タイムスタンプとは?
利用のメリット・電子帳簿保存法上の位置づけ・
簡単な付与方法・注意点などを
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
-
「タイムスタンプ」とは、ある時刻に電子データが存在していたことと、およびそれ以降改ざんされていないことを証明する技術です。
電子データにタイムスタンプを付与すると、作成日時を証明できるほか、改ざんの防止にも役立ちます。特に電子契約を締結する際には、原本ファイルにタイムスタンプを付与するのが安心です。
電子帳簿保存法においても、電子データの保存時にタイムスタンプの付与が義務付けられるケースがあります。
紙の書類をスキャナ保存する際には、原則としてタイムスタンプの付与が必要です。ただし、クラウドソフトなどによる代用が認められています。
電子取引に関しては、「真実性」の要件を満たすための方法の一つとして、タイムスタンプの付与が認められています。タイムスタンプの付与は、時刻認証業務認定事業者(TSA)が行います。
会計ソフトや電子契約サービスを利用すると、手軽にタイムスタンプを付与できるので便利です。ただし、タイムスタンプに対応していない会計ソフトや電子契約サービスもあるので、機能の有無をあらかじめ確認しましょう。この記事ではタイムスタンプについて、利用のメリット・電子帳簿保存法上の位置づけ・付与方法・注意点などを解説します。
※この記事は、2024年9月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 電子帳簿保存法…電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
- 電子帳簿保存法施行規則…電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則
- 取扱通達…電子帳簿保存法取扱通達
- 電子署名法…電子署名及び認証業務に関する法律
目次
タイムスタンプとは
「タイムスタンプ」とは、ある時刻に電子データが存在していたことと、およびそれ以降改ざんされていないことを証明する技術です。
電子契約など、重要な電子文書を作成する際には、電子署名とともにタイムスタンプがよく用いられます。電子署名は権限ある者によって作成された事実、タイムスタンプは作成日時を証明できるため、電子文書の有効性の確保に役立ちます。
タイムスタンプを利用するメリット
タイムスタンプを利用することには、主に以下の2つのメリットがあります。
① 電子データの作成日時を証明できる
② 電子データの改ざんを防止できる
電子データの作成日時を証明できる
電子データに付与されたタイムスタンプは、付与時点においてその電子データが存在していたことの証拠となります。
電子データの作成と同時にタイムスタンプを付与すれば、そのタイムスタンプによって作成日時を証明できます。特に電子契約など、作成日時がいつであるかが重要となる電子文書については、タイムスタンプを付与するのがよいでしょう。
電子データの改ざんを防止できる
タイムスタンプは、時刻認証業務認定事業者(TSA)が電子データのハッシュ値に時刻情報を追加する方法によって付与されます。
タイムスタンプが付与されたオリジナルデータのハッシュ値と、自ら保有する電子データのハッシュ値が一致していれば、自ら保有する電子データが改ざんされていないことが分かります。
反対に、オリジナルデータとハッシュ値が一致していなければ、その文書は作成後に改ざんされていることが分かります。
電子データは紙の文書に比べて編集が容易であるため、改ざんのリスクが高いのが弱点の一つです。タイムスタンプを活用すれば、電子データの弱点である改ざんリスクを解消することができます。
【2022年1月施行】電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの位置づけ
2022年1月から施行された電子帳簿保存法では、スキャナ保存や電子取引データの保存に関して、タイムスタンプの活用が定められています。
スキャナ保存をする際には、原則としてタイムスタンプが必要
「スキャナ保存」とは、紙媒体の文書をスキャンして読み取り、そのデータを保存することをいいます(電子帳簿保存法4条3項、電子帳簿保存法施行規則2条5項)。契約書・請求書・領収書などの書類について、スキャナ保存が認められています。
スキャナ保存を行う際には、原則としてスキャンデータにタイムスタンプを付す必要があります(電子帳簿保存法施行規則2条6項2号ロ)。
タイムスタンプは、原則として入力の都度、おおむね7営業日以内に付さなければなりません(取扱通達4-17)。ただし、タイムスタンプの付与に関する事務処理規程を定めている場合は、最長2カ月とおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付せば足ります(取扱通達4-18)。
なお、スキャンデータの訂正または削除を行った際に、クラウドソフトなどを通じてその事実と内容を確認できる場合には、例外的にタイムスタンプの付与が免除されます。
電子取引については、タイムスタンプの付与によって真実性の要件を満たせる
「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引です。「取引情報」とは、取引に関して受領し、または交付する以下の書類に通常記載する事項をいいます(電子帳簿保存法2条5号)。
- 注文書
- 契約書
- 送り状
- 領収書
- 見積書
- その他これらに準ずる書類
電子取引の取引情報を記録したデータ(=電子取引データ)は、印刷することなくデータのまま保存することが義務付けられています(同法7条)。
電子取引データの保存に当たっては、「真実性」と「可視性」の要件を満たさなければなりません(電子帳簿保存法施行規則4条)。
- 電子取引データ保存の要件
-
① 真実性の要件
電子取引データの改ざんを防ぐため、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
・事前にタイムスタンプを付与する
