扶養家族とは?
子どもの扱い・扶養から外れるライン・
税金と社会保険の取り扱いの違いなどを
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この記事のまとめ

扶養家族」とは、家族の収入によって扶養されている人です。税法上の扶養親族と、社会保険に関する被扶養者の2種類に大別されます。

税法上の扶養親族がいる人は、一定の要件を満たせば、所得税および住民税について扶養控除を受けられます。
なお、配偶者については扶養控除ではなく、配偶者控除の適用が問題となります。

社会保険に関する被扶養者は、健康保険料の支払いが不要となるほか、扶養者の配偶者である場合は年金保険料の支払いも不要となります。
なお、国民健康保険については扶養の取り扱いがないため、原則として全ての加入者が保険料の支払義務を負います。

税法上の扶養親族と社会保険に関する被扶養者では、扶養から外れる収入の水準が異なる点に注意が必要です。

この記事では扶養家族について、扶養から外れるラインや税金・社会保険に関する取り扱いを解説します。

ヒー

「書類の扶養家族の記入の仕方が分からなくて…」という質問がありました。ええと、誰を書くんでしたっけ?

ムートン

所得税や住民税に関する書類か、社会保険に関する書類かで、扶養の対象となる人は異なります。言葉も少しずつ違うので、分かりやすく説明していきますね。

※この記事は、2024年2月8日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

扶養家族とは

扶養家族」とは、家族の収入によって扶養されている人です。税法上の扶養親族と、社会保険に関する被扶養者の2種類に大別されます。

税法上の「扶養親族」

税法上の扶養親族がいる人は、一定の要件を満たせば、所得税および住民税について扶養控除を受けられます
例えば親と同居している子ども(16歳以上)や、子どもと同居している退職後の高齢者は、収入がないか乏しい場合には税法上の扶養親族に当たります。

社会保険に関する「被扶養者」

社会保険に関する被扶養者は、健康保険料の支払いが不要となるほか、扶養者の配偶者である場合は年金保険料の支払いも不要となります。
なお、国民健康保険については扶養の取り扱いがないため、原則として全ての加入者が保険料の支払義務を負います。

税法上の扶養親族と社会保険に関する被扶養者は、要件と範囲が若干異なる点に注意が必要です。

扶養家族のメリット・デメリット

扶養家族のメリットは、扶養している人の税金や社会保険料の負担が少なくなることです。

これに対して、扶養家族の年収には上限があるので、扶養の範囲内に年収を抑えようとすると、働き方が制限されてしまいます。また、社会保険に関する被扶養者は厚生年金保険に加入できないので、将来受け取れる年金が少なくなります。

扶養家族の収入上限|まとめ・一覧表

扶養家族の収入上限は、所得税・住民税と社会保険についてそれぞれ下表のとおりです。
パートやアルバイトとして給与収入だけを得ている方は「給与収入額(年間)」をご参照ください。副業などによって給与以外の収入がある方は「所得額または収入額(年間)」をご参照ください。

給与収入額(年間)所得額または収入額
所得税・住民税103万円以下48万円以下
※総所得から各種所得控除を差し引いた後の金額
社会保険130万円未満
※60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
130万円未満
※60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満
※実所得の金額(例えば事業所得の場合は、収入から必要経費を控除した額)

税法上の扶養親族の要件・種類・扶養控除額

税法上の扶養親族について、要件種類扶養控除額を紹介します。

扶養親族

税法上の扶養親族に当たるのは、以下の要件を全て満たす者です。

扶養親族の要件

① 配偶者以外の親族(=6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

② 納税者と生計を一にしていること。

③ 年間の合計所得金額が48万円以下であること。
※給与所得者の場合は、給与所得控除55万円を加算した103万円が年収の上限です。

④ 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

ヒー

「生計を一にする」ってどういう意味ですか?

ムートン

平たくいうと「生活に必要なお金を扶養者が出している」という意味です。同居していなくても当てはまる場合があります。

控除対象扶養親族

扶養控除の対象となるのは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人(=控除対象扶養親族)です。15歳以下の人については児童手当が支給されることに伴い、扶養控除が撤廃されています。

また令和5年度以降は、非居住者である扶養親族については、以下のいずれかに該当する人に限り控除対象扶養親族に当たります。

(a) その年12月31日現在の年齢が16歳以上30歳未満の人
(b) その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人
(c) その年12月31日現在の年齢が30歳以上70歳未満の人であって次に掲げるいずれかに該当する人
・留学により国内に住所および居所を有しなくなった人
・障害者である人
・納税者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人

一般の控除対象扶養親族

控除対象扶養親族は、以下の種類に分類されます。

(a) 一般の控除対象扶養親族
(b) 特定扶養親族
(c) 老人扶養親族
・同居老親等
・それ以外の者

控除対象扶養親族であって、その年12月31日現在の年齢が16歳以上19歳未満、または23歳以上70歳未満の者は一般の控除扶養対象親族に当たります。

一般の控除扶養対象親族については、所得税に関して1人当たり38万円の扶養控除を受けられます。

住民税に関しては自治体によって異なりますが、例えば東京都の自治体では1人当たり33万円の扶養控除を受けられます。

特定扶養親族

特定扶養親族」とは、控除対象扶養親族であって、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の者です。大学進学等によってお金がかかる年齢であることから、扶養控除の金額が通常よりも増額されています。

特定扶養親族については、所得税に関して1人当たり63万円の扶養控除を受けられます。
住民税に関しては自治体によって異なりますが、例えば東京都の自治体では1人当たり45万円の扶養控除を受けられます。

