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【施行日未定】会社法改正とは? 改正点を解説!(新旧対照表つき)

契約ウォッチ編集部

契約ウォッチ編集部

2020/10/15(公開:2020/10/14)
この記事のまとめ

改正会社法(施行日未定)のポイントを解説!

「会社法の一部を改正する法律」(2019年12月11日公布)では、次の点について、 会社法が改正されました。

1.株主総会資料の電子提供制度の創設
2.株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備
3.取締役の報酬に関する規律の見直し
4.会社補償および役員などのために締結される保険契約(D&O保険)に関する規律の整備
5.社会取締役に関する規律の見直し
6.社債の管理に関する規律の見直し
7.株式交付制度の創設
8.その他


この記事では、改正会社法の概要について解説します。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 会社法…施行後の改正会社法(平成17年法律第86号)
  • 旧会社法…施行前の会社法(平成17年法律第86号)
  • 金商法…金融商品取引法(昭和23年法律第25号)
新旧対照表ダウンロード
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先生、今回の会社法改正では、どのような点が改正されるのでしょうか?
ヒツジ
ムートン先生
今回の会社法改正では、大きく分けて「株主総会に関する規律」と「取締役会に関する規律」が見直されました。その他にもいくつか改正がされています。
実務への影響も大きいので、改正されたポイントを確認して、施行される前に準備しましょう!

改正会社法とは?

改正の目的

今回の法改正の目的について、「会社法の一部を改正する法律」では、以下のように説明しています。

会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図るため、 株主総会資料の電子提供制度の創設、株主提案権の濫用的な行使を制限するための規定の整備、取締役に対する報酬の付与や費用 の補償等に関する規定の整備、監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け等の措置を講ずる必要がある。 これが、この法律案を提出する理由である。

引用元│法務省「会社法の一部を改正する法律 理由」

また、法務省のパンフレットでは、以下のように説明しています。

会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図ることを 目的とするものです。これにより、日本企業のコーポレート・ガバナンスが更に向上し、日本企業の競争力や日本企業に対する内 外の投資家からの信頼がより高まり、ひいては、日本経済の成長に大きく寄与するものと期待されています。

引用元│法務省「パンフレット 会社法が改正されます」

公布日・施行日

1.株主総会資料の電子提供制度の創設
8.その他(会社の支店の所在地における登記の廃止)
2022年施行予定
(公布日から3年6か月以内)
2.株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備
3.取締役の報酬に関する規律の見直し
4.会社補償および役員などのために締結される保険契約(D&O保険)に関する規律の整備
5.社外取締役に関する規律の見直し
6.社債の管理に関する規律の見直し
7.株式交付制度の創設
8.その他
2021年3月1日施行予定
(公布日から1年6か月以内)

会社法改正の概要

今回の会社法改正により、株主総会、取締役会に関する規律などが見直されました。

概要は、大きく8つのポイントとなります。

改正ポイント(8つ)

ポイント1

株主総会資料の電子提供制度の創設

ポイント2

株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

ポイント3

取締役の報酬に関する規律の見直し

ポイント4

会社補償および役員などのために締結される保険契約(D&O保険)に関する規律の整備

ポイント5

社外取締役に関する規律の見直し

ポイント6

社債の管理に関する規律の見直し

ポイント7

株式交付制度の創設

ポイント8

その他

改正のポイント

ポイント1│株主総会資料の電子提供制度の創設

まず、今回の会社法改正により、 株主総会資料の電子提供制度が新設されました。 第3款、新法325条の2以下において「電子提供措置」として定められています。

新法325条の2は、定款に定めることにより、 株主総会参考資料等の電子提供措置を採用できることを規定しました。

電子提供措置

まず、「電子提供措置」について説明します。 電磁的方法により、株主が情報の提供を受けることができる状態に置く措置のことです。 Webサイトでの掲載などがこれに当たることになります。
「株主総会参考資料等」とは、新法325条の2第1項かっこ書によると、①株主総会参考資料、②議決権行使書面、 ③437条の計算書類および事業報告、④444条6項でいう連結計算書類、を指します。

電子提供制度を採用した場合、新法325条の3により、株主総会の招集にかかる電子提供措置の規律に従う必要があります。

電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、株主総会の招集通知を書面で行う必要がある場合 (会社法299条2項各号)には、①株主総会の日の3週間前、もしくは②株主総会招集通知の書面による通知を発した日、 のいずれか早い日から、株主総会の日後3ヶ月を経過するまでの間、新法325条の3各号に掲げる情報について、 電子提供措置を行わなければならないとしています。

新法325条の3各号に掲げる情報とは、以下の情報をいいます。

① 298条1項各号に掲げる事項(株主総会の日時や場所、株主総会の目的事項等)
②(書面投票ができる場合には、)株主総会参考資料記載事項および議決権行使書面記載事項
③(電子投票制度を採用している場合には、)株主総会参考資料記載事項
④(株主提案があった場合には、)議案の要領
⑤(取締役会設置会社である場合で会社召集の場合には、)計算書類・事業報告記載事項
⑥(会計監査人設置会社である場合で会社招集の場合には、)連結計算書類記載事項
⑦(①から⑥に掲げられている情報を修正した場合には、)その旨および修正前の事項

