特別休暇とは?
有給との違いや給料の扱い、
運用の仕方などを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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特別休暇とは、法律で定められた休暇とは別に、企業が独自に定められる休暇です。
・特別休暇は、労使の合意に基づき企業が任意で設定できる休暇です。一方、有給休暇は法律に基づく休暇であり、心身の疲労回復などを目的に理由を問わず取得できます。
・特別休暇の例として、慶弔休暇や夏季休暇、アニバーサリー休暇などが挙げられます。
・特別休暇を設定する際、従業員10人以上の企業は、就業規則に詳細を記載し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。本記事では、特別休暇の概要や種類、運用の仕方を解説します。
※この記事は、2025年10月20日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
特別休暇とは
特別休暇の定義、導入目的、法定休暇・有給休暇との違いについて解説します。
特別休暇の定義
特別休暇とは、会社が従業員のために独自にルールを設けて付与する休暇です。企業の福利厚生の一環であり、導入可否は企業の裁量で決定できます。
具体的には慶弔休暇や夏季休暇、年末年始休暇などが特別休暇に該当します。企業独自の休暇制度であり、従業員満足度の向上や企業の特色としてのアピールによる人材採用の強化などに役立ちます。
法定休暇との違い
法定休暇(休業)と特別休暇の主な違いは、休暇の付与が「法律上の義務」であるか「会社の任意」であるかという点です。法定休暇は、労働基準法や育児・介護休業法といった法律に基づいて、すべての労働者に保障されている権利です。例えば、以下のような休暇(休業)が該当します。
- 産前産後休業(産休)
- 育児休業(育休)
- 子の看護等休暇(子看休暇)
- 生理休暇
取得要件を満たす従業員から上記を含む法定休暇の申請があった場合、会社は休暇を付与しなければなりません。
一方、特別休暇は一般的に企業の就業規則を根拠として運用されます。そのため、導入していない会社があったとしても違法ではありません。また、後述しますが、給料の扱いも企業が自由に設定できます。
有給休暇との違い
特別休暇と年次有給休暇の主な違いは、休暇の付与が企業の任意であるか、法的義務であるかという点です。
年次有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利であり、心身の疲労回復などを目的に理由を問わず取得できる「法定休暇」です。一方、特別休暇は会社が独自に目的や条件を定める休暇であり、目的や取得要件を会社で自由に設定できます。
例えば、年次有給休暇は「私用のため」という理由で自由に取得できますが、特別休暇である結婚休暇は「結婚する」という特定の理由がなければ取得できません。また、年次有給休暇は休暇中も原則として賃金が支払われますが、特別休暇は会社ごとで有給とするか無給とするかの扱いが異なります。
また、特別休暇は法律で定められた「年5日の年次有給休暇の取得義務」の対象日数には含まれません。ただし、夏季休暇を年次有給休暇を計画的に付与する制度(計画年休制度)を活用して年次有給休暇として取得させる運用を行なっているケースがあり、その場合は対象日数に含まれます。なお、年次有給休暇を計画的に取得させるためには労使協定の締結が必要なため、夏季休暇に計画年休制度を適用する場合は労使協定が締結されているかどうかを事前に確認することが望ましいです。
特別休暇の種類と日数
主な特別休暇と、取得日数の目安を紹介します。
- 慶弔休暇
- 夏季休暇・年末年始休暇
- リフレッシュ休暇
- 病気休暇
- その他の休暇
慶弔休暇
慶弔休暇は、従業員本人や近親者の結婚・葬儀といったライフイベントの際に付与する休暇です。従業員の人生の節目となる出来事で休暇を取得できるように、多くの企業が導入しています。
日数の一般的な目安は、以下のとおりです。
- 従業員本人の結婚:5日〜7日程度
- 配偶者の出産:5日程度
- 父母や配偶者、子供の弔事:5日〜7日程度
- 祖父母や兄弟姉妹の弔事:3日程度
企業によっては、慶弔休暇の申請時に結婚式の招待状や会葬礼状のコピーなど、事実を証明する書類の提出を求めるよう定めていることがあります。なお、忌引については突発的に取得の必要性が生じることが多いため、そのような場合でもスムーズに申請できる仕組みにしておくのが望ましいです。
夏季休暇・年末年始休暇
夏季休暇や年末年始休暇は、慣習として広く普及している季節性の特別休暇です。
運用方法には、会社全体で「8月13日~15日」のように休日を指定する「一斉付与方式」と、「7月~9月の間に3日間」のように期間を定めて従業員が交代で取得する「交代取得方式」があります。また、法律で定められている年次有給休暇の年5日取得制度のもと、計画的に付与する運用の仕方も考えられます。
