不動産取引の電子契約化とは?
注意点など基本を解説!
- この記事のまとめ
-
不動産業界は、これまで、多くの重要書類について「紙による交付」が義務付けられていたため、電子契約化が遅れていました。
しかし、今般、「デジタル社会」の形成を目的としたデジタル改革関連の法整備の一環として、法律により書面化が義務付けられている書類について、紙ではなく電磁的方法による交付が可能となりました。
今後は、不動産取引の場面でも電子契約化が進んでいくと考えられます。
不動産の売買や賃貸は、どのような会社でも行う可能性がある取引です。
この機会に、不動産取引ではどのような書類について書面化が必要なのか、また、今回の改正で何が変わるのかを再確認してみてはいかがでしょうか。
この記事では、不動産取引における電子契約化について、知識がない方にも基本から分かりやすくポイントを解説します。
※ この記事では、法令名を次のように記載しています。
・借地借家法…2021年5月公布の「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」による改正前の借地借家法
・改正借地借家法…2021年5月公布の「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」による改正後の宅地建物取引業法
・宅建業法…2021年5月公布の「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」による改正前の宅地建物取引業法
・改正宅建業法…2021年5月公布の「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」による改正後の宅地建物取引業法
(※この記事は、2022年2月15日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
目次
不動産取引の電子契約化とは?
契約は契約当事者による申込みと承諾が合致すれば成立し、書面や電磁的記録等を作成することは必須ではありません。(民法522条)
しかし、不動産は高額な資産であり、また、不動産取引契約の中には、居宅の購入や賃貸契約など、人々の生活において極めて重要な契約もあります。そのため、借地借家法や宅建業法等は、不動産の売買や賃貸取引を行う際に、契約内容などに関する重要な事項について書面化して契約当事者に交付することを義務付けています。
この書面化義務に関し、2021年に公布されたデジタル改革関連法の中で、法令に定められた押印・書面手続の見直しが行われ、不動産取引において書面化が求められていた一部の契約等についても、電磁的方法による交付が認められることになりました。
本記事ではまず、従来、書面化義務が課されていた契約等について解説し、その後、デジタル改革関連法により電磁的方法による書面交付が認められた不動産関係の契約等について解説します。
不動産取引において、書面化義務が課されている契約等
不動産の賃貸契約や売買契約を締結するにあたり書面化が求められている主なものは、以下のとおりです。
借地借家法により、書面化義務が課されている契約等
借地借家法は、建物所有を目的とする土地利用の安定を図るため制定された「借地法」と、建物の利用の安定を図るため制定された「借家法」を一本化する法律として、1992年8月に施行されました。
借地借家法では、時代の要請にあわせ新たな類型の賃貸借契約が定められましたが、これらの賃貸借契約の中には、契約更新がない定期賃貸借契約等、一般の賃貸借契約に比べ賃借人に不利益な条項が含まれるものもありました。そこで、一部の賃貸借契約について、内容説明や契約締結を書面により行うことが義務付けられました。
借地借家法において、賃貸借契約締結にあたり書面で行うことが義務付けられているものについて、内容を見ていきましょう。
一般定期借地契約
一般定期借地契約とは
をいいます。(借地借家法22条)
一般定期借地契約は、書面で締結する必要があります。(なお、公正証書である必要はありません。)
契約が書面で行われなかった場合、当事者が定めた存続期間の普通借地契約として取り扱われます。
事業用定期借地契約
事業用定期借地契約とは、以下の2種類の契約をいいます。(借地借家法23条1項、2項)
事業用定期借地契約は、公正証書により締結する必要があり(借地借家法23条3項)、公正証書によらない事業用定期借地契約は無効ですが、契約締結の事情次第で、普通借地契約と解される場合があります。
定期建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約説明書面
定期建物賃貸借契約とは
をいいます。(借地借家法38条1項)
定期建物賃貸借契約は、書面で契約する必要があります。(公正証書である必要はありません。)
また、建物の賃貸人は、借家人に対し、定期建物賃貸借契約を締結する前に、「この建物賃貸借は契約の更新がなく、期間満了により終了する」ことを記載した書面を交付して説明する必要があります。(借地借家法38条2項)
契約や事前説明が書面で行われなかった場合、契約更新は不可という取決めは無効となり、締結した契約は、普通賃貸借として取り扱われます。
定期建物賃貸借契約については、以下の関連記事で解説しています。
取壊し予定の建物の賃貸借における取壊しと同時に賃貸借が終わる旨の特約
取壊し予定の建物の賃貸借とは、
をいいます。(借地借家法39条1項)
取壊し予定の建物について、取壊しと同時に賃貸借が終わる賃貸借契約を締結するためには、「建物を取り壊すべき事由を記載した書面」で契約する必要があり(借地借家法39条2項)、書面で契約されない場合、「建物取壊しと同時に賃貸借が終了する」特約は無効となります。
