定期建物賃貸借契約とは?
基本を分かりやすく解説!借地借家法38条も紹介
- この記事のまとめ
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定期建物賃貸借契約の基本を解説!!
この記事では、契約の更新を想定しない建物の賃貸借である、定期建物賃貸借契約の基本を分かりやすく解説します。
(※この記事は、2020年11月27日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
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目次
定期建物賃貸借契約とは?
定期建物賃貸借契約とは、 期間の定めのある建物賃貸借契約のうち、賃貸借契約の更新が認められず、 契約期間の満了により、確定的に賃貸借が終了する賃貸借契約をいいます(借地借家法38条)。すなわち、更新が認められていない類型の賃貸借契約です。
通常の普通建物賃貸借契約においては、正当な事由がない限り賃貸借契約の更新を拒むことはできないものとされています(借地借家法28条参照)。一方で、定期建物賃貸借契約は更新ができない賃貸借契約です。
したがって、更新されたくない、一定期間に限り賃貸に出したい、というニーズにこたえることができるようになっています。
例えば、賃貸物件の将来における建て替えや大規模修繕、自己利用を予定しているような場合に定期建物賃貸借契約は有用です。 ある時期に建て替え等を予定しているにもかかわらず、普通賃貸借契約を締結すると、正当事由のない限り更新拒絶できず予定していた建て替えが実施できないという可能性や、退去のための立ち退き料や交渉の手間など有形無形のコストがかかるという可能性がでてきます。
しかし、定期建物賃貸借契約の場合は更新が認められていないので、そういった懸念が解消されることになります。
また、マンスリーマンションやウィークリーマンションなどの、期間を区切った、一定期間で賃借人が退去することをあらかじめ想定しているような賃貸借でも定期建物賃貸借が用いられています。
借地借家法38条に定める定期借家契約は公正証書で締結しなければならないのか
定期建物賃貸借契約は、書面で契約をする必要があります(借地借家法38条1項)。
また、賃貸人が賃借人に対して、「契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了すること」を書面により説明することも必要です(借地借家法38条3項)。
仮に説明がなされなかった場合には通常の建物賃貸借となります。
(定期建物賃貸借)
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第38条
1 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
4~9 略
借地借家法38条3項の規定する書面は、借地借家法38条1項の書面とは別のものである必要があると解されています(最判平成24年9月13日)。
- 定期建物賃貸借契約が成立するための要件
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① 公正証書などの書面によって契約をする
② 賃貸人が、賃借人に対して「契約の更新がなく、 期間の満了により契約が終了する」旨を記載して書面を交付して説明する
なお、借地借家法38条1項の条文上、定期建物賃貸借契約は「公正証書による等書面によって」締結する必要があるとされています。この場合の「公正証書」は例示に過ぎないため、通常の契約書など、公正証書以外の書面によって定期建物賃貸借契約を締結しても問題ありません。
定期建物賃貸借契約と同じく、借地借家法に基づき書面締結が必要とされているものとして、一般定期借地契約(同法22条)と事業用定期借地契約(同法23条)があります。
(定期借地権)
第22条 存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
2 略(事業用定期借地権等)
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第23条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
一般定期借地契約については、定期建物賃貸借契約と同様に「公正証書による等書面によって」締結すべきとされています(同法22条)。「公正証書」は例示であるため、通常の契約書などによって一般定期借地契約を締結することも可能です。
これに対して、事業用定期借地契約は「公正証書によって」締結すべきとされています(同法23条3項)。この場合、締結手段が公正証書に限定されているため、事業用定期借地契約は公正証書によって締結しなければならず、通常の契約書によって締結することはできません。
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建物賃貸借契約と関連する法律
建物賃貸借契約に関連する法律は、民法、借地借家法などになります。
建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約との違い
普通建物賃貸借契約と、定期建物賃貸借契約の違いは、以下のようになります。
通常の建物賃貸借 | 定期建物賃貸借 | |
---|---|---|
賃借の目的 | 居住用・事業用いずれも可能。 | 居住用・事業用いずれも可能。 ただし、居住用の場合には中途解約権が認められ得る(借地借家法38条7項)。 |
賃借の期間 | 期間に制限なし。 1年未満の場合、期間の定めがない建物賃貸借契約とみなされる(借地借家法29条1項)。 | 期間に制限なし。 1年未満の契約も有効。 |
契約の成立 | 口頭でも成立(諾成契約)。 | 公正証書等の書面による契約(借地借家法38条1項)、及び、書面を交付しての説明が必要(借地借家法38条3項)。 |
契約の更新 | 可。 正当事由がない限り更新拒絶不可(借地借家法28条)。 | 不可。 |
