【2023年7月1日施行】
道路交通法(道交法)改正とは?
電動キックボードの規制緩和(免許不要化など)
の内容を解説!
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- この記事のまとめ
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2022年4月27日に公布された改正道路交通法には、電動キックボードに関する交通ルールの緩和が盛り込まれています。改正道路交通法は、2023年7月1日に施行されます。
道路交通法の改正により、電動キックボードに関して、主に以下のとおり、交通ルールが緩和されます。
・運転免許が不要となる
・自転車道・路側帯の通行が可能になる
・条件付きで歩道の通行も認められる将来的な普及拡大が予想される電動キックボードにつき、新しい交通ルールの内容を把握しておきましょう。
今回は、道路交通法改正による電動キックボード関連の変更ポイントを詳しく解説します。
※この記事は、2022年11月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・改正道路交通法…道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)による改正後の道路交通法
・道路交通法…道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)による改正前の道路交通法
目次
【2023年7月施行】道路交通法改正とは|電動キックボードの規制が緩和
2022年4月27日に、道路交通法の改正法が公布されました。今回の改正法では、以下の3点に関する変更が大きな柱となっています。
(1) 特定自動運行に係る許可制度の創設
いわゆる「レベル4」の自動運転(※)が、都道府県公安委員会の許可などを条件として解禁されます。
※自動運転には、レベル1(運転支援レベル)~5(完全自動運転)まである。レベル4では、特定条件下において、自動運転がなされる。
(2) 新たな交通主体の交通方法等に関する規定の整備
電動キックボードや自動配送ロボットに適用される規制が、一部緩和されます。
(3) 運転免許証と個人番号カードの一体化に関する規定の整備
希望者は、運転免許の情報を個人番号カード(マイナンバーカード)に記録できるようになります。
本記事では、日常の新たな交通手段として注目される、電動キックボードに関する規制緩和の内容を解説します。
警視庁ウェブサイト「電動キックボードについて」
改正前道路交通法における電動キックボードの取り扱い
道路交通法では、電動キックボードに対する規制は、手軽に日常使いするには厳しい内容となっています。
電動キックボードは「原動機付自転車」または「普通自動二輪車」
道路交通法において、電動キックボードは、「車両」に該当します。そして、その中でも、電動式モーターの定格出力により、以下いずれかに該当します。
・電動式モーターの定格出力が0.60キロワット以下の場合:原動機付自転車
(道路交通法2条1項10号、道路交通法施行規則1条の2)
・0.60キロワットを超える場合:普通自動二輪車など
(道路交通法3条、道路交通法施行規則2条)
なお、普通自動二輪車などに該当する場合は「自動車」として取り扱われます。
【大まかな車両区分まとめ】
電動キックボードの運転には免許が必要
電動キックボードは原動機付自転車または自動車に該当するため、運転する際には、対応する運転免許を受けなければなりません(道路交通法84条1項)。
電動キックボードが
・原動機付自転車に該当する場合→原付免許
・普通自動二輪車に該当する場合→普通二輪免許
が必要です。
電動キックボードを無免許で運転した場合、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(道路交通法117条の2の2第1項1号)。
車道通行・ヘルメット着用の義務あり
電動キックボードは「車両」に当たるため、自転車道・歩道・路側帯の通行は原則不可とされています(道路交通法17条1項~3項・17条の2)。したがって、基本的には常に車道を通行しなければなりません。
また、電動キックボードを運転する際には、通常の原付バイクなどと同様に、乗車用ヘルメットの着用が義務付けられます(道路交通法71条の4第2項)。
保安基準に適合した構造・装置が必要
電動キックボードには、告示で定められる保安基準に従い、制動装置・前照灯・後写鏡などの装置を備える必要があります(道路交通法62条)。
保安基準に適合しない電動キックボードを運転した場合は、整備不良車両の運転として「3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金」に処されます(道路交通法119条2項2号)。
自賠責保険への加入が必要
電動キックボードは原動機付自転車または自動車に該当するため、運転者には自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)への加入が義務付けられます(自動車損害賠償保障法5条)。
無保険で電動キックボードを運転した場合、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(同法86条の3第1項1号)。
ナンバープレートの取り付けが必要
電動キックボードには、ナンバープレートの取り付けが義務付けられています(道路運送車両法73条、各都道府県の公安委員会規則)。
なお、原動機付自転車におけるナンバープレートは「標識」、普通自動二輪車におけるナンバープレートは「車両番号標」が正式名称です。
改正道路交通法の公布日・施行日
改正の根拠となる法令名は、「道路交通法の一部を改正する法律」です。公布日と施行日は、以下のとおりです。
- 公布日・施行日
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公布日|2022年4月27日
施行日|2023年7月1日※
※電動キックボード関連の改正事項に限る
改正道路交通法の電動キックボードに関するポイント
今回の道路交通法改正により、電動キックボードに適用される規制は、以下の5つのポイントについて変更されます。
(1) 原動機付自転車から「特定小型原動機付自転車」へ
(2) 自転車道・路側帯の通行が可能になる
(3) 条件付きで歩道の通行が可能になる
(4) 原動機付自転車の免許が不要になる
(5) ヘルメット着用が努力義務に緩和される
ポイント1|原動機付自転車から「特定小型原動機付自転車」へ
今回の改正では、原動機付自転車に該当する電動キックボードのうち、一定の要件を満たすものの位置付けが「特定小型原動機付自転車」に変更されます。
「特定小型原動機付自転車」とは、原動機付自転車のうち、車体の大きさ・構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれがなく、かつ運転に関して高い技能を要しない車として、内閣府令で定める基準に該当するものです(改正道路交通法17条3項・2条1項10号ロ)。
内閣府令(道路交通法施行規則)の内容は現在検討中ですが、主に以下の内容が定められる見込みです。
- 特定小型原動機付自転車の要件
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・電動であること
・最高速度が時速20km以下であること