これらの情報を、定める措置期間にわたって、電子提供措置をとる必要があります。

ここで、電子提供措置をとる会社は、株主総会の招集通知について修正が入ることについて触れておきます。
新法325条の4第1項は、電子提供措置をとる場合には、会社法299条1項の定める招集通知の期限について 公開会社・非公開会社の区分を問わず一律に2週間と定めています。電子提供措置をとる場合には、 株主総会の招集通知の送付期限について修正が入ることに注意が必要です。

書面交付制度

次に、電子提供措置制度を採用する会社について、インターネット等へのアクセスが困難な株主の保護も目指し、 「書面交付請求」の制度を認めました(新法325条の5)。

電子提供制度をとる旨の定款の定めがある会社の株主は、会社に対して 新法325条の3第1項各号に掲げる事項(「電子提供措置事項」と名付けられています) を記載した書面の交付を請求することができます(新法325条の5第1項)。
この書面交付請求を受けた会社の取締役は、請求した株主に対して当該株主総会に関する 電子提供措置事項を記載した書面を交付する必要があります(新法325条の5第2項)。 基準日制度を設けている会社の場合、基準日までに書面交付請求をした株主に限り書面交付義務があります(新法325条の5第2項かっこ書)。

なお、新法では、書面交付請求の効力の存続期間について定めがありません。
そこで、新法325条の5第4項は、書面交付請求がなされた日から1年を経過した場合に、新法325条の5第2項による 書面の交付を終了する旨を通知し、およびこれに対して異議がある場合には一定の期間内(「催告期間」)に 異議を述べるべき旨を、催告することができると定めています。
会社の通知した 催告期間(1か月を下回ることはできないとされています)を経過し、かつ、株主から 異議がなかった場合には書面交付請求の効力が失われることになります(新法325条の5第6項)。

仮に、会社が上記通知・催告を行わないような場合には、書面交付請求の効力が存続することになるので、 請求以降の株主総会について電子提供措置事項を記載した書面を交付する必要があることになります。新法325条の5第6項は、 書面交付請求に無制限に応じ続ける会社の負担軽減を図った規定といえます。

電子提供措置の中断

最後に、電子提供措置の中断について解説します。
電子提供措置は、会社のwebサイト等が正常に機能していることが前提の制度といえます。 したがって、webサイトが機能していないような場合には電子提供措置をとれない状態が発生することになります。

新法325条の6は、このような電子提供措置が中断した場合について規定しています。「電子提供措置の中断」とは、 株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又は当該情報がその状態に置かれた後改 変されたこと、をいいます(新法325条の6柱書かっこ書)。 Webサイトがダウンしたような場合がこれにあたると考えられます。

新法325条の6は、 電子提供措置期間中に電子提供措置の中断がある場合、次の4つのいずれの場合にも該当する際、 電子提供措置の中断が、電子提供措置の効力に影響を及ぼさないとしています。

①電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること(新法325条の6第1号)

②電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の10分の1を超えないこと(同条2号)

③当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の10分の1を超えないこと(同条3号)

④株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について 当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと(同条4号)

ポイント2│株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

改正で、株主提案権の濫用的行使の防止に関する規律が新たに設けられたので、これについて解説します。
近年、1人の株主が大量に議案を提出するなどの株主提案権の濫用ともいうべき事態が発生しており、このような濫用的な株主提案権の行使について 歯止めが必要な状況となっていました。
そこで、今回の改正では、株主の提案できる議案の数について、10個を上限とするなど、濫用的行使を防止する対策がとられました。

新法305条4項は、株主が305条1項に基づいて議案を提出しようとしている場合において、 株主の提出しようとする議案の数が10を超える場合には、10を超えた議案の数については305条1項から3項が適用されない、 つまり議案の要領の通知請求権がない、ということを定めています。
すなわち、株主が一つの株主総会において議案の通知を請求することのできる議案の数は10まで、ということになります。 なお、議場において提案する議案の数に制限が加えられたわけではないので、この点は注意が必要です。

では、10個の議案はどのように算出するのでしょうか。議案の数の数え方については、新法305条4項各号が規定しています。
まず、役員等の選任、役員等の解任、会計監査人の不再任については、議案の数にかかわらず1個の議案とみなされます(新法305条4項1号、2号、3号)。 なお、「役員等」とは取締役、会計参与、監査役、会計監査人の総称とされています(新法305条4項1号かっこ書き)。
次に、定款変更に関する2以上の議案については、当該2つ以上の議案について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾する可能性があるような場合には 1つの議案とみなす、としています。2つ以上の定款変更が密接に連動しているような場合は1つとみなす、という趣旨です。

これまで述べてきたように、新法305条4項は10を超える数に相当する議案について株主提案権を認めないとするものです。では、 10を超える数に相当する議案が提出された場合、どの議案を取り上げるか、はどのように決めるのでしょうか

この点について新法305条5項本文は、取締役が定める、としています。したがって、10を超える数の議案が提出された場合、 原則として取締役が株主提案権の行使を認めない議案の決定を行うことになります。

しかし、株主が議案の提出の際に、 株主が提出しようとする2以上の議案の全部、又は一部につき議案相互間の優先順位を定めている場合には、 取締役は、当該優先順位に従いこれを定める、とされています(新法305条5項ただし書)。 すなわち、議案の提出を行う株主が優先順位をつけてこれを行った場合、優先順位に従って10を超える数に相当する議案を定める、 ということです。
取締役が自己に都合の良い議案を優先的に取り上げるような濫用的な事態を防止する趣旨です。

