示談書とは?
テンプレート・主な記載事項・
作成時の注意点などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「示談書(じだんしょ)」とは、紛争(トラブル)の当事者間において合意した解決の内容を記載した書面です。示談書の内容は、作成者である当事者双方を拘束します。
示談書には、主に以下の事項を記載します。これらの事項を明確に記載すれば、紛争の再燃防止に繋がります。
① 紛争の発生日時・内容など
② 加害者の被害者に対する謝罪
③ 示談金の額・支払方法
④ 示談成立後の誓約事項
⑤ 清算条項示談書を一度締結すると、原則として撤回は認められません。示談書にサインする前に、内容をよく確認しましょう。
また、示談金が不払いとなるリスクに備えたいなら、示談書を公正証書で作成することをおすすめします。この記事では示談書について、テンプレート・主な記載事項・作成時の注意点などを解説します。
※この記事は、2024年11月13日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 電子署名法…電子署名及び認証業務に関する法律
目次
示談書とは
「示談書(じだんしょ)」とは、紛争(トラブル)の当事者間において合意した解決の内容を記載した書面です。訴訟などの裁判手続きを経ることなく、紛争を早期かつ柔軟に解決したいと考える当事者の間では、解決内容を合意した上で示談書を締結するケースがあります。
示談書を作成する目的
示談書を作成する目的は、紛争の解決内容を明確化して、後日の再燃を防ぐことです。
「示談(じだん)」とは、紛争の当事者が互いに譲歩し合い、解決内容を合意することをいいます。
訴訟などの裁判手続きは長期化しやすく、解決内容も法律に従った画一的なものになってしまいます。示談が成立すれば、訴訟などに比べて早期に紛争を解決でき、かつ解決内容も合意によって柔軟に定めることができます。
示談は口頭でも成立しますが、その内容が記録に残っていないと、どのような合意をしたのかが不明確になり、後日の紛争につながってしまいます。
したがって、示談が成立した場合は、その内容をまとめた示談書を作成して記録化し、紛争の再燃防止を図るべきです。
示談書を作成する主な場面
示談書は、幅広い種類の紛争に関する当事者の間で作成されています。具体的には、以下のような場面において示談書が作成されることがあります。
(例)
・取引を行う企業の間で契約トラブルが発生し、一方の債務不履行によって他方が損害を被った。
・企業が管理する設備が崩落し、衝突した歩行者がけがなどの損害を被った。
・金銭消費貸借契約に関して、債務者の返済が困難になったため、債権者と債務者の間で新たな返済条件を合意した。
・交通事故が発生し、被害者がけがや車両の破損などの損害を被った。
など
示談書の法的効力
示談書の内容は、原則として作成者である当事者双方を拘束します。
例えば、示談書において示談金(損害賠償など)の支払義務が定められた場合、債務者は債権者に対して示談金を支払わなければなりません。
示談金が支払われない場合、債権者は訴訟で勝訴判決を得るなどの手続きを経て、裁判所に強制執行を申し立て、示談金を強制的に回収することができます。
ただし、示談書の内容が反社会的である場合や、債務者にとって著しく不利な義務を課す内容である場合などには、公序良俗違反によって無効となることがあるのでご注意ください(民法90条)。
示談書の締結方法・取り交わし方
示談書を作成したら、紛争の当事者全員が記名押印または署名押印をして締結するのが一般的です。当事者の署名または当事者の印章による押印がなされていれば、示談書が真正に成立したことが推定されます(民事訴訟法228条4項)。
また、示談書は電子データによって締結することもできます。
電子データによって示談書を締結する場合は、電子署名を付すのが安心です。電子署名法に基づく電子署名が付された示談書のデータは、真正に成立したことが推定されます(電子署名法3条)。
電子署名は、電子契約サービスを利用すると簡単な操作で付すことができます。
示談書のテンプレート
示談書の内容は、解決すべき紛争の内容や、当事者間における合意の内容によって異なります。
