春闘とは?
目的・内容・賃上げとの関係・
いつ行われるか(時期)・
流れなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

春闘」とは、毎年2月ごろから行われる、賃金の引上げその他の労働条件の改善を目的とした労働運動です。全国的な労働組合組織である連合・全労連・全労協が取りまとめを行い、同時期に一斉に労使交渉を行うことにより、使用者側にプレッシャーをかけて労働条件の改善を目指します。

春闘における要求・交渉内容として、もっとも重要なのは賃金の引き上げ(賃上げ)です。ただし近年では、労働時間の短縮・育児や介護に関する制度の充実化・非正規社員の待遇改善など、働きやすい環境作りに関する交渉にも重点が置かれています。

近年では、毎年秋ごろに政府が経団連に賃上げを要請しています。その後、12月ごろに連合などによって全体方針が発表され、それを踏まえて産業別組織が具体的な要求水準を決定し、さらに企業別労働組合が具体的な要求内容を決定します。実際の労使交渉は2月ごろから行われ、3月ごろに企業の回答が提示されて、その年の春闘が終了します。

春闘は労働組合による団体交渉であるため、労働組合法が適用されます。使用者は労働組合法に基づき、春闘を不当に拒否するなどの「不当労働行為」をしてはなりません。不当労働行為は労働委員会による審査の対象となり、認定されれば救済命令等が発せられます。

この記事では春闘について、目的・内容・流れ・労働組合法の規制などを解説します。

ヒー

2月くらいになるとニュースで「今年の春闘では…」と労働組合の様子が流れます。でも「春闘」って何のことだかよく分かりません。

ムートン

春闘は労働者が賃金の引上げを中心に要求・交渉を行う労働運動で、労働組合と使用者の間で労使交渉が行われます。詳しく見ていきましょう。

※この記事は、2023年9月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 育児・介護休業法…育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
  • パートタイム・有期雇用労働法…短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

春闘とは

春闘」とは、毎年2月ごろから行われる、賃金の引上げその他の労働条件の改善を目的とした労働運動です。全国的な労働組合組織が取りまとめを行った上で、産業別および企業別の労働組合が、企業との間で労働条件に関する交渉を行います。

春闘の目的

春闘の目的は、労使関係における労働者の地位を向上させることにあります。

労働者は、使用者から支払われる賃金に生活を依存することが大半であるため、使用者に対して弱い立場に置かれがちです。そのため、労働者個人が企業に対して、労働条件の改善を求めて立ち向かうことは容易ではありません。

各企業の労働組合には団体行動権が保障されていますが、それでも企業に対する交渉力が十分であるとは限りません。労働組合の力が弱く、使用者の言いなりになっている企業も多いです。

そこで、全国的な労働組合組織である連合・全労連・全労協(後述)が、産業別・企業別の労働組合の取りまとめを行い、同時期に一斉に労使交渉を行います。これが「春闘」です。

春闘は産業横断的に展開されるため、使用者に対して賃上げなどの強い圧力をかけることができます。

春闘の歴史

1954年に、5つの単位産業別労働組合(炭労、私鉄総連、合化労連、電産、紙パ労連)が賃上げを求め、共同で「5単産共闘会議」を設立しました。

翌1955年には、さらに全国金属・化学同盟・電機労連の3単産が参加して、合計8単産が同時期に企業に対して賃上げを要求しました。これが春闘の起源と言われています。

1960年代の高度経済成長期や、1961年に池田勇人内閣が発表した「国民所得倍増計画」が追い風となり、春闘は好況を背景として攻勢を強めます。その結果、春闘参加者は大幅に増加し、1970年代半ばまで毎年2桁%の賃上げ率を達成しました。

しかし、その後の賃上げ率は毎年1桁%台で推移し、1991年のバブル崩壊以降は5%を下回りました。2002年以降は毎年1%台から2%台の賃上げ率で推移していましたが、2023年の賃上げ率は、物価高等の影響を反映して、30年ぶりの高水準である年3.60%となっています。

春闘を行う組織

春闘を行う組織は、以下のような階層構造になっています。

① 全国的な労働組合組織
春闘の取りまとめを行う、以下の3つの組織です。
・日本労働組合総連合会(連合)の中央闘争委員会、または中央執行委員会
・全国労働組合総連合(全労連)の国民春闘共闘委員会
・全国労働組合連絡協議会(全労協)のけんり春闘全国実行委員会

