第1回:業務委託契約をレビューする際に
押さえておきたい基礎知識

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長谷川俊明法律事務所弁護士
国際金融、保険、海外直接投資、知的財産権などの渉外実務のほか、建設、不動産など国内会社法務を幅広く扱う。また、アメリカ合衆国、イギリスをはじめとして、東南アジア、中国、オーストラリアその他の国、地域に業務提携をしている法律事務所がある。
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企業法務(会社法・コーポレートガバナンス・内部通報制度)、行政法全般、訴訟・紛争解決を中心として、広い分野を取り扱う。
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本特集は、昨今、さまざまな分野でこれまでなかった新しい取引に使うようになった業務委託契約を、類型ごと論点ごとに取り上げ、解説を試みようとするものです。

第1回目の今回は、業務委託契約をレビューする際に押さえておきたい基礎知識(業務委託契約の意義や機能、類型)を、解説します。

※この記事は、2023年6月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 労働者派遣法…労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
  • 独占禁止法…事業者とフリーランスとの取引における私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
  • 下請法…下請代金支払遅延等防止法

業務委託契約の定義・類型

業務委託契約とは、自己(自社)の業務を外部に委託することを目的とする契約をいいます。

典型例としては、製造委託契約システム開発委託契約などが挙げられますが、特に会社の経済活動においては、これらに限らず、広くさまざまな目的で業務委託契約が締結されます。

なお、「業務委託契約」という言葉は、法律に定義された用語ではありません。業務委託契約は、法的性質に応じて、

  • 請負型(成果物あり)
  • 委任・準委任型(成果物なし)

に分けられます。以下、順番に見ていきましょう。

請負型(成果物あり)

請負型は、委託の目的が「仕事の完成」(民法632条)にある場合(=民法上の請負契約に該当する場合)をいい、自動車部品の製造委託契約やコンピューター・システムの開発委託契約などがその典型例として挙げられます。

業務委託契約が請負契約となる場合、何らかの「成果物」がある(例:自動車の部品の製造委託なら「自動車の部品」)ことが多いため、「業務委託契約(成果物あり)」と呼ばれることもあります。

ムートン

請負型の業務委託契約の場合、仕事の完成(ソフトウェアの開発を請け負ったならば、当該ソフトウェアを完成させること)がなされない場合は、契約違反になります。

委任・準委任契約型(成果物なし)

委任・準委任契約型は、委託の目的が「事務」(民法643条、656条)の処理である場合(=民法上の委任または準委任契約に該当する場合)をいい、リースした通信機器の保守・点検のための契約などがその典型例として挙げられます。

業務委託契約が委任・準委任契約となる場合、何らかの「成果物」がない(例:保守・点検を請け負ったならば、保守・点検を行えばよく、具体的な納品物は発生しない)ことが多いため、「業務委託契約(成果物なし)」と呼ばれることもあります。

もちろん、委任事務の履行により何らかの「成果物」が生じることはあります。例えば、探偵調査においては、調査報告書を作成交付しないと報酬は請求できません(平野裕之『コア・テキスト 民法Ⅴ 契約法 第2版』新世社、2020年、282頁)。この場合、「その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に」支払われなければなりません(民法648条の2第1項)。

なお、委任契約と準委任契約との違いは以下のとおりです。

  • 委任契約=法律行為を委託する契約(例:弁護士に損害賠償請求の代理を依頼する)
  • 準委任契約=事実行為(事務処理)を委託する契約(例:弁護士にセミナー講師として登壇を依頼する)
ムートン

委任・準委任型の場合、委託された行為を行えば債務の履行となり、その結果成果を得られるかは関係ありません(例えば、セミナー講師を受託し、セミナーのアンケートによる評価が悪くても契約違反になりません)。

混合型

請負型と委任・準委任型を見てきましたが、すべての業務委託契約がこのいずれかに峻別できるわけではなく、これらや売買契約との混合型もあります。

たとえば、製造物供給契約は、「物の製作」と「物の供給」という二面性を有していることから、請負的側面と売買的側面を持つ混合契約であると考えるのが支配的です(潮見佳男著『基本講義 債権各論Ⅰ 契約法・事務管理・不当利得 第4版』新世社、2022年、250頁)。

【業務委託契約の類型まとめ】

業務委託契約の多様性

昨今、社会情勢の急激な変化やITの急速な発展に伴い、新しい形態の業務委託契約が増えています。例えば、新型コロナウイルス感染症下において、ギグワーカー(デジタルプラットフォームを利用してインターネット経由で単発の仕事を引き受ける労働者)への注目が高まっています。収入が減少した労働者が、求人アプリやホームページに掲載される会社の求人に応募し、単発で仕事を引き受けるケースが増えているようです。

