労働組合とは?
目的・作り方・不当労働行為・
企業側の注意点などを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

労働組合」とは、労働者が自主的に組織する団体です。労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として、使用者と団体交渉をする権利を有します。

労働組合を結成する際には、労働組合員を勧誘した上で規約を作成し、決起集会によって規約案の承認決議や役員の選挙などを行います。
また、労働組合法の保護を受けるためには、労働委員会の資格審査を通過することが必要です。

企業としては、労働組合への対応に当たり、不当労働行為をしないようにしなければなりません。特に、正当な理由なく団体交渉を拒否すると、不当労働行為に当たるので注意が必要です。
また、労働組合側が人数に物を言わせて圧力をかけてくるようなことがないように、労使対等の交渉環境を整えましょう。

この記事では労働組合について、目的・結成手続き・不当労働行為・企業側の注意点などを解説します。

ヒー

友人に「うちの会社、賃金カットや退職勧奨があってさ。労働組合を作った方がいいかな?」と質問されました。労働組合って、自分たちで作れるんですか?

ムートン

労働者が集まることで労働組合は結成できますよ。労働組合にできることや、企業側の注意点なども確認していきましょう。

※この記事は、2025年1月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

労働組合とは

労働組合」とは、労働者が自主的に組織する団体です。労働条件の維持・改善経済的地位の向上を目的として、使用者と団体交渉をする権利を有します。

労働組合の目的

労働組合の目的は、労働条件の維持・改善や、労働者の経済的地位の向上を目指して、使用者と団体交渉をすることです。

個々の労働者は、使用者から支払われる賃金に生活を依存しており、使用者に対して弱い立場に置かれていることが多いです。このような状況では、使用者が労働者を搾取し、劣悪な待遇で負担の大きい労働をさせるような事態が懸念されます。

そこで日本国憲法28条では、勤労者(労働者)の団体行動権を保障しています。一人では弱い立場の労働者でも、団結して行動することで、使用者と対等に交渉できるようになると考えられるためです。

労働組合の結成は、憲法で保障された団体行動権の一環であり、「労働組合法」という法律によってその権利や位置づけが具体化されています。

労働組合の種類

労働組合は、以下の種類などに分類されます。

労働組合の種類

① 単位組合(企業別組合)
同じ会社の労働者が集まって組織する労働組合です。職場環境や待遇などの改善を主な目的としています。

② 産業別組織
同じ業種の会社にある労働組合が集まって組織する労働組合です。その業種全体の労働条件などの改善を目的としています。

③ ナショナル・センター
産業別組織が集まって組織する、その国の労働組合を代表する組織です。業界の枠を超えて労働条件を改善することを目的としており、政府に対するロビイングなども積極的に行います。

④ ITUC(国際労働組合総連合)
世界のナショナル・センターが集まって組織する、労働組合の国際組織です。世界中の労働者の待遇改善を目的としているほか、労働問題で課題を抱える貧困国に対する援助なども行っています。

ムートン

本記事では、主に①単位組合(企業別組合)を念頭に置いて解説します。

労働組合ができること

労働組合ができるのは、労働条件の維持・改善や、労働者の経済的地位の向上を目的とする活動です。具体的には、以下のような活動をすることができます。

(例)
・使用者に対して、賃金その他の待遇を改善するよう求める。
・不当な解雇や安易なリストラなどについて、使用者に抗議する。
・使用者側と話し合い、よりよい職場環境の整備について協力する。
・使用者が倒産した場合や、他社への身売りが決まった場合などに、労働者をサポートする。
など

労働組合として認められないもの

日本では、労働組合の権利が労働組合法によって保護されています。

ただし、以下のいずれかに該当する団体は、労働組合法によって保護される労働組合として認められません(労働組合法2条各号)。

① 役員や監督的地位にある労働者など、使用者の利益を代表する者の参加を許すもの

② 団体の運営のための経費の支出につき、使用者の経理上の援助を受けるもの
※労働時間中に有給で使用者と協議・交渉することを許すことを妨げるものではありません。
※厚生資金や経済上の不幸・災厄を防止・救済するための支出に関する使用者の寄附、および最小限の広さの事務所の供与を除きます。

③ 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの

④ 主として政治運動または社会運動を目的とするもの

労働組合を結成する際の手続き・作り方

労働組合を結成する際の手続きの流れは、以下のとおりです。

労働組合の作り方

① 労働組合員の勧誘
② 規約の作成
③ 決起集会|規約案の承認決議・役員の選挙など
+ 労働委員会による資格審査

労働組合員の勧誘

まずは、労働組合に参加する労働者を勧誘します。

労働組合は2人以上の労働者がいれば作ることができますが、同じ会社、同じ事業場の労働者に幅広く声をかけ、できる限り多くの労働者に参加してもらうことが望ましいです。
事業場の労働者の過半数が参加すれば、労働組合が当事者として労使協定を締結することができます。また、参加する労働者の数が多ければ多いほど、使用者に対する発言力も大きくなります。

労働組合員を勧誘するに当たっては、コアメンバーとなる人も集めましょう。コアメンバーは、労働組合の結成や結成後の運営について、中核的な役割を果たすことが期待されます。

規約の作成

労働組合法の保護を受けるためには、労働組合の結成に当たって規約を作成する必要があります(労働組合法5条1項)。

労働組合の規約には、以下の事項を定めなければなりません(同条2項)。

労働組合の規約に定めるべき事項

(a) 名称

(b) 主たる事務所の所在地

(c) 組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利、および均等の取扱いを受ける権利を有すること。
※単位労働組合(=連合団体である労働組合以外の労働組合)のみ

(d) 何人も、いかなる場合においても、人種・宗教・性別・門地・身分によって組合員たる資格を奪われないこと。

(e) (単位労働組合の場合)
役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること。

(連合団体である労働組合、または全国的規模をもつ労働組合の場合)
役員は、単位労働組合の組合員またはその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。

