建物賃貸借契約とは?
基本を分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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建物賃貸借契約の基本を解説!!
2020年4月1日におよそ120年ぶりの民法(債権法)大改正が行われ、賃貸借契約に関する様々な判例法理が明文化されました。特に建物賃貸借契約は、部屋やオフィスを賃貸する際など、ほとんどの方や法人に関わってくる重要な契約です。この機会に、建物賃貸借契約について確認してみてはいかがでしょうか?
この記事では、賃貸借契約のうち、建物の貸し借りを行う、建物賃貸借契約の基本を分かりやすく解説します。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 民法…2020年4月施行後の民法(明治29年法律第89号)
- 旧民法…2020年4月施行前の民法(明治29年法律第89号)
- 借地借家法…借地借家法(平成3年法律第90号)
(※この記事は、2020年11月30日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
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目次
建物賃貸借契約とは?
不動産を貸借する契約には、 賃貸借契約 と 使用貸借契約 の2種類があります。
賃貸借契約は、「賃料を支払うことを約する」という点にポイントがあります。これに対して、使用貸借契約は「無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約する」ものです。
すなわち、 賃料を支払うものが賃貸借契約、賃料を支払わないものが使用貸借契約 です。
(使用貸借)
第593条
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について 無償で 使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。(賃貸借)
第601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、 相手方がこれに対してその 賃料を支払うこと 及び引渡しを受けた物を契約が 終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
次に、不動産の賃貸借契約の多くは、 建物賃貸借契約 か 土地賃貸借契約 です。
賃貸借契約の対象が建物か土地かによって適用される条文が異なるため、注意が必要です。
例えば、借地借家法では、第2章(3条~25条)が「借地」、第3章(26条~40条)が「借家」を対象としています。 また、民法602条では、1号、2号で土地について定め、3号で建物について定めています。
(短期賃貸借)
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第602条
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、 それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、 その期間は、当該各号に定める期間とする。
(1) 樹木の栽植又は伐採を目的とする 山林 の賃貸借 10年
(2) 前号に掲げる賃貸借以外の 土地 の賃貸借 5年
(3) 建物 の賃貸借 3年
(4) 動産の賃貸借 6箇月
以上をまとめると、 建物賃貸借契約は、 建物を対象とする有償の貸借契約 です。
居住用のマンションや事業用のオフィスビルを貸し借りする場面で締結されます。 多くの方が関わったことのある契約ではないでしょうか。
建物賃貸借契約と関連する法律
建物賃貸借契約に関連する法律は、 民法、借地借家法 などです。
民法は、契約自由の原則に基づいて、賃貸借契約について定めています。
契約自由の原則は、契約の両当事者が平等な立場であることを前提にしていますが、実際には、不動産という資産を有する貸主の方が、借主よりも強い立場にある場合が想定されます。このように、力関係に差がある状況では、借主が貸主に対して、一方的に不利な契約を押し付けかねません。
そこで、借主を保護するために定められた 法の特別法が、借地借家法 です。
例えば、民法では、不動産の賃貸借について、借主が対抗要件を備えるためには、登記をする必要があります。しかし、登記をするためには貸主の協力が必要であるところ、実際には、貸主が登記に協力しないことが想定されます。
これに対して、借地借家法では、建物の賃貸借について、建物の引渡しだけで対抗要件を備えることができると 規定されています。さらに、この規定は強行法規であり、当事者間の特約によって排除することはできません。 このように、 借地借家法は、弱い立場にある借主の保護を図っています 。
(不動産賃貸借の対抗力)
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第605条
不動産の賃貸借は 、これを 登記したときは 、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に 対抗することができる 。
(建物賃貸借の対抗力)
第31条
建物の賃貸借は 、その 登記がなくても 、 建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その 効力を生ずる 。(強行規定)
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第37条
第31条、第34条及び第35条の規定に反する特約で 建物の賃借人 又は転借人 に不利なものは、無効 とする。
また、民法上、賃貸借の存続期間は50年を超えることができないとされていますが、 借地借家法により、建物の賃貸借では、この規定は適用されないこととされています。
このように、借地借家法は、民法の規定を修正しています。
(賃貸借の存続期間)
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第604条