・電子取引データの授受後、おおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与する
・電子取引データの授受後、2カ月とおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与する(タイムスタンプの付与に関する事務処理規程を定めている場合に限る)
・訂正や削除の履歴が確認できるシステム、または訂正や削除ができないシステムを通じて電子取引データを授受する
・正当な理由のない訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定めた上で、当該規程を適切に運用して電子取引データを保存する② 可視性の要件
電子取引データをスムーズに出力して確認できるように、以下の措置を講じなければなりません。
・データ出力用の機器や操作説明書を備え付ける
・検索機能を確保する(免除される場合あり)
・電子計算機処理システムの概要書や操作説明書などを備え付ける(自作のプログラムを用いている場合などに限る)
・データ保存などに関する事務処理規程を備え付ける
電子取引データにタイムスタンプを付与すれば、電子帳簿保存法によって求められている「真実性」の要件を満たすことができます。
タイムスタンプを付与すべきタイミングは、電子取引データを授受する前、または授受後おおむね7営業日以内が原則です。ただし、タイムスタンプの付与に関する事務処理規程を定めている場合は、授受後2カ月とおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与すれば足ります。
電子取引データにタイムスタンプを付さない場合は、訂正や削除の履歴が確認できるシステム、もしくは訂正や削除ができないシステムを通じて電子取引データを授受するか、または正当な理由のない訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定めましょう。
電子ファイルにタイムスタンプを付与する方法
タイムスタンプの付与は、時刻認証業務認定事業者(TSA)が行います。
会計ソフトや電子契約サービスを利用すると、手軽にタイムスタンプを付与できるので便利です。ただし、タイムスタンプに対応していない会計ソフトや電子契約サービスもあるので、機能の有無をあらかじめ確認しましょう。
タイムスタンプの付与は「時刻認証業務認定事業者(TSA)」が行う
総務省は、タイムスタンプを発行する時刻認証業務を行う事業者を認定しています(=時刻認証業務認定事業者)。
日本国内におけるタイムスタンプの付与の大半は、総務省の認定を受けた時刻認証業務認定事業者が行っています。
時刻認定業務認定事業者の一覧は、総務省のウェブサイトに掲載されています。
会計ソフトや電子契約サービスを利用すると、簡単にタイムスタンプを付与できる
時刻認定業務認定事業者は、主に会計ソフトや電子契約サービスなどを通じてタイムスタンプを付与しています。
多くの会計ソフトや電子契約サービスには、電子署名機能とともにタイムスタンプ機能が搭載されています。特に電子帳簿保存法への対応を謳っている会計ソフトや電子契約サービスであれば、ほぼ確実にタイムスタンプ機能を利用可能です。
会計ソフトや電子契約サービスは操作性が良く、初心者でも簡単に使えるものが多くなっています。電子データにタイムスタンプを付与したい場合は、会計ソフトや電子契約サービスを利用するとよいでしょう。
ただし、会計ソフトや電子契約サービスの種類によっては、タイムスタンプ機能が搭載されていないこともあります。利用を始める前に、機能の詳細をよく確認することが大切です。
電子ファイルに付されたタイムスタンプの確認方法
電子ファイルに付されたタイムスタンプを確認する方法は、その電子ファイルを開くソフトによって異なります。
例えば、実務上よく用いられている「Adobe Acrobat Reader」では、「署名パネル→署名の詳細→証明書の詳細」の順にメニューを開けば、タイムスタンプの時刻情報を確認することができます。
タイムスタンプの確認方法の詳細は、閲覧に用いるソフトの説明書などをご参照ください。
タイムスタンプが付された電子データの保存方法
スキャナ保存したデータおよび電子取引データのいずれも、タイムスタンプを付した後は、前述の「可視性」の要件を満たす形で保存しなければなりません。税務調査が行われる際に、税務調査官から求められた場合には、速やかにデータを出力できるようにしておきましょう。
電子データの保存期間は、以下のとおりです。少なくとも保存期間中は、データを確実に保存しましょう。
原則 | 5年 |
データを適格請求書等として取り扱う場合 | 7年 |
原則 | 7年 |
データを受領した事業年度において繰越欠損金が生じた場合 | 10年 |
電子データの改ざんを防ぐことも重要です。アクセスできる役員や従業員の範囲を必要最小限に絞りつつ、パスワードの設定などによってデータの保護を図りましょう。
タイムスタンプの取り扱いに関する注意点
タイムスタンプの取り扱いに当たっては、特に以下の2点に注意しましょう。
① 会計ソフトや電子契約サービスについて、タイムスタンプ機能の有無を確認する
② 電子契約については、タイムスタンプと電子署名を併用すべき
会計ソフトや電子契約サービスについて、タイムスタンプ機能の有無を確認する
タイムスタンプは、電子データの保存に当たって必要になる機会が多いです。そのため、手軽にタイムスタンプを付与できる会計ソフトや電子契約サービスを導入することが、業務の効率化につながります。
会計ソフトや電子契約サービスの機能はまちまちなので、導入する際には必ずタイムスタンプ機能が搭載されているものを選びましょう。
電子契約については、タイムスタンプと電子署名を併用すべき
電子契約を締結する際には、締結日時などを証明できるタイムスタンプを付与するだけでは不十分です。
電子契約にはタイムスタンプに加えて、電子署名を付与することが推奨されます。電子署名法に基づく電子署名が付与されていれば、権限ある者が締結したこと(=電子契約が真正に成立したこと)が推定されます(同法3条)。
電子契約の有効性を確保するため、電子契約サービスを活用して、電子署名とタイムスタンプの両方を付与しましょう。