【最判令和6年4月19日】
株券発行前の株式譲渡が
当事者間において有効とされた事例
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- この記事のまとめ
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最高裁令和6年4月19日判決の事案では、株券発行会社における株券発行前の株式譲渡の効力と、譲受人による債権者代位権に基づく株券発行請求の可否が争点となりました。
最高裁は、株券発行会社における株券発行前の株式譲渡は、株式が交付されていなくても、当事者間では有効と判示しました。また、譲受人による債権者代位権に基づく株券発行請求を可能とし、それに伴う譲受人に対する株券の交付も有効と判示しました。
本判決は、特に会社法の施行前に設立された株券発行会社において、株式譲渡に関する法律関係の安定に寄与するものと考えられます。ただし、株券発行会社であるにもかかわらず、実際には株券を発行していないのは適切な状態とは言えないので、定款変更等の対応をすることが推奨されます。
※この記事は、2025年7月23日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
事案の概要
株券発行会社における株券発行前の株式譲渡の効力と、譲受人による債権者代位権に基づく株券発行請求の可否が争点となった事案です。
上告人であるXは、株券発行会社であるUE社の株式を計440株取得した人物です。Xが取得したU社株式は、UE社によって発行されて以降、以下の経緯で譲渡が行われました。
① 本件株式1(200株)
平成16年1月
U社がUE社を設立し、本件株式1を引き受けた。
平成24年4月
U社がAに対して本件株式1を譲渡した。
平成29年10月
Aが債権者代位権に基づき、UE社に対して本件株式1に係る株券(=本件株券1)の発行を請求し、AはUE社から本件株券1の交付を受けた。
令和2年3月
AがXに対して本件株式1を譲渡し、本件株券1を交付した。
② 本件株式2(240株)
平成18年5月
被上告人であるY1が、本件株式2を含むUE社の株式310株を引き受けた。
平成18年8月頃
Y1がBに対して本件株式2を譲渡した。
平成25年7月
Bが本件株式2をCに譲渡した。
平成29年10月
Cが債権者代位権に基づき、UE社に対して本件株式2に係る株券(=本件株券2)の発行を請求し、CはUE社から本件株券2の交付を受けた。
令和2年7月
CがXに対して本件株式2を譲渡し、本件株券2を交付した。
Xが譲渡を受けた株式について株券が発行されたのは、上記のとおり、いずれも平成29年10月です。Xが株式を取得する前の譲渡(本件株式1:U社→A、本件株式2:Y1→B→C)の時点では、まだ株券が発行されていませんでした。
Xは、U社とY1を被告として、自らが各UE社株式を有する株主である旨の確認を求める訴訟を提起しました。
しかし原審の東京高裁は、株券発行前に行われた各譲渡は無効であり、Xは無権利者から株式を譲り受けたに過ぎないとして、Xの請求を棄却しました。
その根拠として東京高裁は、以下の2点を挙げています。
(a) 会社法128条1項(下記)により、株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ当事者間においても効力を生じない。
(b) 株券が効力を生じるのは株主に対して交付された場合であるところ、本件株券1・本件株券2はいずれも、株主(U社・Y1)に対して交付されたものではない。
※平成29年10月の時点で、UE社との関係における本件株券1の株主はU社、本件株券2の株主はY1。
第128条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。
2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。
Xはこの判断を不服として、最高裁に上告しました。