1 賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない 。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。
(建物賃貸借の期間)
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第29条
1 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
2 民法 (明治29年法律第89号) 第604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない 。
借地借家法は、 建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権と、建物の賃貸借 を対象としています。
土地賃貸借契約には「建物の所有を目的とする」という要件がありますが、建物賃貸借契約にはこのような要件はありません。ただし、 一時使用目的の場合には、適用対象外 となります。
(趣旨)
第1条
この法律は、 建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権 の存続期間、効力等並びに 建物の賃貸借 の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、 借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。(一時使用目的の建物の賃貸借)
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第40条
この章の規定は、 一時使用 のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、 適用しない 。
定期建物賃貸借契約との違い
建物賃貸借契約には、 普通建物賃貸借契約 と 定期建物賃貸借契約 2種類があります。
普通賃貸借契約は、 たとえ貸主が解約の申入れ又は更新拒絶をしたとしても、これに正当の事由があると認められなければ、契約は継続し又は契約が更新されます 。
これに対して、 定期建物賃貸借契約 は、 契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了します 。
次のように、普通建物賃貸借契約であるか定期建物賃貸借契約であるかによって適用される条文が異なるため、注意が必要です。
第3章 借家
第1節 建物賃貸借契約の更新等(建物賃貸借契約の更新等)
第26条
1 建物の賃貸借について 期間の定めがある場合 において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して 更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の 通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす 。 ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。(解約による建物賃貸借の終了)
第27条
1 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
2 前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条
建物の 賃貸人による 第26条第1項の通知又は 建物の賃貸借の解約の申入れは 、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が 建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として 又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、 正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない 。(建物賃貸借の期間)
第29条
1 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす 。
2 民法(明治29年法律第89号)第604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。(強行規定)
第30条
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。第2節 建物賃貸借の効力
(借賃増減請求権)
第32条
1 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、 又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって 建物の借賃の額の増減を請求することができる 。 ただし、一定の期間建物の 借賃を増額しない旨の特約がある場合 には、 その定めに従う 。
2 略
3 略(強行規定)
第37条 第31条、第34条及び第35条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。第3節 定期建物賃貸借等
( 定期建物賃貸借 )
第38条
1 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等 書面によって契約をするときに限り 、 第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる 。この場合には、 第29条第1項の規定を適用しない 。
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
3 第1項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、 同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した 書面を交付して説明しなければならない 。
4 建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。
5 建物の賃貸人が第3項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
