地震保険料控除とは?
金額の計算方法や
必要な手続きなどを解説!

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この記事のまとめ

「地震保険料控除」とは、地震保険料や旧長期損害保険料を支払った人が受けられる所得控除です。実際に支払った保険料の全部または一部が、所得税・住民税の計算の基準となる所得額から控除され、税負担が軽くなります。

年末調整の対象となる従業員等については、年末調整において地震保険料控除を適用し、最終的な所得税額を算出する必要があります。地震保険料控除に関する事項が記載された保険料控除申告書などの提出を受けたうえで、正確に年末調整を行いましょう。

この記事では地震保険料控除について、金額の計算方法や必要な手続きなどを解説します。

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年末調整の申告書には「地震保険料控除」という欄がありますが、これは何でしょうか?

ムートン

地震保険料控除は、地震保険料などを支払った従業員が受けられる「所得控除」の一つです。会社としては、申告された内容を正しく計算して年末調整に反映させる必要があります。詳しく見てみましょう。

※この記事は、2025年9月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

地震保険料控除とは

地震保険料控除」とは、地震保険料や旧長期損害保険料を支払った人が受けられる所得控除です。実際に支払った保険料の全部または一部が、所得税・住民税の基準となる所得額から控除され、税負担が軽くなります。

所得控除の仕組み|地震保険料控除は所得控除の一つ

地震保険料控除は「所得控除」の一つです。

「所得控除」とは、1年間の所得から一定額を差し引き、税負担を軽減する制度をいいます
社会政策上の要請、各納税者の個人的事情への配慮、最低生活費の保障など、さまざまな理由で所得控除が設けられています。

例えば、地震保険料控除を受ける前の年間所得が400万円だとします(その他の所得控除は全て済んでおり、税額控除はないものとします)。
もし5万円の地震保険料控除を受けられるなら、控除後の395万円に対して所得税と住民税が課されます。その結果、所得税と住民税の負担が1万5210円軽減されます。

<地震保険料控除による税負担の軽減例>
所得税(復興特別所得税を含む)住民税所得税・住民税の合計
地震保険料控除前(年間所得400万円)38万0322円40万円78万0322円
地震保険料控除後(年間所得395万円)37万0112円39万5000円76万5112円

地震保険料控除の目的

地震保険料控除の目的は、国民に地震保険への加入を促すことにあります

日本では頻繁に地震が発生しており、国民は大規模地震のリスクに晒されています。
大規模地震が発生すると、自宅の建物や家財が壊れて大きな損害を被るおそれがあります。しかし、被災者に対する公的な支援は必ずしも十分ではありません。

被災者が地震保険に加入していれば、保険金によって生活を回復するためのお金をある程度確保できます。公的支援が不十分な中で、国民に大規模地震への備えを促すことは国益にかなうと考えられるため、2006年度(平成18年度)の税制改正によって地震保険料控除が設けられました。

地震保険料控除の対象となる保険料の種類

地震保険料控除の対象となる保険料は、「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の2種類です。その年においていずれかの保険料を支払っていた場合は、地震保険料控除を受けることができます。

地震保険料

「地震保険料」とは、いわゆる「地震保険」の保険料です。

地震保険」とは、自己または同一生計親族の所有する居住用家屋、または生活に必要な家具・什器・衣服などの動産を対象として、地震等により生じた損失を填補する保険をいいます
控除の対象となる地震保険は、火災保険などに付帯して契約が締結されるもの、または火災保険などの契約と一体となって効力を有するものに限られています。

日本では、戸建住宅やマンションを購入または新築する際、火災保険と併せて地震保険に加入するケースが多くなっています。この場合、地震保険の保険料について地震保険料控除を受けることができます(火災保険分は対象外)。

旧長期損害保険料

旧長期損害保険料」とは、長期損害保険契約等の保険料です。

長期損害保険契約等」とは、以下の全てに該当する損害保険契約等をいいます。ただし、保険期間または共済期間の始期が2007年1月1日以後であるものを除きます。

長期損害保険契約等の要件

① 保険期間または共済期間の満了後に満期返戻金を支払う旨の特約のある契約、および建物または動産の共済期間中の耐存を共済事故とする共済に係る契約であること。

② 保険期間または共済期間が10年以上であること。

③ 2007年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないものであること。

旧長期損害保険料については、従来は損害保険料控除の対象とされていましたが、2006年度(平成18年度)の税制改正によって損害保険料控除が廃止されました。しかし経過措置として、2006年以前に損害保険料控除の対象となっていた保険の一部については、引き続き地震保険料控除を受けられることになりました

長期損害保険契約等に当たり得るものとしては、積立型傷害保険、年金払積立傷害保険、積立型火災保険などが挙げられます。2006年以前にこれらの保険に加入し、保険期間が現在も続いている場合は、地震保険料控除を受けられる可能性があります。

