティ)、インターフェース分野の特許審査に従事。2017年弁理士登録。特許事務所勤務を経て2020年4月より現職。2019~22年 特許庁審判部における法律相談などの業務を弁護士とともに携わる。専門分野は、ソフトウェア、ビジネスモデル、セキュリティ、AI、UIなど。

この記事のまとめ

社会全体の知財意識の高まりから、知的財産に関する業務を行う知財部の重要性が増しています。

この記事では、知財部がどのような業務を行っているか、知財担当者に期待される役割などを解説します。

知財部とは何をするところか

企業の「知財部」とは、一言でいえば、知的財産権の管理業務を担当する部署のことです。

知的財産とは

「知的財産」とは、財産的な価値がある情報であって、有形的な存在ではない無体物(形をもたないもの)です。たとえば、発明やデザイン(意匠)などが該当します。


※より詳細に知りたい方は、「知的財産法とは? 知的財産を保護する目的や種類などを分かりやすく解説!」の記事を参照ください。

また、知的財産権の管理業務の中でも、メインの仕事は、特許の権利化(出願から登録まで)に関わる業務、という場合が多いでしょう。もちろん、企業の規模によっては、契約や紛争対応の業務もあります。

知財担当者に期待される役割、心構え

社会全体の知財意識の高まりから、知財担当者には、社内の製品開発などから生まれたさまざまな知的財産の権利化、知財トラブルの防止や解決といった役割だけでなく、会社の事業戦略に貢献することが期待されます。

すなわち、知財担当者には、「企業経営者の視点で知財業務を行う」という心構えが求められます。大げさに聞こえますが、このような心構えが必要とされる知財担当者の仕事は、自社の事業を左右するやりがいのある仕事なのです。

知財担当者と特許事務所との違い

特許事務所は、主に、特許出願などの権利化に係る特許庁に対する手続きを行います。知財担当者のメインの仕事は、特許に関する権利化に関わる業務であると述べましたが、知財担当者と特許事務所との違いは何でしょうか。

一般的には、知財担当者は、権利化の方向性を決定し、特許事務所は、具体的な出願書類を作成するという役割を担います。このように、権利化に関わる業務において、知財担当者と特許事務所とでは、関わる工程が異なります。

知財担当者と特許事務所の一般的な役割
✅知財担当者:社内で知的財産を見いだし、事業戦略に従って、権利化の方向性を決定する
✅特許事務所:権利化の方向性に従って具体的に出願書類を作成し、特許庁に対する手続きを行い、権利を取得する

  【知財担当者】 ―(出願依頼)→ 【特許事務所】 ―(出願手続き)→ 【特許庁】

特許事務所の活用方法

特許事務所では、主に権利化に係る特許庁に対する手続きを業務としていますが、社会的な知財意識の高まりから、近年では、特許庁に対する手続き以外のサービスを提供している特許事務所も増えています。

出願手続き以外のサービス例

✅知財コンサルティング:企業内の知財活動全般の支援
✅知財価値調査:各企業が保有する特許の価値分析、知財デューデリジェンスなど
✅知財教育:セミナー等のサービス提供
✅知財DX支援:知財ITツールの導入や、知財データの利活用に関するアドバイスなど
✅知財部門立ち上げ支援:知財管理体制や権利化体制の構築など

規模が小さな会社では、知財担当者が一人または兼任しており、誰にも相談できない状況ということがありえます。従来の出願業務以外にも、自社に足りない業務などを特許事務所にサポートしてもらい、体制を強化するのもよいでしょう。


知財部の主な業務

知財部の主な業務について解説します。もちろん、ここで挙げる業務は一例であり、これら以外にも、知財部がかかわる業務は存在します。

知財部の主な業務

✅特許・実用新案の権利化に関わる業務
✅意匠・商標の権利化に関わる業務
✅知財教育業務
✅契約業務
✅紛争対応業務

それぞれ詳しく解説していきます。

特許・実用新案の権利化に関わる業務

まず、「特許(法)・実用新案(法)とは何か」から簡単に解説します。

特許法とは、「発明」を保護する法律であり、実用新案法は、「考案」を保護する法律です。両者の違いとしては、以下のとおりです。

✅特許法|「発明」(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)が保護対象
✅実用新案法|「考案」(自然法則を利用した技術的思想の創作)が保護対象