ポイント3│取締役の報酬に関する規律の見直し

取締役の報酬に関する規律の見直しについて説明します。
今回、取締役の報酬に関する規律について、主に以下の4つの内容の改正が行われました

①上場会社等における取締役の個人別の報酬が株主総会で決定されない際の、取締役会による報酬の決定方針の策定の義務化

②取締役の報酬として株式等を付与する際の株主総会の決議事項に、株式等の数の上限等を新たに追加

③上場会社が取締役の報酬として株式を発行する場合に出資の履行を不要に

④事業報告の充実

取締役の報酬の決定方針の策定義務

新法361条7項において、一定の要件を満たした会社の取締役会における個人別報酬の決定方針の策定が義務化されました(①)。

ⅰ監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって金商法24条1項の規定により有価証券報告書を提出する必要のある会社(いわゆる上場会社)、 または監査当委員会設置会社における取締役会は、
ⅱ個人別の報酬等の内容が定款または株主総会において決定されている場合を除き、
個人別の報酬等の内容の決定方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない
とされています。

新法361条7項においては開示までが規定されているわけではありません。
なお、今回新法361条4項において、従来の説明義務の対象とされていた不確定額報酬・非金銭報酬(旧法361条1項2号、3号)に加えて、1号の確定額報酬に ついても説明義務の対象となりました。
また、後述のように会社法の事業報告において決定方針が追加されることも検討されています。 報酬額の決定方針について、これらの中で説明されるようになることが予想されます。

株主総会の決議事項に、株式・新株予約権の数の上限などを追加

取締役の報酬として株式等を付与する際の株主総会の決議事項に、株式等の数の上限等を新たに加えました(②)。新法361条1項がこれについて定めています。

新法361条1項は、取締役の報酬等について、各号に掲げる事項が定款で定まっていない際には株主総会でこれを定める、としているものです。 旧法では1号から3号までしか決議事項がありませんでしたが、今回の改正により、細かく報酬区分ごとに決議事項が定められ、報酬の区分に応じて1号から6号までの 事項を決議しなければならないものとなりました。

具体的には、取締役の報酬として当該株式会社の株式・新株予約権を付与する際には、株式・新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項について 定款・株主総会決議で定めなければならないとしています(新法361条1項3号、4号)。
また、払い込みの上、株式・新株予約権を付与されることを報酬とする場合にも、払い込みと引き換えに受ける株式・新株予約権の数の上限について 定款・株主総会決議で定めなければならないとしています(新法361条1項5号イ・ロ)。
つまり、 取締役の報酬として株式・新株予約権を付与するような場合には、付与する株式・新株予約権の数の上限を定めなければならないということになります。

上場会社が取締役の報酬として株式を発行する場合の払い込みが不要に

上場会社が、取締役に対して株式・新株予約権を報酬として付与する際に払い込みを要しないこととしました(③)。
旧法下においては、報酬として株式・新株予約権を付与するような場合には金銭の払い込みや財産上の給付等が必要とされており、 その結果として取締役の報酬債権との相殺の方法などにより、株式・新株予約権の付与が行われていました。

今回は改正では、このような迂遠な方法を必要としないように報酬として株式・新株予約権を付与する際には払い込みを要しないものとしました。 株式・新株予約権の付与において払い込みを要しないものとできるのは、 金商法2条16項に規定する上場株式を発行する会社、つまり上場会社です。

上場会社は、定款または株主総会決議において株式を報酬として付与することを定め、これに従い株式の募集をする際には、199条2項1項2号及び4号の事項( 払込金額等及び払込期日)を定める必要がなく、また、新法202条の2第1項各号の事項を定めなければならないとしています。
新法202条の2第1項各号の事項とは、報酬として株式の発行をするものであり、募集株式の発行と引き換えにする金銭の払い込み等を要しない旨(1号)、 募集株式を割り当てる日(2号)です。

つまり、上場会社で報酬として株式を発行する際には、払込金額及び払込期日を定める必要はなく、 代わりに金銭の払い込み等を要しない旨および募集株式を割り当てる日を決定する必要がある、ということになります。 新株予約権も同様の規律となっています(新法236条3項各号)。

事業報告の充実

最後に、事業報告の充実化(④)が報酬に関する改正としてあげられます。
事業報告は会社法435条2項に規定されており、その具体的内容は会社法施行規則118条以下に規定されています。今後、法務省令によりさらな る事業報告の内容の充実、特に報酬に関する事業報告の内容の拡充が検討されています。

法制審議会の資料(法制審議会「法制審議会会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(案)」9頁)によると、以下の情報などの開示の充実化が検討されているようです。

① 報酬等の決定方針に関する事項
② 報酬等についての株主総会の決議に関する事項
③ 取締役会の決議による報酬等の決定の委任に関する事項
④ 業績連動報酬等に関する事項
⑤ 職務執行の対価として株式会社が交付した株式又は新株予約権等に関する事項
⑥ 報酬等の種類ごとの総額

