薬機法とは?
薬事法との違い・規制される医薬品等の種類・
主なルール・違反時の罰則など
を分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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薬機法とは、医薬品等の製造や販売などに関するルールを定め、保健衛生の向上を図ることを目的とした法律です。
薬機法では、
・医薬品
・医薬部外品
・化粧品
・医療機器
・再生医療等製品
の製造・販売などに関する規制が定められています。該当する商品を製造・販売する事業者は、薬機法の規制を遵守しなければなりません。違反した場合には、各種の行政処分・課徴金納付命令・刑事罰の対象になる可能性があります。
今回は薬機法について、基本から分かりやすく解説します。
※この記事は、2023年2月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・薬機法…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
・薬機法施行令…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令
・薬機法施行規則…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則
目次
薬機法とは
薬機法とは、医薬品等の製造や販売などに関するルールを定め、保健衛生の向上を図ることを目的とした法律です。薬機法の規制対象となっている医薬品等を製造・販売する事業者は、広告規制をはじめとした各種のルールを遵守する必要があります。
薬機法の目的
薬機法の目的は、製造・販売規制によって医薬品等の品質・有効性・安全性を確保し、保健衛生上のリスクを防ぐことにあります。
人の身体に直接作用する医薬品等は、その品質・有効性・安全性が国民の健康に直結します。そのため、品質不良などに起因する健康被害の発生・拡大を防ぐ目的で、薬機法において必要な規制が設けられています。
また、健康や美容などへの関心を悪用して効果のない医薬品等を売りつけることは、消費者保護の観点から大いに問題があります。一般消費者に対する誤導的な医薬品等の広告を防ぎ、消費者保護を図ることも薬機法の目的の一つです。
薬事法との違い
薬機法は、以前は「薬事法」という名称の法律でした。
しかし、2014年に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」により、法令名が薬事法から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」へ変更されました。
薬事法から薬機法への改正に当たっては、医療機器のIT化に伴う新規制の導入や、「再生医療等製品」の新定義および規制の導入などが行われました。
薬機法によって規制されている商品の種類
薬機法では、以下の5種類の商品を総称して「医薬品等」と定義し(薬機法1条)、それぞれについて規制を設けています。
- 医薬品
- 医薬部外品
- 化粧品
- 医療機器
- 再生医療等製品
医薬品
「医薬品」とは、以下の物をいいます(薬機法2条1項)。
①日本薬局方に収められている物
厚生労働省ウェブサイト「「日本薬局方」ホームページ」
②人または動物の疾病の診断・治療・予防を使用目的とする物であって、機械器具等でないもの
③人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの
<医薬品の例>
抗アレルギー薬、漢方薬、経口投与のビタミン剤など
医薬部外品
「医薬部外品」とは、
- 以下の物であって、
- 人体に対する作用が緩和なもの
をいいます(薬機法2条2項)。
①次のいずれかを使用目的とする物(※)であって、機械器具等でないもの
・吐き気その他の不快感、または口臭や体臭の防止
・あせも、ただれ等の防止
・脱毛の防止、育毛または除毛
※上記使用目的に該当しても、医薬品としての使用目的も併せもつ物は医薬品になります
②人または動物の保健のためにする、ねずみ・はえ・蚊・のみその他これらに類する生物の防除を使用目的とする物(※)であって、機械器具等でないもの
※この使用目的に該当しても、医薬品としての使用目的も併せもつ物は医薬品になります
③医薬品としての使用目的をもつ物のうち、厚生労働大臣が指定するもの(指定医薬部外品)
※記事執筆時点では、27種類のものが、指定医薬部外品に指定されています(厚生労働省告示第25号「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第二項第三号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬部外品」)
<医薬部外品の例>
