法改正情報の入手方法とは?
主な方法の一覧・メリットやデメリットなどを
分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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企業が最新の法令に沿って事業を運営するためには、法改正情報を入手することが欠かせません。
法改正情報の入手方法としては、以下の例が挙げられます。それぞれメリットとデメリットがあるので、調査の目的や知りたい内容などに応じて使い分けましょう。
・官報を確認する
・e-Gov法令検索を利用する
・官公庁のウェブサイトを確認する
・書籍を参照する
・セミナーに参加する・解説動画を見る
・弁護士に教えてもらう
・官公庁に電話で聞くこの記事では法改正情報の入手方法について、主な方法の一覧や各方法のメリット・デメリットなどを解説します。
※この記事は、2024年11月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
法改正情報を確認することの重要性
企業が事業を運営するに当たっては、法令を遵守する必要があります。
法令については、国会において毎年改正が行われています。最新の法令に関する情報を得ることなく、古いルールに従って事業を運営していると、以下のようなリスクが発生してしまいます。
・新設された義務を見落とし、対応を怠った結果、行政処分を受けてしまう
・契約に対して新たに適用されるルールを見落とした結果、予期せぬ契約トラブルに巻き込まれてしまう
など
このようなリスクを避け、最新の法令に沿って事業を運営するためには、法改正情報を入手することが欠かせません。企業の法務担当者は、本記事で紹介する方法を参考にして、法改正情報を随時入手しましょう。
法改正情報の入手方法一覧
法改正情報を入手する方法としては、以下の例が挙げられます。
① 官報を確認する
② e-Gov法令検索を利用する
③ 官公庁のウェブサイトを確認する
④ 書籍を参照する
⑤ セミナーに参加する、解説動画を見る
⑥ 弁護士に教えてもらう
⑦ 官公庁に電話で聞く
次の項目から、各方法の概要とメリット・デメリットについて解説します。
法改正情報の入手方法1|官報を確認する
官報(かんぽう)は政府の機関誌で、独立行政法人国立印刷局が発行しています。官報には、成立した法律や制定された政省令の情報が掲載されています。
官報の確認方法
官報は、書店などの官報販売所で購入できるほか、国立印刷局のウェブサイトに過去90日間分が無料公開されています。
官報のメリット・デメリット
官報は政府が公式に発行している機関紙であるため、情報の信頼性が高いのが大きな特徴です。
その反面、法改正の内容に関する詳しい解説などは載っていないので、十分に理解が深まらないかもしれません。
また、インターネット上で無料閲覧できるのは過去90日分に限られているほか、検索ができないのも難点です。
法改正情報の入手方法2|e-Gov法令検索を利用する
「e-Gov」(イーガブ)はデジタル庁が整備・運営するウェブサイトで、行政機関の政策・施策、行政サービス、各種オンラインサービスなどに関する情報がまとめられています。
「e-Gov」のサービスの一つである「法令検索」を利用すると、現行法令や将来施行される法改正に関する情報を確認することができます。
参考:「e-Gov法令検索」 |
e-Gov法令検索を通じた法改正情報の確認方法
まずはGoogleなどの検索エンジンで「法令名+egov」などと検索するか、または「e-Gov法令検索」の検索ボックスに法令名を入力して、法改正情報を知りたい法令のページにアクセスしましょう。
当初は現行法令の条文が表示されます。左上部分に表示されている改正法令の施行日をクリックすると、その改正が施行された後の条文を表示させることができます。
※サイトの仕様変更により、今後上記の方法は変更される可能性があります。
e-Gov法令検索のメリット・デメリット