6 第1項の規定による建物の賃貸借において、 期間が1年以上である場合 には、建物の賃貸人は、 期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の 通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない 。 ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
7 第1項の規定による 居住の用に供する建物の賃貸借 ( 床面積 (建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積) が200平方メートル未満の建物 に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他の やむを得ない事情 により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、 建物の賃借人は 、 建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる 。 この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
8 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
9 第32条の規定は、第1項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る 特約がある場合には、適用しない 。(取壊し予定の建物の賃貸借)
借地借家法- e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第39条
1 法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第30条の規定にかかわらず、 建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。
2 前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。
以上の重要な点をまとめると、次の表のようになります。
通常の建物賃貸借 | 定期建物賃貸借 | |
---|---|---|
賃借の目的 | 居住用・事業用いずれも可能。 | 居住用・事業用いずれも可能。 ただし、居住用の場合には中途解約権が認められ得る(借地借家法38条7項)。 |
賃借の期間 | 期間に制限なし。 1年未満の場合、期間の定めがない建物賃貸借契約とみなされる(借地借家法29条1項)。 | 期間に制限なし。 1年未満の契約も有効。 |
契約の成立 | 口頭でも成立(諾成契約)。 | 公正証書等の書面による契約(借地借家法38条1項)、及び、書面を交付しての説明が必要(借地借家法38条3項)。 |
契約の更新 | 可。 正当事由がない限り更新拒絶不可(借地借家法28条)。 | 不可。 |
賃料の増減額 | 借地借家法32条により可能。 特約で減額請求権を排除することは不可(最判平成15年10月21日、最判平成16年6月29日)。 特約で増額請求権を排除することは可能(借地借家法32条1項ただし書)。 | 借地借家法32条により可能。 ただし、賃料の増減額に関する特約がある場合はそれに従う(借地借家法38条9項)。 |
賃貸人による期間満了前の通知 | 期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしない場合は、 従前と同一の条件で期間の定めのないものとして契約が自動更新される(借地借家法26条1項)。 | 契約期間が1年以上の場合、期間満了の1年前から6か月前までに期間の満了により契約が終了する旨の通知を送る必要。 通知がない場合、期間満了による契約の終了を対抗できない。(借地借家法38条6項)。 |
解約・中途解約 | ①期間の定めのない場合、賃貸人からの解約は、6か月前の申入れと正当事由がある場合に限り可(借地借家法27条、28条)、 賃借人からの解約は3ヶ月前の申し入れにより可(民法617条1項2号)。それ以外の場合は特約があればそれに従う。 ②期間の定めのある場合、原則、中途解約は認められないが、特約があればそれに従う。ただし、賃貸人からの解約には正当事由が必要。 | 賃貸人からの解約は、原則としてできない。賃借人からの解約は、借地借家法38条7項の要件を満たした場合に可能。 それ以外の場合は特約があればそれに従う。ただし、賃貸人からの解約には正当事由が必要。 |
再契約 | 可。 | 可。 更新が不可なので再契約により対応する必要。 |
契約方法
まず、契約方法について、普通建物賃貸借契約は、書面による契約でも、口頭による契約のいずれでも可能です。 もっとも、紛争防止の観点から、 契約書を作成し、契約条件を明確にしておくのが安全 です。
定期建物賃貸借契約では、書面による契約をするだけでなく、契約書などとは別に、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを、 予め書面を交付して説明しなければなりせん。これを怠った場合は、普通建物賃貸借契約になってしまいます(借地借家法38条1項~5項)。
契約の更新
次に、契約の更新について、普通建物賃貸借契約は、賃貸人による更新拒絶などに正当事由がある場合等を除いて、原則として更新されます。
当事由の有無は、以下の事情などを考慮して判断されます。
- 「正当事由」の判断要素
-
・建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)双方の建物の使用を必要とする事情の比較
・建物の賃貸借に関する従前の経過
・建物の利用状況及び建物の現況
・建物の賃貸人が建物の賃借人に対して財産上の給付(立退料など)をする旨の申出をした場合におけるその申出
定期建物賃貸借契約は、期間満了により終了し、更新されません。ただし、 再契約することは可能 です。
賃料の増減額
さらに、賃料の増減請求権の排除について、普通建物賃貸借契約では、増額請求権を特約で排除することはできますが(借地借家法32条1項ただし書)、 減額請求権を特約で排除することはできません(最判平成15年10月21日、最判平成16年6月29日)。
