【民法改正(2020年4月施行)に対応】
利用規約(定型約款)のレビューポイントを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

改正民法(2020年4月1日施行)に対応した利用規約(定型約款)のレビューポイントを解説!!

利用規約(定型約款)をレビューするときの改正ポイントについて、サービス提供者とユーザーのそれぞれの立場から、くわしく解説します。 気を付けるべきレビューポイントは次の3つです。

ポイント1│「定型約款」にあたるか?
ポイント2│利用規約(定型約款)が、契約の内容となっているか?
ポイント3│どのように、利用規約(定型約款)を変更するか?

ヒー

先生、とうとう民法が改正されましたね。今までどおり利用規約をレビューして大丈夫でしょうか?

ムートン

新しくルールが定められた「定型約款」については、サービス提供者もユーザーも気をつけるべき点があります。利用規約をレビューするときは、「定型約款」にあたるかどうかを理解したうえで、レビューをする必要があります。

※この記事は、2020年8月11日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・民法…2020年4月施行後の民法(明治29年法律第89号)
・旧民法…2020年4月施行前の民法(明治29年法律第89号)

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定型約款とは

改正の背景

大量の取引を迅速かつ効率的に行うためには、詳細で画一的な取引条件を定めた約款を用いる必要があります。そのため、事業者が提供する業務に関して、あらかじめ事業者が作成し定型化された契約条項群である「約款」に基づく取引が広く行われています。

具体例

・電気・ガスの供給契約

・保険約款

・インターネットの利用規約

しかし、今まで民法にはこの約款に関する規定がなく、解釈も確立していなかったため法的に不安定でした。すなわち、約款の有効性をめぐって次のような問題点が指摘されていました。

改正前の問題点

・約款に定められた各条項が契約内容となる要件が不明確であった
民法の原則によれば、契約当事者は契約の内容を認識していなければ契約に拘束されません。しかし、約款を用いた取引をする多くの顧客は、約款に記載された個別の条項を認識していないのが通常です。 約款には大抵小さな字で膨大な条項が記載されています。これをひとつひとつきっちり読んでいる人は少ないかと思います。よく読んでみると顧客にとって極めて不利益な内容が含まれていることもあります。 そのため、どのような場合に個別の条項が契約内容となるのか(=当事者を拘束するのか)が不明確でした。

・事業者による一方的な約款の変更を可能とする条項の有効性について疑義があった
民法の原則によれば、契約の内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得ることが必要です。しかし、契約内容に少しでも変更があった場合に取引相手全員に個別に承諾をとらなければならないとなると、取引の効率性、有効性が損なわれる可能性があります。 承諾を得られない場合に備えて「この約款は当社の都合で変更することがあります。」との条項を設ける約款もあります。しかし、この条項の有効性についても判断が分かれていました。

参考元│ 法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」P.30

このような問題を解消し、安定した取引を維持するため、約款に関するルールが新設されました。

定型約款の定義

民法のルールが適用される約款について、次のように定義されています(民法548条の2第1項)。これを「定型約款」と呼びます。

(定型約款の合意)
第548条の2 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
⑴定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
⑵定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2(略)

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すなわち、次の①~③の要件をみたした場合に、「定型約款」として改正された民法のルールが適用されます。

定型約款の要件

① ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引であること
② 内容の全部・一部が画一的であることが、いずれの当事者にとっても合理的であること
③ 契約の内容とすることを目的として、特定の者によって準備された条項の総体

なお、①②の要件を満たす取引のことを「定型取引」といいます。

ヒー

先生、よく「利用規約」という名称のものと見かけますが、これは定型約款にあたるのでしょうか??

ムートン

「利用規約」という名称であっても、定型約款の要件をみたすものであれば、それは「定型約款」となります。 必ずしも「定型約款」という名称が使われているわけではないので、要件にあてはまるかをよく確認しましょう。

定型約款の具体例

定型約款にあたるものの例としては次のようなものがあげられます。

定型約款にあたる例

・電気・ガスの供給約款
・保険約款
・インターネットの利用規約
・クレジットカードの利用規約
・旅行業約款
・宿泊約款
・鉄道・バスの運送約款

他方で、定型約款にあたらないもの例として次のようなものがあげられます。

定型約款にあたらない例

・労働契約や賃貸借契約など
これらは、相手方の個性に着目して締結されるため、「不特定多数の者を相手方とする取引」(要件①)とはいえず、「定型約款」とはいえません。