以上の4点が、報酬に関する改正内容となります。

ポイント4│会社補償および役員などのために締結される保険契約(D&O保険)に関する規律の整備

今回の改正において設けられた会社補償の制度、および役員などのために締結される保険(D&O保険) に関する改正について解説します。

会社補償

まずは会社補償の制度について解説します。

会社補償の制度は、新法430条の2で新設された制度です。
会社法上、 「補償契約」とは、 役員等に対して新法430条の2第1項各号に掲げる費用の全部または一部を 当該会社が補償することを約する契約のことをいいます。

補償の対象になるのは以下の2種の費用・損害です。

①当該役員等が、その職務の執行に関し、 法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用

 ②当該役員等が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合であって、
当該損害を当該役員等が賠償することにより生ずる損失
ⅱ当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員等が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失

①は会社法423条の責任追及への対処の費用、例えば責任追及の訴え等の対応に必要な弁護士費用、②は会社法429条の責任によって生じる損失、などがあげられることになります。

なお、①の費用については、当該役員などが、自己もしくは第三者の不正な利益を図り、または会社に損害を与える目的で職務執行をしていたことを会社が 事後的に知った場合には、補償した金額に相当する部分の返還を請求できるとしています(新法430条の2第3項)。

今回の改正において、 会社は役員等と補償契約を締結し、役員等に生じた損害の一部または全部を保証することが明文で 認められました。会社は役員等と補償契約を締結するには、 株主総会の決議を得なければなりません。取締役会設置会社の場合は、取締役会の決定で締結することができます。
なお、役員と会社の取引は利益相反取引、自己代理に形式的に該当することが考えられますが、新法430条の2第6項、7項はこれらの規定の適用を排除しています。

ただし、補償契約の補償の対象には限界があることも明記されています。新法432条の2第2項は、以下の3つの費用・損害について、補償契約を締結して いた場合でも会社からの補償を受けられないことを明記しています。

前述の①の費用のうち、通常要する費用の額を超える部分は補償することができない(新法430条の2第2項1号)

前述の②の損害のうち、役員等が第三者に生じた損害を賠償するとすれば、当該役員等が会社に対して423条1項の責任を負う場合についてはその部分に ついては補償の対象とならない(第三者への損害賠償の基となる行為によって会社に対しても責任を負うような場合には、その部分は補償の対象にならない)

②の責任のうち、役員等が職務を行うにあたって悪意・重過失があった場合には②の責任に関する損害のすべてについて補償の対象とならない

このように、補償契約を締結していても、すべての費用・責任が補償対象になるわけではないので注意が必要です。

取締役会設置会社が補償契約に基づく補償を行った場合、 補償を実行した取締役、および補償を受けた取締役は、遅滞なく補償についての 重要な事実を取締役会に報告しなければならないとしています(新法430条の2第4項)。

役員などのために締結される保険契約(D&O保険)

役員等のために締結される保険契約についても明文で新たに規定が設けられました。新法430条の3がこれについて規定しています。

まず、役員等のために締結される保険契約(役員等賠償責任保険契約)とは、いわゆるD&O保険のことであり、 会社が保険者との間で締結する保険契約のうち、役員等がその職務執行に関して責任を負うこと、または責任の追及にかかる請求を受けることに よって生ずることのある損害を、保険者が補填することを約するものであって、役員等を被保険者とするものをいいます(新法430条の3第1項)。
役員が職務執行の結果、会社や第三者に対して責任を負うことになったような場合に、保険者が役員に生じた責任を補填するものです。

旧法下でも、役員等のために会社が保険契約を、保険料について会社負担で締結することは行われていました。
役員等が損害賠償責任を負うのは、損害填補機能・違法抑止機能の2つがあり、保険は損害填補を阻害するものではないこと、 保険が犯罪行為や違法行為を認識しながら行為を行った場合は補償の対象にならないこと、から、双方の機能を害せず、会社負担で D&O保険を締結することは有効であるとされていました。
一方で、利益相反が生ずることなどから、取締役会の承認、社外取締役の承認等で一定の合理性・適法性の確保を行うべきであるとされていました。
今回の改正ではこのような解釈にゆだねられていた点について、明文で規定が設けられました。

会社は、役員等賠償責任保険契約の内容を決定するには、株主総会の決議によらなければならないとされました(新法430条の3第2項)。
取締役会設置会社の場合には取締役会により、役員等賠償責任保険契約の内容を決定することができます。

なお、役員等賠償責任保険契約からは、当該保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく 損なわれるおそれがないものとして法務省令で定めるものは除かれることになります(新法430条の3第1項かっこ書)。法務省令 で定めるものとして予定されているのは、生産物賠償責任保険(PL保険)や企業総合賠償責任保険(CGL保険)、自動車賠償責任保険、海外旅行保険等に係る保険契約です。

また、役員等賠償責任保険契約の締結に際し、356条1項2項、423条3項の利益相反の規定や民法108条の自己代理の規定の適用は 排除されています(新法430条の3第2項、第3項)。

更に、 法制審議会の資料(法制審議会「法制審議会会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(案)」11頁)によると、 事業報告の内容として、役員等賠償責任保険契約の被保険者、また役員等賠償責任保険契約の概要(役員との保険料の負担割合や填補対象の 保険事故の概要、役員等賠償責任保険契約によって役員等の職務の適法性が損なわれないための措置を講じているときにはその措置の内容)が 含まれる予定となっています。

