組織図とは?
作成の目的や種類、メリット、手順、
形骸化させないポイントを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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組織図とは、組織や企業の内部構造を図で表したものです。
・社外向けの組織図はステークホルダーへの情報提供を、社内向けの組織図は業務を円滑に進めることを目的としています。
・組織図の代表的な形式には、ピラミッド型(階層型)、フラット型、マトリックス型、事業部制型があります。
・組織図のメリットは、組織構造や自分の立ち位置を理解でき、指揮命令系統の明確化や適材適所の人員配置、透明性の向上につながることです。本記事では、組織図について、基本から詳しく解説します。
※この記事は、2025年10月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
組織図とは
組織図とは、組織や企業の内部構造を図で表したものです。部門や部署の関係、指揮命令系統を階層的に示し、全体像を一目で把握できるようにしています。
一般的に、社内規程などとは異なり、組織図の作成自体に法的な義務はありません。しかし、組織構造を可視化し、責任の所在を明確にすることは円滑な業務遂行に不可欠であるため、実務上は組織図の整備が推奨されています。
また、労働安全衛生法では、一定の要件を満たす事業場ごとに安全管理者や産業医などを選任し、安全衛生管理体制を整備することが義務付けられています。
労働安全衛生法で定められた管理体制と責任の所在を可視化し、労働者に周知するために作成されるのが「安全衛生管理体制組織図」です。図の作成に法的な義務はありませんが、厚生労働省が「円滑な運営のために必要」と推奨しており、労働安全衛生マネジメントシステムを導入する事業場では体制図の作成が求められています。
このように重要な役割を担う組織図には、企業全体の構成を示すものから、従業員の顔写真・名前・役職など詳細な情報を載せたものまで、目的に応じてさまざまな形式があります。
組織図を作成する目的
組織図は社外向けと社内向けのものがあり、それぞれ目的が異なります。
社外向けの組織図は、取引先や株主などのステークホルダーに組織体制の情報を提供することを目的に作成されます。
一方、社内向けの組織図は、従業員が組織の構成や役割分担を理解し、円滑に業務を進められるようにすることが目的です。
組織図で表現される代表的な組織構造
組織図は、企業の「組織構造」を可視化するためのツールです。したがって、どのような組織図になるかは、組織がどのような構造を持っているかで決まります。
組織構造にはさまざまな形がありますが、以下の代表的な4つのパターンを紹介します。
- ピラミッド型(階層型)
- フラット型
- マトリックス型
- 事業部制型
ピラミッド型(階層型)
ピラミッド型(階層型)組織図は、社長を頂点に、部長、課長、担当者へと権限が階層的に移譲されていく構造を示したものです。
トップダウンの指揮命令系統が明確で、誰がどの部署に所属し、誰の指示を仰ぐべきかが一目で分かる点が特徴です。そのため、役割と責任の所在が整理され、組織全体の統制を取りやすくなります。
フラット型
フラット型組織は、ピラミッド型と同じような形式ですが、ピラミッド型より階層が少ない、文字通りフラットな組織形態です。
組織図で表現すると、階層型組織のような多層のピラミッドとは異なり、トップの直下に多くの従業員やチームが直接連なる、背の低い横長の形状になります。
トップと現場が直接結びついているため、経営層の意向が素早く伝わり、現場からのフィードバックも即座に反映できます。承認プロセスが短く、従業員一人ひとりに裁量が与えられることで、変化の速い市場においても柔軟な対応が可能です。
マトリックス型
マトリックス型組織は、営業や開発などの職能別組織と、A事業やBプロジェクトなどの特定の目的を持つチームの両方に同時に所属する組織形態です。
マトリックス型組織の組織図は、職能別組織を縦軸、プロジェクトチームを横軸に配置した格子状の見た目になるのが特徴です。従業員は所属部署と担当プロジェクトが交差する点に配置されるため、所属部署の上長とプロジェクトリーダーという二重の指揮命令系統を持つ状態が視覚的に明確になります。
事業部制型
事業部制型組織は、経営層の下に商品やサービスごとに事業部を配置する組織形態です。各事業部は、それぞれが独立した会社のように、開発・製造・営業といった自己完結した機能を持つことが特徴です。
組織図では、経営層の直下に各事業部が大きなブロックとして並列に描かれます。そして、各事業部のブロック内部に、さらに開発部や営業部といった機能別の部門が階層構造で示されます。
経営戦略などの重要な判断は経営層が担いますが、現場レベルでは事業部単位で迅速な意思決定が可能です。そのため、事業内容が明確に分かれている企業や、多角的に事業を展開する企業に適しています。
組織図を作成するメリット
組織図を作成することには、主に以下の4つのメリットがあります。