これに対して、定期建物賃貸借契約では、増額請求権、減額請求権のいずれも特約で排除することができます(借地借家法38条9項)。
中途解約
最後に、賃借人からの中途解約について、民法では、期間の定めの有無によって異なる規定を置いています。
普通建物賃貸借契約のうち、期間の定めのないものは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができます(民法617条)。ただし、 賃貸人からの解約については、6か月前の申入れと正当事由があることが必要 です(借地借家法27条、28条)。
これに対して、期間の定めのあるものは、中途解約に関する特約があればその定めに従いますが、特約がない場合には、 原則として、貸主・借主いずれも中途解約することができません(民法618条)。なお、賃貸人からの中途解約については、正当事由があることが必要と解されています。
定期建物賃貸借契約も、同様に、中途解約に関する特約があればその定めに従いますが、特約がない場合には、原則として、貸主・借主いずれも中途解約することができません。 なお、賃貸人からの中途解約については、正当事由があることが必要と解されています。
もっとも、定期賃貸借契約における居住用の建物のうち、床面積200平方メートル未満の居住用の建物については、借主からの中途解約の例外的な規定が設けられています。 具体的には、借主が、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物を生活の本拠として使用することが困難となったときは、 借主は、中途解約の申入れをすることができます(借地借家法38条7項)。
(賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了)
第616条の2
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条
1 当事者が賃貸借の 期間を定めなかったとき は、各当事者は、 いつでも解約の申入れをすることができる 。この場合においては、 次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
(1) 土地の賃貸借 1年
(2) 建物の賃貸借 3箇月
(3) 動産及び貸席の賃貸借 1日
2 略(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第618条
当事者が賃貸借の 期間を定めた場合 であっても、その一方又は双方がその 期間内に解約をする権利を留保したとき は、 前条の規定を準用 する。(賃貸借の更新の推定等)
第619条
1 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、 従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
2 略(賃貸借の解除の効力)
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第620条
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
建物賃貸借契約の条項
建物賃貸借契約を締結する場合に、契約書に定めるべきポイントを解説します。
賃料の改定
借地借家法上、賃貸人は、物件価格・租税の変動その他経済事情の変動により、賃料の増額を請求することができます。紛争予防の観点から、これを 確認的に定めるのが安全 です。
(借賃増減請求権)
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第32条
1 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、 又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって 建物の借賃の額の増減を請求することができる 。 ただし、一定の期間建物の 借賃を増額しない旨の特約がある場合 には、 その定めに従う 。
2 略
3 略
- 記載例
-
(賃料の改定)
1 賃貸人は、契約更新に際して、賃料を改定することができる。
2 賃貸人及び賃借人は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
(1)土地又は建物に対する租税その他の増減により賃料が不相当となった場合
(2)土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
(3)近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
一部滅失による賃料の減額
建物などの一部滅失による賃料の減額について定めた民法611条は、2020年4月に施行された民法改正で改正されました。
旧民法では、1項は「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、 賃料の減額を請求することができる」と規定されていました。
これに対して、改正後の民法では、以下のように、「 滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合 」という要件に書き換えられ、 賃料は 請求なくして当然に「減額される」 ものと改められました。
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
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第611条
1 賃借物の一部が 滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合 において、 それが 賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるとき は、 賃料は 、 その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、 減額される 。
2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、 残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