虫歯予防の歯磨き粉、制汗剤、薬用化粧品など
化粧品
「化粧品」とは、
- 以下のいずれかの目的のために、
- 身体に塗擦・散布その他これらに類似する方法で使用される物で、
- 人体に対する作用が緩和なもの
をいいます(ただし、医薬品としての使用目的を併せもつ物、および医薬部外品を除きます。薬機法2条3項)。
- 人の身体を清潔にする
- 人を美化する
- 人の魅力を増す
- 人の容貌を変える
- 人の皮膚または毛髪を健やかに保つ
<化粧品の例>
シャンプー、リンス、石けん、ファンデーション、マニキュアなど
医療機器
「医療機器」とは、
- 人・動物の疾病の診断・治療・予防、または人・動物の身体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く)であって、
- 薬機法施行令別表第一に定められるもの
をいいます(薬機法2条4項、薬機法施行令1条)。
<医療機器の例>
メス、心臓ペースメーカー、レントゲン装置、コンタクトレンズ、救急ばんそうこう、体温計、血圧計、家庭用マッサージ器など
再生医療等製品
「再生医療等製品」とは、
- 以下の物(医薬部外品・化粧品を除く)であって、
- 薬機法施行令別表第二に定められるもの
をいいます(薬機法2条9項、薬機法施行令1条の2)。
①人・動物の身体の構造・機能の再建・修復・形成、または疾病の治療・予防を使用目的とする物のうち、人または動物の細胞に培養その他の加工を施したもの
②人・動物の疾病の治療を使用目的とする物のうち、人または動物の細胞に導入され、その体内で発言する遺伝子を含有させたもの
<再生医療等製品の例>
培養皮膚、培養軟骨など
薬機法で定められる主なルール
薬機法では、主に以下のルールが定められています。
- 各種事業の許可制・登録制
- 医薬品等の広告規制
- 医薬品等の取り扱いルール
以下、それぞれ解説していきます。
各種事業の許可制・登録制
以下のいずれかに該当する行為を業として行うには、薬機法に基づく許可・登録を受けなければなりません。許可・登録を受けずにこれらの行為を業として行った場合、薬機法違反となります。
- 許可制の対象行為
-
・薬局の開設(薬機法4条1項)
・医薬品、医薬部外品、化粧品の製造販売(同法12条1項)
・医薬品、医薬部外品、化粧品の製造(同法13条1項)
・医療機器、体外診断用医薬品の製造販売(同法23条の2第1項)
・再生医療等製品の製造販売(同法23条の20第1項)
・再生医療等製品の製造(同法23条の22第1項)
・医薬品の販売(同法24条1項)
・高度管理医療機器等の販売および貸与(同法39条1項)
・医療機器の修理(同法40条の2第1項)
・再生医療等製品の販売(同法40条の5第1項)
- 登録制の対象行為
-
・医療機器、体外診断用医薬品の製造(同法23条の2の3第1項)
医薬品等の広告規制
一般消費者に対する誤導的な広告表現を排除するため、薬機法では虚偽・誇大広告に関する規制が設けられています。
薬機法における「広告」とは
薬機法における「広告」とは、行政通達により、以下の3つの要件を満たすものと定義されています。
①顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日医薬監第148号)
②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
③一般人が認知できる状態であること
薬機法で禁止されている広告|虚偽または誇大広告など
薬機法では、以下の広告表現が禁止されています。
①虚偽または誇大な広告
医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能に関して、虚偽または誇大な広告をしてはなりません(薬機法66条1項)。
医師などが医薬品等の効能・効果・性能を保証したと誤解されるおそれがある広告も、禁止されています(同条2項)。
②特定疾病用の医薬品等に関する一般向け広告
がん・肉腫・白血病の治療を使用目的とする医薬品・再生医療等製品のうち、医師または歯科医師の指導の下で使用しなければ危険が大きいものについては、医薬関係者を除く一般消費者向けの広告が禁止されています(同法67条1項、薬機法施行令64条、薬機法施行規則228条の10第1項、第2項)。
③未承認医薬品等に関する広告
薬機法に基づく承認・認証を経ていない医薬品・医療機器・再生医療等製品については、一切広告をしてはなりません(薬機法68条)。
広告規制の対象者|何人も=全ての人
薬機法に基づく広告規制の対象者は「何人も」、つまり全ての人とされています。
したがって、薬機法に基づく許可・登録を受けて営業しているか否かにかかわらず、医薬品等に関する広告を行う場合は、薬機法の規制を遵守しなければなりません。
薬機法に違反する広告表現事例
医薬品等に関する広告表現の中では、特に
- 名称