・個別の交渉による修正・変更が予定されているようなサービスの利用規約
事業者が取引契約のひな形を準備していることがあるでしょう。 しかし、これらのひな形をたたき台として、相手方と個別に交渉することを予定されている場合は、これらのひな形は、「定型約款」とはいえません。一方当事者にとって合理的な内容であるに過ぎないため「内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの」(要件②)にあたらないからです。 なお、仮に、これらのひな形が修正なしにそのまま用いられたとしても「定型約款」には当たりません。

・事業者が自ら使用するマニュアル、取扱ルール
「契約の内容とすることを目的」(要件③)とするものではないため、「定型約款」には当たりません。

定型約款が契約内容となる要件

次の①②のいずれかの場合は、定型約款の条項の内容を相手方が 認識していなくても、合意したものとみなし、契約内容をなることが明確になりました(民法548条の2第1項)。

定型約款が契約内容となる場合

① 定型約款を契約内容とする旨の合意があった場合
② 取引に際して、定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合(※「公表」では足りず、個々の取引相手に対する「表示」までが必要)

これを「みなし合意」と呼びます。

上記②については、定型約款を準備している側のウェブサイトなどで一般的にその旨を公表しているだけでは足りません。 個別の相手方に書面を交付すること、あるいは、インターネットを介した取引であれば契約締結の同意ボタンに至るまでに、画面上で相手方が認識できる状態にすることが必要です。

公表によるみなし合意

鉄道・バス等による旅客運送取引や、高速道路等の利用取引においては、上記①②のような合意・表示をすることが困難となります。 そこで、これらの取引については、個別の業法に特則が定められています。 すなわち、相手方に対する表示を要せず、 定型約款を契約の内容とする旨の「公表」をすれば、 当事者が定型約款の個々の条項についても合意したものとみなされます。 たとえば、次のような業法に特則が定められています。
・鉄道営業法
・軌道法
・海上運送法
・道路運送法
・航空法
・道路整備特別措置法
・電気通信業法

不当条項(契約の内容とすることが不適合な内容の契約条項)の規制

定型約款に、取引相手にとって不当な条項が定められているときは、そのまま契約の内容になってしまうのでしょうか? 約款を用いる取引では、取引相手が約款の詳細な内容を把握していないことが多く、不当な条項が、そのまま契約内容となるのは不公平です。 そこで、次の2つの要件をみたす条項は、契約内容となりません(民法548条の2第2項)。

不当条項が契約の内容とならない要件

① 相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であること
② 定型取引の態様・実情や、取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められること

たとえば、次のような条項があげられます。

具体例

・相手方である顧客に対して過大な違約罰を定める条項

・定型約款準備者の故意または重過失による損害賠償責任を免責する旨の条項

・想定外の別の商品の購入を義務づける不意打ち的抱合せ販売条項

じつは、消費者契約法には、不当条項に関する民法と似たような書きぶりの規定があります(消費者法10条)。 民法と消費者契約法のそれぞれの条文を比べてみてください。

【民法】

(定型約款の合意)
第548条の2 (略)
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、 相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、 その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして 第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの については、合意をしなかったものとみなす。

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【消費者契約法】

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して 消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの は、無効とする。

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消費者契約法の定めには、「その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして」という文言がないことに気づきましたか? 民法の定型約款では、「契約の内容を具体的に認識しなくとも、個別の条項につき合意したものとみなす」という定型約款の特殊性を踏まえ、 取引全体にかかわる事情取引通念も考慮されるのです。

定型約款の内容の表示請求

今回の改正では、定型約款を準備する事業者に対して、定型約款の事前の開示義務や、取引相手の認識可能性といったものは求められていません。 しかし、取引相手にとっては、「定型約款の内容をきちんと把握しておきたい」と思ったときに、定型約款にアクセスできる機会があることは重要です。

そこで、定型約款を準備する事業者に対して、次のように、相手方から請求があった場合に、 定型約款を開示する義務を定めています(民法548条の3第1項本文)。

(定型約款の内容の表示)
第548条の3 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、 定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

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定型約款を準備する事業者が、取引合意の前に取引相手からの開示請求を拒んだときは、定型約款は契約の内容とはなりません(民法548条の3第2項)。 もっとも、一時的な通信障害や正当な理由で開示できない場合は除かれます(同ただし書)。

なお、次のようなケースでは、開示義務はありません(同ただし書)。

  • 取引相手から開示請求される前に、定型約款を記載した書面を交付した場合
  • WEB上で約款内容を提供した場合

一度、取引相手に対して、定型約款の内容にアクセスできる機会を与えれば、再度、開示する必要はないということです。

【定型取引合意の後相当の期間内】とは?

期間の起算点や長さは、個別に判断されることになりますが、一般的な消滅時効期間が5年であることから、最終の取引時から5年程度は表示請求に応じる必要があると考えられています。

【相当な方法】とは?