宅建業法により、書面化義務が課されている契約等
宅建業法は、宅地や建物の売買・賃貸等を取り扱う宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)を免許制とし、様々な規制を定めることで、健全な不動産取引を促進するとともに購入者等の保護を図ることを目的とした法律です。
宅建業法で宅地や建物の売買・賃貸契約等締結の際に書面化が義務付けられているものについて、内容を見ていきましょう。
媒介契約・代理契約締結時の交付書面
宅建業者は、媒介契約や代理契約(以下「媒介・代理契約」)を締結した場合、当該契約の依頼者に対し、希望する取引価額、報酬などの主要な事項を記載し、記名・押印した書面(以下「媒介・代理契約書面」)を遅滞なく交付しなければなりません。(宅建業法34条の2第1項、34条の3)
書面交付が必要な媒介・代理契約は、以下のとおりです。
なお、賃貸についての媒介・代理契約については、書面交付の義務はありません。
媒介・代理契約書面については、実務上は、媒介契約書や代理契約書がその役割を果たしています。
レインズ登録時の交付書面
依頼者との間で宅地・建物の売買・交換について専任媒介契約を締結した宅地建物業者は、国土交通省令で定める期間内に、対象物件の所在、規模、形質、価額等を指定流通機構(レインズ)に登録したうえで、依頼者に対し、登録したことを証する書面を交付しなければなりません。(宅建業法34条の2第5項、6項)
専任媒介契約とは、依頼者が対象物件について、他の宅建業者に重ねて売買又は交換の媒介・代理を依頼することができないことが定められた媒介契約をいいます。
専任媒介契約の契約期間中は他の宅建業者に依頼することができませんので、依頼した宅建業者に情報が囲い込まれてしまうといった不利益が生じることをさけるため、宅建業法により対象物件のレインズ登録が義務付けられ、宅建業者は依頼者に対しレインズに登録したことを証する書面を交付する必要があります。
重要事項説明書(35条書面)
宅建業者は、対象物件の売買契約・交換契約・賃貸契約が成立するまでの間に、取引に係る重要事項について、取引の相手方等に対して、宅地建物取引士から、書面を交付して説明させなければなりません。
重要事項については、取引物件に関する私法上・公法上の権利関係、都市施設の整備状況、取引条件など最小限説明すべき事項が規定されています。(宅建業法35条1項、2項、3項)
この重要事項を記載した書面を重要事項説明書と呼び、宅建業法により書面での交付が義務付けられています。
売買契約・交換契約・賃貸契約締結時の交付書面(37条書面)
宅地建物取引業者は、売買契約・交換契約・賃貸契約が締結されたときは、取引の当事者に対し、代金又は借賃の額、その支払方法などの主要な事項を記載した書面を遅滞なく交付しなければなりません。(宅建業法37条1項、2項)
この書面は「37条書面」と呼ばれていますが、売買等の契約書の交付をもって37条書面の交付とすることが認められており、一般的には、宅地建物取引士が契約当事者に対面して契約書を交付する形がとられています。
不動産取引において、電磁的方法による書面交付が認められた契約等
ここからは、不動産取引において、電磁的方法による書面交付が認められた契約等について解説します。
デジタル改革関連法による改正の目的
借地借家法や宅建業法等の様々な法律により規定されている押印や書面の交付等がデジタル化の阻害要因となっていることから、政府は、2021年に公布したデジタル改革関連法の中で、法令に定められた押印・書面手続の見直しを行いました。
政府は、押印・書面手続の見直しの目的について、以下のように説明しています。
● 押印・書面に係る制度を見直すため、デジタル社会形成関係法律整備法の中で、48法律を一括改正。
● これにより、国民の利便性の向上及び負担の軽減を図る。
首相官邸「デジタル改革関連法案について」2021年3月
借地借家法や宅建業法で定められた書面交付義務も見直しの対象となり、紙による交付が必要だった多くの書面について、電磁的方法による交付が認められることとなりました。
それでは、デジタル改革関連法による借地借家法・宅建業法の改正の内容を見ていきましょう。
公布日・施行日
改正の根拠となる法令は、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年5月19日法律第37号)(以下「デジタル社会形成関係法律整備法」)です。
デジタル社会形成関係法律整備法は、デジタル社会の形成に関する施策を実施するために必要な整備を行うための法律です。これにより個人情報やマイナンバーに関する法令、押印・書面手続が規定されている法律など、121もの法律が改正されています。
借地借家法や宅建業法も、その中の一つとなります。
- 公布日・施行日(借地借家法・宅建業法の改正に関する部分)
-
公布日│2021年5月19日
施行日│2022年5月18日までの間で政令で定める日(附則1条4号)
借地借家法の改正により電磁的方法による契約締結・書面交付が認められる契約等
前述したとおり、借地借家法では、以下のものについて書面化義務があります。
・一般定期借地借契約
・事業用定期借地契約(公正証書のみ可)
・定期建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約説明書面
・取壊し予定の建物の賃貸借における取壊しと同時に賃貸借が終わる旨の特約