・長さ190cm以内かつ幅60cm以内であること
・必要な保安部品が装着されていること
なお、特定小型原動機付自転車に該当するのは、原動機付自転車に該当する電動キックボード(=定格出力0.60キロワット以下)に限られます。
普通自動二輪車に該当する電動キックボード(=定格出力0.60キロワット超)は、特定小型原動機付自転車に該当しません。
ポイント2|自転車道の通行が可能になる
特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードは、自転車道を無条件で通行できるようになります(改正道路交通法17条3項)。
改正前の道路交通法では、電動キックボードによる自転車道の通行は認められず、基本的に車道を通行しなければなりませんでした。しかし、多くの電動キックボードの速度は自転車並みであり、自転車道を通行させても大きな危険は生じないため、自転車道の通行が解禁されるものです。
ポイント3|条件付きで歩道・路側帯の通行が可能になる
特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードは、以下の要件を全て満たす場合、歩道を通行できるようになります(特例特定小型原動機付自転車。改正道路交通法17条の2)。
- 電動キックボードによる歩道通行の要件
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(1)他の車両をけん引していないこと(遠隔操作により通行させることができるものを除く)
(2)歩道を通行する間、電動キックボードが歩道を通行可能であることを、内閣府令で定める方法により表示すること(「歩道モード」に切り替えて、緑色の点滅ライトをつける)
(3)歩道モードの表示をしている間は、最高速度が内閣府令で定める速度(時速6kmの予定)以下であること
(4)車体の構造が、歩道における歩行者の通行を妨げるおそれのないものとして内閣府令で定める基準に該当すること
(5)道路標識等によって、電動キックボードの歩道通行が認められていること(自転車通行可の歩道など)
「歩道モード」への切り替えが可能となっていることが、歩道通行が認められる電動キックボードの必須条件となります。歩道モード中の最高速度は時速6km以下と、早歩き程度の速度に制限される予定です。
また、特例特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードは、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯の通行が可能となります(改正道路交通法17条の3)。
ポイント4|原動機付自転車の免許が不要になる
従来は、電動キックボードを運転する際に原付免許(定格出力0.60キロワットを超える場合は普通自動二輪免許)が必要とされていました。
改正法の施行により、特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードの運転に関しては、原付免許の取得が不要となります(改正道路交通法84条1項)。したがって、運転免許を持っていない方でも、教習所に通うことなく、手軽に電動キックボードに乗り始めることができます。
ポイント5|ヘルメット着用が努力義務に緩和される
特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードについては、従来義務付けられていた乗車用ヘルメットの着用が努力義務へと緩和されます(改正道路交通法71条の4第3項)。
もちろん安全の観点からは、電動キックボードを運転する際にも、乗車用ヘルメットを着用することが望ましいです。
しかし、乗車用ヘルメットを忘れたり、用意していないような場合に、そのまま電動キックボードを運転したとしても、罰則が課されることはありません。より手軽に電動キックボードを利用できるようになるでしょう。
改正道路交通法に従い電動キックボードを運転する際の注意点
今回の道路交通法改正により、電動キックボードに適用される規制は大幅に緩和されます。その一方で、電動キックボードの運転に関して、以下の新たな規制が設けられる点に注意が必要です。
- 電動キックボードに関する新たな規制
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・公道での運転は16歳以上のみ
・危険な交通違反を繰り返した場合は、講習の受講が義務付けられる
公道での運転は16歳以上のみ
改正法の施行以降、特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードを公道で運転できるのは、16歳以上の方に限られます(改正道路交通法64条の2第1項)。「16歳以上」という年齢は、原付免許の取得可能年齢と同じです。
16歳未満の方が、公道で特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードを運転した場合、「6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金」に処されます(改正道路交通法118条)。
なお、公道で運転されるおそれがあることを認識しながら、16歳未満の者に特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードを提供する行為も、同様に処罰の対象となる点にご注意ください(改正道路交通法64条の2第1項)。
危険な交通違反を繰り返した場合は、講習の受講が義務付けられる
特定小型原動機付自転車に当たる電動キックボードの運転中に、交通の危険を生じさせる交通違反を反復して行った場合、公安委員会によって講習の受講を命じられる可能性があります(改正道路交通法108条の3の5)。
受講の命令を受けた場合、3カ月以内に所定の講習を受講しなければなりません。受講義務に違反した場合は、「5万円以下の罰金」に処されます(道路交通法120条1項17号)。
講習義務の対象となる交通違反については、道路交通法施行令によって定められることとなります。
道路交通法108条の3の5では、以下の危険行為をした自転車の運転者に講習義務が課されています。電動キックボードについても、同様の危険行為が講習義務の対象となることが見込まれます。
- 危険行為(15類型)
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・信号無視
・通行禁止違反
・歩行者用道路における徐行義務違反
・通行区分違反
・路側帯通行時の歩行者の通行妨害
・遮断された踏切への立ち入り
・交差点安全進行義務違反など
・交差点で右折する際に他の車両の進行を妨害する行為
・環状交差点安全進行義務違反など
・一時停止義務違反
・歩道通行時の通行方法違反
・ブレーキの整備不良や前輪および後輪にブレーキを備え付けていない自転車の運転
・酒酔い運転
・安全運転義務違反
・あおり運転(妨害運転)
この記事のまとめ
道路交通法改正(電動キックボード関連)の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
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参考文献
警察庁ウェブサイト「法律」
(令和4年4月27日 道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)部分)