地震保険料控除の金額の計算方法と計算例

地震保険料控除の金額は、一定額までは支払った保険料の全額となりますが、それを超えた場合は保険料の一部のみが控除されます

地震保険料控除の額の計算方法と計算例を、保険料の区分(種類)に応じて解説します。

地震保険料だけの場合

その年に地震保険料を支払い、旧長期損害保険料は支払っていない場合は、以下の表に従って地震保険料控除の額を計算します。

年間の支払保険料の合計控除額
5万円以下支払金額の全額
5万円超5万円

(例1)年間の地震保険料の支払額が1万円
→地震保険料控除の額は1万円

(例2)
年間の地震保険料の支払額が10万円
→地震保険料控除の額は5万円

なお、地震保険料を数年分まとめて支払った場合は、1年当たりの金額に換算します
例えば、5年分の地震保険料として5万円をまとめて支払った場合、1年当たりの地震保険料の支払額は1万円となります。この場合、1年当たり1万円の地震保険料控除を5年間にわたって受けることができます。

旧長期損害保険料だけの場合

その年に旧長期損害保険料を支払い、地震保険料は支払っていない場合は、以下の表に従って地震保険料控除の額を計算します。

年間の支払保険料の合計控除額
1万円以下支払金額の全額
1万円超2万円以下支払金額×1/2+5000円
2万円超1万5000円

(例1)年間の旧長期損害保険料の支払額が1万円
→地震保険料控除の額は1万円

(例2)年間の旧長期損害保険料の支払額が1万5000円
→地震保険料控除の額は1万2500円

(例3)年間の旧長期損害保険料の支払額が5万円
→地震保険料控除の額は1万5000円

地震保険料と同様に、旧長期損害保険料を数年分まとめて支払った場合は、1年当たりの金額に換算します
例えば、20年分の旧長期損害保険料として20万円をまとめて支払った場合、1年当たりの旧長期損害保険料の支払額は1万円となります。この場合、1年当たり1万円の地震保険料控除を20年間にわたって受けることができます。

地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合

その年に地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払った場合は、上記の方法で計算したそれぞれの控除額の合計額が、最終的な地震保険料控除の額となります(最高額は5万円)

(例1)年間の地震保険料の支払額が1万円、旧長期損害保険料の支払額が1万円
→地震保険料控除の額は2万円

(例2)年間の地震保険料の支払額が1万円、旧長期損害保険料の支払額が1万5000円
→地震保険料控除の額は2万2500円

(例3)年間の地震保険料の支払額が10万円、旧長期損害保険料の支払額が5万円
→地震保険料控除の額は5万円(上限)

ただし、同じ保険契約に基づき、地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払っている場合は、納税者がいずれか一方を選択して控除を受けることになります。
例えば、同じ保険契約に基づいて地震保険料を1万円、旧長期損害保険料を1万5000円払っているとします。
他に地震保険料控除の対象となる保険契約がないとすれば、地震保険料を選択した場合の控除額は1万円、旧長期損害保険料を選択した場合の控除額は1万2500円です。この場合、旧長期損害保険料を選択した方が有利となります。

地震保険料控除について、企業側で必要となる手続き

年末調整の対象となる従業員等については、企業が年末調整において地震保険料控除を適用し、最終的な所得税額を算出する必要があります。企業側で必要となる手続きは以下のとおりです。

保険料控除申告書などの提出を受ける

企業は年末調整の対象となる従業員等に対し、以下の書類の提出を求めましょう。このうち、地震保険料控除に関する事項は「保険料控除申告書」に記載されます

<年末調整の際に従業員等から提出を受ける書類>
書類の名称概要
扶養控除等(異動)申告書扶養している親族などについての情報を記載する
※原則として、年の最初に給与を支払うまでに提出を受ける
基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
※いわゆる「基・配・特・所」(令和6年度までは「基・配・所」
基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除の適用に関する情報を記載する
※年末調整時に提出を受ける
保険料控除申告書生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除の適用に関する情報を記載する
※年末調整時に提出を受ける
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書住宅ローン減税に関する情報を記載する

年度内に年末調整を完了させるなら、これらの書類は11月中旬ごろまでに回収することが望ましいです

従業員等から提出を受けたこれらの書類は、その提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存しなければなりません。税務調査の際に提出を求められたときは、これらの書類を提出する必要があります。

年末調整を行う

従業員から提出を受けた各種書類を参照しながら、年末調整を行います。

年末調整では、1年間で実際に徴収した源泉所得税の総額と、最終的な源泉所得税額(年調年税額)の差額を計算します。地震保険料控除を含む各種所得控除も適用したうえで、年調年税額を計算しなければなりません。

実際の徴収額が年調年税額に不足していれば追加で徴収し、超過していれば還付することになります。追加徴収と還付は、いずれも年末調整後に支給する給与額を増減させる形で行います。
年末調整による精算額は、税務署に納付する源泉所得税額に反映させます。

年末調整は12月頃に行い、12月または翌年1月の給与によって追加徴収または還付を行うのが一般的です

年末調整の詳しい方法については、国税庁のウェブサイトなどをご参照ください。

参考:国税庁ウェブサイト「年末調整がよくわかるページ(令和6年分)」
ムートン

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参考文献

国税庁ウェブサイト「No.1145 地震保険料控除」

国税庁ウェブサイト「No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」

国税庁ウェブサイト「地震保険料控除に関する経過措置」

国税庁ウェブサイト「No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」

国税庁ウェブサイト「年末調整がよくわかるページ(令和6年分)」