ストライキとは?
内容・方法・要件・企業の対処法などを
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この記事のまとめ

ストライキ同盟罷業)」とは、労働条件の改善などを使用者に対して要求するため、労働組合が団結して労働拒否することをいいます。一定の要件を満たして適法に行われるストライキは、日本国憲法に基づく団体行動権によって保障されており、労働者側はストライキについて民事・刑事上の責任を問われません。

ストライキが行われると、労働者側は賃金の支払いを受けられなくなる一方、使用者側は操業がストップしてしまって多額の損失が生じます。労使双方に痛みを伴うため、可能であればストライキを回避することが望ましいです。

労働組合側からストライキの申入れを受けた企業は、まず協議(団体交渉)によって解決を試みましょう。協議が決裂してストライキに突入した場合は、その適法性を検討した上で、違法であれば差止仮処分の申立てや損害賠償請求を検討しましょう。
正当なストライキであっても、ストライキ期間中の賃金を支払う必要はありません。しかしそれを超えて、ストライキ参加者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、不当労働行為として禁止されています。

この記事ではストライキについて、内容・方法・要件・企業の対処法などを解説します。

ヒー

ニュースでたまに「あの会社でストライキ!」という報道を見ますが、ストライキってどういうものでしょうか?

ムートン

ストライキは労働組合が使用者側と交渉するために行う「争議行為」の一種で、労働者側が「労働をしない」という強力な手段です。内容や要件などを確認していきましょう。

※この記事は、2023年11月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

ストライキとは

ストライキ同盟罷業)」とは、労働条件の改善などを使用者に対して要求するため、労働組合が団結して労働拒否することをいいます。

ストライキは争議行為の一種

ストライキ(同盟罷業)は「争議行為」の一種です。

争議行為とは、ストライキ同盟罷業)・サボタージュ怠業)・ロックアウト作業所閉鎖)など、労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為およびこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいいます(労働関係調整法7条)。
ストライキは争議行為の一種として挙げられており、労働条件等に関する労働者側の要求を使用者側に認めさせることを目的としています。

正当なストライキは免責される

ストライキを行う権利は、日本国憲法に基づく団体行動権によって保障されています。したがって、労働者が正当なストライキを行った結果、使用者側に損害が生じたとしても、労働者はその損害を賠償する責任を負いません。

公務員はストライキ禁止

国家公務員および地方公務員によるストライキは、法律によって禁止されています(国家公務員法98条2項、地方公務員法37条1項)。

公務員のストライキが禁止されているのは、国民全体の奉仕者として勤務することが求められているためです。争議行為は公務をストップさせ、国民全体の共同の利益に重大な悪影響をもたらすおそれがあるため、公務員の争議行為は禁止されています。

ストライキの主な種類

ストライキは、会社の全部門にわたって行われる「全面スト」と、特定の部門に絞って行われる「部分スト」の2つに大別されます。
部分ストのうち、特定の労働者を指名してストライキに参加させるものは「指名スト」と呼ばれることもあります。

そのほか、政治的な主張を目的とした「政治スト」や、労働組合全体の意思決定を無視して個々の労働者が行う「山猫スト」などがありますが、これらはいずれも正当なストライキではありません。

ヒー

ガンジーの「ハンガーストライキ」とかも聞いたことがありますが…。

ムートン

それも争議行為としての「ストライキ」とは異なりますね。争議行為としては、労働組合が行うもののみが正当な「ストライキ」といえます。

ストライキのメリット・デメリット

ストライキを行う労働者側メリットとしては、ストライキによって使用者側に圧力をかけることにより、労働条件等に関する要求を呑ませやすくなるという点があります。
その一方で、デメリットとして、ストライキ期間中は賃金が支払われないので、労働者にとっても痛みを伴う戦いとなるでしょう。

これに対して、使用者側にはストライキにメリットはありません。事業がストップして収益が減少し、対応にもコストを要するなど、使用者側は甚大な損失を被るおそれがあります。
使用者側としては、労働組合との間で建設的な協議を行い、できる限りストライキを回避することが望ましいでしょう。

適法にストライキを行うための要件

労働者側が適法にストライキを行うためには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。

適法にストライキを行うための要件

① 労働組合が実施すること
② 労働組合の目的に沿っていること
③ 手段・態様が正当であること
④ 労働組合員等の直接無記名投票によって決議したこと
⑤ 使用者側との協議を尽くしたこと
⑥ 労働協約に違反しないこと
⑦ ストライキが法律上禁止されていないこと

①労働組合が実施すること

ストライキは、日本国憲法に基づく団体行動権の一環として行われるものです。

したがって、ストライキは労働組合によって実施される必要があります。一部の労働者だけで独自にストライキを行うこと(いわゆる山猫スト)はできません。

②労働組合の目的に沿っていること

ストライキが団体行動権の正当な行使と認められるのは、労働者としての主張を貫徹することを目的とする場合に限られます。

具体的には、労働環境または労働条件の維持・改善目的としていなければなりません。例えば以下などは、ストライキの目的になり得ます。

✅ 賃上げ
✅ 労働時間の削減
✅ 育児休業制度の拡大

これに対して、政治的な主張を通すためのストライキ(=政治スト)などは、正当なストライキとして認められません。

③手段・態様が正当であること

ストライキは、平和的な手段および態様によって行われなければなりません。労働者としての主張を貫徹する目的であっても、暴力を行使することは違法です(労働組合法1条2項但し書き)。