年次有給休暇と明確に区別するのであれば、給料の取り扱いなどを就業規則で定めておくことが推奨されます。
リフレッシュ休暇
リフレッシュ休暇は、従業員の心身の疲労回復や、自己啓発の機会を提供することを目的に、一定の勤続年数に応じて付与される特別休暇です。従業員の仕事への熱意やモチベーションを高め、人材定着や離職率低下につなげるための福利厚生として導入するのが一般的です。
付与日数は企業によって分かれますが「勤続5年で3日、10年で5日」のように、勤続年数に応じて段階的に設定されるのが多いです。給料の有無も企業の判断によりますが、休暇の取得を促進するために「リフレッシュ休暇支援金」といった一時金を支給するケースもあります。
福利厚生の充実により従業員の勤労意欲を高めたり、求職者に自社を選んでもらえる魅力になったりするため、従業員への積極的な周知や計画的取得の促進などが運用のポイントとなります。
病気休暇
病気休暇は、業務外の病気やケガによって療養が必要になった際に利用できる特別休暇です。従業員が治療に専念できる環境を整えて生活の安定を図ることで、早期の職場復帰と人材の定着を支援します。入院が長引く場合に利用できれば、従業員も安心して治療・療養に臨めます。
年次有給休暇とは別に「年間5日まで」のように日数を定めたり、長期療養に備えて取得できる日数を多く設定したりするなど、企業によって運用の仕方はさまざまです。公平に制度を運用するため、医師の診断書の提出を求めるなど、細かく要件を設定しておくのが望ましいです。
その他の休暇
これまで紹介した休暇以外にも、企業の価値観や従業員のニーズを反映した、さまざまな特別休暇が存在します。いずれも、従業員のワークライフバランスの支援や働きがいの向上、人材確保へのアピールポイントなど、多くの役割を果たすものです。
いくつか例を紹介します。
- アニバーサリー休暇:自身や家族の誕生日や結婚記念日などに取得できる
- ボランティア休暇:社会貢献活動への参加を支援する
- ペット忌引休暇:ペットが亡くなった際に取得できる
自社の企業文化や従業員構成などを考慮し、従業員が利用しやすい福利厚生制度として、特別休暇制度の設置を検討することが推奨されます。
特別休暇中の給料の扱い
特別休暇を設置する際に注意したいのが、給料の扱いです。特別休暇は、給料の有無を企業が自由に設定できます。給料の扱いによっては、休暇の取得率なども変わることも考えられます。給料の扱いの原則や支払い例について解説します。
給料の扱いは企業が自由に決定できる
特別休暇を取得した日の給料を支払うかどうかについては、法律上の定めはなく、会社の判断によって就業規則において定められます。休暇の性質やほかの休暇制度との整合性などから、給料を支払うかどうかを決定します。
給料の支払い例
特別休暇における給料の支払いパターンは、基本的に「全額有給」「無給」「一部有給」の3つに分類されます。
給料の支払いは、企業が独自に設定できます。たとえば、夏季休暇や慶弔休暇は有給扱い、長期のボランティア休暇や自己啓発のための休暇であれば無給扱い、といった形です。
人件費と福利厚生の充実のバランスを重視する場合、「一部有給扱い」も検討されます。給料の8割支給など一部の金額に限って支払うようにすれば、全額有給扱いに比べて人件費を削減でき、従業員としても使いやすくなります。
就業規則での特別休暇の定め方
常時10人以上の労働者を使用する企業の場合、特別休暇を運用する際は、就業規則に休暇の詳細を定めることが求められます。従業員とのトラブルや法的な問題が起こらないようにするには、記載すべき内容や運用の仕方が重要です。就業規則に記載する休暇の詳細や運用時のポイントを解説します。
就業規則に記載する内容
労働基準法第89条では、会社が休暇制度を設ける場合、その内容を就業規則へ明記することを義務付けています。もし就業規則に記載がなければ、休暇制度は法的な効力を持たなくなる可能性があり、従業員との間でトラブルに発展するリスクがあります。
就業規則は、会社と従業員の間の労働条件を定めたものです。休暇に関する事項は必ず記載しなければなりません。ルールを明確に文書化し、労働基準監督署へ届け出るのが望ましいです。
特別休暇について就業規則に定める際は、以下の項目について具体的に設定します。
- 適用対象者(正社員・パートタイマー・契約社員)
- 種類や目的(結婚休暇・慶弔休暇・夏季休暇など)
- 取得日数(上限など)
- 申請手続き(申請期限や必要な提出書類など)
どの従業員が読んでもわかりやすい内容とするのがポイントです。
運用時のポイント
制度運用において重要なのが、従業員への周知の徹底と取得しやすい環境づくりです。
休暇制度があっても、従業員がその存在を知らなかったり、申請しにくい雰囲気だったりすれば、形骸化してしまいます。また、制度の利用状況や取得率に差が生まれると、従業員の間に不公平感が募り、モチベーション低下を招く原因にもなります。
効果的に運用するには、周知の方法を工夫するのがポイントです。例えば、社内掲示板への掲載や、新入社員への研修での説明、活用事例の共有などです。