次のような方法が想定されています。
・取引相手に定型約款を面前で示す方法
・定型約款を書面または電子メール等で送付する方法
・定型約款が掲載されているウェブサイトを案内する方法

定型約款の変更要件

長期にわたって継続する取引では、法令の変更や経済情勢・経営環境の変化に対応して、後から、定型約款の内容を変更する必要が生じます。 民法の原則によれば、契約内容を事後的に変更するには、個別に取引相手の承諾を得なければなりません。しかし、多数の取引相手から個別に変更についての同意を得るのは困難です。

だからといって、事業者が、自由に契約内容を変更できるとすれば、取引相手に不測の不利益をもたらすおそれがあります。

このような事業者による契約変更の必要性と取引相手の保護のバランスを図るため、次のいずれかの要件があれば、取引相手の承諾なく、定型約款を変更することができます(民法548条の4)。

定型約款を変更することができる要件

① 変更が相手方の一般の利益に適合する場合(1号)
または
② 次の2つの要件をみたす場合(2号)
・変更が契約目的に反しないこと
・変更の必要性・変更内容の相当性・変更する旨の規定の有無などの事情に照らし合理的であること

これらの要件をみたすときは、取引相手に不利益となることがないと考えられるからです。

要件②(民法548条の4第1項2号)は、2つの要件が含まれています。

定型約款の変更が、 契約をした目的に反せず、かつ、 変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

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【契約をした目的に反しない】とは?

契約目的(「契約をした目的」)とは、契約当事者の主観的なもの(認識しているもの)ではありません。すなわち、一方当事者が、「これが契約目的だ」と思っているだけでは足りず、相手方とコミュニケーションをとって、お互いに「これが契約目的ですね」と共有したものでなければなりません。 そのため、契約条件の重大な部分を変更すると、契約目的に反するものと解されるおそれがあります。

【変更が合理的】とは?

「変更の必要性」「変更内容の相当性」「変更する旨の規定の有無」などの事情を考慮して判断します。 定型約款を「変更する旨の規定」とは、たとえば、次のような定めです。

「この約款は、当社の裁量により、変更することがあります」

なお、このように定めなければ絶対に約款を変更することができない、というわけではありません。このような定めの有無は、あくまで、合理性を判断するときの1つの考慮要素にすぎません。

もっとも、
・定型約款の変更を将来的に行う可能性があること
・実際に変更するときの条件と手続き
を約款に具体的に定めておき、約款を変更するときに、定めた条件と手続きのとおり約款を変更すれば、「変更の合理性」が認められやすくなります。

また、その他考慮される事情(「その他の変更に係る事情」)には、次のようなものがあります。

  • 変更によって取引相手が受ける不利益の内容や程度
  • このような不利益を軽減させる措置がとられているか

たとえば、
・取引相手に解除権を与えているか
・変更の効力発生までに、どの程度の猶予期間を設けているか
といった事項が考慮されます。

定型約款を変更するための手続き

定型約款を変更することができる要件(民法548条の4)をみたしたとしても、次の2つの手続きを行わなければ、定型約款を変更することはできません(民法548条の4第2項)。

定型約款を変更することができる要件

① 約款の変更の効力が発生する時期を定めること
② 次の事項をインターネットの利用その他適切な方法により周知すること
・定型約款を変更する旨
・変更後の定型約款の内容
・変更後の定型約款の効力発生時期

変更内容が、相手方の一般の利益に適合しない場合は、効力発生時期までに、これらを周知しなければ、約款変更の効力が発生しません(民法548条の4第3項)。

(定型約款の変更)
第548条の4(略)
⑴(略)
⑵定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、 その効力発生時期を定め、かつ、 定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3 第1項第2号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
4 (略)

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利用規約のレビューで気を付けるべき3つのポイント

サービスの利用規約について、サービス提供者とユーザーのそれぞれの立場から、どのような点に気を付けるべきかを解説します。 気を付けるべきレビューポイントは次の3つです。

気を付けるべきレビューポイント

・ポイント1│「定型約款」にあたるか?
・ポイント2│利用規約(定型約款)が、契約の内容となっているか?
・ポイント3│どのように、利用規約(定型約款)を変更するか?

ポイント1│「定型約款」にあたるか?

サービス提供者の立場であっても、ユーザーの立場であっても、まずは、その利用規約が「定型約款」の要件をみたすものであるかどうかを確認する必要があります。

多くのサービスの利用規約は、不特定多数を相手にするものではなく、個別の交渉が予定されているでしょう。しかしながら、事業者間の取引であるからといって、必ずしも「定型約款」にはあたらない、というわけではありません。 先に述べた「定型約款が契約内容となる要件」をみたすか否かを個別に検討しましょう。

「定型約款」にあたる場合は、次に解説するポイントを確認します。

ポイント2│利用規約(定型約款)が、契約の内容となっているか?