デジタル社会形成関係法律整備法の改正により、上記の書面のうち、事業用定期借地契約以外の書面については、紙に代わって電磁的方法による契約締結・書面交付が認められることとなりました。
なお、定期建物賃貸借契約説明書面を電磁的方法により交付するためには、建物の賃借人の承諾が必要です。
また、事業用定期借地契約については、引き続き、公正証書での締結が必要なことに注意が必要です
(改正借地借家法)
(定期借家権)
第22条
1 (略)
2 前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第38条第2項及び第39条第3項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。(定期建物賃貸借)
第38条
1 (略)
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
3 (略)
4 建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)
により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。(取壊し予定の建物の賃貸借)
内閣官房「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案新旧対照条文」
第39条
1~2 (略)
3 第1項の特約がその内容及び前項に規定する事由を記録した電磁的記録によってされたときは、その特約は、同項の書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
宅建業法の改正により電磁的方法による交付が認められる書類
前述したとおり、宅建業法では、以下のものについて書面による交付義務があります。
・媒介契約・代理契約締結時の交付書面
・レインズ登録時の交付書面
・重要事項説明書(35条書面)
・売買契約・交換契約・賃貸契約締結時の交付書面(37条書面)
デジタル社会形成関係法律整備法による改正により、上記の書面すべてについて、紙ではなく電磁的方法による交付が認められることとなりました。
なお、いずれの書面においても、紙に代えて電磁的方法により交付するためには、それぞれの書面毎に法律に定められた者(依頼者や取引の相手方等)から承諾をとる必要があります。
また、交付方法の詳細については、今後、国土交通省令で定められる予定です。
(改正宅建業法)
(媒介契約)
第34条の2
1~10 (略)
11 宅地建物取引業者は、第1項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であつて同項の規定による記名押印に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面に記名押印し、これを交付したものとみなす。
12 宅地建物取引業者は、第6項の規定による書面の引渡しに代えて、政令で定めるところにより、依頼者の承諾を得て、当該書面において証されるべき事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を引き渡したものとみなす。(重要事項の説明等)
第35条
1~7 (略)
8 宅地建物取引業者は、第1項から第3項までの規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、第1項に規定する宅地建物取引業者の相手方等、第2項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方又は第3項に規定する売買の相手方の承諾を得て、宅地建物取引士に、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第5項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供させることができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該宅地建物取引士に当該書面を交付させたものとみなし、同項の規定は、適用しない。
9 宅地建物取引業者は、第6項の規定により読み替えて適用する第1項又は第2項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、第6項の規定により読み替えて適用する第1項に規定する宅地建物取引業者の相手方等である宅地建物取引業者又は第6項の規定により読み替えて適用する第2項に規定する宅地若しくは建物の割賦販売の相手方である宅地建物取引業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第7項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。(書面の交付)
内閣官房「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案新旧対照条文」
第37条
1~3 (略)
4 宅地建物取引業者は、第1項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて前項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。
(1)自ら当事者として契約を締結した場合 当該契約の相手方
(2)当事者を代理して契約を締結した場合 当該契約の相手方及び代理を依頼した者
(3)その媒介により契約が成立した場合 当該契約の各当事者