「e-Gov法令検索」は、インターネットを通じて簡単に無料でアクセスできます。また、「Ctrl+F」によって法令全体を検索できるほか、2017(平成29)年4月1日時点以降の法改正の沿革を辿ることができるのも大きなメリットです。
ただし「e-Gov法令検索」には、法改正の内容に関する詳しい解説などは載っていません。法改正の内容をより深く理解したいときは、別の資料も併せて参照しましょう。
法改正情報の入手方法3|官公庁のウェブサイトを確認する
法改正情報は、該当する法令を所管する官公庁のウェブサイトにも掲載されていることがあります。
官公庁のウェブサイトに掲載されている法改正情報の見方
官公庁のウェブサイトには、法改正の内容を深く理解するのに役立つさまざまな資料が掲載されています。
例えば2020年4月に施行された債権法改正については、法務省のウェブサイトに以下の資料などが掲載されています。
① 法律
国会において実際に成立した改正法の原文が掲載されています。
② 新旧対照条文(新旧対照表)
法改正により、旧法と新法の間でどこが変わったのかを示す新旧対照表が掲載されています。
③ 改正の概要
法改正の主な内容を簡単に要約した文書が掲載されています。
④ Q&A
法改正の内容や経緯などが、一問一答形式で簡単にまとめられています。
⑤ 説明資料
主な改正事項について、分かりやすさにも配慮しつつ、比較的詳しくまとめられています。
⑥ 施行期日
改正法の施行期日が、見やすい形で示されています。
⑦ ポスター・パンフレット
一般の方に向けて、法改正の内容を周知するためのポスターとパンフレットが掲載されています。
なお、官公庁のウェブサイトに掲載されている資料の種類は、ケースバイケースで異なります。
官公庁のウェブサイトのメリット・デメリット
官公庁のウェブサイトに掲載されている法改正情報は、公式に発表されているものであるため一定の信頼が置けます。
また、条文が掲載されているだけでなく、その内容を噛み砕いて説明したり、参照すべき条文の番号を示した資料も掲載されているので、法改正の内容をよりよく理解することができます。
その反面、官公庁のウェブサイトにおける法改正の解説は、主要な内容に限られていることが多いため、細かい疑問点は解消できないこともよくあります。
官公庁のウェブサイトを参照しても解決しない疑問点については、次の項目以降で紹介する方法で解消を試みましょう。
法改正情報の入手方法4|書籍を参照する
法改正の内容をさらに深く理解するためには、その法改正に関する書籍を参照することが有用です。
法改正情報に関する書籍の主な種類
法改正に関しては、以下のような書籍が出版されています。リサーチの目的に応じて書籍を使い分けましょう。
・逐条解説
→条文を一つずつ順番に解説した書籍です。法改正に対応した逐条解説を参照すれば、改正後のすべての条文について、ある程度充実した解説を読むことができます。
・一問一答
→法令の解釈や適用に関して、よくある疑問点とその回答を一問一答形式で掲載した書籍です。
特に、法改正の立案担当者が執筆した一問一答は、改正の経緯や議論などを踏まえて執筆されているので、実務上高い信頼性が認められています。
・法学者が執筆した解説書
→比較的メジャーな法律については、法学者が執筆した解説書が出版されています。法学者の解説書には、法改正情報が比較的短期間で最新版に反映される傾向にあります。
・実務家が執筆した書籍
→弁護士などの実務担当者が執筆した書籍には、法改正に伴う実務上の注意点が記載されていることがあります。
書籍のメリット・デメリット
書籍に掲載されている情報は、インターネット上で得られるものよりも詳しく充実していることが多いです。逐条解説・一問一答・解説書を組み合わせて参照すれば、法改正についてかなり深い知識を得ることができるでしょう。
その反面、書籍は比較的高価なケースが多く、経済的に余力がないと購入が難しいかもしれません。
また、どの書籍が信頼できるのかを見極めることも必要になる点に注意しましょう。
法改正情報の入手方法5|セミナーに参加する・解説動画を見る
法改正情報を分かりやすい形で得るためには、セミナーに参加したり、eラーニングなどの解説動画を視聴したりする方法があります。