ポイント5│社外取締役に関する規律の見直し

改正における社外取締役に関する規律の変更点について解説します。
社外取締役に関する主な変更点は2つあります。

①業務執行の社外取締役への委託に関する規律の見直し
②社外取締役設置の義務付け

業務執行の社外取締役への委託に関する規律の見直し

まず、 業務執行について社外取締役へ委託した場合の扱いについて、規定が新設されました(①)。 新法348条の2が改正により新設された条文となります。

旧法下においては、社外取締役が業務を執行した場合、社外性を失うこととなっていました。社外取締役は、2条15号において 要件が示されています。社外取締役が業務を執行した場合、業務執行取締役に該当することになり、社外性を失うことになります(2条15号イ参照)。

今回の改正では、一定の要件のもとでは業務執行をしても社外性を失わないこととされました。業務執行による社外性の喪失により、 社外取締役が期待されている行為をすることが妨げられることがないようにする必要性が指摘されており、これに対応したものです。

新法348条の2第1項は、ⅰ会社と取締役の利益が相反する状況にあるとき、 または、ⅱその他取締役が会社の業務執行をすることにより株主の利益を損なうおそれがあるとき、には、 その都度、取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)の決定により、当該会社の 業務執行を社外取締役に委託することができる、と定めました。

マネジメント・バイアウトの場面や、親子会社間取引の場面がこれにあたるものとして考えられ、こうした場面での社外取締役への 当該業務執行の委託が可能となります。
そして、 この決定に従って社外取締役が業務を執行したとしても、2条15号イの業務執行には該当しないものとされています(新法348条の2第3項)。

したがって、上記要件の下で委託を受けた業務執行は社外性の喪失にはつながりません。なお、社外取締役が、 業務執行取締役の指揮命令により委託業務の執行を行った場合には、業務執行該当性が認められ、社外性を失うこととなります。

指名委員会等設置会社においても、会社と執行役との利益が相反する状況にあるときには、または執行役の業務執行で 株主の利益を損なうおそれがあるときには、同様に取締役会の決議により、社外取締役への業務執行の委託が認められています(新法348条の2第2項)。

社外取締役設置の義務化

次に、社外取締役設置の義務化(②)について解説します。

新法327条の2は、社外取締役の設置義務について規定しています。 監査役会設置会社公開会社かつ大会社であるものに限ります)であって、 金商法24条1項により有価証券報告書を提出している会社(いわゆる上場会社)は、 社外取締役を置かなければならない、とされました(新法327条の2)。
社外取締役の設置義務化により、上場会社については社外取締役による監督体制が敷かれているという意味で、 資本市場の信頼性向上につながることが期待されています。

ポイント6│社債の管理に関する規律の見直し

社債の管理に関して新たな規律が加わりました。主な改正点は、以下の2点です。

①社債管理補助者制度の創設
②債権者集会における債務免除に関する規律の変更

社会管理補助者制度の創設

まず、社債管理補助者制度の創設(①)について解説します。

会社法上、社債を発行する場合には、社債管理者を定めたうえで社債管理を委託することが原則であり(702条本文)、 社債の金額が1億円以上の場合、その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には社債管 理者を置く必要がないものとされています(702条ただし書)。

今回の改正では、後者の場合、社債管理者を置かない場合について、社債管理補助者を定めることができる、 としました(新法714条の2)。社債管理補助者については、新法714条の2以下にその資格、権限等が規定されています。

社債管理者と社債管理補助者の違いについて、法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会資料において、 以下のように社債管理者と社債管理保護者の違いを説明しています。

社債管理者制度は,第三者である社債管理者が社債権者のために社債の管理を行う制度であり, 社債管理者は,社債の管理に必要な権限を包括的に有し,広い裁量をもってそれを行使することが求められている。 他方で,社債管理補助者制度は,第三者である社債管理補助者が,破産債権としての届出をしたり(略),社債権者から の請求を受けて社債権者集会の招集をする(略)ことなどにより,社債権者による社債権者集会の決議等を通じた社債の 管理が円滑に行われるように補助する制度と位置付け,社債管理補助者は,社債管理者よりも裁量の余地の乏しい限定された 権限のみを有するものとすることが考えられる。

引用元│法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会第7回会議(平成29年11月1日開催)資料11

この説明からわかるように、社債管理者と社債管理補助者との大きな違いは権限の大きさの違いです。

社債管理者については、705条1項において「社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は社債に係る債権の実現を保全するために 必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」とされています。

一方で、社債管理補助者は、あくまで新法714条の4に掲げられた行為、たとえば破産等の倒産手続への参加、執行における配当要求や、 委託を受けた契約の範囲内において、705条の掲げる行為を行うことができます。
また、社債権者集会の決議がなければできない行為の範囲も広く(新法704条の4第3項参照)、やはり権限が社債管理者と比べると狭いものとなっています。

なお、社債管理者が新たに委託された場合、社債管理補助者への委託契約は当然に終了するものとされています(新法704条の6)。

債権者集会における債務免除に関する規律の変更

次に、社債権者集会における債務免除(②)に関する改正について解説します。

まず、今回の改正において、社債権者集会の決議により、社債に係る債務の全部又は一部の免除をすることができることが明確化されました。
新法706条1項1号は、社債管理者が社債権者集会の決議により「債務…の免除」について行うことができる旨定めました。
社債管理者は、社債権者集会の決議により債務免除を行うこともできます。