賃料の増減額 | 借地借家法32条により可能。 特約で減額請求権を排除することは不可(最判平成15年10月21日、最判平成16年6月29日)。 特約で増額請求権を排除することは可能(借地借家法32条1項ただし書)。 | 借地借家法32条により可能。 ただし、賃料の増減額に関する特約がある場合はそれに従う(借地借家法38条9項)。 |
賃貸人による期間満了前の通知 | 期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしない場合は、 従前と同一の条件で期間の定めのないものとして契約が自動更新される(借地借家法26条1項)。 | 契約期間が1年以上の場合、期間満了の1年前から6か月前までに期間の満了により契約が終了する旨の通知を送る必要。 通知がない場合、期間満了による契約の終了を対抗できない。(借地借家法38条6項)。 |
解約・中途解約 | ①期間の定めのない場合、賃貸人からの解約は、6か月前の申入れと正当事由がある場合に限り可(借地借家法27条、28条)、 賃借人からの解約は3ヶ月前の申し入れにより可(民法617条1項2号)。それ以外の場合は特約があればそれに従う。 ②期間の定めのある場合、原則、中途解約は認められないが、特約があればそれに従う。ただし、賃貸人からの解約には正当事由が必要。 | 賃貸人からの解約は、原則としてできない。賃借人からの解約は、借地借家法38条7項の要件を満たした場合に可能。 それ以外の場合は特約があればそれに従う。ただし、賃貸人からの解約には正当事由が必要。 |
再契約 | 可。 | 可。 更新が不可なので再契約により対応する必要。 |
定期建物賃貸借契約の条項
定期建物賃貸借契約を締結する場合に、契約書に定めるべきポイントを解説します。
なお、建物賃貸借契約と内容が共通する条項については、こちらの記事を参照ください。
契約の目的
まず、定期建物賃貸借契約については、賃貸の目的について特定しておくことが重要となります。賃貸の目的が居住用か否かで、 定期建物賃貸借契約の中途解約権が認められるかどうかについて違いが生ずるからです。
例えば、以下のような規定が考えられます。
- 記載例
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(使用目的)
賃借人は、本物件を居住の目的以外では使用してはならない。
①居住用の定期建物賃貸借であって、②その賃貸物件の床面積が200平方メートル未満で、 ③転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の本拠として使用することが困難となったとき、 に賃借人からの中途解約権が認められます(借地借家法38条7項)。
上記①から③の要件が充足されて中途解約権の行使が認められる場合、 賃借人による解約の申入れ日から1か月を経過することにより当該定期建物賃貸借契約は終了することになります。
したがって、賃貸の目的が居住目的かどうかは、①の要件との関係において重要となり、中途解約権が認められるかどうかに影響があります。
借地借家法
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38条
1~6 略
7 第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
8~9 略
賃料の改定
次に、定期建物賃貸借に関する賃料の改定に関する規定について説明します。
定期建物賃貸借の場合、賃料の改定に関する特約がある場合には、賃料の増減額について定めた借地借家法32条の規定が排除され、 特約に従った処理がなされることになります(借地借家法38条9項)。
賃貸借契約は、比較的長期間にわたる契約であることが多く、賃貸の目的物である建物などは社会情勢の変化によりその価値が変動する可能性があり、 これに伴い、契約時に設定した賃料が不相当になることがあり得ます。
こういった事態を想定し、借地借家法32条は、賃料が契約の条件として定められていたとしても、 一定の場合には当事者が将来に向かって建物の賃料の増減額について請求することができるとしています。
借地借家法
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32条
1 建物の借賃が、 土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは 低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、 当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる
2~3 略
なお、契約において賃料の減額請求について認めないような特約は、賃借人保護の観点から認められないと解されています。 ただし、一定の期間建物の賃料の増額を認めないような特約は、有効であるとされています(借地借家法32条1項ただし書、 最判平成15年10月21日、最判平成16年6月29日)。
しかし、定期建物賃貸借においては特約の定めにより、賃料の増減額を定める借地借家法32条 の適用を排除することができます(借地借家法38条9項)。
定期借家法
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38条
1~8 略
9 第32条の規定は、第1項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
すなわち、定期建物賃貸借の場合、特約で賃料の改定について定めている場合には、 賃料の改定に関する規定(借地借家法32条)は適用されず特約による、ということになります。
例えば、賃貸人にとって有利な特約、賃借人にとって有利な特約として次のような特約が考えられます。
- 記載例(賃貸人有利)
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(賃料)
1 賃料は月〇万円とする。
2 賃借人は、賃貸借期間中、賃料の減額を請求することができない。