② 産業別組織
全国的な労働組合組織の傘下にある、産業の種類ごとに組織された労働組合です。産業全体の労働条件に関する交渉を行います。

③ 企業別労働組合
企業ごとに組織された労働組合です。産業別組織の傘下にあるものもありますが、独立しているものもあります。個々の企業における労働条件に関する交渉を行います。

春闘における要求・交渉の主な内容

春闘では、主に以下の労働条件が交渉の議題となります。

① 賃金の引き上げ(定期昇給・ベースアップなど)
② 労働時間の短縮・長時間労働の是正
③ 育児・介護に関する制度の充実化
④ 非正規社員の待遇改善
⑤ その他ワークライフバランス実現に関する事項

内容1|賃金の引き上げ(定期昇給・ベースアップなど)

春闘における要求・交渉内容として、もっとも重要なのは賃金の引き上げ賃上げです。

賃上げは伝統的に春闘の主要な目的であり、毎年定期昇給ベースアップなどの要求が行われています。特に1970年代半ばまでは、好景気の追い風を受けて、毎年2桁%の高い賃上げ率を達成しました。

ただし近年では、経済成長の鈍化によって賃上げ率が低迷しています。そのため、春闘の目標は賃上げに限らず、その他の労働条件へと拡散している状況です。

内容2|労働時間の短縮・長時間労働の是正・ワークライフバランス実現

近年では、働き方改革」が企業における一大テーマとなっています。労働者の働きやすさやワークライフバランスの実現にもつながる主要な論点として位置づけられるのが、労働時間の短縮および長時間労働の是正です。

日本では、献身的な貢献を是とする国民性や、終身雇用を前提とする企業との強い結びつきなどが災いして、慢性的な長時間労働が横行していました。残業代を正しく支払わない企業も多数存在し、いわゆる「サービス残業」もよく問題になっています。

こうした状況を踏まえて、労働時間の短縮・長時間労働の是正が、春闘において労働組合側から要求されることが増えました。特に2019年に働き方改革関連法が施行されて以降は、労働時間に関する論点の重要性が高まっています。

内容3|育児・介護に関する制度の充実化

男女共同参画の考え方が浸透したことや、超高齢社会により要介護者が増えたことが影響して、労働者の仕事と育児・介護の両立が重要な社会的テーマとなっています。こうした背景を受けて、春闘でも育児・介護に関する制度の充実化の要求がなされることが増えました。

特に近年では、段階的に育児・介護休業法の改正法が施行され、男性労働者を中心として育児休業の制度が拡大されています。春闘では、育児・介護休業法の最低ラインを超えて、労働者にとって使い勝手のよい制度の実現が目標になります。

内容4|非正規社員の待遇改善

いわゆる正社員と非正規社員(契約社員・パート・アルバイトなど)の待遇差は、日本においてよく見られる労働問題の一つです。

2021年4月から全面施行されたパートタイム・有期雇用労働法では、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金」が定められました。しかしながら、依然として非正規社員の待遇は、正社員に比べてかなり低く抑えられているケースが大半です。

春闘ではこうした状況を踏まえて、業務の内容や責任の程度などに見合った待遇を受けられていない、非正規社員の待遇改善に関する要求が行われることがあります。

内容5|ダイバーシティ・人権尊重・平等に関する事項

春闘では上記のほか、以下の事項に関する要求が行われることがあります。

・高年齢者の雇用
・障がい者雇用
・ジェンダー平等
・多様性の推進
など

春闘の流れ

春闘は、毎年以下の流れで行われます。

① 政府の経団連に対する賃上げ要請
② 事前検討・全体方針の発表
③ 産業別組織における要求水準の決定
④ 企業別労働組合による要求内容の決定
⑤ 労使交渉・妥結

1|政府の経団連に対する賃上げ要請

近年では春闘に先立ち、前年の秋ごろをめどに、政府が経団連に対して賃上げを要請するケースが多いです。政府が労使交渉に干渉することを揶揄して「官製春闘」と呼ばれることもあります。

ヒー

政府が主導して賃上げをしてくれるなんてありがたいです、何かダメなんですか?