④労働組合員等の直接無記名投票によって決議したこと

労働組合においてストライキを決議する際には、以下のうちいずれかの投票方式によって行う必要があります(労働組合法5条2項8号)。

(a) 組合員の直接無記名投票の過半数により決議する
(b) 組合員の直接無記名投票によって代議員を選出し、その代議員の直接無記名投票の過半数により決議する

上記の投票方式によらないストライキの決議は、労働組合としての意思決定とはいえないため、正当なストライキとして認められません。

⑤使用者側との協議を尽くしたこと

労使双方にとって大きな痛みを伴うストライキは、労働者側の要求を使用者に受け入れさせるため、労働組合がとり得る最終手段です。

ストライキを行う前には、労使間の協議を十分に尽くすことが大前提となります。
使用者側が協議に応じる姿勢である場合や、すでに労働者の主張の大部分が使用者側に受け入れられた場合などには、ストライキを行う前提を欠くため、適法にストライキを行うことはできません。

⑥労働協約に違反しないこと

使用者と労働組合の間では、労働条件などに関して労働協約が締結されることがあります(労働組合法14条以下)。

労働協約では、ストライキその他の争議行為に関するルールが定められる場合があります。労働協約においてストライキに関する定めがある場合は、ストライキを実施する際にはその定めに従わなければなりません。

⑦ストライキが法律上禁止されていないこと

以下のストライキは法律によって禁止されているため、適法に実施することができません。

(a) 国家公務員によるストライキ(国家公務員法98条2項)
(b) 地方公務員によるストライキ(地方公務員法37条1項)
(c) 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持・運行を停廃し、またはこれを妨げるストライキ(労働関係調整法36条)
(d)電気事業に従事する者による、電気の正常な供給を停止するなど、電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめるストライキ(電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律2条)
(e) 船舶が外国の港にあるときに行うストライキ、または人命・船舶に危険を及ぼすストライキ(船員法30条)
など

労働組合からストライキの申入れを受けた企業の対処法

労働組合からストライキの申入れを受けた場合、企業は以下の各点に留意した上で適切に対応しましょう。

① 協議による解決を試みる
② ストライキの適法性を検討する|違法な場合は差止仮処分の申立て・損害賠償請求
③ ストライキ中の賃金は支払い不要|ノーワーク・ノーペイの原則
④ ストライキ参加者に対する不利益な取り扱いはNG|不当労働行為に当たる

協議による解決を試みる

ストライキが実際に行われると、事業がストップしてしまい、企業は甚大な損害を被ることが確実です。そのため、可能な限りストライキを回避するように努めましょう。

ストライキを回避するためには、労働組合との団体交渉に改めて応じ、労働条件等について誠実な交渉を行って解決を図るほかありません。ストライキ決行のリスクを考慮しつつ、会社として受け入れられる譲歩ラインを定めて、粘り強く労働組合との交渉を行いましょう。

ストライキの適法性を検討する|違法な場合は差止仮処分の申立て・損害賠償請求

ストライキはさまざまな要件を満たした上で行う必要があり、一つでも要件を満たさないストライキは違法です。

ストライキが違法である場合、企業としては法的な対抗手段を検討しましょう。具体的には、ストライキの差止仮処分の申立て(民事保全法23条2項)や、債務不履行(民法415条1項)または不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求などが考えられます。

労働組合に対して法的措置を講じる際には、経営陣・法務部門・外部弁護士の相互連携が重要です。法務担当者は、経営陣と外部弁護士が円滑に意思疎通できるように、その間に入ってサポートを行いましょう。

ストライキ中の賃金は支払い不要|ノーワーク・ノーペイの原則

ストライキ期間中においては、ストライキに参加する労働者は労働に従事しません。

労働していない時間については、法律・契約・就業規則等において有給とする定めがない限り、賃金が発生しません(=ノーワーク・ノーペイの原則)。
ノーワーク・ノーペイの原則は、ストライキに対しても適用されます。したがって、使用者は労働者に対して、ストライキ期間中の賃金を支払う義務を負いません

実務上は、毎月支給する賃金から、ストライキ期間中の賃金を日割り計算によって控除することになります。

ストライキ参加者に対する不利益な取り扱いはNG|不当労働行為に当たる

日本国憲法によって保障されている団体行動権を使用者が阻害する行為は、「不当労働行為」と呼ばれます。不当労働行為の類型は、労働組合法7条において示されています。

不当労働行為の一つに挙げられているのが、「労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること」(同条1号)です。

適法に行われるストライキは「労働組合の正当な行為」に当たります。したがって、ストライキに参加し、またはストライキに関する意思決定を行った労働者に対して、解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、不当労働行為として違法です。
また、適法なストライキによって使用者が損害を被ったとしても、その損害について労働組合や組合員に賠償を請求することはできません(同法8条)。

使用者による不当労働行為があった場合、労働者側は労働委員会に対する不服申立てを行うことができます。
不当労働行為を認定した場合、労働委員会は救済命令を発し、使用者は救済命令に従って不当労働行為を是正する義務を負います。確定した救済命令に違反した場合は、罰則の対象となるので注意が必要です。

なお、ノーワーク・ノーペイの原則に従ってストライキ期間中の賃金を控除することは、不当労働行為に当たりません。

ストライキに対するロックアウト(作業所閉鎖)は認められる?

労働組合によるストライキに対して、使用者はロックアウト作業所閉鎖)によって対抗する選択肢もあります。ロックアウトを行うと、労働者が就業できない(賃金が支払われない)期間が長引くため、団体交渉における強力な交渉カードになり得ます。

ただし、ロックアウトは常に認められるわけではありません。以下の事情に照らし、衡平の見地からストライキへの対抗防衛手段相当と認められる場合に限って、ロックアウトが認められます(最高裁昭和50年4月25日判決)。

・労働争議における労使間の交渉態度、経過
・労働組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度
など

近年では、使用者が実際にロックアウトを行った例はほとんどありません。ストライキに対しては、あくまでも労働組合側と誠実に交渉して回避に努める方針が基本線といえます。

ムートン

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