そのため、示談書に何を記載するかは個別に検討すべきですが、おおむね共通して記載すべき事項はあります。示談書において一般的に記載すべき事項を盛り込んだテンプレートを紹介しますので、適宜アレンジしてご利用ください。
○○(以下「甲」という。)および××(以下「乙」という。)は、△△に関する紛争の解決について、以下のとおり合意した。 第1条(目的) 本書は、甲乙間において生じた下記の紛争(以下「本件紛争」という。)の解決方法を定めることを目的とする。 紛争の発生日時:…… 紛争の概要:…… 以上 第2条(謝罪)甲は乙に対し、本件紛争を発生させたことを謝罪し、乙は当該謝罪を受け入れる。 第3条(示談金) 1. 甲は乙に対し、本件紛争に係る示談金として、○○円を支払うものとする。 2. 前項に定める示談金は、○年○月○日までに、別途乙が指定する銀行口座へ振り込む方法によって支払うものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。 第4条(誓約事項) 甲は乙に対し、以下の事項を誓約する。 (1)…… (2)…… (3)…… 第5条(清算条項) 甲および乙は、本書に定めるものを除き、本件紛争に関して甲乙間に何らの債権債務が存在せず、互いに金銭その他の請求をしないことを確認する。 ○年○月○日 甲 【住所】 【氏名・名称】 【(法人の場合)代表者の肩書・氏名】 乙 【住所】 【氏名・名称】 【(法人の場合)代表者の肩書・氏名】 |
示談書の主な記載事項
示談書に記載すべき主な事項は、以下のとおりです。
① 紛争の発生日時・内容など
② 加害者の被害者に対する謝罪
③ 示談金の額・支払期限・支払方法
④ 示談成立後の誓約事項
⑤ 清算条項
上記の各事項について、条文例を示しながら解説します。
紛争の発生日時・内容など
(例) 第1条(目的) 本書は、甲乙間において生じた下記の紛争(以下「本件紛争」という。)の解決方法を定めることを目的とする。 紛争の発生日時:…… 紛争の概要:…… 以上 |
まずは、示談書によって解決しようとする紛争の内容を明らかにしましょう。
上記の例のように、紛争の発生日時と概要を記載する形などが考えられますが、必ずしもこれに限りません。紛争の実態に応じて、特定するに足る情報を記載しましょう。
加害者の被害者に対する謝罪
(例) 第2条(謝罪) 甲は乙に対し、本件紛争を発生させたことを謝罪し、乙は当該謝罪を受け入れる。 |
特に被害者側の被害感情が強い場合には、加害者側の謝罪を示談書に記載することがあります。
謝罪条項は必須ではなく、法的効力もありません。しかし、被害者側の感情的な不満が解決に向けた障害になっている場合は、謝罪条項を盛り込むことが示談の合意につながる可能性があります。
示談金の額・支払期限・支払方法
(例) 第3条(示談金) 1. 甲は乙に対し、本件紛争に係る示談金として、○○円を支払うものとする。 2. 前項に定める示談金は、○年○月○日までに、別途乙が指定する銀行口座へ振り込む方法によって支払うものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。 |
示談に当たっては、加害者側が被害者側に対して示談金を支払うのが一般的です。示談金の額・支払期限・支払方法などを明記しましょう。
なお、「損害賠償に代えて」などと示談金の位置づけを記載するケースもありますが、必須ではありません。
示談成立後の誓約事項
(例) 第4条(誓約事項) 甲は乙に対し、以下の事項を誓約する。 (1)…… (2)…… (3)…… |
誓約事項においては、主に紛争の再発防止を図るための約束事を定めます。
当事者同士が今後関係を持つ機会がなさそうな場合は、誓約事項は特に必要ありません。これに対して、示談成立後も当事者同士が何らかの関係を持たざるを得ない場合は、誓約事項を定めた方がよいケースが多いと考えられます。
誓約事項として何を定めるべきかについては、紛争の内容や当事者の関係性などによって異なりますので、具体的な事情に照らして個別にご検討ください。
清算条項
(例) 第5条(清算条項) 甲および乙は、本書に定めるものを除き、本件紛争に関して甲乙間に何らの債権債務が存在せず、互いに金銭その他の請求をしないことを確認する。 |
