有給休暇とは?
付与日数や時期・取得に関する
労働基準法のルールを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

有給休暇」とは、労働者に付与される有給休暇です。労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を送れるようにするため、労働基準法によって有給休暇の付与が義務付けられています。

最初の有給休暇は雇入れから6カ月が経過した時点で付与され、その後は1年ごとに付与されます。付与日数は、勤続年数や勤務形態などによって決まります。

有給休暇を取得する理由タイミングは、原則として労働者の自由です。ただし、一定の条件を満たす場合に限り、使用者の時季変更権が認められます。

有給休暇を適切に与えないと、労働基準監督署の是正勧告や刑事罰の対象になります。労働基準法のルールを踏まえて、有給休暇を適切に付与しましょう。

この記事では有給休暇について、労働基準法のルールを詳しく解説します。

ヒー

新入社員はいつから有給休暇を使えるんでしたっけ? 質問を受けることが多い「有給休暇」について知りたいです。

ムートン

有給休暇のルールは労働基準法に定められており、自社の就業規則などにも明示されていますね。付与日数や取得に関するルールを確認していきましょう。

※この記事は、2025年3月31日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

有給休暇とは

有給休暇」とは、労働者に付与される有給の休暇す。労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を送れるようにするため、労働基準法によって有給休暇の付与が義務付けられています。

労働基準法では、有給休暇の付与や取得に関してさまざまなルールが定められています。企業は、労働基準法のルールを遵守し、適切な形で労働者に有給休暇を付与しなければなりません。

次の項目から、労働基準法に定められた有給休暇のルールを詳しく解説します。

有給休暇の付与

有給休暇付与について、以下の事項を解説します。

① 有給休暇が付与される労働者
② 有給休暇が付与される時期
③ 付与される有給休暇の日数

有給休暇が付与される労働者

有給休暇が付与されるのは、以下の2つの要件を満たす労働者です(労働基準法39条1項)。

有給休暇が付与される労働者

(1) 雇入れの日から起算して、6カ月間継続勤務したこと
(2) 基準期間における全労働日のうち、8割以上出勤したこと

※基準期間:最初に付与される有給休暇については、雇入れ後の6カ月間。2回目以降に付与される有給休暇については、付与日前の1年間。

正社員だけでなく、パートアルバイトなどでも、上記の要件を満たせば有給休暇が付与されます。

有給休暇が付与される時期

有給休暇が付与される時期は、基準期間が経過した時です。具体的には、雇入れから6カ月が経過した時に最初の有給休暇が付与され、その後は1年ごとに有給休暇が付与されます。

例えば、2024年4月1日に雇用された労働者には、最初の有給休暇が2024年10月1日に付与されます。その後は、毎年10月1日に有給休暇が付与されることになります。

ムートン

企業が独自にこの基準を上回る基準を設定することも認められています。

付与される有給休暇の日数

有給休暇が付与される日数は、フルタイム労働者とパートタイム労働者で異なります

フルタイム労働者とパートタイム労働者

(1) フルタイム労働者
以下のいずれかに該当する労働者
・1週間の所定労働日数が5日以上
・1年間の所定労働日数が217日以上
・1週間の所定労働時間が30時間以上

(2) パートタイム労働者
フルタイム労働者ではない労働者

フルタイム労働者の場合

フルタイム労働者には、継続勤務期間に応じて、下表の日数の有給休暇を付与する必要があります(労働基準法39条2項)。

継続勤務期間付与される有給休暇の日数
6カ月10日
1年6カ月11日
2年6カ月12日
3年6カ月14日
4年6カ月16日
5年6カ月18日
6年6カ月以上20日

パートタイム労働者の場合

パートタイム労働者には、継続勤務期間所定労働日数に応じて下表の日数の有給休暇を付与する必要があります(労働基準法39条3項)。
所定労働日数は1週間と1年間のいずれかで判定し、有給休暇の日数が多くなる方を適用します。