法律上の義務を果たすために業務委託契約を締結するケースも増えています。例えば、2022年6月に施行された改正公益通報者保護法では、事業者に対して、従事者指定義務(同法11条1項)と体制整備等義務(同条2項)を課しています。後者には、内部公益通報受付窓口の設置等に関する措置が含まれますが、外部の法律事務所と内部通報外部窓口業務委託契約を締結して外部窓口を設けることで、体制整備等義務を遵守できます。

業務委託契約と雇用・派遣・下請負との違い

雇用契約との違い

雇用契約とは、労働者が使用者(会社)のために労務に服し、これに対して使用者が報酬を支払うことを互いに約束する契約をいいます(民法623条)。

雇用契約と業務委託契約は、当事者の一方が相手方に労務を供給し、相手方がその対価を支払うという点で共通しますが、労働基準法などの労働法規が適用されるか否かという点で異なります。

業務委託契約の場合、受託者に労働法規が適用されません。しかし、会社と受託者との間に「使用従属性」が認められ、受託者が「労働者」(労働基準法9条、労働契約法2条1項)に該当すると判断されれば、労働法規が適用されます。この場合、会社は労働法規に則り、受託者を取り扱わねばならなくなります。

使用従属性とは

使用従属性とは、
①会社に「使用(=指揮監督下にある状態)」されて、
②その対価として「報酬」を支払われているかどうか
を意味します。

ムートン

会社が、業務委託契約を締結して仕事を依頼する場合、受託者に対して、業務のやり方や作業場所・作業時間などに関して具体的な指示を行わないよう気を付けなければなりません。こうした指示を行うと、使用従属性があると判断されてしまう可能性があります。

派遣契約との違い

派遣契約とは、当事者の一方が相手方に対し労働者派遣をすることを約束する契約をいいます(労働者派遣法26条1項柱書)。

労働者派遣とは

労働者派遣とは、
① 派遣元と労働者の間に雇用関係がある
② 派遣先から指揮命令を受けている
就業形態をいいます。

派遣契約と業務委託契約は、会社外部の者の労働資源を利用するという点で共通しますが、委託者の指揮命令下において労働するか否かという点で異なります。

派遣契約の場合、労働者は派遣先の会社の指揮命令下に置かれますが、業務委託契約の場合は、指揮命令下に置かれません。

下請負(再委託)との違い

下請負(再委託)とは、請負人(元請人)が請け負った仕事の全部または一部を第三者(下請人)にさらに請け負わせることをいいます。

下請負は、元請人と業務委託契約を締結するため、委託者である会社と直接契約関係に立つわけではありません。実務においては、契約上、下請負を禁止することも多くみられます。これを認める場合でも、下請人に対して元請人と同等の責任を負わせるなど、下請負がなされた場合のリスクをケアしておく必要があるでしょう。

個人事業主と締結する業務委託契約

会社と個人との間で締結する業務委託契約

いわゆる「働き方改革」により、わが国においては副業・兼業の促進が図られています。厚生労働省は、2018年1月に「モデル就業規則」を改訂し、労働者の遵守事項に関する、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」との規定を削除し、副業・兼業に関する規定を新設しました。また、同時に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、同ガイドラインは、2020年9月に副業・兼業に関する記述を改訂しました。

これにより、例えば、会社の従業員が、終業後や休日などの空き時間を利用してフリーランスとして副業を行うといった働き方も出てきました。また、「業務委託契約の多様性」にて解説したとおり、昨今の新型コロナウイルス感染症下においては、ギグワーカーの注目が高まっています。

フリーランスガイドライン

2021年3月26日、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下「フリーランスガイドライン」といいます)が公表されました。

フリーランスガイドラインは、事業者とフリーランスとの取引における、

の適用関係と、これらの法令に基づく問題行為などを明確化しています。

業務委託契約との関係では、まず、以下が問題となります。

優越的地位の濫用
取引上優越的な地位にいることを利用して、相手方に対して正常な商慣習に照らし不当とされる要求等をする行為(独占禁止法2条9項5号)

不当な経済上の利益の提供要請
下請事業者に対して、金銭・サービスなどの経済上の利益を提供させることで、下請事業者の利益を不当に害する行為(下請法4条2項3号)

例えば、フリーランスガイドラインには、以下の行為が「優越的地位の濫用」として問題となり得る想定例として挙げられています。

(1)報酬の支払遅延
例:社内の支払手続きの遅延・成果物の設計や仕様の変更などを理由として、自己の一方的な都合により、契約で定めた支払期日に報酬を支払わないこと



(2)報酬の減額
例:役務等の提供が終わっているにもかかわらず、業績悪化・予算不足・顧客からのキャンセル等自己の一方的な都合により、契約で定めた報酬の減額を行うこと