3 賃貸人は賃貸借期間中であっても、土地又は建物に対する公租公課その他諸経費の増加、又は近隣土地建物の価格の高騰、 若しくは賃料水準の上昇、その他物価騰貴等の経済情勢の変動等により、 賃料が相当でないと賃貸人が判断したときは、賃料を増額することができる。
- 記載例(賃借人有利)
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(賃料)
1 賃料は〇円とする。
2 賃貸人及び賃借人は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
(1)土地又は建物に対する租税その他の増減により賃料が不相当となった場合
(2)土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
(3)近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
これらの特約は、いずれも賃料の改定に関するものがその内容として含まれています。したがって、借地借家法32条の適用は排除され、 特約に従って処理がなされることになります。
賃貸人有利の特約は、借地借家法32条と比べると、賃貸人の減額請求が認められていない点で賃貸人に有利な内容の特約となっています。普通賃貸借の場合には減額請求を禁止する規定は認められませんが、定期建物賃貸借の場合は有効となるので注意が必要です(借地借家法38条9項)。
賃借人有利の特約は、双方の賃料増減額の請求権が確保されていることとなります。この場合も、特約で賃料の改定に関して内容が定められているため、借地借家法32条の規定は適用されず、もっぱら特約による改定がなされることになります。
このように、定期建物賃貸借の場合には、普通賃貸借の場合と異なり、賃料の改定に関する特約がある場合には借地借家法32条の適用が排除される、という点に注意する必要があります。
賃貸借期間
次に、定期建物賃貸借契約書における賃貸借期間の規定について説明します。
賃貸借期間の記載においては、①契約の更新がない旨が記載されているか、②定期建物賃貸借契約の終了の通知の記載があるかどうか、に注意する必要があります。
例えば、以下のような規定が考えられます。
- 記載例
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(賃貸借期間)
1 本契約の期間(以下「賃貸借期間」という。)は契約要項記載のとおりとし、 賃貸人は賃借人に対し賃貸借期間の開始日までに本物件を現状有姿にて引き渡す。
2 本契約は、前項に規定する期間の満了により終了し、更新されない。ただし、 賃貸人及び賃借人は、協議の上、賃貸借期間の満了の日の翌日を始期とする新たな賃貸借契約を締結することができる。
3 賃貸人は、賃借人に対し、賃貸借期間満了の1年前から、6カ月前までの間に(以下「通知期間」という。)、 期間の満了によって本契約が終了する旨を書面によって通知する。通知期間を経過した後に、 賃貸人が賃借人に契約終了の通知をした場合には同通知の日から6カ月経過したときに、本契約は終了する。
まず、記載例2項本文のように、契約の更新がないということを明確にしておく必要があります。
定期建物賃貸借においては、契約の更新がない、という点に最大の特徴があり、また、契約を更新しない定めをすることは 定期建物賃貸借において不可欠の要素となります。
次に、記載例3項のように、「定期建物賃貸借の終了に際して、満了期間の1年前から6か月前までに契約が終了する旨を通知する」 と確認的に定めるのが望ましいです。
定期建物賃貸借は、更新しない旨を定められる、すなわち期間満了により確定的に賃貸借契約を終了できるものですが、 その終了に際しては、期間満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知を送ることが必要となります(借地借家法38条6項)。
仮に通知をし忘れたような場合には、定期建物賃貸借の終了を賃借人に対抗できないことになるので、 賃借人は従前と同様の条件で賃貸借契約を継続することができます。
期間満了の6か月前より後に通知を送ったような場合には、その通知の日から6か月を経過した時点で、 期間満了による定期建物賃貸借の終了を対抗できることになります(借地借家法38条6項ただし書き)。
借地借家法
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38条
1~5 略
6 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、 期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し 期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。 ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、 その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
7~9 略
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中途解約
定期建物賃貸借の中途解約に関する規定について説明します。
民法617条で期間の定めのない賃貸借契約においては当事者からいつでも解約申し入れをすることができる、と定めています。 この場合、解約申入れから3か月を経過することにより賃貸借契約が終了することになります。
期間の定めのある賃貸借契約においては、契約で中途解約の特約を定めた場合は、民法617条と同様の猶予期間をもって 中途解約することができます(民法618条)。
民法
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617条
1 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
⑴ 土地の賃貸借 1年