(f) 総会は、少なくとも毎年1回開催すること。

(g) 以下の事項は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表されること。
・すべての財源および使途
・主要な寄附者の氏名
・現在の経理状況を示す会計報告

(h) 同盟罷業は、組合員または組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。

(i) (単位労働組合の場合)
規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。

(連合団体である労働組合、または全国的規模をもつ労働組合の場合)
規約は、単位労働組合の組合員またはその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。

決起集会|規約案の承認決議・役員の選挙など

労働組合の結成準備が整ったら、決起集会を行いましょう(「結成大会」など、別の名称でも構いません)。

決起集会では、規約案の承認決議役員の選挙などを行います。単位労働組合の場合、決議は直接無記名投票の過半数によって行う必要があります。

ムートン

これで労働組合の設立は完了です。届出などは必要ありません。ただし、不当労働行為の救済を申し立てたり、法人として登記するためには、次に挙げる「資格審査」が必要となります。

労働委員会による資格審査

労働組合が不当労働行為の救済を受けたい場合や、法人登記をしたい場合は、労働委員会の資格審査を受け、認定される必要があります。

資格審査は、決起集会の後、労働組合は労働委員会に対して規約その他の資料を提出して、以下の各点に適合することを立証しなければなりません(労働組合法5条1項)。

(a) 労働組合に該当すること(同法2条)
労働者が主体となって自主的に、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する、団体またはその連合団体であること。また、労働組合として認められないものに該当しないこと。

(b) 規約(同法5条2項)
規約において、労働組合法所定の事項が定められていること。

労働委員会は、公益委員会議において審査を行います。上記の要件に適合していると判断された場合は、労働組合に対して資格決定書の写しと資格証明書が交付されます。

参考:厚生労働省ウェブサイト「中央労働委員会 労働組合の資格審査について」

労働組合に関して、使用者に禁止されている「不当労働行為」

労働者および労働組合の団体行動権を実効的に保障するため、使用者には以下の「不当労働行為」が禁止されています(労働組合法7条)。

組合活動などを理由とする不利益な取り扱い

使用者は、以下のいずれかの事由によって労働者を解雇し、または労働者に対して不利益な取り扱いをしてはなりません(労働組合法7条1号)。

  • 労働組合の組合員であること
  • 労働組合に加入したこと
  • 労働組合を結成しようとしたこと
  • 労働組合の正当な行為をしたこと

黄犬契約|労働組合への不加入・脱退を条件とする雇用契約

使用者は、労働者が労働組合に加入せず、または労働組合から脱退することを雇用条件としてはなりません(労働組合法7条1号)。
これは「黄犬契約」(おうけんけいやく)と呼ばれるもので、労働組合の組織力や交渉力を不当に削ぐものであるため禁止されています。

ただし、労働組合が事業場の労働者の過半数を代表する場合において、その労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することは妨げられません。
このような労働協約は、むしろ労働組合の組織力や交渉力を高めるため、黄犬契約を禁止する趣旨に当てはまらないからです。

正当な理由のない団体交渉の拒否

使用者は、雇用する労働者の代表者から団体交渉の申入れがあった際に、正当な理由なく拒んではなりません(労働組合法7条2号)。

使用者が団体交渉を拒否できる正当な理由としては、以下の例が挙げられます。

団体交渉を拒否できる正当な理由の例

・団体交渉がまとまる見込みがなく、訴訟などの法的手続きに移行するのが適当である。
・訴訟などの法的手続きによって決着した問題が、再び蒸し返された。
・労働組合側による暴力行為などのおそれが強く懸念される。
・労働組合側が、使用者側の弁護士の同席を拒否した。
など

労働組合に対する支配・介入・経理上の援助

使用者は、労働組合の結成や運営について、支配または介入をしてはなりません。また、労働組合の運営のための経費の支払いにつき、使用者が経理上の援助を与えることも禁止されています(労働組合法7条3号)。

ただし、厚生資金や経済上の不幸・災厄を防止・救済するための支出に関する使用者の寄附、および最小限の広さの事務所の供与については、不当労働行為に該当しません。

労働委員会への申立て等を理由とする不利益な取り扱い

労働委員会に対する不当労働行為の救済申立てなどを理由として、使用者が労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは禁止されています(労働組合法7条4号)。
救済を求める権利がある労働者や労働組合に対して、その権利行使を不当に委縮させる効果が生じてしまうためです。

労働組合への対応に関して企業が注意すべきポイント

労働組合への対応に当たって、企業は特に以下の2点に注意しましょう。

  • 団体交渉の申入れを受けたら、誠実に対応する
  • 団体交渉の環境は、労使対等になるように調整する

団体交渉の申入れを受けたら、誠実に対応する

正当な理由なく労働組合の団体交渉の申入れ拒否することは、不当労働行為として禁止されています。
不当労働行為をすると、労働委員会等によって救済命令が発せられることがあるほか、救済命令に違反した場合は刑事罰の対象となります。

労働組合から団体交渉の申入れを受けたら、その機会を設けた上で組合側の主張に耳を傾けるなど、誠実な対応に努めましょう。

団体交渉の環境は、労使対等になるように調整する

団体交渉においては、労働組合のペースに巻き込まれないように、労使対等交渉環境を整えることが大切です。

具体的には、以下のようなポイントに注意しつつ、組合側との間で団体交渉の条件を調整しましょう。

労使対等の交渉環境を整備するためのポイント

・日時を勤務時間外に設定する
・社外の施設で開催する(参加者ではない労働者の乱入などを防ぐため)
・参加人数を労使同数とする
・労使双方の弁護士の同席を認める
など

ムートン

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