(3)一方的な発注の取消し
例:特定の仕様を指示した役務等の委託取引を契約し、これを受けてフリーランスが新たな機材・ソフトウェア等の調達をしているにもかかわらず、自己の一方的な都合により、当該フリーランスが当該調達に要した費用を支払うことなく、当該契約に基づく発注を取り消すこと



(4)不当な経済上の利益の提供要請
例:契約上、フリーランスが自己の倉庫まで運送することのみが契約内容とされている場合において、当該フリーランスに対して、あらかじめ契約で定められていない自己の倉庫内における荷役等の役務について、無償で従事させること

また、フリーランスとの間に労働基準法をはじめとする労働法規が適用されるかについても問題となります。

事業者がフリーランスとの間で締結した契約書のタイトルが、「業務委託契約」という名称だからとって、直ちに労働法規が適用されないわけではありません。

この点、フリーランスガイドライン「第5 1」は、フリーランスに労働法規が適用される場合について、次のように記載しています。

我が国の労働関係法令における「労働者」の概念は、大きく分けて2つあり、1つは、労働基準法第9条に規定する「労働者」、もう1つは労働組合法第3条に規定する「労働者」である。フリーランスなど、仕事の受注者が、請負などの契約で仕事をする場合であっても、個々の発注者や仲介事業者(以下「発注者等」という。)との関係で、判断基準に照らして労働基準法における「労働者」と認められる場合は、当該発注者等との関係では、労働基準法の労働時間や賃金などに関するルールが適用されることとなる。労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働契約法(平成19年法律第128号)等の個別的労働関係法令も、基本的に労働基準法における「労働者」に該当する者に適用される
また、フリーランスなど、仕事の受注者が、発注者等との関係で、労働組合法における「労働者」と認められる場合は、団体交渉等について同法による保護を受けることができる。また、発注者等は、労働組合からの団体交渉を正当な理由なく拒んだり、労働組合の組合員となったこと等を理由とする契約の解約などの不利益な取扱いをすることが禁止される。

「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」

そして、フリーランスが「労働者」(労働基準法9条)に該当するかの判断基準について、フリーランスガイドライン「第5 2」は、次のように記載しています。

(1)「使用従属性」に関する判断基準
①「指揮監督下の労働」であること
a.仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
b.業務遂行上の指揮監督の有無
c.拘束性の有無
d.代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)
②「報酬の労務対償性」があること

(2)「労働者性」の判断を補強する要素
①事業者性の有無
②専属性の程度

※労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)で示された判断基準に基づく。

「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」

フリーランスとの間に業務委託契約を締結する際は、労働法規の適用を受けないよう、これらの点に留意して条項を定める必要があります。

フリーランス・事業者間取引適正化等法の成立

2023年4月28日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス・事業者間取引適正化等法」といいます)が可決成立し、同年5月12日に公布されました。

フリーランス・事業者間取引適正化等法は、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日に施行される予定です。

今後、フリーランスに業務委託をする場合は、フリーランス・事業者間取引適正化等法が定めたルールを守らねばなりません。

省庁が公表するフリーランス・事業者間取引適正化等法の概要は、次のとおりです。

1.対象となる当事者・取引の定義
(1)「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいう。[2条1項]
(2)「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者をいう。[2条2項]
(3)「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。 [2条3項]
(4)「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するものをいう。[2条6項]
※「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まない。

2.特定受託事業者に係る取引の適正化
(1)特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等を書面又は電磁的方法により明示しなければならないものとする。[3条]
※従業員を使用していない事業者が特定受託事業者に対し業務委託を行うときについても同様とする。
(2)特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、支払わなければならないものとする。(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)[4条]
(3)特定受託事業者との業務委託(政令で定める期間以上のもの)に関し、①~⑤の行為をしてはならないものとし、⑥・⑦の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないものとする。[5条]
① 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
② 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
③ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること

3.特定受託業務従事者の就業環境の整備
(1)広告等により募集情報を提供するときは、虚偽の表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならないものとする。[12条]
(2)特定受託事業者が育児介護等と両立して業務委託(政令で定める期間以上のもの。以下「継続的業務委託」)に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないものとする。[13条]
(3)特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならないものとする。[14条]
(4)継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならないものとする。[16条]

4.違反した場合等の対応
公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものとする。
[8条、9条、11条、18条~20条、22条]
※命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処する。法人両罰規定あり。[24条、25条]

5.国が行う相談対応等の取組
国は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備に資するよう、相談対応などの必要な体制の整備等の措置を講ずるものとする。[21条]

業務委託契約のポイントとなる重要条項

最後に、業務委託契約においてポイントとなる重要条項を紹介します。これらの具体的なレビュー方法などは、次回以降で詳しく取り上げるため、今回は概略を述べるにとどめます。

委託業務の目的・内容

業務委託契約においては、目的条項が重要です。

また、委託する業務の内容や範囲についても明確に定めなければなりません。そうしないと、何をもって債務を履行したことになるのか判然とせず、後々、契約トラブルなどにつながるリスクがあります。