<1週間の所定労働日数で判定する場合>
週4日週3日週2日週1日
継続勤務期間
6カ月
7日5日3日1日
1年6カ月8日6日4日2日
2年6カ月9日6日4日2日
3年6カ月10日8日5日2日
4年6カ月12日9日6日3日
5年6カ月13日10日6日3日
6年6カ月以上15日11日7日3日

<1年間の所定労働日数で判定する場合>

年169日以上
216日以下
年121日以上
168日以下
年73日以上
120日以下
年48日以上
72日以下
継続勤務期間
6カ月
7日5日3日1日
1年6カ月8日6日4日2日
2年6カ月9日6日4日2日
3年6カ月10日8日5日2日
4年6カ月12日9日6日3日
5年6カ月13日10日6日3日
6年6カ月以上15日11日7日3日

有給休暇の取得

有給休暇の取得に関するルールを解説します。

労働者は原則として有給休暇を自由に取得できますが、例外的に使用者の時季変更権が認められるケースもあります。
また、年間10日以上の有給休暇を付与すべき労働者については、5日以上の有給休暇を取得させることが使用者に義務付けられています。

原則として1日単位で取得する|ただし半休・時間休を認めてもよい

有給休暇は原則として、1日単位で付与します。ただし労働者が希望しており、かつ使用者が同意した場合には、半日単位で有給休暇を付与することも認められます。

さらに、労使協定の定めがある場合は、時間単位で有給休暇を付与することも認められています(労働基準法39条4項)。
時間単位で有給休暇を付与する場合は、労使協定において以下の事項を定めなければなりません。

時間単位の有給休暇に関する労使協定事項

(1) 時間を単位として有給休暇を与えることができる労働者の範囲

(2) 時間を単位として与えることができる有給休暇の日数
※5日以内に限る

(3) 時間を単位として与えることができる有給休暇一日の時間数
※1日の所定労働時間数を下回らないものとする

(4) 1時間以外の時間を単位として有給休暇を与える場合には、その時間数
※1日の所定労働時間数に満たないものとする

取得する理由やタイミングは労働者の自由|使用者は原則として拒否できない

有給休暇の取得は労働者の権利であって、取得する理由は問われません。どのような理由であっても、労働者は付与された有給休暇を取得することができます

また、有給休暇を取得するタイミングも、原則として労働者の自由です。
次の項目で解説する時季変更権が認められる場合を除き、使用者は労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければなりません(労働基準法39条5項)。

使用者の時季変更権が認められるケース

労働者に請求された時季に有給休暇を与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者は他の時季に有給休暇を与えることができます(=時季変更権。労働基準法39条5項但し書き)。

使用者の時季変更権が認められるケースとしては、以下の例が挙げられます。

・代替人員を確保できない場合
・同じ時期に有給休暇の取得希望者が重なった場合
・本人の参加が欠かせない業務がある場合
・有給休暇が長期間にわたる場合
など

これに対して、「繁忙期だから」「仕事が多くなりそうだから」などの漠然とした理由では、使用者が時季変更権を行使することはできません。時季変更権を行使する場合は、その正当性を裏付ける具体的な理由が必要になります。

また、労働者が退職する直前の時期においては、使用者が時季変更権を行使することはできません。
退職する労働者は、残っている有給休暇を全て取得する権利があります。退職直前における時季変更権の行使は、事実上有給休暇の取得を妨害するに等しいため、認められません。

5日間の有給休暇を取得させる義務(時季指定義務)

使用者は、1年間に付与すべき有給休暇の日数が10日以上である労働者に対し、最低でもそのうち5日間の有給休暇を、時季を指定して取得させる義務があります(=時季指定義務)。
時季指定義務は、有給休暇の取得率が低い状況を改善するため、2019年4月から施行されました。

時季指定義務の対象となるのは、以下の日数の合計が5日に満たない労働者です。使用者は対象労働者に対し、時季を指定して不足日数分の有給休暇を取得させなければなりません(労働基準法39条7項・8項)。