- 従業員が組織の構造や自分の立ち位置を理解できる
- 指揮命令系統が明確になる
- 適材適所に人員配置できる
- 社外に組織の透明性をアピールできる
従業員が組織の構造や自分の立ち位置を理解できる
組織図を作成すると、従業員が会社全体の構造や各部署の役割、自分の立ち位置や責任範囲を把握しやすくなります。
分かりやすい組織図があれば、新入社員や他部署の担当者も自ら適切な相談相手を見つけやすくなり、部門間の連携がスムーズになります。その結果、従業員一人ひとりが自分の役割を意識しやすくなり、エンゲージメント向上にもつながります。
指揮命令系統が明確になる
組織図によって、部門や従業員の関係性を一目で把握できます。上下の階層性が可視化されることで、指揮命令系統が明確になることがメリットです。
指揮命令系統が明確になると、従業員が報連相する相手を正確かつ速やかに認識できるようになり、トラブルの予防や業務品質の向上につながります。
適材適所に人員配置できる
組織図を作成することで、企業内の部門構成や役割分担を明確にでき、適材適所の人員配置を検討するための土台となります。
全社の人員配置を可視化することで、「特定の部門に業務負荷が集中していないか」「将来の事業拡大に向けてどの分野の人材が不足しているか」といった偏りを客観的に確認できます。
そのため、人員不足や人員過多などのバランスを早期に発見できるようになります。人員が不足している場合は採用を強化し、過多な場合はスキルに応じて他部署への配置転換を行うなど、的確な対応につなげることが可能です。
社外に組織の透明性をアピールできる
社外向けに組織図を公開すると、求職者や取引先、投資家などのステークホルダーに対して、自社が健全なガバナンス体制を備えた透明性の高い企業であることをアピールできます。指揮命令系統や各部門の責任の所在などの内部構造を公開することで、組織に関する情報を隠さない誠実な企業姿勢を示せるためです。
情報の透明性は、ステークホルダーに対してポジティブな影響をもたらします。例えば、求職者にとっては入社後のキャリアパスが具体的にイメージしやすくなり、結果としてミスマッチ防止につながります。また、株主や投資家に対しては、責任体制が明確であることから、ガバナンスが機能している健全な企業であるという信頼感を醸成することが可能です。
組織図を作成する手順
分かりやすい組織図を作成するための一般的な手順は、以下のとおりです。
- 組織図を作成する目的を明確にする
- 組織図の対象範囲を決める
- 組織図に載せる従業員情報を収集する
- 組織図の種類を選ぶ
- レイアウトを整える
- 組織図の更新ルールを定める
1.組織図を作成する目的を明確にする
組織図を作成する際は、まず「何のためにこの組織図を作るのか」という目的を明確にします。なぜなら、設定した目的によって、組織図に記載すべき情報の種類や詳細度が自ずと定まるためです。
例えば、「指揮命令系統を明確にして承認プロセスを迅速化したい」「部門間の連携を円滑にしてコミュニケーションロスを減らしたい」といった具体的なゴールがあれば、組織図を課題解決に役立つ実践的なツールとして設計可能です。
一方で、「従業員同士が存在や役割を理解し合うこと」という目的であれば、各従業員の名前や顔写真などの情報を載せた詳しい組織図が最適です。
このように、目的を定めることで「誰に何を伝えるための図なのか」がはっきりし、単に部署を並べただけではない、課題解決に役立つツールとして組織図を活用できます。
2.組織図の対象範囲を決める
次にどこまでの人員・組織を組織図に含めるかを決めます。対象範囲を定めておくことで、「誰に向けて」「どの程度の詳細さで」組織図を作成するのかが明確になります。
例えば、全部署・全従業員を対象にするか、経営層や管理職などの幹部陣のみを対象にするかの判断が必要です。
社外向けに公開する場合は、企業の全体構造を示すため、主に部門や事業部の構成までを記載するのが一般的です。多くの場合、個人情報保護の観点から氏名は省略されますが、IR資料や企業ホームページでは経営責任を担う役員クラスの氏名を掲載するケースも見られます。
一方、社内向けでは、人材マネジメントやコミュニケーション活性化を目的に、課長や係長、担当者までを含め、従業員名や顔写真まで載せることもあります。
3.組織図に載せる従業員情報を収集する
対象範囲が決まったら、組織図に記載する従業員情報を収集します。部署名・役職名・氏名などの基本情報に加え、目的に応じて顔写真や英語表記、役割などの情報を追加で収集します。
情報収集の際は、手作業で一つひとつ集めるのではなく、既存の人事管理システムや社員名簿データから、必要な情報を一括でエクスポートするのが効率的かつ正確です。
4.組織図の種類を選ぶ
収集した情報を基に、組織構造を分かりやすく表現するための組織図の種類を決めます。組織図の目的は、指揮命令系統や部門間の関係性を、見る人が直感的に理解できるようにすることです。
ほとんどの組織は階層構造を基本としているため、まずは部署や役職を上から下に情報を配置します。その上で、もしマトリックス型組織のように従業員が複数のレポートラインを持つ場合は補助的な線を加えたり、配置を工夫したりして、特殊な関係性を表現します。