また、社債権者集会における決議の省略についても変更が加えられました。
新法735条の2は、社債発行会社、社債管理者、社債管理補助者、社債権者から社債権者集会の目的事項について提案が行われた場合において、 その提案について議決権者の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示を行った場合には、その提案を可決する旨の 社債権者集会決議があったものとみなす、としています。
これにより、社債権者集会の決議省略が可能になります。

この方法による決議の省略があった場合、裁判所への決議認可の申し立て(732条)や裁判所の認可(734条)は不要となります(新法734条の2第4項)。

ポイント7│株式交付制度の創設

ここでは、株式交付制度という今回の改正により追加された制度について解説します。

株式交付制度は、 株式会社(買収会社)が、他の株式会社(被買収会社)を子会社とするために、自社株式を他の株式会社(被買収会社)の株主に対して交付することを 可能にする制度です。

買収会社と、被買収会社の株主との間で、買収会社が自社株式等を被買収会社の株主に付与し、一方で被買収会社の株主が自身の有する被買収会社株式を、 買収会社に付与するような取引です。株式交付については、新法2条32号の2に定義規定が存在します。

旧法下では、自社株式対価として他の会社を子会社化する手段は、株式交換がありますが、これは完全子会社化するためのものでありニーズが限られます。
一方で、自社の新株発行に他の会社(被買収会社)の株式の現物出資といった手法をとる場合には、検査役選任など、手続が複雑でコストがかかる、という問題点がありました。
今回設けられた株式交付制度は、完全子会社化を予定していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とするために、自社株式を交付することを認める制度です。

株式交付制度は、新法774条の2から774条の11、811条の2から816条の10において規定がなされています。

株式交付制度には、「株式交付親会社」と「株式交付子会社」という会社類型が新設されています。 「株式交付親会社」とは、株式交付をする会社をいいます(新法714条の3第1項かっこ書)。つまり、 自社の株式等を対価として、対象会社を子会社化しようとする会社です。
「株式交付子会社」とは、「株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式を発行する会社のことをいい(新法714条の3第1項かっこ書)、 被買収会社のことです。

株式交付の流れ

株式交付の流れ

株式交付親会社は、株式交付計画を作成

株式交付計画について備え置きおよび閲覧等の措置

株主総会特別決議による承認を得る

株式交付親会社は、株式交付に申し込みをしようとする者に対して、株式交付親会社の商号や株式交付計画の内容等について通知

株式交付に申し込む株式交付子会社の株主が書面で申込み

株式交付親会社は、申込者の中から、株式を譲り受ける者・その者に割り当てる株式交付親会社の株式の数を定める

株式交付親会社は、効力発生日の前日までに、申込者から譲り受ける株式の数を申込者に通知する

通知を受けた申込者は、株式交付子会社の株式の譲渡人となる

株式交付子会社の株式の譲渡人は、効力発生日において、株式交付親会社から通知を受けた数の株式交付子会社の株式を、株式交付親会社に対して給付する

株式交付子会社の株式の譲渡人は、効力発生日において株式交付計画の定めに従い、株式交付親会社の株主となる

まず、株式交付を行う場合、株式交付をする会社(株式交付親会社)が、株式交付計画を作成する必要があります(新法774条の2)。
株式交付計画においては、株式交付子会社の商号および住所(新法774条の2第1号)、株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限 (新法774条の2第2号)、株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の譲渡人に対して当該株式の対価として交付する株式交付親会社の株式の数(新法774条の2第3号) など、新法774条の2各号の事項を定める必要があります。

株式交付においては、株式交付親会社の株式を付与することが必要的ですが、それに加えて金銭等を対価として加えることもできるものとされています。
金銭等が対価として付加された場合、後述する債権者異議手続の対象になることがあります。
また、株式交付の取得対象として、株式が含まれることは必要的ですが、そのほかに新株予約権や新株予約権付社債の取得も加えることができます

なお、新法774条の2第2号の、取得する株式交付子会社の株式の数の下限は、子会社とするのに必要な株式の数を下限、 すなわち議決権の50%以上を下限として行わなければなりません (新法774条の3第2項)。

まとめると、取得の対価として株式交付親会社が交付できるものは株式交付親会社の株式(必要的)、金銭等(付加可)、であり、取得の対象は、 株式交付子会社の株式(必要的)、新株予約権(付加可)、新株予約権付社債(付加可)、ということになっています。取得は、株式交付子会社の50%を下回ることができません。

次に、株式交付計画について備え置きおよび閲覧等の措置を取ったうえで(新法816条の2)、 株主総会特別決議による承認を得る必要があります (新法816条の3第1項・309条2項12号)。なお、備え置きおよび閲覧等の措置については事後のものも存在します。

株式交付親会社は、株式交付に申し込みをしようとする者に対して、株式交付親会社の商号や株式交付計画の内容等について通知する必要があります(新法774条の4第1項)。
株式交付に申し込む株式交付子会社の株主は、申込者の氏名等の情報及び譲渡しようとする株式交付子会社の株式の数の情報について、 書面で、株式交付計画で定められた期日までに交付する必要があります(新法774条の4第2項)。

