法改正対応とは?
目的・流れ・法務担当者の役割・
注意点などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

法改正対応とは、新法改正法で定められた内容に、社内規程や業務を対応させることをいいます。

新法や既存の法律の改正法が日々施行される中、企業は法改正対応を随時行わなければなりません。法務担当者は法的な知見を活かして、法改正対応について主導的に取り組むべき立場にあります。

法改正対応は、新法・改正法に関する情報収集に始まります。さらに収集した情報を基にして、利用規約社内規程等の改定や、新法・改正法に関するコンプライアンス研修などを実施します。法務担当者としては、常日頃から新法・改正法の動向を注視し、適時にアップデート対応ができるように努めなければなりません。

この記事では、企業における法改正対応について、目的・流れ・法務担当者の役割・注意点などを解説します。

ヒー

ニュースで「〇〇法が改正されました」と言っていましたが、法改正ってわが社にも関係あるんですよね…? 法務担当者としては、何をすればよいのでしょうか?

ムートン

まずは正確な情報や関係する社内規程を集めましょう。改定作業は総務や所管部署が担当することもありますが、法的な知見については法務の得意分野なので、積極的に関われるとよいですね。

※この記事は、2023年1月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

法改正対応とは

法改正対応とは、新法改正法で定められた内容に、社内規程や業務を対応させることをいいます。

新法や既存の法律の改正法は日々施行されるため、企業は法改正対応を随時行わなければなりません。法的な知見を有する法務担当者は、企業における法改正対応に率先して取り組むことが求められます。

法改正対応の主な目的

法改正対応の主な目的は、以下の2点です。

✅ 法令に関する知識・認識のアップデート
✅ 利用規約・社内規程等の見直し

法令に関する知識・認識のアップデート

企業が事業活動を行うに当たり、法令を遵守する必要があることは言うまでもありません。しかし、法令遵守の意識があったとしても、法令に関する正しい知識・認識を備えていなければ、知らないうちに法令違反を犯してしまうおそれがあります。

新法や改正法が施行され、従来のルールが変更された場合には、古いルールに従ったオペレーションは法令違反となってしまいます。そのため、施行に伴って随時法改正対応を行い、法令に関する知識・認識アップデートを図らなければなりません。

利用規約・社内規程等の見直し

法改正対応の主眼となるのが、利用規約社内規程などの見直しです。新法や改正法が施行された場合には、利用規約や社内規程などの中で、変更された古いルールに依拠している部分は改定する必要があります。

法改正対応を行う際、変更すべき利用規約や社内規程の規定は、極めて広範・多岐にわたるケースが多いです。
近年では、例えば2020年4月に大規模な民法改正が行われましたが、その際には各企業で利用規約・社内規程などを大幅に改定する動きが見られました。
また、個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)や消費者契約法など、幅広い企業・契約に適用される法律もたびたび改正されており、そのたびに多くの企業が法改正対応を行っています。

利用規約・社内規程などの見直しに関して、法務担当者は主導的な役割を果たすことが求められます。

法改正対応の流れ

法改正対応は、大まかに以下の流れで行います。

新法・改正法に関するリサーチ
利用規約社内規程等検証、改定すべきポイントの把握
改定案の作成・チェック
改定に必要な手続きの履践|利用規約の周知・機関決定等
⑤ 新法・改正法に関するコンプライアンス研修
⑥ 業務変更のための説明・相談対応 など

新法・改正法に関するリサーチ

まずは、新法・改正法の内容を把握するためのリサーチを行います。リサーチの手がかりとなるのは、ニュースなどの新法・改正法の情報です。特に国会に関するニュースなどで、企業法務に関係する法改正の話題などがあれば、どの法令の話なのか確認しておくとよいでしょう。

ムートン

網羅的に確認するためには、信頼できる媒体が出しているWEB記事や雑誌記事なども活用できます。

リサーチの際には、法務省・経済産業省・厚生労働省など、法令を所管する官公庁のウェブサイトで公表されている資料を必ず確認しましょう。

新法の場合は、条文全体像を把握することが何よりも大切です。官公庁のウェブサイトで説明資料が公表されている場合には、それを補助的に参照しつつ条文を読み進めていきましょう。

改正法の場合、公表資料の中で最も重要なのは「新旧対照表」です。新旧対照表を確認すれば、どの条文が変更されたのかが一目で分かります。説明資料が公表されていれば参考になりますが、新法と同様に、あくまでも条文に即して変更点を理解することが大切です。

重要な新法・改正法については、法制審議会の部会資料などが公表されている場合があります。制定に至るまでの議論の状況などを知りたい場合には、法制審議会の資料を探してみましょう。

弁護士による新法・改正法のセミナーが開催される場合には、参加してみることもリサーチの助けとなります。条文上の変更点だけでなく、実務上の留意事項についても情報収集できる点が、弁護士によるセミナーのメリットです。

利用規約・社内規程等の検証、改定すべきポイントの把握

新法・改正法の内容が把握できたら、次は現行の利用規約社内規程等について、変更点を反映すべきポイントを把握しましょう。

利用規約・社内規程等に関する法改正対応は、網羅的に行わなければなりません。有効に適用されている利用規約・社内規程等のうち、変更点に関連すると思われるものはすべてチェックして、改定の要否を検討することが求められます。

改定案の作成・チェック

利用規約・社内規程等における改定すべき条項が把握できたら、実際に改定案作成します。

改定案の作成は、法務担当者が行うのが一般的です。改定すべき利用規約・社内規程等が多い場合には、外部弁護士に改定作業を依頼することも考えられます。

作成した改定案は、該当する利用規約・社内規程等を所管する部署にも回付して、業務や取引の実態に沿っているかどうかチェックしてもらいましょう。その後、最終的な決裁権者(役員など)のチェックを経て、利用規約・社内規程等の改定内容を確定します。