5 宅地建物取引業者は、第2項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第3項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。
(1)当事者を代理して契約を締結した場合 当該契約の相手方及び代理を依頼した者
(2)その媒介により契約が成立した場合 当該契約の各当事者
なお、宅建業法では、クーリングオフの通知等、上記以外にも書面によることを義務付けられているものがありますが、これらについては電磁的方法による交付は認められていません。
宅建業法の改正については、以下の関連記事で解説しています。
不動産取引を電子契約化するメリット
不動産取引を電子契約化すると、以下のようなメリットがあります。
・印紙税が不要になり、コスト削減できる
・ 契約締結までスムーズに行えるので、業務効率化につながる
・ 契約書の一元管理ができ、コンプライアンス・ガバナンスの強化ができる
印紙税が不要になり、コスト削減できる
電磁的記録による方法で作成された文書は、収入印紙を貼る必要がないため、印紙税の削減が期待できます。特に、不動産取引に関係する文書に必要な印紙は高額なことが多いので、不動産取引を扱う会社にとっては、大きなメリットといえます。
また、原本の保管スペースを確保する必要もなくなるので、書類の保管に大きなスペースをとられている・書類の保管場所を借りているという場合には、保管料等も削減できる可能性があります。
契約締結までスムーズに行えるので、業務効率化につながる
紙の契約書は、相手への送付が必要となるため、契約締結までに時間がかかります。また、契約書を印刷・製本したうえで署名・押印する業務や、送付のために頭紙を作成し宛先を書き、封をするといった業務も発生します。
しかし、電子契約を導入すれば、これらの業務がなくなり、スムーズに契約を締結できるようになるので、業務効率化につながります。また、リモートワークでの対応も容易となります。
契約書の一元管理ができ、コンプライアンス・ガバナンスの強化ができる
電子契約等の導入に際し、リーガルテック等のシステムを導入すれば、契約の締結から契約書の保管まで一元管理することが可能になり、コンプライアンス・ガバナンスの強化が期待できます。
システムで管理することで、契約締結時には、締結作業がいまどの工程にあり、だれがいつまでに担当するのかといった情報を可視化でき、締結漏れ等を防ぐことができます。
また、契約締結後も、契約更新のタイミングで通知を自動で受け取る、過去の契約書をすぐに取り出すといったことが可能になるので、契約締結後のリスク管理も可能になります。
不動産取引を電子契約化する際の注意点
不動産取引を電子契約化する際は、以下の点に注意する必要があります。
電子契約化が認められている書面以外は、紙で締結・交付する必要がある
上でも解説したとおり、不動産取引に関する書面すべての電子契約化が認められたわけではありません。
改正後も紙での締結・交付のみが認められている書面については、引き続き紙で行う必要があるので、注意しましょう。
業務フローを再構築する必要がある
電子契約等を導入する際は、業務フローが大きく変わりますので、いままでの業務フローを再構築する必要があります。
取引先にも電子契約に対応してもらう必要がある
電子契約を導入する際は、自社だけでなく、取引先も電子契約に対応している必要があります。
電子契約を導入する会社が増加する一方で、セキュリティ面への懸念から紙での交付のみ対応している会社もあります。こうした場合は、取引先に交渉し、電子契約に応じてもらえるよう説明・要請していく必要があります。
セキュリティ対策を講じる必要がある
契約書等は、非常に重要な書類であるため、セキュリティ対策を講じることは必須です。
サイバー攻撃等への対策のほか、災害に対するセキュリティも確保する必要があります。例えば、契約書のデータをクラウド上ではなく、サーバーに保管していた場合、サーバーを設置していた建物が地震で倒壊し、データが消失してしまったといったこともありえます。
また、情報漏洩等への対策も必要です。不特定多数が契約書等を閲覧・持出しできるようになっているといった場合は、漏洩の可能性が高くなりますので、適切な閲覧権限を設定するといった対策をとる必要があります。
電子契約化への流れ
デジタル改革関連法による借地借家法・宅建業法の改正により、従来、紙によることが求められていた定期賃貸借関係書面(事業用定期借地契約を除く)、重要事項説明書や不動産取引関係書面について紙ではなく電磁的方法による交付が認められることとなりました。
これにより、「宅建業者との媒介・代理契約締結→重要事項説明書受領→不動産の売買・交換・賃貸契約締結に至る不動産取引契約締結」のすべての場面において、書面ではなく、電磁的記録の方法で行うことが可能となります。
この結果、多くの不動産取引において電子契約化が可能となり、「紙離れ」ができる領域が格段に広くなることで、不動産業界でのペーパレス化の波が一気に加速することが予想されます。
不動産業界では、対面が原則であった重要事項説明についても「ITを利用した重要事項説明」の社会実験が行われるなど、契約の電子化以外の部分についてもデジタル化が進んでいますので、併せてご確認ください。
参考文献
首相官邸ウェブサイト「デジタル改革関連法案について」2021年3月
衆議院ウェブサイト第204回国会 制定法律の一覧 「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」