申し込みを受けた株式交付親会社は、申込者の中から、株式を譲り受ける者及びその者に割り当てる株式交付親会社の株式の数を定め(新法774条の5第1項)、 効力発生日の前日までに、申込者から譲り受ける株式の数を申込者に通知する必要があります(新法774条の5第2項)。
割り当てに際しては、募集株式の発行と同様に割り当て自由の原則が妥当することになります。

なお、株式交付計画において定められた取得下限に満たない場合、割り当て及び通知の規定の適用はなく、申込者に対して株式交付をしない旨を遅滞なく 通知しなければならないとされています(新法774条の10)。

新法774条の5第2項の通知が行われた申込者は、株式交付における株式交付子会社の株式の譲渡人となります(新法774条の7第1項1号)。
譲渡人となった場合、効力発生日において、株式交付親会社から通知を受けた数の株式交付子会社の株式を、株式交付親会社に対して給付する必 要があります(新法774条の7第2項)。
この給付をした株式交付子会社の株式の譲渡人は、効力発生日において株式交付計画の定めに従い、株式交付親会社の株主となります。

これらが株式交付の一連の流れです。

株式交付親会社の株主の差止請求・債権者の異議手続き

株式交付には、他の組織再編の制度と同様に、株主の差止請求権が認められています。

株式交付親会社の株主は、株式交付が法令・定款に違反するような場合であって株主が不利益を受けるおそれがあるような場合に、差し止めを請求することができます(新法816条の5)。
また、反対株主の株式買取請求権も認められており、新法816条の6の定めるところにより、反対株主は自己の有する株式交付親会社の株式を、公正な価格で買い取ることを請求することができます。

株式交付親会社の債権者には、債権者異議手続きが設けられています。
新法816条の8第1項は、株式交付の対価として交付するものに金銭等が含まれている場合、株式交付に異議を述べることができると定めています。

今回の株式交付の制度では、株式交付子会社のとるべき措置等は設けられていません。
今後、株式交付子会社とされた取締役等の行動について、いかなる善管注意義務からいかなる行動が要請されるのか、今後の検討が望まれます。

ポイント8│その他

最後に、その他の改正点について簡単に説明します。

取締役などの責任を追及する訴えで、和解をするための同意

株式会社が、当該株式会社の取締役等の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解をするには、監査役設置会社にあっては各監査役、 監査等委員会設置会社にあっては各監査等委員、指名委員会等設置会社にあっては各監査委員の同意を得なければならないこととなりました(新法849条の2)。

議決権行使書面の閲覧などの請求における、理由の明示

株主が議決権行使書面等の閲覧請求をする場合には、請求の理由を明らかにして行わなければならないものとし (新法310条7項後段、新法311条4項後段、新法312条5項後段)、これに対する会社側の拒絶事由を明文化しました(新法310条8項各号、新法311条5項各号、新法312条6項各号)。
会社側の拒絶事由は、以下の4つです。

①当該請求を行う株主が、その権利の確保又は行使に関する調査の目的以外の目的で請求を行ったとき

②請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき

③請求者が、議決権行使書面等の閲覧若しくは謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき

④請求者が、過去二年以内において、議決権行使書面等の閲覧若しくは謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき

新株予約権に関する登記事項

新株予約権に関する登記事項について改正により規律が改められました。

募集新株予約権について、募集事項として募集新株予約権の払込金額の算定方法を定めた場合であっても、原則的には、 募集新株予約権の払込金額を登記すれば足りることとし、例外的に、登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは、 当該算定方法を登記しなければならないものとしました(新法911条3項12号へ)。

つまり、原則として募集新株予約権の発行の際には、払込金額の登記のみで足り、登記申請時にこれが確定していない場合に限り 算定方法を登記する必要がある、ということです。

会社の支店の所在地における登記を廃止

引き続き、登記関連で、旧法下において930条から932条で定められていた、 支店所在地における登記制度が廃止となりました。新法では、930条から932条が削除されています。

成年被後見人などについての取締役の欠格事由から削除

最後に、成年被後見人等(成年被後見人、被保佐人、外国の法令でこれと同様に扱われている者)について、取締役の欠格事由から削除され(331条1項2号削除)、 成年被後見人等の取締役就任の取締役就任についてその手続や行為の効力について、新たに定められました(新法331条の2)。

成年被後見人が取締役に就任するためには、成年後見人が、成年被後見人の同意を得たうえで青年後見人が承諾することが必要です(新法331条の2第1項)。
被保佐人の場合には保佐人の同意が必要です(新法331条の2第2項)。

成年被後見人・被保佐人の取締役の資格に基づく行為は、行為能力の制限を理由として取り消すことができないものと定められ、 行為の効力についても規律が整備されました(新法331条の2第4項)。

【解説つき】改正前と改正後の会社法の条文を新旧対照表で比較

それでは、改正点について、条文を確認しましょう。解説つきの新旧対照表をご用意しました。 以下のページからダウンロードできます。

新旧対照表のダウンロードはこちらから

【施行日未定】 会社法の新旧対照表 (解説つき)
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実務への影響