既存の組織構造を正確に図に落とし込むことが重要であり、図の形式を自由に選べばよいわけではない点に注意が必要です。
5.レイアウトを整える
組織図の型が決まったら、誰が見ても理解できるように、デザインやレイアウトを整えます。
とくに、部署間の上下関係や連携がひと目で分かるように配置を工夫することが重要です。視覚的な分かりやすさは、組織図が日常的に活用されるかどうかにつながります。
6.組織図の更新ルールを定める
活用できる組織図にするには、作成して終わりではなく、常に最新の状態を保つ仕組みを設計し、運用ルールとして定める必要があります。
更新ルールは、実施のタイミングや各部門の責任者、手続きのフローなどを具体的に定めます。特に、人事異動のような「変更が発生してから何日以内に更新を終えるか」といった更新期限を明確にすると、情報が古いまま放置されるのを防げます。
さらに、人事異動のワークフローに更新プロセスを組み込んだり、人事システムと連携して自動で反映できる仕組みを構築したりすると、継続的な運用がより安定します。
分かりやすい組織図を作るポイント
分かりやすい組織図にするには、情報量やデザインのバランスが重要です。特に以下のポイントを意識して、作成すると活用できる組織図を作れます。
- 目的に応じて表示項目を選定する
- 組織図の変化に対応できるレイアウトにする
- 図形や色を統一し、凡例を記載する
目的に応じて表示項目を選定する
分かりやすい組織図を作るには、部署や役職、氏名などの基本情報だけでなく、目的に沿って必要な情報だけを選定する必要があります。
例えば、「社内に組織構造の理解を促す」ことが目的なら、部署名と役職、階層関係が分かるシンプルな構成で十分です。一方で、「社内コミュニケーションを円滑にする」といった目的であれば、従業員の氏名や顔写真を加えるのが適切です。
このように、作成者が定めた目的に合わせて過不足なく掲載することが、活用される組織図作りのポイントです。社内用と社外用で掲載情報を変えるなど、目的に応じて組織図を最適化することで、単なる名簿ではない戦略的なツールとしても活用できます。
組織図の変化に対応できるレイアウトにする
組織図を作成する際は、将来の組織の変化に対応できるよう、拡張性のあるレイアウトを意識することが重要です。各要素が密集したレイアウトだと、人員増加や部門追加のたびに全体の配置を大幅に見直す必要が生じ、更新作業が煩雑になります。
具体的には、部門ブロックの間や階層の間にスペースを確保するなど、レイアウトに意図的なゆとりを持たせます。あらかじめ拡張性を考慮しておけば、組織体制の変更や部署の新設・統合があった場合でも、既存のレイアウトを大きく崩すことなくスムーズに反映可能です。
図形や色を統一し、凡例を記載する
組織図の見やすさを高めるには、ボックスの形や線の種類、配色などの表記ルールを明確に定め、全体で統一して適用することが重要です。図形の色や形が統一されていないと、見づらくなるだけでなく、誤った解釈を招きかねません。
例えば、「点線は兼務を表す」「青い枠は正社員、緑の枠は契約社員を示す」などのルールを定めます。そして、ルールが何を示すのかを解説する「凡例」を組織図内に記載することで、文字情報を細かく読まなくても、図の構造や人員の属性を瞬時に把握できます。
このような表記ルールは、組織図の作成・更新を担当する部署内で明確に文書化しておくことが重要です。担当者が変わっても表記にブレが生じないよう、一貫したルールを維持することで、情報伝達の効率向上につながります。
組織図を形骸化させないポイント
組織図を作成したら、日常業務で継続的に活用・更新することが重要です。使われる組織図にするポイントは、以下の2点です。
- 組織図を定期的に確認する機会を設ける
- 組織図を労務管理業務に反映させる
組織図を定期的に確認する機会を設ける
組織図を作ったら、日常の業務サイクルに組織図の確認や更新の機会を組み込むようにすることもポイントです。
例えば、四半期ごとの事業報告会や体制検討会議で組織図のレビューを行い、実態と合っているかを確認します。確認時には、指揮命令の流れや兼務、プロジェクトの表記が最新かを点検します。各部署に管理担当者を設けて情報を反映すれば、組織図の更新作業が特定の担当者に集中するといった属人化防止や精度の維持が可能です。
組織図を人事労務管理業務に反映させる
組織図の形骸化を防ぐには、組織構造を見るだけの資料とするのではなく、人事異動や入退社、権限設定などの日常業務と連動させることが重要です。
例えば、組織図に氏名や役職だけでなく、保有スキルや経験年数といった従業員データを紐づけることで、単なる部署ごとの人数把握にとどまらず「どの部署に、どのような特性を持つ人材が配置されているか」という質的な配置状況を可視化できます。
そのため、人事労務担当者が、それぞれのケースに応じて他の部署への配置転換を図ったり、新しく人材を採用したりなどの対応も迅速に行えます。
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