法改正情報に関するセミナーの主な種類
法改正情報に関するセミナーは、さまざまな組織や専門家が主宰しています。
例えば、以下のようなセミナーがあります。インターネット上で検索したり、メールマガジンを購読したりして、セミナーの情報を集めましょう。
・法改正を所管する官公庁が主宰するセミナー
・企業法務系の法律事務所(弁護士)が主宰するセミナー
・法改正に関連する分野の企業・実務担当者が主宰するセミナー(例:人事コンサルタントによる労働法セミナー)
など
法改正情報に関するeラーニング
eラーニングの解説動画を視聴することも、法改正情報をスムーズに理解するのに効果的です。最新の法改正情報の解説動画がタイムリーにアップされるので、重要な法改正情報を効率的に収集できます。
例えば、オンライン法務学習支援サービス「Legal Learning」では、法改正などの企業法務にまつわる最新情報をニュース番組形式の動画で解説しています。
弁護士が企業法務に関わる改正のポイントなどを解説しているため、実務的な情報の取得がスムーズに行えるでしょう。
セミナーやeラーニングのメリット・デメリット
セミナーやeラーニングでは、法改正の重要なポイントが分かりやすく解説されているので、あまり知識のない方でも理解しやすいメリットがあります。
その反面、分かりやすさに配慮して細かい内容は省かれることが多いです。法改正の内容を隅々まで知りたいなら、実際の条文を参照しつつ、関連する書籍も確認するなどしてカバーしましょう。
法改正情報の入手方法6|弁護士に教えてもらう
最新の法改正情報を知りたいときは、弁護士に教えてもらうことも一つの方法です。
法改正情報について弁護士に相談する方法
弁護士と顧問契約を締結していれば、顧問弁護士に質問するのが最もスムーズです。弁護士によっては、顧問先に向けて法改正情報をまとめたメールマガジンを配信しているケースもあります。
また、顧問契約を締結していなくても、法律事務所のウェブサイトなどから問い合わせれば、スポットで弁護士に相談することもできます。
弁護士への相談のメリット・デメリット
法改正について豊富な知識を有する弁護士に相談すれば、法改正の内容だけでなく、実務に及ぼす影響などについても詳しく教えてもらえます。
その反面、弁護士に相談する場合は相談料などの費用がかかるケースが多いです。
また、法改正に関する知識の程度は、弁護士によって異なります。知見に乏しい弁護士に相談してしまうと、法改正について十分な情報を得られません。充実した情報を得たいなら、複数の弁護士に相談することをおすすめします。
法改正情報の入手方法7|官公庁に電話で聞く
法改正の内容について分からないことがある場合は、その法令を所管する官公庁に電話で聞く方法もあります。
法改正情報について官公庁に電話で聞く方法
官公庁の電話番号は、各官公庁のウェブサイトなどに掲載されています。窓口が分かる場合はその番号に、分からない場合は代表番号に電話をかけましょう。
(例)
法務省ウェブサイト(ページ下部に代表番号が記載)
厚生労働省ウェブサイト「お問合せ窓口」
文部科学省ウェブサイト「文部科学省に関する御意見・お問合せ窓口案内」
国土交通省「窓口一覧」
金融庁ウェブサイト「金融庁に設置されている各種窓口のご案内」
消費者庁ウェブサイト「申出・問合せ窓口」
疑問点に対して適切な回答を得るためには、電話をかける前に質問をまとめておくことが大切です。何を知りたいのかがきちんと伝わるように、簡潔な分かりやすい言葉で質問しましょう。
官公庁に電話で聞くことのメリット・デメリット
官公庁に電話で質問すれば、法改正に関する疑問点への回答を無料で得ることができます。
ただし、複雑な論点や個別具体的な問題に対しては、満足な回答を得ることができないケースが多いです。また、質問があまりにも漠然としている場合や、質問が多すぎる場合にも、官公庁の職員が回答するのは限界があります。
官公庁への問い合わせは、悩んでいるポイントが明確なケースでは有用ですが、「何が分からないのか分からない」状態ではあまり意味がありません。論点を十分に整理できていない場合は、先に顧問弁護士などへ相談する方がよいでしょう。