会社法改正による実務的な影響について簡単に説明します。

株主総会実務への影響

まずは株主総会実務における対応です。今回、株主総会関連の改正点として、電子提供措置制度が創設されました。

電子提供措置は、前述のように株主総会の日の3週間前の日、または招集通知の発送日のいずれかの早い日から提供を行う必要があります(新法325条の3第1項)。 開始時期については、遅くとも上記の期日までに行う必要があると定められているのみで、これより早く提供を行うことについては特に定めがないので、 始期はいくら早めてもいいということになります。
現在の株主総会実務において、株主総会の日3週間前、もしくは招集通知の発送日までに参考資料等が完成していないということは考えにくく、 日程的に今よりタイトになることはあまり想定されていません。

電子提供措置は株主との建設的対話にその趣旨が置かれているところ、かかる趣旨を全うすべく、 株主総会における参考資料等の中身のさらなる充実がより求められることになることが予想されます。
電子化により提供情報の量について制約が弱まることになると考えられ、株主との今まで以上の対話が求められることになります。

ただし、書面交付制度が存在していることから、書面の準備はなお必要になってくるものと思われ、 どの程度の書面交付の準備が必要かは今後の株主総会実務の動向を注視していくことが求められます。

なお、今回の電子提供制度は、上場会社について一律に適用されます。
上場会社は振替株式を利用する必要がありますが、今回振替株式制度利用の要件として、 定款に電子提供措置を定めて電子提供措置を採用している会社の株式であることが必要とされました (会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律9条により社債、株式等の振替に関する法律の一部が改正されます)。

特別決議を得て、定款変更を行う必要はなく、改正会社法の施行に伴い、電子提供措置を採用する旨の定款変更決議がなされたものとみなされることになります。

したがって、上場会社においては電子提供措置をとる必要があります。なお、電子提供措置を採用する旨の定款の変更について、 改正法の施行日から6か月以内にこれを行う必要があります。

取締役に関する実務への影響

次に、今回は取締役に関する規律の変更が多く行われたため、この点についての実務的な影響を検討します。

まず、今回の改正では取締役の報酬について、個人別の取締役報酬の決定方針を定める必要があるとされました。
決定方針として定めるべき範囲としては、会社法施行規則改正案98条の4によると、以下の事項が含まれる予定です (このほか詳細は会社法施行規則改正案98条の4各号を参照してみてください)。

①取締役の個人別の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針

②取締役の個人別の報酬等のうち、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標、 その他の当該株式会社又はその関係会社の業績を示す指標を基礎としてその額又は数が算定される報酬等(「業績連動報酬等」)がある場合には、 当該業績連動報酬等に係る業績指標の内容及び当該業績連動報酬等の額又は数の算定方法の決定に関する方針

③取締役の個人別の報酬等のうち、金銭でないものがある場合には、当該非金銭報酬等の内容及び当該非金銭報酬等の額若しくは数又はその算定方法の決定に関する方針

会社法改正以前も、有価証券報告書において、報酬額・算定方法の決定に関する方針の内容およびその決定方法について開示が求められていました。
したがって、報酬の決定方針について一定の指針がある会社は多く存在するものと思われますが、現在の決定方針の内容が今後会社法施行規則により定められる決定方針の内容と合致することになるのか、という点について検討することが必要です。

次に、取締役の報酬関連の改正として、株式等を報酬とする場合の規律の変化がありました。
旧法下の実務においては、取締役の報酬債権を現物出資する運用や、取締役が会社から受領した金銭を払い込み、株式等を受け取るような運用が行われていました。
今後は、取締役の報酬について株式・新株予約権を付与する場合には、払い込みが不要となるのでこれまでのような迂遠な処理は不要となります。

上場会社においては、株式や新株予約権を報酬の内容とする業績連動型報酬の採用についてより簡単に採用することができ、これまで以上の業績連動型報酬の導入が進むとともに、株主にとっても旧法のような金銭を形式的にと取締役に交付することによる取締役の報酬の内容の分かりにくさを解消することができ、双方にとって有益な、簡便な制度となりました。

職務執行の対価として払い込みなしに株式が発行される場合、労務出資禁止の原則に、なお抵触するのではないかという懸念も考えられますが、会計処理についてこれまでのストック・オプション等に関する会計基準にならった処理をすることで、債権者利益が害されることのないような処理がなされる予定です。

取締役に関連して、ここで補償契約・D&O保険契約の改正における実務的な影響についても検討します。
補償契約・D&O保険契約については、法務省の法的論点に関する解釈指針(脚注2)にも示されているような要件の下、これを締結している会社も存在していました。
今回、制度が明文化され新設されたことを踏まえ、自社の締結していた補償契約・D&O保険契約についてその内容を見直し、新制度におけるものと内容が適合するかを検討する必要があります。

最後に、社外取締役の活用についてです。
改正により、社外取締役設置の義務付けが行われましたが、社外取締役の設置自体は、上場会社のほとんどが行っているものであり、特に対処の必要はないものと考えられます。

社外取締役の業務執行への委託制度については、取引構造上利益相反関係の生まれるMBOを行うような場面での利用が期待されます。この際、都度取締役会決議により委託をすることが必要なので、注意が必要です。
今後は、社外性要件との関係で、社外取締役のどこまでの関与が許されるのか、といった点も検討課題となってくることになります。

参考文献

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