改定に必要な手続きの履践|利用規約の周知・機関決定等

利用規約・社内規程等の改定案が確定したら、改定に必要な手続きを行います。

利用規約は民法上の「定型約款」に該当するケースが多く、その場合は、民法548条の4の規定に基づく変更手続きを行いましょう。

(定型約款の変更)
第548条の4 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3 第1項第2号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
4 第548条の2第2項の規定は、第1項の規定による定型約款の変更については、適用しない。

民法– e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

なお、法改正対応に伴う変更については、遵法性の観点からやむを得ない合理的な変更として、定型約款を変更できる場合に該当すると考えられます(同条1項)。
したがって、変更の効力発生時期を定めた上で、変更の旨・変更後の定型約款の内容・効力発生時期をインターネット等で周知すればOKです(同条2項)。

社内規程等の改定は、それぞれ定められた改定手続きに従って行いましょう。取締役会決議または代表取締役の決定を要するケースが多いですが、マニュアルなど実務色の強いものについては、所管部門長などに決定権限が委譲されているケースもあります。

新法・改正法に関するコンプライアンス研修

改定した利用規約・社内規程等の周知や、新法・改正法に関する実務上の留意点のインプットを行うため、従業員向けにコンプライアンス研修を行うのがよいでしょう。コンプライアンス研修の講師は、法務部門またはコンプライアンス部門が担当する場合と、外部弁護士などに依頼する場合があります。

コンプライアンス研修の対象者は、新法・改正法の守備範囲に応じて適切に定めましょう。幅広い部門に関係する法改正(個人情報保護法など)については全従業員を対象とし、特定の部門にのみ関係する法改正については、その部門の従業員を中心に対象者を決めるのが一般的です。

業務変更のための説明・相談対応など

利用規約・社内規程等の改定内容や、それらに基づく業務フローの変更点などにつき、各部門から質問が寄せられることも想定されます。

法務担当者が他部門から質問を受けた際には、新法・改正法の概要や実務上の留意点を分かりやすく説明することが求められます。そのためには、日頃から法令に関する知識のアップデートに努めなければなりません。

法改正対応に関する法務担当者の役割

法改正対応に関して、法務担当者が担うべき主な役割は以下のとおりです。

✅ いち早く新法・改正法の情報を収集する
✅ 利用規約・社内規程等の検証・改定をリードする
✅ コンプライアンス研修の開催を手配する
✅ 新法・改正法に関する相談に対応する

いち早く新法・改正法の情報を収集する

法務担当者には、日々研鑽している法令に関する知識・素養を活かして、いち早く新法・改正法の情報収集することが求められます。
また、海外と取引を行っている企業や、海外に関係会社がある企業の法務担当者は、日本のみならず海外の新法・改正法にも注意することが必要です。

ニュース外部セミナーなどを情報源として、日頃から法令のアップデート情報にアンテナを張っておきましょう。

利用規約・社内規程等の検証・改定をリードする

利用規約・社内規程等の改定は、契約書のレビューにも通ずる、法務担当者の専門性を活かしやすい作業です。

改定案の作成や必要な手続きの確認などを含めて、法改正対応に伴う利用規約・社内規程等の検証改定については、法務担当者が主導的な役割を果たすことが求められます。対応状況を把握して、必要な場合は、自ら積極的に法改正対応に関する助言提案を行いましょう。

コンプライアンス研修の開催を手配する

法改正対応による利用規約・社内規程等や業務フローの変更について、社内向けに周知するためのコンプライアンス研修を手配することも、法務担当者の役割の一つです。

① 法務部門が主催する
② コンプライアンス部門と共催する
③ 外部弁護士を講師に招聘する

などが考えられますので、開催形態に応じて関係者と連絡をとる、研修資料を作成するなどの準備を整えましょう。

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新法・改正法に関する相談に対応する

新法・改正法の内容や注意点を浸透させることには、コンプライアンス研修だけでは限界があり、どうしても実務の中で学んでいく必要があります。

実務対応に当たっては、取引の所管部門から法務部門に対して、新法・改正法に関する相談が寄せられることが予想されます。法務担当者は、所管部門側の懸念点を正しく把握した上で、その解決になり得るようなアドバイスをすることが求められます。

法改正対応に関する法務担当者の注意点

法務担当者は、特に以下の2点を念頭に置き、漏れのないように法改正対応を行いましょう。

✅ 新法・改正法施行の年間スケジュールを作成する
✅ 利用規約・社内規程等の見直しは網羅的に

新法・改正法施行の年間スケジュールを作成する

法改正対応は、新法・改正法の施行時期に先立って計画的に行わなければなりません。

計画性をもって法改正対応を行うには、新法・改正法の施行に関する年間スケジュールをまとめることが効果的です。ニュースなどで新法・改正法の情報を得たら、その施行時期をスケジュール表に書き込んでおきましょう。

ムートン

法令の施行時期に対応が間に合うよう、社内の手続きにかかる期間も見込んだ上でスケジュールを組み、余裕を持って着手しましょう。

利用規約・社内規程等の見直しは網羅的に|外部弁護士なども活用すべき

繰り返しになりますが、法改正対応に伴う利用規約・社内規程等の見直しは、漏れのないよう網羅的に行わなければなりません。

特に改定すべき利用規約・社内規程等の分量が多い場合、法務担当者が目視で行うだけではチェックに限界があります。改定内容や社内の状況に応じて、外部弁護士法改正情報提供システムなどを活用し、チェックの網羅性を高めましょう。

この記事のまとめ

法改正対応の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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