なお、目的条項は、契約不適合責任との関係でも重要です。

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、納品された目的物に、契約内容と異なる点があることが判明したときに負担する責任をいいます。
契約不適合により損害が発生した場合、損害を被った側は、損害賠償請求などができます。

契約の内容に適合しているか否かは、当事者がどのような経緯、動機、目的で当該契約を締結したのかといった点も判断要素になるため、目的条項を定めておくことが望ましいです。

法令遵守

業務委託契約においても、法令遵守が求められます。偽装請負はその典型例で、たとえ契約書のタイトルが業務委託契約になっていたとしても、注文主と労働者との間に指揮命令関係がある場合には、その形態によって、雇用や労働者派遣などに該当し、労働法規の適用を受けます。

受託者の選任・監督

業務委託契約におけるトラブル事例の多くは、受託者の不祥事によるものです。最近でも、委託先から大量の個人情報が流出する事故が発生しています。

このような事故が起こった場合、委託者は、受託者との契約を解除し、受託者に対して損害賠償を請求することが考えられますが、事故の発生を未然に防ぐことが何より望ましいです。そのためには、当該業務を遂行するに足りる能力を有する受託者の選任、選任した受託者の業務遂行の監督が求められます。

成果物の権利(知的財産権の帰属)

業務委託契約においては、成果物の権利、とりわけ知的財産権の帰属をめぐってトラブルが発生することがあります。委託者が成果物を自由に利用できるようにするという観点からは、受託者が作成した成果物や知的財産権を、委託者に帰属させることが望ましいケースが多いでしょう。

なお、委託者と受託者に下請法が適用され、委託者が「親事業者」(下請法2条7項)に該当する場合は、下請法やガイドラインに抵触しないよう注意する必要があります。

引渡し

請負型の業務委託契約では、仕事完成後に目的物の引渡しが履行不能になる場合に危険負担の問題が生じます。

危険負担とは

危険負担とは、双務契約(お互いに義務を負う契約)において、一方の債務が、債務者の帰責性(責任)なく履行できなくなった場合に、他方の債務をどちらが負担するのかという問題です。

この点民法では、危険は、目的物の引渡しを受けることにより、受託者から委託者へ移転する、としています(民法559条1項、同法567条1項)。

また、業務委託契約が請負型または成果完成型の委任型である場合、成果物の引渡しにより、報酬を請求する権利が発生します(民法633条本文、同法648条の2第1項)。

このような点から、契約書において、目的物の引渡時期について定めておく必要があります。

検査・契約不適合責任

2020年4月から施行されている改正民法は、契約の目的物についての瑕疵担保責任契約不適合責任に置き換えました。

請負型では従来、契約で予定した最終工程を終了していれば瑕疵担保責任の問題として扱われましたが、改正民法はこれが終了したかどうかにかかわらず契約不適合責任で処理することとしました。

委託料

自治体が民間事業者に業務を委託する際、成果連動型民間委託契約として、PFS(Pay for success)を導入するケースが増えています(長谷川俊明「言葉の広場」(『国際金融』〔一般財団法人外国為替貿易研究会〕1367号)13頁)。

通常の委託事業の場合、自治体が定めた仕様に沿って事業が行われ、自治体から事業者へ委託費が支払われます。PFSにおいては、仕様を事業者が設定し、設定を上回る成果が得られたときは、事業者には上回った分の報酬が、上乗せで支払われます。

このような新しい形態の報酬体系を含め、契約書において、委託料をどのように設定するかについて定めておく必要があります。

再委託の可否

業務委託契約においては通常、委託者は受託者の能力や評判を考慮して選定をしているため、受託者による再委託を際限なく認めてしまうと、その選定の意味が失われかねません。

そこで、委託者としては、再委託を禁止したり、再委託先の選定につき委託者の事前の書面による同意を要求したりすることが考えられます。

秘密保持

紛争を未然に防止するという予防法務の観点からは、秘密保持義務の対象を明確に確定し、どのような場合が除外されるのかを契約書に明記しておくことが重要です。

もっとも、秘密保持条項の内容が公序良俗(民法90条)に違反するような場合は、同条項は無効となり、契約当事者が秘密保持義務を負わない場合もあります(東京地判平成14年2月14日LLI/DB判例秘書搭載)。そのため、無制限に秘密保持の対象とするべきではなく、何を秘密保持の対象とするかを吟味することも重要です。

契約解除、期限の利益喪失条項

多くの契約書においては、相手方の債務状態の悪化などから生じる不利益を防止するという観点から、幅広く期限の利益喪失事由や解除事由を定めています。一方で、当事者間の公平や公序良俗に反するような条項になっていないか、注意が必要です。