雇用契約の更新とは?
更新手続き・記載事項・雇止めをする際の注意点
などを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

雇用契約の更新」とは、期間の定めがある雇用契約を締結する労働者(=有期雇用労働者)との間で、雇用契約を更新することをいいます。なお、無期雇用契約については、契約の更新はありません。

雇用契約を更新する際の手続きは、主に更新書面を締結するか、または自動更新条項に基づいて自動的に更新されるかの2通りです。

契約期間の満了に伴い、使用者が雇用契約を更新せずに終了させることは「雇止め」と呼ばれています。雇止めに当たっては、雇止めの予告や理由の明示を行うべき場合があります。
また、「雇止め法理」や「無期転換ルール」によって、雇止めが無効となることもある点に注意が必要です。

2024年4月には、雇用契約の更新時に必要な記載事項に変更がありました。対応が済んでいない企業は早急に対応しましょう。

この記事では雇用契約の更新について、更新手続きや記載事項・雇止めをする際の注意点などを解説します。

ヒー

契約社員やアルバイトの契約更新について注意すべきことは何でしょうか?

ムートン

有期雇用契約で特に注意すべきなのは、無期契約に変わるタイミングと、雇止めに関することです。2024年に施行された記載事項の変更点もチェックしておきましょう。

※この記事は、2024年8月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 雇止め基準…有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準

雇用契約の更新とは

雇用契約の更新」とは、期間の定めがある雇用契約を締結する労働者(=有期雇用労働者)との間で、雇用契約を更新することをいいます。

有期雇用契約は更新が発生する

期間の定めがある雇用契約(=有期雇用契約)は、期間満了によって終了するのが原則です。

期間満了後も雇用関係を継続するためには、有期雇用契約を更新しなければなりません。従前と同一の条件で契約が更新されるのが一般的ですが、更新を機に労働条件などを変更することも原則として認められます。

無期雇用契約に更新はない

期間の定めがない雇用契約(=無期雇用契約)には、有期雇用契約とは異なり「更新」がありません。したがって、何らかの事情で契約が終了しない限り、雇用関係は継続します。

無期雇用契約が終了するのは、以下のような場合です。ただし、労働者の地位を保護するため、使用者による解雇には「解雇権濫用の法理」などの厳格な規制が設けられています(労働契約法16条)。

無期雇用契約の終了

・労働者が自ら退職した場合
・労働者が定年を迎えた場合
・労働者が使用者との合意に基づいて退職した場合
・使用者が労働者を解雇した場合
など

雇用契約を更新する場合の手続き

有期雇用契約を更新する際の手続きは、以下の2パターンに分かれます。

パターン1|更新書面を締結する
パターン2|自動更新条項に基づき、自動的に更新される

パターン1|更新書面を締結する

使用者と労働者の合意に基づいて有期雇用契約を更新する際には、雇用契約書などの更新書面を締結するのが一般的です。

更新書面には、契約更新後の労働条件などを定めます。従前と同一の場合はその旨を記載すれば足りますが、変更がある場合はその内容を明記しましょう。

なお、更新に伴って雇用契約書を再締結する際には、使用者は労働者に対し、改めて労働条件を明示することが求められます(労働基準法15条1項)。
労働条件の明示は、原則として書面で行わなければなりません(=労働条件通知書)。ただし、労働者が希望する場合には、ファクシミリや電子メール等で労働条件を明示することもできます(労働基準法施行規則5条4項)。

労働条件通知書に記載すべき事項は、後述します。

パターン2|自動更新条項に基づき、自動的に更新される

有期雇用契約において自動更新条項が定められている場合は、特に更新書面を締結することなく、自動更新条項に基づいて契約が更新されるケースもあります。

自動更新条項とは、いずれかの当事者から契約更新拒絶の申入れがなされない限り、従前と同一の条件で契約を更新する旨を定めた条項です。
一定期間内(例えば、契約期間満了の1カ月前など)に更新拒絶通知がなされなければ、更新書面を締結しなくても有期雇用契約が更新されます。

使用者が雇用契約を更新しない場合の手続き

使用者が有期雇用契約を更新しない場合は、雇止め基準(「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」)を踏まえて手続きを行う必要があります。雇止め基準を遵守しないと、労働基準監督署による助言や指導を受ける可能性があります(労働基準法14条2項・3項)。

雇止めを実施するに当たって、一定の要件を満たす労働者については、雇止めの予告や雇止めの理由の明示を行う必要がある点に注意しましょう。

雇止めの予告

以下の①および②の要件をいずれも満たす有期雇用労働者については、雇止めを行うに当たって、契約期間満了日の30日前までにその予告をしなければなりません(雇止め基準2条)。

① 以下のいずれかに該当すること
・有期雇用契約を3回以上更新していること
・雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務していること

② あらかじめ有期雇用契約を更新しない旨が明示されていないこと

雇止めの理由の明示

雇止めの予告が必要なケースにおいて、労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく証明書を交付しなければなりません(雇止め基準3条)。

雇止めの理由は、後述する「雇止め法理」との関係で問題になります。不合理な理由による雇止めは、雇止め法理によって無効と判断されるおそれがあるので注意が必要です。

雇止めの実施

雇止め基準に沿って、必要に応じて雇止めの予告や理由の明示を行った後、契約期間満了をもって雇止めを実施します。

雇止めをした労働者については、社会保険や雇用保険の資格喪失手続き、および離職票や源泉徴収票の交付などを行いましょう。

雇用契約の更新に関する企業の注意点

企業が有期雇用契約を更新するに当たっては、以下の各点に注意して対応しましょう。

① 【2024年4月施行】雇用契約の更新時に必要な記載事項
② 1回の契約期間の上限は、原則として3年
③ 一定の要件を満たす有期雇用労働者については、契約期間についての配慮が必要
④ 雇止めが無効になる場合がある