※「考案」は、「発明」から「高度のもの」という要件が欠けており、いわば、「小」発明を保護しているといえます。

特許・実用新案の権利化を図るのは、知財部のメインの仕事になります。業務の大まかな流れはこのようになります。

①発明発掘 出願方針の決定
特許調査
ブレインストーミング
②出願 発明提案書の作成
特許事務所への依頼
出願書類の評価
外国出願の検討
③中間処理 拒絶理由通知(※1)への対応
審判請求(※2)等の検討

※1 特許庁からの、発明が保護に値しない理由の通知
※2 拒絶査定などの判断について、特許庁内の審判部でその妥当性等について判断してもらうよう請求すること
④権利取得 特許料を納付し、特許権を取得
維持年金(※3)の管理

※3 権利を維持するためには、権利者は毎年、年金を納付しなければならないため、知財部では、支払い漏れがおきないよう管理する必要がある

①発明発掘

事業戦略に従って、どのような特許を、どう出願していくか、出願方針を決定し、発明発掘を行います。

知財担当者がイニシアティブをとって発明を見いだしていく場合は、特許調査により、製品の技術分野におけるパテントマップなどを作成し、ブレインストーミング(発明のアイデアだし)を行うとよいでしょう。

パテントマップとは

パテントマップとは、特許情報を調査・整理・分析し、最近の動向等をグラフや表などでビジュアル化したもののことです。特許マップと呼ばれることもあります。

引用元│独立行政法人工業所有権情報・研修館「特許情報分析支援事業2021年度支援事例集」6ページ

②出願

発明がある程度具体化できたら、出願の段階へ入ります。まず、発明のアイデアを記載する発明提案書(「発明アイデアシート」、「発明説明書」など、さまざまな呼び方があります。)を作成します。

発明提案書は、明細書(特許庁へ提出する出願書類)の元となるため、明細書作成のために必要な事項(従来技術の課題、発明の構成、具体例など)を記載します。

発明提案書をもとに、明細書の作成を特許事務所へ依頼します。特許事務所を選定する際は、さまざまな選び方の基準(得意な技術分野、外国出願への対応の可否、所属弁理士数など)があります。費用面だけではなく、総合的な判断が求められます。

その後、特許事務所から納品された出願書類を評価します。出願書類には、

権利範囲を確定させる権利書の側面
発明の技術的な内容を表す技術文書の側面

があります。

権利範囲が事業戦略に沿っていなかったり、記載内容が技術的に不正確であったりする場合は、出願が無駄になってしまいます。発明者とも連携して、出願書類の内容をしっかりチェックします。

出願が、グローバルに展開する事業に関連する場合は、外国出願の検討も必要になるでしょう。外国出願する場合は、出願方法、出願国、出願スケジュール、現地代理人などの決定を行います。

③中間処理

特許庁に提出された出願書類は、所定の手続きを経て、特許を与えるかどうかの審査がなされます(特許法47条)。

審査を1回でパスすることはほとんどなく、通常は、拒絶理由通知書(特許法50条)という、特許を与えることができない理由(拒絶理由)が記載された文書が送られてきます。これに対する応答(やり取り)を中間処理といいます。

審査にパスするためには、拒絶理由に反論すべく、意見書や、手続補正書の提出(特許法50条、17条の2)を行います。手続補正書は、権利範囲に関わる重要な書類ですので、権利範囲を狭くしすぎないように、知財担当者として十分に留意する必要があります。

拒絶理由通知書への対応が成功せず、特許が認められない場合(拒絶査定、特許法49条)は、以下の順序で、不服申し立てを検討することになります。

拒絶査定不服審判の請求(特許法121条)
 →拒絶査定が本当に適切に行われたかチェックをしてもらう


②(①でも特許が認められなければ)審決取消訴訟の提起(特許法178条)
 →知的財産高等裁判所に審決(特許庁の判断)を取り消してもらうための訴訟を提起する

④権利取得

審査にパスすると、特許料を納付します。特許料を納付しなければ、特許権は発生しません(特許法66条)。また、権利発生後にも、数年ごとに納付期限がくる維持年金を納付しなければ、権利が消滅してしまいます。