したがって、契約書でも、改正後の民法に合わせた規定を設けるのが良いでしょう。
また、具体的にどの程度減額するかについて定める必要があるため、 「賃貸人及び賃借人は、減額の程度、期間その他必要な事項について協議する」と定めるのが安全 です。
- 記載例
-
(一部滅失等による賃料の減額等)
1 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、 それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用できなくなった部分の割合に応じて、 減額される。この場合において、賃貸人及び賃借人は、減額の程度、期間その他必要な事項について協議する。
2 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、 賃借人は、本契約を解除することができる。
共益費
階段、廊下などの共用部分を維持管理するためには、光熱費や上下水道使用料、清掃費などが必要です。 これらの維持管理費は、賃料とは別に 「共益費」として請求するのが一般的 です。
共益費については、賃料や敷金と同様に、頭書に記載するのが一般的です。
- 記載例
-
(共益費)
1 賃借人は、階段、廊下等の共用部分の維持管理に必要な光熱費、上下水道使用料、清掃費等(以下この条において「維持管理費」という。) に充てるため、共益費を賃貸人に支払う。
2 前項の共益費は、頭書の記載に従い、支払わなければならない。
3 1か月に満たない期間の共益費は、1か月を 30 日として日割計算した額とする。
4 賃貸人及び賃借人は、維持管理費の増減により共益費が不相当となったときは、協議の上、共益費を改定することができる。
敷金
敷金については、旧民法では明文の規定がありませんでしたが、以下のように、改正によって民法で明文化されました。
敷金は、民法622条の2第1項柱書のかっこ書で「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる 賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。」と定義されています。
すなわち、 賃料が不払いになったり、賃借人が負担すべき原状回復費用が生じたりした場合に備えて担保とするための金銭 が、敷金です。
第4款 敷金
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第622条の2
1 賃貸人は、敷金( いかなる名目によるかを問わず、 賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、 賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう 。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、 その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
(1) 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
(2) 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、 賃借人が 賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする 債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる 。 この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
民法上、敷金の交付は強制されていないため、 契約上、敷金の交付を義務として定める必要があります 。 敷金の内容や返還については、民法に沿った形で規定するのが良いでしょう。
- 記載例
-
(敷金)
1 賃借人は、本契約から生じる債務の担保として、頭書に記載する敷金を賃貸人に交付する。
2 賃貸人は、賃借人が本契約から生じる債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。 この場合において、賃借人は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって当該債務の弁済に充てることを請求することができない。
3 賃貸人は、本物件の明渡しがあったときは、遅滞なく、敷金の全額を賃借人に返還しなければならない。ただし、 本物件の明渡し時に、賃料の滞納、原状回復に要する費用の未払いその他の本契約から生じる賃借人の債務の不履行が存在する場合には、 賃貸人は、当該債務の額を敷金から差し引いた額を返還する。
4 前項ただし書の場合には、賃貸人は、敷金から差し引く債務の額の内訳を賃借人に明示しなければならない。
修繕
賃借物件の修繕については、以下のように、民法で規定されています。
607条の2は、2020年4月に施行された民法改正により新設されました。また、606条1項ただし書も、民法改正により追加されたものです。
(賃貸人による修繕等)
第606条
1 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う 。ただし、 賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない 。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。(賃借人の意思に反する保存行為)
第607条
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、 賃借人は、契約の解除をすることができる。(賃借人による修繕)
第607条の2
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
(1) 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
(2) 急迫の事情があるとき。(賃借人による費用の償還請求)