  • 労働者が自ら請求して取得した有給休暇の日数
  • 労使協定によって時季が指定された有給休暇の日数

有給休暇の時効|付与日から2年間に限り取得可能

有給休暇は、付与された日から2年が経過すると時効によって消滅します(労働基準法115条)。
例えば、2024年4月1日に付与された有給休暇を取得できるのは、2026年3月31日までです。

有給休暇の時効期間を2年間よりも短縮することはできません(労働基準法13条)。
他方で、就業規則などによって企業独自のルールを定め、2年間よりも長い期間にわたって有給休暇の取得を認めることは可能です。

有給休暇を取得した日に支払われる金額|計算方法は3つ

有給休暇を取得した日につき、使用者が労働者に対して支払うべき賃金は、以下の3つのうちいずれかの方法によって計算します(労働基準法39条9項、労働基準法施行規則25条)。
なお、労働者ごとに計算方法を変えられるわけではなく、就業規則等における事前の定めに従わなければなりません。

有給休暇の取得日の賃金の計算方法

① 平均賃金
以下の式によって計算した平均賃金を支払います。

平均賃金=(対象期間中の賃金総額-控除すべき賃金)÷対象期間の総日数

※対象期間は、直前の賃金締切日以前3カ月間です。ただし、以下の期間を除きます。
・業務上の負傷または疾病による療養のための休業期間
・産前産後休業期間
・使用者の責に帰すべき事由によって休業した期間
・育児休業の期間
・介護休業の期間
・試用期間

※平均賃金の算定に当たって控除すべき賃金は、以下のとおりです。
・臨時に支払われた賃金
・3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
・通貨以外のもので支払われた賃金で、一定の範囲に属しないもの

② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
以下の金額の賃金を支払います。月給制や日給制などの場合には、単に通常の出勤をしたものとして賃金を支払えば足ります。

(1) 月給制の場合
月給額÷その月の所定労働日数

(2) 時給制の場合
時給額×所定労働時間数

(3) 日給制の場合
日給額

③ 健康保険の標準報酬月額の日割額
労使協定の定めがある場合に限り、健康保険法に基づく標準報酬月額の30分の1を支払うことができます。

有給休暇の買取りは不可|ただし退職時などは例外

有給休暇を与えない代わりに、労働者に対して金銭を支払うこと(=有給休暇の買取り)は、原則として認められません。労働者が心身の疲労を回復して健康を維持するという有給休暇の趣旨に反するためです。

ただし、労働基準法によって付与が義務付けられたものではない有給休暇については、労働者との合意または就業規則等の定めに従って買い取ることができます。
例えば、2年間の時効が完成した有給休暇や、労働基準法所定の日数を超える部分の有給休暇を買い取ることは可能です。

また、退職しようとする労働者から、退職日までに消化できない有給休暇を買い取ることも認められます。
退職に伴う有給休暇の買取りは、労使の合意によって行うものです。使用者が労働者から有給休暇を買い取る義務はありません

有給休暇の取得を理由とする不利益な取り扱いは禁止

使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他の不利益な取り扱いをしてはいけません(労働基準法附則136条)。

例えば、有給休暇の取得を理由として以下のような取り扱いをした場合は、労働基準法違反に当たります。

・賃金を減額する
・有給休暇を取得したことを、賞与査定のマイナス要素として考慮する
・有給休暇を取得したことを理由に、皆勤手当を不支給とする
・解雇する
など

有給休暇を適切に与えなかった場合のペナルティ

使用者が労働者に対して有給休暇を適切に与えなかった場合は、労働者の申告などをきっかけとして、労働基準監督官による臨検立ち入り調査)を受ける可能性があります。

臨検において違反が発覚すると、事業場に対して是正勧告が行われます。是正勧告を受けた場合には、指定された期限までに違反状態を是正し、労働基準監督署に報告しなければなりません。

また、違反が悪質である場合や、是正勧告に従わなかった場合には、起訴されて刑事罰を受けることもあり得ます。
有給休暇の取得拒否等をした者は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されるほか、企業(法人)にも「30万円以下の罰金」が科されるので十分ご注意ください(労働基準法119条1号・121条)。

ムートン

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