また、申請手続きを簡素化したり、管理職が率先して休暇を取得したりするなど、従業員が取得しやすい環境をつくれば、取得率の上昇が期待できます。休暇の取得がネガティブに捉えられないような状況になれば、従業員も安心して休暇を取得できます。
特別休暇の導入から運用までの手順
特別休暇の導入から運用までは、以下の手順で進めます。
- 特別休暇の内容を策定し、労働者から意見聴取する
- 就業規則に要件や休暇内容を記載する
- 従業員へ周知する
- 取得を促進する
法的に有効な休暇制度となるよう、適切な手順を踏んで進めていくのが重要です。それぞれの手順でする作業を解説します。
1. 特別休暇の内容を策定し、労働者から意見聴取する
はじめに、休暇制度の目的や大まかな骨子を明確にします。従業員のニーズを満たさない制度をつくっても利用されないため、従業員の使いやすさやモチベーション向上を優先的に考えた制度をつくるのが望ましいです。大まかな方針が決まったら、対象者や日数、給料の取り扱いなどの詳細を決定していきます。
制度を作成したら、変更する就業規則案を労働者代表へ提示して意見を聴取し、意見書を作成します。
2.就業規則に要件や休暇内容を記載する
休暇の詳細がまとまったら、内容を就業規則に明記し、労働基準監督署へ届け出ます。労働基準法では休暇に関する事項を就業規則に定めるよう義務付けられています。
条文やルールは「連続する5労働日を有給の休暇として与える」といったように、誰が読んでもわかりやすいように記載します。解釈の余地が残る条文にならないよう、条文の作成が不安な場合は社会保険労務士や弁護士といった専門家にチェックを依頼することが推奨されます。
3.従業員へ周知する
労働基準監督署への届出前に、休暇制度や内容を従業員へ周知します。制度の詳細や利用の仕方などを説明して従業員に存在を知ってもらい、利用を促します。
社内のポータルサイトへの掲載やメールでの通知、制度概要をまとめた資料の配布といった方法で、定期的に周知を図るのがポイントです。
4.取得を促進する
制度をより多くの従業員に利用してもらうには、取得促進の取り組みが欠かせません。前述のように休暇を取得しやすい職場づくりをして、従業員が制度の利用をためらわないようにすると、多くの人に利用してもらえる制度になります。
また、取得の仕組みについても定期的に見直すとよいです。申請手続きをオンラインポータル上で済ませられるようにしたり、部署内で情報共有できるような体制を構築したりすれば、従業員がスムーズに休暇を取得できます。
福利厚生として利用を促進するだけでなく、組織の生産性向上を図るためにも、定期的に取得促進や運用の見直しを行うのが望ましいです。
特別休暇導入に活用できる助成金
特別休暇制度の導入には、事例調査や申請システムの設置などにコストがかかる可能性もあります。国や自治体の補助金が活用できれば、そうした企業のコストを軽減し、低コストで休暇制度の制定を実現できます。
特別休暇の導入に活用できる補助金を2つ紹介します。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、生産性を向上させながら時間外労働の削減などに取り組む中小企業を支援する制度です。特定の種類の特別休暇を有給で新たに導入した場合、導入にかかった経費の一部が助成されます。
単に休暇を設けるだけでなく、それが労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進といった具体的な成果に結びつけるのが助成金制度の目的です。助成対象となるのは、以下のような休暇です。
- 病気休暇
- ボランティア休暇
- 不妊治療休暇
- 教育訓練休暇
従業員の健康維持や社会貢献を支援する休暇制度の導入を検討している企業にとっては、有用な給付金といえます。
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)は、従業員のスキルアップ支援のために有給の「教育訓練休暇」制度を導入し、実際に従業員がその休暇を利用して訓練を受けた中小企業に対して支給されるものです。企業の人的投資を支援する目的で支給されます。
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)では、3年間で合計5日以上取得できる有給の教育訓練休暇制度を就業規則に定めて導入すると、まず制度導入に対して助成金が支給されます。その後、実際に従業員が休暇を取得して訓練を受けると、さらに助成金が支給される仕組みです。
従業員の資格取得支援やスキルアップを福利厚生の柱として強化したい企業にとって親和性が高い補助金です。
参考文献
厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
厚生労働省「社員の学び直し、自発的な教育訓練を促進するために人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)を使ってみませんか?」
監修者