⑵ 建物の賃貸借 3箇月
⑶ 動産及び貸席の賃貸借 1日
2 略
618条
当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
しかし、期間の定めのない建物の賃貸借における賃貸人からの解約については、借地借家法27条、28条が優先的に適用されます。
期間の定めのない建物の賃貸借における賃貸人からの解約は、解約申入れの日から6か月を経過することにより契約が終了し(借地借家法27条)、また、解約には正当な事由があることが必要です(借地借家法28条)。借地借家法27条、28条に反する賃借人に不利な規定は無効となります(借地借家法30条)。
そして、期間の定めのある建物の賃貸借における当事者からの解約については、中途解約の特約を定めていない限り、行うことができませんが(民法618条)、中途解約の特約がある場合でも、賃貸人からの中途解約には、正当な事由が必要と解されています。
借地借家法
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27条
1 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
2 略
28条
建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人 (転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、 建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に 対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
30条
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
また、定期建物賃貸借においては、借地借家法38条7項の要件を満たした場合は、中途解約の特約が定められていなかったとしても、 賃借人からの中途解約が認められます。
- 借地借家法38条7項の解約の要件
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①居住用の定期建物賃貸借
②賃貸物件の床面積が200平方メートル未満
③転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の本拠として使用することが困難となったとき
中途解約に関する特約としては、以下のような規定が考えられます。
- 記載例
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(期間内解約)
1 賃借人は、賃貸借期間中であっても3カ月前までに相手方に対して通知することにより、本契約を解約することができる。
2 賃借人は、前項に定めにかかわらず、3カ月分の賃料(本契約解約後の賃料相当額を含む)を支払うことにより、本契約を即時に解約することができる。
このような特約は、借地借家法38条7項に定めるようなやむを得ない事情があるような場合以外についても中途解約について認めるものであり、 賃借人にとって不利益な内容の条項ではないため有効であると解されています。
この場合、特約に基づく解約はもちろん、借地借家法38条5項における要件を満たした場合にも解約が認められます。
仮に借地借家法38条7項に基づく解約権を制限するような規定、例えば借地借家法38条5項に基づく解約について、 より長い申入れ期間を設定するような特約がある場合には、借地借家法38条8項により当該特約は無効となります。
中途解約を認めない特約としては、以下のような規定が考えられます。
- 記載例
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(期間内解約)
賃貸人及び賃借人は、賃貸借期間中は本契約を解約することはできない。
記載例のような中途解約を認めない旨の特約が設けられることがあります。
しかし、この場合でも、借地借家法38条7項に基づく賃借人からの中途解約についてはなお認められます(借地借家法38条8項)。
再契約
最後に、定期建物賃貸借における再契約に関する規定について説明します。
これまで述べてきたように、定期建物賃貸借契約において更新は認められていません。 しかし、期間満了後も引き続き賃貸借を継続したいような場合は少なからず存在します。そこで、更新が認められない以上、 再契約をすることにより賃貸借の継続が可能となります。
再契約については以下のような規定が考えられます。
- 記載例
-
(賃貸借期間)
1 本契約の期間(以下「賃貸借期間」という。)は契約要項記載のとおりとし、賃貸人は賃借人に対し賃貸借期間の開始日までに本物件を現状有姿にて引き渡す。
2 本契約は、前項に規定する期間の満了により終了し、更新されない。ただし、賃貸人及び賃借人は、協議の上、 賃貸借期間の満了の日の翌日を始期とする新たな賃貸借契約を締結することができる。(再契約)
1 賃貸人は、再契約の意向があるときは、第●条(賃貸借期間)による通知の書面に、その旨を付記するものとする。
2 再契約をした場合は、第●条(原状回復義務)の規定は適用しない。
記載例のように、再契約が可能であることを確認する旨、また、再契約をする場合は原状回復義務の規定は適用されない旨を定めることが考えられます。
更新ができない以上、形式的には原状回復義務は契約終了時に発生することになりますが、 再契約をするような場合にあえて原状回復義務を履行させる必要性は通常ないため、記載例のように原状回復義務の規定の適用排除を定めることが、 賃借人側からは望ましいです。
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まとめ
定期建物賃貸借契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!
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