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第608条
1 賃借人は 、賃借物について 賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる 。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。 ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
契約書では、紛争防止の観点から、 賃貸人が修繕する際 には「あらかじめ、その旨を賃借人に通知しなければならない」と、 通知義務を定めるのが望ましい です。
また、 賃借人が修繕すべき箇所を発見したとき には「賃貸人にその旨を通知し修繕の必要について協議する」と、 同じく 通知義務を定めておく ことで、賃貸人は、早期に修繕箇所を把握することができます。
- 記載例
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(修繕)
1 賃貸人は、賃借人が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。 この場合の修繕に要する費用については、賃借人の責めに帰すべき事由により必要となったものは賃借人が負担し、その他のものは賃貸人が負担する。
2 前項の規定に基づき賃貸人が修繕を行う場合は、賃貸人は、あらかじめ、その旨を賃借人に通知しなければならない。 この場合において、賃借人は、正当な理由がある場合を除き、当該修繕の実施を拒否することができない。
3 賃借人は、本物件内に修繕を要する箇所を発見したときは、賃貸人にその旨を通知し修繕の必要について協議する。
4 前項の規定による通知が行われた場合において、修繕の必要が認められるにもかかわらず、賃貸人が正当な理由なく 修繕を実施しないときは、賃借人は自ら修繕を行うことができる。この場合の修繕に要する費用については、第1項に準ずる。
5 賃借人は、別表に掲げる修繕について、第1項に基づき賃貸人に修繕を請求するほか、自ら行うことができる。 賃借人が自ら修繕を行う場合においては、修繕に要する費用は賃借人が負担し、賃貸人への通知及び賃貸人の承諾を要しない。
原状変更
賃貸人としては、同意のない原状変更を禁止したり、施工業者を指定したりする場合は、以下のように定めることが考えられます。
- 記載例
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(原状変更)
1 賃借人が、本物件を頭書の事業内容に従い使用する上で必要な模様替え、付属施設の設置等をする場合には、 あらかじめ賃貸人の承諾を得た上で賃貸人の指示に従い施工するものとし、その費用は賃借人が負担する。
2 前項の工事により法令による設備の新規改善の必要が生じた場合、その費用は賃借人が負担する
立入点検
例えば火災報知器の点検など、賃貸人による物件への立入点検が必要になる場合があります。
民法606条2項には「賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。」 と定められていますが、紛争防止の観点から、立入点検について、以下のように定めることが考えられます。
- 記載例
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(立入点検)
1 賃貸人は、本物件の防火、本物件の構造の保全その他の本物件の管理上特に必要があるときは、あらかじめ賃借人の承諾を得て、本物件内に立ち入ることができる。
2 賃借人は、正当な理由がある場合を除き、前項の規定に基づく賃貸人の立入りを拒否することはできない。
3 本契約終了後において本物件を賃借しようとする者又は本物件を譲り受けようとする者が下見をするときは、 賃貸人及び下見をする者は、あらかじめ賃借人の承諾を得て、本物件内に立ち入ることができる。
4 賃貸人は、火災による延焼を防止する必要がある場合その他の緊急の必要がある場合においては、あらかじめ賃借人の承諾を得ることなく、 本物件内に立ち入ることができる。この場合において、賃貸人は、賃借人の不在時に立ち入ったときは、立入り後その旨を賃借人に通知しなければならない。
連帯保証
賃借人が、無資力となったり、行方をくらませたりして賃料不払いに陥った場合、何の保証もしていないと、賃貸人は、賃料を回収できなくなります。
こういった場合に備えて、賃料支払いなど賃借人の債務について、 連帯保証などの保証規定を設けておくのが一般的 です。
単なる保証ではなく連帯保証とすることが多いのは、以下に掲げる催告の抗弁権や検索の抗弁権をなくすためです。
(催告の抗弁)
第452条
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、 保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる 。 ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。(検索の抗弁)
第453条
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、 保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したとき は、 債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない 。(連帯保証の場合の特則)
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第454条
保証人は、主たる債務者と 連帯して債務を負担したとき は、 前2条の権利を有しない 。
連帯保証人の規定の記載例は、以下のとおりです。
- 記載例
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(連帯保証人)
1 連帯保証人は、賃借人と連帯して、本契約から生じる賃借人の債務を負担する。本契約が更新された場合においても、同様とする。
2 前項の連帯保証人の負担は、頭書及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。