- 製造方法
- 効能
- 効果
- 性能
に関する虚偽広告または誇大広告が問題になることが多いです。
例えば以下に挙げるような広告表現は、薬機法違反の虚偽広告または誇大広告に当たります。
(例)
①名称
「増毛剤」
→増毛効果がない場合は虚偽広告に当たる
②製造方法
「天才薬剤師による調合」
→消費者に対して過度にセンセーショナルな印象を与えるものであり、誇大広告に当たる
③効能・効果
「服用すれば必ずダイエット可能」
→「必ず」効能・効果が生じることはあり得ないため、虚偽広告または誇大広告に当たる
「あっという間に20代並みの身体へ若返り」
→「20代並み」とは何かが不明確であり、根拠も示されていないため、虚偽広告または誇大広告に当たる
④性能
「他社比3倍の性能を有する画期的医療機器」
→「他社比3倍」の根拠を示すデータが示されていないため、虚偽広告または誇大広告に当たる
医薬品等の取り扱いルール
広告規制以外にも、薬機法では、医薬品等の取り扱いルールが定められています。医薬品等の製造・販売を行う事業者は、商品の種類に応じて以下の薬機法上の規制を遵守しなければなりません。
①処方箋医薬品の販売規制
医師・歯科医師・獣医師が交付する処方箋を持たない者に対して、処方箋医薬品を販売することは原則として禁止です(薬機法49条1項)。
②容器・被包上の表示に関する規制
医薬品の直接の容器・被包には、薬機法で定められる事項を見やすい方法で記載しなければなりません(同法50条~53条)。
③記載が禁止される事項
虚偽または誤解を招くおそれのある事項、未承認の効能・効果・性能、および保健衛生上危険がある用法・用量・使用期間については、医薬品やその添付文書・容器・被包に記載してはいけません(同法54条)。
④薬機法違反の医薬品の販売禁止
薬機法の規制に反する医薬品を販売してはいけません(同法55条、56条)。
薬機法に違反した場合の罰則(ペナルティ)
薬機法に違反した場合、各種の行政処分・課徴金納付命令・刑事罰を受ける可能性があります。
各種の行政処分
薬機法に違反する医薬品等を販売している場合、厚生労働大臣または都道府県知事から廃棄・回収等の命令を受ける可能性があります(薬機法70条)。
さらに、医薬品等の品質管理や製造販売後安全管理の方法が不適切な場合は、厚生労働大臣から業務停止命令を受ける可能性があります(同法72条)。
薬機法違反の状態が悪質な場合には、医薬品等の製造・販売に関する許可・登録が取り消される可能性もあるので注意が必要です(同法75条、75条の2)。
課徴金納付命令
薬機法上の広告規制に違反した場合、厚生労働大臣から課徴金納付命令を受ける可能性があります(薬機法75条の5の2)。
課徴金額は原則として、違反広告を行っていた期間における医薬品等の対価(売上)の4.5%です。対象商品の売れ行きが好調だった場合には、莫大な課徴金の納付を命じられる可能性があります。
刑事罰
薬機法に違反する行為に対しては、刑事罰が科されることもあります。主な違反行為と法定刑は、以下のとおりです。
無許可営業 処方箋医薬品等の販売規制違反 | 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科(薬機法84条) |
虚偽または誇大な広告 未承認医薬品等に関する広告 薬機法違反の医薬品の販売 | 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科(同法85条) |
無登録営業 特定疾病用の医薬品等に関する一般向け広告 | 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または併科(同法86条1項) |
薬機法違反を犯さないための注意点
企業が薬機法違反を犯さないためには、特に以下の2点にしましょう。
- 販売する商品が「医薬品等」に当たるかを確認する
- 適切に広告審査を行う
販売する商品が「医薬品等」に当たるかを確認する
薬機法の規制は、幅広い商品に及んでいます。特に医薬部外品や化粧品については、自社商品が該当することを認識していない会社も少なからず存在します。
薬機法が適用されることに気づかず、知らないうちに違反を犯してしまわないように、自社商品の中で「医薬品等」に該当するものがないかをチェックしましょう。
適切に広告審査を行う
薬機法が適用される商品については、特に広告規制に注意が必要です。虚偽広告や誇大広告を行ってしまうと、行政処分・課徴金納付命令・刑事罰の対象になる可能性があります。
薬機法上の広告規制については、厚生労働省がガイドラインを公表しています。法令の条文と併せてガイドラインも参照し、自社が販売する医薬品等の広告内容に問題がないか、適切に審査を行ってください。
この記事のまとめ
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