そのため、年金の納付期限管理も、知財部の重要な仕事です。

意匠・商標の権利化に関わる業務

意匠・商標の定義は、以下のとおりです。

意匠とは

意匠とは、以下に関するデザインのことを指します。
①物品(例:車・テレビ)
②建築物(例:博物館・ホテル)
③画像(例:スマホの操作画面・アプリの表示画面)

商標とは

商標とは、一言でいうと、商品やサービスに付けるマークのことを指します。


より詳細には、以下のように定義されています。
「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩またはこれらの結合、音その他政令で定めるもの」であって、
①業として商品を生産し、証明し、または譲渡する者がその商品について使用をするもの
②業としてサービス(役務)を提供し、または証明する者がその役務について使用をするもの

意匠や商標の権利化についても、業務の大まかな流れは、特許の場合とほぼ同じとなります。

ただし、特許出願を依頼している事務所が既にある場合、その事務所に意匠出願や商標出願も依頼するかについては、事前に検討すべきでしょう。

特許事務所といっても一様ではなく、各事務所によって、得意・不得意があり、特許が強い事務所、意匠が強い事務所、商標が強い事務所などの特徴があるからです。

知財教育業務

社内に向けて知的財産制度の啓蒙など、体系的な知財教育を行います。

発明者等が誤って特許制度などを理解している場合は、新規性の喪失や、期限管理ミスなどのトラブルにつながりかねません。知財教育を行うことで、社内の知財意識の向上を図り、円滑な知財活動ができるようになるでしょう。

契約業務

契約は、簡単にいうと、「法的な効果が生じる約束」です。契約自体は、口頭でも成立しますが、双方の権利義務を明確化するため、企業間の取引では契約書が作成されます。

通常は、法務部が契約書の作成(ドラフト)・審査(レビュー)を行いますが、知財部においても、知財に関係のある契約書については、作成・審査をすることがあります。

また、契約書を確定させていく過程で、相手方と「契約交渉(=なるべく自社に有利な契約内容となるよう、相手方と交渉すること)」を行うことになります。そのため、契約交渉をうまく進めることも、知財担当者にとって必要な能力です。

知財に関わる主な契約としては、以下が挙げられます。

ライセンス契約 知的財産権をもつ者が他者に対して知的財産の使用・利用を許諾する契約
例:特許ライセンス契約(特許実施許諾契約)商標ライセンス契約(商標使用許諾契約)
譲渡契約 知的財産権を相手方に譲渡する契約
例:特許権譲渡契約/商標権譲渡契約
共同出願・研究契約 他の企業と共同して、研究開発を行う際に締結する契約
例:共同研究開発契約/共同出願契約
その他 知財系の契約類型と関連して、締結されることの多い契約
例:秘密保持契約/開発委託契約(ソフトウェア開発委託契約など)
/製造委託契約(OEM契約)

より詳細については、下記の関連記事をチェックしてください。

紛争対応業務

知財部では、知的財産に関連して複数当事者間で生じる紛争(たとえば、特許権侵害や、特許無効審判、特許を受ける権利の帰属や報償金などの争い)についての対応をします。また、紛争を未然に防ぐための侵害予防調査なども行います。

紛争は、自社内で対応することもあれば、法律事務所の弁護士と連携することも多いでしょう。外部の弁護士や関係部門との連絡、調整、社内の情報収集など、紛争対応は多岐にわたり、かなりの労力がかかります。突然の紛争に備え、即時かつ適切に対応できる体制をつくっておくことも重要です。


知財業務のために必要なスキル

知財担当者には、

法律の基礎知識
技術理解力
コミュニケーション能力

が必要です。

法律の基礎知識

知財業務のメインの仕事は、法律に基づき、自社内の知的財産について、権利化を行っていく業務です。つまり、法的文書の読み書きや、知的財産法に関する基礎知識は、知財業務を適切に遂行するための前提知識として必要になります。