老人扶養親族|同居老親等とそれ以外の者

老人扶養親族」とは、控除対象扶養親族であって、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の者です。子どもに加えて親も扶養するなど、扶養者の負担が重くなるケースが多いため、扶養控除の金額が通常よりも増額されています。

老人扶養親族は、「同居老親等」とそれ以外の者の2つに区別されています。
同居老親等」とは、老人扶養親族のうち、扶養者または配偶者の直系尊属(父母・祖父母など)であって、扶養者との同居を常としている者です。

同居老親等である老人扶養親族については、所得税に関して1人当たり58万円の扶養控除を受けられます。
住民税に関しては自治体によって異なりますが、例えば東京都の自治体では1人当たり45万円の扶養控除を受けられます。

同居老親等以外の老人扶養親族については、所得税に関して1人当たり48万円の扶養控除を受けられます。
住民税に関しては自治体によって異なりますが、例えば東京都の自治体では1人当たり38万円の扶養控除を受けられます。

扶養控除と配偶者控除の違い

配偶者は、所得税および住民税との関係では扶養親族に当たりません。

その一方で、以下の要件を全て満たす配偶者がいる場合は、配偶者控除を受けることができます。

配偶者控除の要件

① 民法の規定による配偶者であること(内縁は不可)。

② 納税者と生計を一にしていること。

③ 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
※給与所得者の場合は、給与所得控除55万円を加算した103万円が年収の上限です。

④ 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

配偶者控除の金額は、配偶者の年齢や納税者本人の合計所得金額によって変わります。詳しくは国税庁ウェブサイトなどをご参照ください。

参考:国税庁ウェブサイト「No.1191 配偶者控除

扶養控除を受ける方法

扶養控除を受ける方法は、給与所得者と自営業者で異なります。
給与所得者は、勤務先に「扶養控除等(異動)申告書」を提出すれば扶養控除を受けられます。自営業者が扶養控除を受けるためには、確定申告が必要です。

給与所得者の場合|勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出

給与所得者は、使用者(勤務先)から「扶養控除等(異動)申告書」の提出を求められます。

ヒー

そんな申告書ありましたっけ?

ムートン

年末調整の際に記入を行っている用紙のことです。企業によってはシステム上で対応する場合もありますね。

扶養控除等(異動)申告書の例

扶養控除等(異動)申告書の提出時期は、その年の最初に給与の支払いを受ける日の前日までです。年の途中で被扶養者が増えたり減ったりした場合には、異動の内容等を記載した申告書を改めて提出する必要があります。

使用者は、扶養控除等(異動)申告書の内容を参照して、年末調整において扶養控除を適用した税額を計算し、労働者に対して税額の還付または追徴を行います。

参考:国税庁ウェブサイト「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告

自営業者の場合|確定申告

自営業者の場合は、確定申告の際に扶養控除を適用して計算した税額を申告します。確定申告の時期は原則として、翌年の2月16日から3月15日までです。

社会保険に関する被扶養者の要件・取り扱い

社会保険に関する被扶養者は、健康保険料の支払いが不要となるほか、扶養者の配偶者である場合は年金保険料の支払いも不要となります。
なお、国民健康保険については扶養の取り扱いがないため、原則として全ての加入者が保険料の支払義務を負います。

社会保険に関する被扶養者の要件

社会保険に関する被扶養者に当たるのは、以下の要件を全て満たす者です。

被扶養者の要件

① 日本国内に住所(住民票)を有していること
※日本国籍を有しておらず、「特定活動(医療目的)」「特定活動(長期観光)」で滞在する場合は被扶養者に該当しません。
※海外在住であっても、特例的に被扶養者として認定される場合があります。

② 被保険者により主として生計を維持されていること

③ 以下の収入要件をいずれも満たすこと
(a) 被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額が130万円未満であること
※60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満

(b) 同居の場合は被保険者の収入の半分未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満であること

④ 以下のいずれかに該当すること
(a) 被保険者の配偶者、子、孫、兄弟姉妹または直系尊属であること
(b) (a)以外の3親等内の親族、または内縁関係の配偶者の父母もしくは子であって、被保険者と同居していること

被扶養者は健康保険料の支払いが不要

社会保険に関する被扶養者は、健康保険料を支払う必要がありません扶養者(被保険者)が加入している健康保険に、保険料の負担なく加入することができます。

被扶養者が扶養者の配偶者である場合は、年金保険料の支払いも不要

被扶養者が扶養者(被保険者)の配偶者である場合には、年金保険料の支払いも不要です。国民年金の第3号被保険者として、年金保険料の負担なく国民年金に加入できます。

国民健康保険については、扶養の取り扱いは存在しない

国民健康保険については、職場等の健康保険とは異なり、扶養の取り扱いは存在しません。したがって、収入がないまたは少ない場合でも、国民健康保険料を納付する必要があります。

社会保険に関する被扶養者になるための手続き

社会保険に関する被扶養者になるためには、被保険者が事業主を経由して「被扶養者(異動)届」を日本年金機構に提出し、被扶養者の認定を受ける必要があります。

勤務先において様式を準備しているケースが多いので、作成すべき書類や提出時期などについて、勤務先の人事担当者などに確認しましょう。また、日本年金機構のウェブサイトも併せてご参照ください。

参考:日本年金機構ウェブサイト「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
ムートン

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参考文献

参考:国税庁ウェブサイト「No.1180 扶養控除

参考:調布市ウェブサイト「住民税の所得から差し引かれる金額(医療費控除・生命保険控除・配偶者控除・扶養控除など)

参考:日本年金機構ウェブサイト「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き