随意契約とは?
入札との違い・メリット・デメリット・
締結できるケース・
締結の流れなどを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「随意契約」とは、国・地方公共団体などの公共機関が発注を行う際に、公共機関側が任意に受注者を選んで締結する契約です。
随意契約のメリットは、締結に至るまでの手続きが簡素であるため、スピーディに発注を行うことができる点です。その一方で、受注者の恣意的な選択が行われ、癒着や汚職の原因になってしまう懸念があります。
公共機関による発注については、事業者間の競争および選考の透明性を確保するため、受注者を一般競争入札によって選ぶことが原則です。ただし、一定の例外的場合に限って随意契約によることが認められています。
この記事では随意契約について、入札との違い・メリット・デメリット・締結できるケース・締結の流れなどを解説します。
※この記事は、2024年4月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
随意契約とは
「随意契約」とは、国・地方公共団体などの公共機関が発注を行う際に、公共機関側が任意に受注者を選んで締結する契約です。
随意契約と入札の違い
公共機関が発注を行う場合は入札を実施することが原則であり、随意契約は例外と位置付けられています。
「入札」とは、公共機関が発注を行う際に、受注希望者に受注金額を提示させた上で、最もよい条件(=受注金額が安い)を提示した者を受注者に選ぶ方式です。
誰でも参加できる「一般競争入札」のほか、公的機関側が入札者を指名して行う「指名競争入札」があります。
これに対して随意契約は、公共機関が任意に受注者を選ぶものであるため、入札に比べて柔軟性が高い手続きといえます。
なお、企画提案や技術提案なども募集して総合評価を行う「企画競争入札」は、法律上は随意契約に当たります。
随意契約のメリット・デメリット
随意契約のメリットは、締結に至るまでの手続きが簡素である点です。入札に比べて踏むべきステップが少ないため、スピーディに発注を行うことができます。
その反面、公共機関によって受注者の恣意的な選択が行われる懸念があることが、随意契約のデメリットです。特定の事業者との癒着は公務の透明性・信頼性を害するため、随意契約はあくまでも例外として位置づけられています。
随意契約に選ばれるのはどんな企業?
公共機関が随意契約の相手方を選ぶ際には、受注者としての適性の有無を総合的に判断しています。
一例として、随意契約の受注者には、以下のような条件が求められる傾向があります。
- 随意契約の受注者に求められる条件の例
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・受注内容に関する実績やノウハウがある(過去に同種の案件を公共機関から受注している)
・受注に必要となる特別な技術や経験を有しており、他に対応できる事業者がいない
・複数年にわたって継続的に受注できる
など
随意契約を締結できるケース
随意契約は入札の例外であるため、法令によって認められた場合に限り締結することができます。
国が随意契約を締結できるケース
国が締結する契約については、会計法および政令(予算決算及び会計令)において随意契約によることができる場合が定められています。
国による随意契約が認められる場合の例は、以下のとおりです(会計法29条の3第5項、予算決算及び会計令99条・99条の2・99条の3)。
- 国による随意契約が認められる場合の例
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① 類型的に随意契約が認められるもの(予算決算及び会計令99条)
・国の行為を秘密にする必要があるとき
・予定価格が一定水準以下であるとき
・運送または保管をさせるとき
・外国で契約をするとき
など② 競争に付しても入札者がないとき、または再度の入札をしても落札者がないとき(同99条の2)
※最初競争に付するときに定めた条件(契約保証金・履行期限を除く)を変更しない場合に限る③ 落札者が契約を結ばないとき(同99条の3)
※落札金額の制限内で、最初競争に付するときに定めた条件(履行期限を除く)を変更しない場合に限る
地方公共団体が随意契約を締結できるケース
地方公共団体が締結する契約については、地方自治法および地方自治法施行令において随意契約によることができる場合が定められています。
地方公共団体による随意契約が認められる場合の例は、以下のとおりです(地方自治法234条2項、地方自治法施行令167条の2)。
- 地方公共団体による随意契約が認められる場合の例
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・予定価格が一定水準以下であるとき
・性質または目的が競争入札に適しない契約をするとき
・緊急の必要により競争入札に付することができないとき
・競争入札に付することが不利と認められるとき
・時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき
・競争入札に付し入札者がないとき、または再度の入札に付し落札者がないとき
※最初競争に付するときに定めた条件(契約保証金・履行期限を除く)を変更しない場合に限る・落札者が契約を締結しないとき
※落札金額の制限内で、最初競争に付するときに定めた条件(履行期限を除く)を変更しない場合に限る
随意契約を締結する際の流れ
国または地方公共団体との間で随意契約を締結する際の流れは、大まかに以下のとおりです。
① 見積書の作成・提出・見積もり合わせ
② 国・地方公共団体による発注先の決定
③ 随意契約の締結
見積書の作成・提出・見積もり合わせ
国または地方公共団体が随意契約を締結するに当たっては、受注者が提示する対価が適正であるかどうかチェックします。
そのため、随意契約の受注者候補である事業者は、相手方となる国または地方公共団体に対して見積書を提出しなければなりません(ごく少額の契約を締結する場合を除く)。
予定価格が高くなればなるほど、見積書を徴取すべき事業者の数が増える傾向にあります。2者以上の事業者から見積書を徴取した場合には、比較検討した上で受注者を決定します(=見積もり合わせ)。
なお、見積書の作成に当たっては、発注者である国または地方公共団体が公表する仕様書に従い、必要な情報を正確に記載しなければなりません。記載内容に誤記などがあると、見積書が無効となるおそれがあるので注意が必要です。
国・地方公共団体による発注先の決定
随意契約は入札(一般競争入札・指名競争入札)と異なり、安い価格で見積もりを出した事業者が自動的に選定されるわけではありません。発注者である国または地方公共団体が、総合的な観点から随意契約の受注者を選定します。
ただし、国または地方公共団体が締結する随意契約に関しては、そもそも見積もりの提示を依頼する段階で、信頼できる事業者をピックアップするのが一般的です。
また、各自治体が定めている随意契約のガイドラインでは、最も有利な(安い)価格で見積もりを提出した者を受注者に選定することを原則とし、その他の理由で選定する場合には第三者が納得できる理由を明らかにすべきとされている例が多いです。
そのためほとんどのケースでは、見積もりの価格が最も重要な選考ファクターとなります。
公共工事等を受注するためには、競合他社の動向を分析しながら、適切な価格による見積もりを提示することが大切です。
随意契約の締結
随意契約の受注者に選定されたら、国または地方公共団体との間で随意契約を締結します。
契約締結の手続きについては、通常の企業間における契約と基本的に同じです。国または地方公共団体と、受注者それぞれの権限者が調印を行い、作成した契約書を双方が保管することになります。
随意契約の締結後、契約内容に従って公共工事等を実施します。
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