ムートン

原則として労働条件は労使間で決めるもので、政府が口出しすると経済活動を歪めかねません。ただ、労働者と使用者の交渉力には差がある場合が多く、労働者側を支援することにも理があるといえます。

政府の賃上げ要請に拘束力はありませんが、大企業はロビイング等によって政府と深いつながりを持っているため、賃上げ要請にある程度配慮せざるを得ないことが多いです。

なお政府による賃上げ要請は、異なる時期に行われることもあります。2023年1月には岸田首相が、物価高が継続している状況を踏まえて、それを上回る賃上げを企業に要請しました。

2|事前検討・全体方針の発表

全国的な労働組合組織(連合・全労連など)では、前年のうちから数カ月間にわたって検討を行い、12月から1月ごろに春闘の全体方針を発表します。全体方針は、産業別組織が具体的な要求水準を決定する上での基準となります。

3|産業別組織における要求水準の決定

産業別組織は、取りまとめを行う上位組織が示した全体方針に従い、企業側に対する要求水準を決定します。

例えば賃上げについては「ベースアップ3%、定期昇給相当分を含めて5%」などと、具体的な数値目標が示されます。産業別組織の要求水準は、企業別労働組合が個別交渉を行う際の基準となります。

4|企業別労働組合による要求内容の決定

産業別組織が決定した要求水準を踏まえて、企業別労働組合は、実際に企業側に対して要求する内容を決定します。

賃上げ等に応じる体力の程度や、賃上げ等を積極的に行う風土があるかどうかは、企業ごとに異なります。企業別労働組合は、自社の業績や過去の賃上げ等の状況などを考慮して、どの程度であれば受け入れられそうかを見極めた上で要求を取りまとめます

5|労使交渉・妥結

春闘における実際の労働条件の交渉は、企業企業別労働組合の間で行われます。後述のとおり、使用者による不当労働行為は禁止されており、正当な理由なく団体交渉を拒否することはできません

ムートン

労働組合が「賃上げの団体交渉をしたい」と申し入れた場合は、企業は「それはこっちで決めること」「例年通りだから」などと団体交渉のテーブルにつくことを拒否してはいけません。

労使間交渉の末に、賃上げ等について合意に至ったら、その内容を書面にまとめて締結し、今後の労働条件に反映します。

春闘に適用される法律|労働組合法

春闘は労働組合による団体交渉であるため、労働組合法の規制が適用されます。労働組合法では、使用者による不当労働行為が禁止されており、さらに不当労働行為の審査・救済手続きが定められています。

使用者に禁止される「不当労働行為」

労働組合法では、使用者による以下の行為が「不当労働行為」として禁止されています(同法7条)。

不当労働行為とは

① 労働組合に加入していることや、労働組合の正当な行為をしたことなどを理由に、労働者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをすること

② 労働者の代表者との団体交渉を、正当な理由なく拒否すること

③ 労働組合の結成もしくは運営を支配し、もしくはこれに介入すること、または労働組合の運営費につき経理上の援助を与えること(基金に対する寄附および最小限の広さの事務所の供与を除く)

④ 中央労働委員会・都道府県労働委員会に対する申立てなどを理由に、労働者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをすること

特に、

✅ 春闘の一環として行われる団体交渉を不当に拒否すること
✅ 春闘に参加した労働者を不利益に取り扱うこと

は、不当労働行為に該当する点にご留意ください。

不当労働行為の審査手続き・救済命令等

労働者は使用者の不当労働行為につき、都道府県労働委員会に対して審査開始を申し立てることができます(労働組合法27条1項)。

審査の結果、都道府県労働委員会が不当労働行為を認定した場合には、使用者に対して救済命令を発令します(同法27条の12第1項)。これに対して、不当労働行為が認定できなかった場合は、棄却命令を発令します。

救済命令または棄却命令について異議がある場合は、命令の交付を受けてから原則として15日以内に、中央労働委員会に対する再審査の申立てが可能です(同法27条の15第1項)。

また、裁判所に取消訴訟を提起して争うこともできます。労働者側の出訴期間は6カ月以内ですが(行政事件訴訟法14条1項)、使用者側の出訴期間は命令の公布日から30日以内です(労働組合法27条の19第1項)。

救済命令が確定した場合、使用者は救済命令に従い、不当労働行為を停止しなければなりません(例:団体交渉に応じるなど)。確定した救済命令に違反した使用者は、刑事罰または過料の対象となります(労働組合法28条・32条)。

ムートン

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