【大阪地判令和5年12月7日】
職場の休憩室で長時間無断録音した会話の録音が
違法収集証拠として排除された事例
- この記事のまとめ
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大阪地裁令和5年12月7日判決では、トラック運転手同士の間で、名誉毀損によるトラブルが問題となった事案が問題になりました。
原告らは、被告らの行為によって名誉感情が傷つけられ、社会的評価をおとしめられたと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起しました。
これに対して被告らは、原告らの行為による人格権・プライバシー権・名誉感情等を主張して損害賠償を求める反訴を提起しました。大阪地裁は、原告ら・被告らの双方の請求を一部認めつつ、原告側が提出した無断録音の証拠能力を否定しました。その理由として大阪地裁は、休憩室の利用者のプライバシー権を著しく侵害する態様で無断録音が行われた点などを挙げています。
相手方の承諾を得ることが難しい場合は、やむを得ず無断録音する例もよく見られますが、その際には違法収集証拠として排除されないかどうか、および不法行為に当たらないかどうかを検討すべきです。
特に自分(自社)が参加していない会話を録音する際には、違法収集証拠として排除されるリスクが高いことを認識しておきましょう。
| 裁判例情報 大阪地裁令和5年12月7日判決(判例タイムズ1527号214頁) |
※この記事は、2026年3月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
事案の概要
トラック運転手同士の間で、名誉毀損によるトラブルが問題となった事案です。
原告であるX1とX2(以下「原告ら」といいます。)は、被告であるY1とY2(以下「被告ら」といいます。)の次に挙げる行為によって名誉感情が傷つけられ、社会的評価をおとしめられたと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起しました。
- 原告らが主張する被告らの不法行為
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① 営業所の休憩室の壁に設置されたホワイトボードに、原告らの名誉を傷つける内容の書き込みをした。
② Y1が営業所の休憩室において、同僚のトラック運転手に対して、次の発言をした。
・X1が会社の指示に反し、普段の運送業務で高速道路を利用してはならないとされている区間についても高速道路を利用しているという内容の発言(=会話1)
・X1に人格障害や高次脳機能障害があるという内容の発言(=会話2)
・X2が労働組合費で書籍を購入し、売却して代金を着服しているという内容の発言(=会話3)③ Y1が職場の同僚Aに対して、「(X1)人間失格」という記載などが含まれる文書(=人間失格文書)を配布した。
これに対して被告らは、原告らの次に挙げる行為によって人格権・プライバシー権・名誉感情等が侵害されたと主張し、損害賠償を請求する反訴を提起しました。
- 被告らが主張する原告らの不法行為
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① 営業所の休憩室内に録音機を常時設置し、被告らの会話を無断で録音して、被告らの人格権を侵害した。
② X1が、営業所の所長に対して「サイコパス(精神病質者)の10の特徴」「いい人のふりしてあなたを攻撃してくる人への対処法」という表題の2つの文書(=サイコパス文書)を交付したうえで、所長および事務職員らに対して、Y1はサイコパスであり他人を攻撃する人物であるなどと吹聴した。
③ X1が、Y1が第三者と不貞行為に及んでいるかのような書面(=怪文書)を作成し、Y1の自宅に数多く送り付けた。その結果、Y1は妻にあらぬ嫌疑をかけられるなど、プライバシー権を侵害されるとともに、名誉感情も侵害された。
④ 無断録音や盗撮等による違法な手段により取得した証拠を用いて、被告らを攻撃する意図で本件訴訟を提起したため、訴訟追行を強制されて弁護士に委任せざるを得なくなった。
判決の要旨
大阪地裁は、原告らおよび被告らの請求について、それぞれ次のとおり判断を行いました。