【2024年4月施行】雇用契約の更新時に必要な記載事項

有期雇用契約を更新するに当たっては、使用者は労働者に対して、改めて労働条件を明示する必要があります。

労働条件の明示は原則として書面を交付して行うものとされており、労働者に対して交付される書面は「労働条件通知書」と呼ばれています。なお、雇用契約書が労働条件通知書を兼ねることも可能です。

有期雇用労働者に対して、契約更新時に交付する労働条件通知書(雇用契約書が兼ねる場合を含む)には、労働基準法施行規則所定の事項を記載しなければなりません。

労働条件通知書に記載すべき事項は以下のとおりです。太字で示した事項は、2024年4月1日に施行された改正法令によって新たに追加されたものなので、対応が済んでいない企業は早急に対応しましょう。

労働条件通知書に記載すべき事項

① 全ての労働者に対して明示すべき事項
・労働契約の期間
・就業場所(変更の範囲を含む)
・従事する業務の内容(変更の範囲を含む)
・始業時刻と終業時刻
・交代制のルール(労働者を2つ以上のグループに分ける場合)
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間、休日、休暇
・賃金の決定、計算、支払方法、締切日、支払日
・退職や解雇に関する規定

② 有期雇用労働者に対して明示すべき事項
更新上限の有無と内容
無期転換の申込機会(無期転換申込権が発生する更新のタイミングごと)
無期転換後の労働条件(無期転換申込権が発生する更新のタイミングごと)

③ 定めがある場合には明示すべき事項
・退職手当の定めが適用される労働者の範囲
・退職手当の決定、計算、支払の方法
・退職手当の支払時期
・臨時に支払われる賃金、賞与、精勤手当、奨励加給、能率手当について
・最低賃金額
・労働者に負担させる食費、作業用品など
・安全衛生に関する事項
・職業訓練制度
・災害補償、業務外の傷病扶助制度
・表彰や制裁の制度
・休職に関する事項

ムートン

労働条件通知書については、以下の記事も併せてご参照ください。

1回の契約期間の上限は、原則として3年

有期雇用契約の契約期間は、原則として3年が上限とされています(労働基準法14条1項)。3年を超える期間を定めた場合は、超過部分が無効となり、契約期間が3年に修正されます。

ただし例外的に、以下のいずれかに該当する場合には、3年を超える有期雇用契約も認められます。

① 契約期間の上限が適用されない場合
→一定の事業の完了に必要な期間を定める有期雇用契約
(例)工期が6年間の建設工事に従事させるため、契約期間を6年間とする有期雇用契約を締結した。

② 契約期間の上限が5年となる場合
→以下の(a)または(b)に該当する場合

(a) 以下のいずれかに該当する、高度の専門的知識等を有する労働者と締結する有期雇用契約
・博士の学位を有する者
・公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
・システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
・特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
・大学卒で5年、短大または高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業、鉱工業、機械、電気、土木、建築の技術者、システムエンジニアまたはデザイナーで、年収が 1075万円以上の者
・システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、年収が1075万円以上の者
・国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者

(b) 満60歳以上の労働者との間で締結する有期雇用契約
(例)定年を迎えた60歳の労働者を再雇用する際に、契約期間を5年とする有期雇用契約を締結した。

一定の要件を満たす有期雇用労働者については、契約期間についての配慮が必要

以下の①および②の要件をいずれも満たす有期雇用労働者については、有期雇用契約を更新するに当たり、契約の実態および労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません

① 有期雇用契約を1回以上更新していること
② 雇入れの日から起算して、1年を超えて継続勤務していること

雇止めが無効になる場合がある

労働契約法には「雇止め法理」と「無期転換ルール」が定められています。

使用者による雇止めは原則として適法ですが、雇止め法理または無期転換ルールに抵触する場合は雇止めが無効となり、雇用の継続が義務付けられる点に注意が必要です。

雇止め法理

雇止め法理」は、有期雇用労働者の雇用継続や契約更新への期待を保護することを目的とした法理です。

以下の要件を全て満たすときは、有期雇用契約が従前と同一の条件で更新されたものとみなされます(労働契約法19条)。

雇止め法理の要件

① 以下の(a)または(b)のいずれかに該当すること
(a) 有期雇用契約が過去に反復して更新されたことがあり、雇止めが解雇と社会通念上同視できること
(b) 有期雇用契約の更新に対する労働者の期待に合理的な理由があること

② 契約期間満了までに、または契約期間満了後遅滞なく、労働者が使用者に対して契約更新の申込みをしたこと

③ 雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないこと

雇止め法理は、無期雇用労働者に適用される解雇規制に準じた厳格な内容です。有期雇用契約の更新が何度も行われると、その労働者を雇止めすることは難しくなってくる点にご注意ください。

無期転換ルール

無期転換ルール」は、雇用期間が一定以上継続した有期雇用労働者の申込みにより、無期雇用契約への転換を認める制度です。
通算契約期間が5年を超える労働者が、契約期間満了までに無期転換の申込みを行った場合は、有期雇用契約が自動的に無期雇用契約へ転換されます(労働契約法18条)。

ただし、5年を超える期間内の完了が予定されている業務に従事する高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者については、無期転換の期間が10年とされています。
また、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者には、無期転換ルールは適用されません。

ムートン

最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

参考文献

厚生労働省ウェブサイト「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」

厚生労働省「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について」