【2024年10月改正】
知的財産取引に関するガイドライン・
契約書のひな形とは?
基本的な考え方・ガイドラインの内容・
改正点などを分かりやすく解説!

この記事を書いた人
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弁護士法人NEX弁護士
2015年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。経済産業省知的財産政策室や同省新規事業創造推進室での勤務経験を活かし、知的財産関連法務、データ・AI関連法務、スタートアップ・新規事業支援等に従事している。
この記事のまとめ

中小企業庁は、知財取引に関する問題事例の防止等を目的に、知的財産取引に関するガイドライン(知財取引ガイドライン)および各種契約書のひな形を策定しており、2024年10月に記載を追加する改正がされています。

知財取引ガイドラインでは、問題となる場面を大きく、
①契約締結前(取引交渉段階・工場見学)
②試作品製造・共同開発等
③製造委託・製造販売・請負販売等
④特許出願・知的財産権の無償譲渡・無償実施許諾
⑤第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁
の5つに分類したうえ、各場面における基本的な考え方あるべき姿を提示しています。

知財取引ガイドラインに違反した場合、下請中小企業振興法4条に基づく指導・助言の対象となったり、独占禁止法・下請法上も問題とされたりする可能性があります。

この記事では、知財取引ガイドライン・契約書のひな形について、基本的な考え方・ガイドラインの内容・改正点などを分かりやすく解説します。

ヒー

新規取引先との契約書の内容、かなり相手に有利なものです…これって交渉して公平な内容にできませんか? 大企業だからダメかな…。

ムートン

そんなときは、知財取引ガイドラインや契約書ひな形を参考に交渉を行いましょう! しっかりとした理由があれば、交渉の糸口は見つかるはずです。

※この記事は、2024年11月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名等を次のように記載しています

  • 知財取引ガイドライン…知的財産取引に関するガイドライン
  • 不競法…不正競争防止法
  • 独占禁止法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
  • 下請法…下請代金支払遅延等防止法

知的財産取引に関するガイドラインとは

知的財産取引に関するガイドライン知財取引ガイドライン)とは、知財取引に関する問題事例等の調査を踏まえ、当該問題事例の防止や知財取引における企業間の共存共栄を推進するために、知財取引を行うに当たり注意すべきポイントをまとめたものです。知財取引ガイドラインと併せて、各種契約書のひな形も策定されています。

詳しくは、「知的財産取引に関するガイドラインの内容」で記載しますが、知財取引に関する問題事例等の調査においては、例えば、大企業が秘密保持契約の締結なく中小企業の情報を一方的に取得しようとするケースや、共同研究開発等の成果について発明の寄与度に関係なく全て大企業に帰属するとされているケース等、数多くの問題事例が報告されており、こういった問題事例の防止等のために知財取引ガイドラインが策定されています。

法律上の位置づけ

中小企業庁では、下請中小企業の振興を図るため、下請中小企業振興法3条1項に基づき、「振興基準」を策定しています。

そして、当該振興基準の第8の5「知的財産の保護及び取引の適正化」には、

親事業者及び下請事業者は……「知的財産取引に関するガイドライン」に掲げられている「基本的な考え方」に基づき、知的財産権等……に係る取引を行うものとする。その際、知的財産権等の取扱いに係る取引条件の明確化のため、同通達附属資料「契約書ひな形」の活用を推奨する。

と記載されています。このため、知財取引ガイドラインは、下請中小企業振興法・振興基準に関連するガイドラインといえます。

知財財産取引に関するガイドラインに違反した場合

知財取引ガイドラインに違反した場合に行政処分や罰則の対象となるかについては、中小企業庁の「振興基準に関するよくある質問」のQ7において、以下のとおり規定されています。

【全体的な規定の整理】
(1)「~するものとする」… 規範性が高く、個別事案の問題性の大きさ等を踏まえ、場合によって下請中小企業振興法上の指導・助言の対象となる得る規定。

引用元|中小企業庁「振興基準に関するよくある質問」Q7

前述のとおり、振興基準では、「「知的財産取引に関するガイドライン」に掲げられている「基本的な考え方」に基づき、知的財産権等……に係る取引を行うものとする。」と記載されていますので、知財取引ガイドラインの「基本的な考え方」に違反する場合には、下請中小企業振興法4条に基づく指導・助言の対象となる可能性があるといえます。

また、知財取引ガイドラインの「基本的な考え方」に反する行為のうち一部の行為については、以下の各公正取引委員会策定の報告書等において、優越的地位の濫用行為に該当しうる行為等としても取り上げられていますので、知財取引ガイドラインの「基本的な考え方」に反する行為を行う場合には、独占禁止法下請法との関係についても留意が必要です。

  • 「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」
  • 「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」
  • 「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」
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