3 連帯保証人の請求があったときは、賃貸人は、連帯保証人に対し、遅滞なく、 賃料及び共益費等の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、賃借人の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。
原状回復
退去時の原状回復については、民法上、明文規定があります。
(賃借人の原状回復義務)
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第621条
賃借人は 、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。) がある場合において、賃貸借が終了したときは、 その損傷を原状に復する義務を負う 。 ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
原状回復の内容及び方法については、別表で詳細に規定することも多い です。
その場合、契約書では、以下のように定めることが考えられます。
- 記載例
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(原状回復)
1 賃借人は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年変化を除き、本物件を原状回復しなければならない。 ただし、賃借人の責めに帰することができない事由により生じたものについては、原状回復を要しない。
2 賃貸人及び賃借人は、本物件の明渡し時において、契約時に特約を定めた場合は当該特約を含め、 別表の規定に基づき賃借人が行う原状回復の内容及び方法について協議する。
明渡し
契約終了時の賃借物件の明渡しについては、 「賃借人は、明渡し日を事前に賃貸人に通知しなければならない」と定める ことで、退去の立会いをスムーズに行えます。
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(明渡し)
1 賃借人は、本契約が終了する日までに(本契約が債務不履行に基づき解除された場合にあっては、直ちに)、本物件を明け渡さなければならない。
2 賃借人は、前項の明渡しをするときには、明渡し日を事前に賃貸人に通知しなければならない。
賃貸借期間
賃貸借期間については、以下のように、頭書で始期と終期を記載するのが一般的です。
契約の更新については、借地借家法で法定更新が強行法規として定められています。
(建物賃貸借契約の更新等)
第26条
1 建物の賃貸借について 期間の定めがある場合 において、当事者が 期間の満了の1年前から6月前までの間に 相手方に対して 更新をしない旨の通知 又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知 をしなかったとき は、 従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす 。 ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、 建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、 建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。(強行規定)
借地借家法- e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
第30条
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
もっとも、法定更新がされた場合、賃貸借契約は期間の定めのないものになってしまいます。
そのため、実務上は、契約において自動更新を定めることが考えられます。
- 記載例
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(賃貸借期間)
1 契約期間は、頭書に記載するとおりとする。
2 前項の賃貸借期間は、賃貸人又は賃借人が、期間満了6か月前までに相手方に対して書面により 更新しない旨の通知をした場合を除き、同一条件にて更新され、以後、同様とする。
損害保険
賃借物件に損害が生じた場合、損害額が莫大となり、当事者の資産だけでは補填しきれなくなる可能性があります。
そこで、 損害賠償を担保するための損害保険加入義務を定める ことがあります。
- 記載例
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(損害保険の加入) 賃借人は、賃借人が建物に搬入又は設置した商品、什器備品、造作設備等について、火災、盗難その他事故により生ずる損害を填補するため、その費用と責任において損害保険に付保し、本契約期間継続して加入する。
反社会的勢力の排除
平成19年6月に政府が打ち出した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」は、 企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本理念や具体的な対応を取りまとめており、 その対応策の一つとして、契約書への暴力団排除条項の導入が示されています。
これを受けて、賃貸借契約書でも、以下のような 反社会的勢力の排除条項を定めるのが一般的 です。
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(反社会的勢力の排除)
1 賃貸人及び賃借人は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
(1) 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
(2) 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
(3) 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
(4) 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2 賃借人は、賃貸人の承諾の有無にかかわらず、本物件の全部又は一部につき、反社会的勢力に賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。