「清算条項」とは、示談に合意した紛争の当事者間において、何らの債権債務が残っていない旨を確認する条項です。
清算条項が有効に定められていれば、示談書に記載されていない内容の請求を後から行っても、その請求が訴訟で認められることはありません。
紛争を終局的に解決できるようにする観点から、示談書には清算条項を定めておくことが大切です。
他方で、特に示談金の支払いを受ける被害者側としては、清算条項によって追加請求ができなくなることを踏まえて、示談金額が十分かどうかをよく検討する必要があります。
示談金額は、被害者側が受けた損害の額を基準として定めるのが適切です。自社が被った損害を漏れなく積算した上で、どの程度の示談金額が適正であるのかを慎重に判断しましょう。
示談書を作成する際の注意点
示談書を作成する際には、主に以下のポイントに注意しましょう。
① 一度締結した示談書は、原則として撤回できない
② 示談書が無効になる場合もある
③ 示談金の不払いに備えたいなら、公正証書で作成すべき
一度締結した示談書は、原則として撤回できない
示談書を締結すると、その内容は当事者を拘束します。不満が残った状態で示談書を締結した場合でも、原則として示談書を撤回することはできません。
例外的に示談書の撤回(取り消し)が認められるケースとしては、示談条件などについて重要な錯誤(≒認識違い)があった場合、騙されて示談書を締結した場合、脅されて示談書を締結した場合などが挙げられます(民法95条・96条)。
しかし、実際に示談書の撤回(取り消し)が認められるケースは少数です。
前述のとおり、示談書に清算条項を定めている場合は、示談書に記載されていない内容の追加請求はできなくなります。不本意な内容で示談が確定してしまうことを防ぐため、示談書の内容、特に示談金額などの条件については、適正かどうかを慎重に検討しましょう。
示談書が無効になる場合もある
示談書は、権限ある当事者間で締結されている限り、原則として有効です。
しかし、以下のような場合には示談書が無効になってしまいます。示談書の全部または一部が無効となってしまうリスクがないか、締結前に必ずチェックしましょう。
- 示談書が無効になるケース
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・示談書の内容が公序良俗に違反している場合(民法90条)
(例)「本件紛争を起こしたことの償いとして、甲は乙に対し、乙のために無償で働く従業員を派遣するものとする。」・示談書の内容が法律の強行規定に違反する場合
(例)「(金銭消費貸借の返済条件を変更する示談書において)甲が期限までに本書に従った弁済をしないときは、甲は乙に対し、未払い額に対して年100%の割合による遅延損害金を支払うものとする。」
→上限金利(=元本額に応じて年21.9%~29.2%。ただし、営業的金銭消費貸借の場合は年20%)を超過しているので、超過部分について無効(利息制限法4条・7条)。・無権限者によって示談書が締結された場合(民法113条)
(例)営業部長の名義で示談書を締結したが、営業部長は社長から示談書を締結する権限を与えられていなかった。・錯誤、詐欺、強迫等によって示談書が取り消された場合(民法95条・96条など)
示談金の不払いに備えたいなら、公正証書で作成すべき
示談金の支払いを受ける側としては、相手方が示談金を支払わないリスクも考えておくべきです。
示談金を確実に支払わせるためには、示談書を公正証書で作成しましょう。公正証書に「強制執行認諾文言」を記載しておけば、示談金が不払いとなった場合、直ちに裁判所に対して強制執行を申し立てることができます(民事執行法22条5号)。
※強制執行認諾文言:債務不履行が生じた場合に、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述
特に、示談金を分割払いとする場合は、将来的に不払いが生じるリスクが高いので、公正証書で示談書を作成することを強くおすすめします。
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