研究開発職やエンジニアなどの技術者から知財担当者になったときに、一番高いハードルは法的文書の読解かもしれません。

知財業務において、権利を定める明細書や契約書などの法的文書が読めなければ仕事になりません。また、特許法の基礎知識がなければ、明細書をどのように記載すればよいのか、権利侵害とはどういうことなのかさえも分からないでしょう。そのため、法律の基礎知識は、当然に必要とされます。

技術理解力

発明を発掘する際、発明者などからの説明が理解できる技術理解力は欠かせません。

また、知財担当者は、特許調査や、出願業務などにおいて、大量の明細書を読む必要があります。明細書は法律文書であるため、技術論文と比べて読みづらさがありますが、技術的な前提知識をもっていれば、多少は読解がラクになります。

文系出身の担当者であっても、少なくとも自分が関係する技術分野については、教科書や専門書等から基礎知識を取り入れ、技術を理解できるようにしておきましょう。

コミュニケーション能力

知財業務は一人では遂行できません。たとえば、権利化に関わる業務では、発明者や、特許事務所の弁理士などとは密接に関係し、連携して業務を行う必要があるため、コミュニケーション能力は欠かせません。

また、難解な法律用語や知財制度をかみ砕いて発明者に説明し、認識の違いがないように、外部専門家との橋渡しの役割も期待されます。

社内外の関係者と信頼関係を構築し、円滑に業務が進められるようにしていくことが大事です。


知的財産系の資格

知財担当者には、高度な法律知識と実務能力が求められます。個人の知的財産に関する実務能力を示すために、資格を取得することは有用です。ここでは、知的財産に関する主な資格を紹介します。

弁理士
知的財産管理技能検定
AIPE認定 知的財産アナリスト
ビジネス著作権検定
知的財産翻訳検定
特許検索競技大会

弁理士

弁理士は、知的財産に関する専門家で、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)に関わるすべての手続きを代理することができる国家資格です。

弁理士になるためには、国家試験である弁理士試験に合格し、弁理士登録をする必要があります。受験資格の制限(学歴、年齢、国籍等)は一切なく、誰でも受験できますが、弁理士登録のためには一定の条件があります。

知的財産管理技能検定

知的財産管理技能検定は、技能検定(働くのに必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度)の中の「知的財産管理」という職種に関する国家試験です。

試験は、難易度によって3つに区分されています。合格者には「知的財産管理技能士」という国家資格が与えられ、知財マネジメントスキルの習得レベルを公的に証明することができます。

AIPE認定 知的財産アナリスト

知的財産アナリストは、ビジネス・知的財産に関する専門知識を有し、知的財産関連情報の収集・分析等を通じて、企業の戦略的経営に資する情報を提供する専門家です。

知的財産アナリストになるためには、知的財産教育協会(AIPE)が実施する講座を受講し、講座内での試験に合格しなければなりません。ただし、高度な知見が必要なため、受講対象者は所定の国家資格保有者(知的財産管理技能士・弁理士・弁護士・公認会計士など)に限定されます。

ビジネス著作権検定

ビジネス著作権検定は、著作権に特化した資格検定試験です。著作権に関する知識について、基礎的な理解、ビジネス実務について測定します。

試験は、BASIC・初級・上級の3つに分けられ、「上級」の合格者は、知的財産管理技能士1級および2級の受験資格として利用できます。

知的財産翻訳検定

知的財産翻訳検定は、知的財産翻訳の中心である特許明細書などの知的財産に関する翻訳能力を客観的に測るための検定試験です。試験は、電子メールを使用し、全国どこからでも受験が可能です。

特許検索競技大会

資格ではないですが、「特許検索競技大会」というものがあります。これは、特許調査の実務能力を評価する大会です。大会は年1回、リモートにより開催され、成績に応じたレベル認定が受けられるほか、成績優秀者等の表彰が行われます。


この記事のまとめ

知財部に関する記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!


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