中途解約
前述のように、期間の定めのある建物賃貸借契約は、中途解約に関する特約があればその定めに従いますが、 特約がない場合には、原則として、貸主・借主いずれも中途解約することができません。
そこで、 中途解約の余地を残すため に、以下のように定めるのが望ましいです。
- 記載例
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(賃借人からの解約)
1 賃借人は、賃貸人に対して少なくとも 30 日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、賃借人は、解約申入れの日から 30 日分の賃料(本契約の解約後の賃料相当額を含む。) を賃貸人に支払うことにより、解約申入れの日から起算して 30 日を経過する日までの間、本契約を解約することができる。
なお、賃貸人からの解約については、正当の事由があると認められる場合でなければすることができないと解されています。
土地賃貸借契約とは
建物賃貸借契約と並んで、「土地賃貸借契約(借地契約)」も不動産取引における重要な契約の一つです。特に、オフィスビル・マンション・戸建住宅などの建設を目的とした、建物所有目的の土地賃貸借契約が盛んに締結されています。
建物所有目的の土地賃貸借契約は、地主(賃貸人)と借地権者(賃借人)の間で締結されます。借地権者の権利は、借地借家法という法律によって強力に保護されているのが大きな特徴です。
具体的には、借地権者に以下の保護が与えられています。
- 存続期間
→借地権(賃借権)の存続期間は、30年以上としなければなりません(借地借家法3条)。30年より短い存続期間の定めは無効であり、自動的に30年に延長されます。 - 地主による更新拒絶の制限
→地主が建物所有目的の土地賃貸借契約の更新を拒絶するには、地主自身が土地の使用を必要とする事情などの正当事由が必要です(借地借家法6条)。 - 借地権の対抗力
→借地権者が土地の賃借権登記を備えていなくても、土地上の建物について所有権登記を備えている場合には、借地権の存在を第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。 - 建物買取請求権
期間満了によって土地賃貸借契約が終了する場合、借地権者は地主に対して、建物と土地の付属物を時価で買い取るよう請求できます(借地借家法13条)。
地主・借地権者のどちらの立場であっても、土地賃貸借契約を締結する際には、上記の借地借家法の規制を念頭に置いておかなければなりません。
なお、以下の事項を書面で定めた存続期間を50年以上とした土地賃貸借契約(定期借地契約)については、上記の借地借家法の規制が適用されない点に注意が必要です(借地借家法22条)。
- 定期借地権の要件
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✅ 契約の更新がないこと
✅ 建物の築造による存続期間の延長がないこと
✅ 建物の買取請求をしないこと
重要事項説明書とは
宅地建物取引業者が建物賃貸借契約の賃貸人となる場合、又は建物賃貸借契約の締結を媒介する場合には、賃借人に対して「重要事項説明書」の交付が必要になります(宅地建物取引業法35条)。
重要事項説明書とは、建物賃貸借契約に関する重要な事項を記載した説明文書です。賃借人が物件・契約の内容をよく理解できるように、宅地建物取引業者に対して交付が義務付けられています。
建物賃貸借契約の重要事項説明書に記載すべき事項は、以下のとおりです。
- 建物賃貸借契約の重要事項説明書の記載事項
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✅建物の上に存する登記された権利の種類・内容、登記名義人又は所有者の氏名(名称)
✅政令で定める法令上の制限に関する事項(都市計画法・建築基準法など)
✅飲用水・電気・ガスの供給、排水のための施設の整備の状況
✅(建築工事完了前の場合)工事完了時の形状・構造など
✅(区分所有建物の場合)一棟の建物の敷地に関する権利の種類・内容、共用部分に関する規約の定めなど
✅建物状況調査の実施の有無・(実施している場合は)結果の概要、設計図書・点検記録等の保存状況
✅賃料以外に授受される金銭の額・授受の目的
✅契約の解除に関する事項
✅損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
✅契約不適合責任の履行に関する措置の有無・(措置を講ずる場合は)措置の概要
✅その他国土交通省令で定める事項
賃貸借契約に必要な書類の例
賃貸借契約を締結する際には、契約の定めに従って一定の書類を準備する必要があります。賃貸借契約に必要な書類の例は、以下のとおりです。
- 賃貸人側の必要書類
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✅ 物件に関する資料
→不動産全部事項証明書(登記簿謄本)や図面などが必要になります。また、宅地建物取引業者が賃貸借契約の締結を仲介する場合や、自ら賃貸人となる場合で、宅地建物取引業者以外の者が賃借人となる場合には、重要事項説明書の作成・交付も必要です。✅ 印鑑証明書、会社の登記簿謄本、(個人の場合)住民票など
→企業が賃借人となる賃貸借契約を締結する際には、賃借人側から提出を求められることがあります。など
- 賃借人側の必要書類
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✅ 収入を証明する資料
→賃料の支払能力を示すために、源泉徴収票・納税証明書・確定申告書などを提出します。✅ 印鑑証明書、住民票など
→本人確認等のために提出します。✅ 保証に関する書類
→賃料等に関する保証契約を締結する場合には、保証人の承諾書などを提出します。など
賃貸借契約の必要書類は、当事者間の取り決めに応じて異なりますので、相手方と協議・確認を行ったうえで準備を進めましょう。
建物賃貸借契約書のひな形
建物賃貸借契約のひな形については、以下のひな形が参考になります。
まとめ
建物賃貸借契約の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!