利用規約(定型約款)を作成しても、定型約款を変更するための手続きをふまなければ、契約の内容とはなりません。 とくに、サービス提供者の立場としては、せっかく作った利用規約(定型約款)が、契約の内容とならなければ、その苦労はすべて水の泡です。 そこで、利用規約(定型約款)で定めた条項が、契約の内容となるよう、次の要件①と②のいずれかの手続きを行いましょう。

  1. 相手方との間で定型約款を契約内容とする旨の合意をする
    または
  2. 定型約款を契約内容とする旨を相手方に事前に表示する
ヒー

要件①と②では、どちらの方法がよいのでしょうか?

ムートン

どちらでも構いませんが、要件②には、「表示」をしたか否かをめぐって争いになるおそれがあります。紛争予防のためには、要件①の「合意」によるほうが賢明です。

たとえば、ユーザーが提出する申込書に、次のように定めます。

記載例

私は、本サービスの利用に当たっては、●●利用規約の規定を契約内容とすることを承諾の上、申し込みます。

ウェブサイトで契約を成立させるときは、ウェブサイト上の申込画面に、次のようなチェックボックスを設置し、クリックによりチェックを入れたうえで、申込みボタンをクリックする仕様にする方法により、同意を取得することがあります。

記載例

☑私は、本サービスの利用に当たっては、●●利用規約の規定を契約内容とすることを承諾する

ポイント3│どのように、利用規約(定型約款)を変更するか?

利用規約(定型約款)は、「ユーザーの利益に適合するとき」や、「契約をした目的に反せず、かつ、変更内容が合理的なものであるとき」には、ユーザーの同意を得なくても、サービス提供者が、一方的に、その内容を変更することができます(民法548条の4第1項)。

ユーザーの立場でレビューするとき

ユーザーの立場としては、サービス提供者によって利用規約(定型約款)が変更される場合があることを予め肝に命じておくべきです。 また、どのような手続きで利用規約(定型約款)が変更されるのかという規定をしっかり確認しておきましょう。 利用規約(定型約款)の定めからは不明確であるときは、サービス提供者に問い合わせるのが賢明です。

たとえば、次のような定めのときは、変更後の利用規約(定型約款)が掲載されるホームページのURLなどを問い合わせることがあります。

記載例

(規約の改定・変更)
当社は、あらかじめ、当社所定のホームページに掲載したうえで、本規約を改定及び変更することができます。

サービス提供者の立場でレビューするとき

サービス提供者としては、なるべく柔軟に利用規約(定型約款)の内容を変更することができるようにするのが有利です。

利用規約(定型約款)の内容を一方的に変更するにあたっては、必ずしも変更条項を定める必要はありません。 しかし、ユーザーにとって不利益となりうる内容への変更は認められにくいものです。 そこで、ユーザーにとって不利益となりうる内容に変更するときであっても、ユーザーの承諾なく、利用規約(定型約款)を変更することが認められやすくなるように注意する必要があります。 たとえば、利用規約(定型約款)に次のような条項を定めることが考えられます。

記載例

(規約の改定・変更)
1 当社は、民法第548条の4の規定により本約款の変更をすることがきます。
2 当社は、本約款を変更する場合、変更の内容及び効力発生時期を明示し、その効力発生日の相当期間前までに、当社の本店及び支店並びに当社のウェブサイトにて周知するものとします。
3 第1項による約款の変更に同意しない本サービス利用者は、当社所定の方法に従い、効力発生日までに本契約を解除することができるものとします。

もっとも、このような条項を定めれば、必ず利用規約(定型約款)の変更が認められるというものではありません。変更の必要性、変更後の内容の相当性等と合わせて総合的に判断されます。 また、サービス提供者としては、ユーザーから利用規約(定型約款)の同意をもらうときに、あらかじめ、将来的に内容を変更しうる条項を把握しているのであれば、その旨をユーザーに明示しておくと、ユーザーの承諾なく利用規約(定型約款)を変更するうえで有利な事情として働きます。

まとめ

民法改正(2020年4月1日施行)に対応した利用規約のレビューポイントは以上です。
実際の業務でお役立ちいただけると嬉しいです。

改正点について、解説つきの新旧対照表もご用意しました。

ムートン

ぜひ、業務のお供に!ご活用いただけると嬉しいです!

〈サンプル〉

参考文献

法務省『民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

筒井健夫・松村秀樹編著『【一問一答】一問一答・民法(債権関係)改正』商事法務、2019