【広島高判令和6年10月4日】
暴力団排除条項に基づく
生命共済契約の解除が有効とされた事例

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この記事のまとめ

広島高裁令和6年10月4日判決では、保険会社が暴力団排除条項に基づいて生命共済契約を解除し、死亡共済金の支払いを拒絶した事案が問題になりました。
死亡共済金の受取人は、加入者兼被共済者である妻が令和4年6月に死亡した時の前後を通じて、指定暴力団の構成員でした。

広島高裁は、暴力団排除条項に基づく生命共済契約の解除は有効であると判断しました。

暴力団排除条項は平成26年10月に生命共済事業約款へ追記されたところ、受取人は生命共済契約の保障開始日がそれより前(平成17年5月1日)であるため、遡及的適用は認められないと主張しました。
しかし広島高裁は、生命共済契約が1年ごとに更新されていることを指摘し、加入者が死亡した時点では令和4年4月1日に更新された契約が存続しているため、暴力団排除条項を適用することに問題はないと判断しました。

企業が反社会的勢力を排除する目的で、契約や利用規約などに暴力団排除条項を定める動きは、特に2010年代以降(平成22年ごろ~)に広まりました。それ以前から存続している契約等に暴力団排除条項を適用できるか否かについては、本件の判断が参考になると思われます。
なお、期間の定めがない契約等が暴力団排除条項の追記よりも前から存続している場合については、本判決の射程外なのでご注意ください。

裁判例情報
広島高裁令和6年10月4日判決(判例タイムズ1528号59頁)

※この記事は、2026年2月26日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

事案の概要

保険会社であるY社が暴力団排除条項に基づいて生命共済契約を解除し、Xに対する死亡共済金の支払いを拒絶した事案です。

Xの妻であるWは、自らを加入者兼被共済者、Xを受取人として、Y社との間で保障開始日を平成17年5月1日とする生命共済契約を締結しました。
契約内容は、Wが死亡した際にY社がXに対して死亡共済金を支払うというものです。保障期間(共済期間)は、初年度は平成17年5月1日から3月31日までで、その後は1年ごとの更新(4月1日~翌年3月31日)とされました。

Wとの間で生命共済契約を締結した後の平成26年10月に、Y社は生命共済事業約款の生命共済事業規約(=約款)に暴力団排除条項を追記しました。
暴力団排除条項には、共済契約者・被共済者・共済金受取人のいずれかが暴力団員などの反社会的勢力である場合には、Y社は共済契約の更新拒絶や解除ができ、かつ共済金の支払いも拒否できる旨などが定められています。

Wは令和4年6月に死亡したところ、受取人であるXはその前後を通じて、指定暴力団の構成員でした。
XはY社に対して死亡共済金の支払いを請求しましたが、Xが暴力団員であることを認識したY社は、暴力団排除条項に基づいて生命共済契約を解除し、死亡共済金の支払いを拒絶しました。

Xは、広島地裁尾道支部に対して、死亡共済金の支払いを命ずる判決を求める訴訟を提起しました。Xの主張の要点は、次のとおりです。

① Y社が約款に暴力団排除条項を定めたのは平成26年10月であるところ、Wの生命共済契約の保障期間は平成17年5月1日から開始している。暴力団排除条項が設けられる以前から継続している生命共済契約に対して、同条項のような不利益条項を遡及的に適用することは許されない

受取人であるXが暴力団員であるというだけでは、保険法57条3号の事由(=保険者の保険契約者、被保険者または保険金受取人に対する信頼を損ない、当該生命保険契約の存続を困難とする重大な事由)に該当しない。約款に定められた暴力団排除条項は、受取人に不利な特約として保険法65条2号に基づき無効である

③ 相当長期間継続される生命共済契約につき、Y社の一方的な条件契約による解除が許されるとすれば、契約者側は非常に大きな不利益を受ける。WやXは、Y社に対して損害を与えたり、不正請求をしたりしたことはない。他方でY社は、これまで契約者側から掛金を受け取り続けており、共済金が支払われないとすれば掛金の取り得となる。
これらの事情を考慮すると、暴力団排除条項に基づいて生命共済契約を解除し、死亡共済金の支払いを拒否することは、信義則違反または権利濫用によって無効である

広島地裁尾道支部は、暴力団排除条項に基づく生命共済契約の解除は有効であり、Y社は死亡共済金の支払義務を負わないと判断して、Xの請求を棄却しました。Xはこれを不服として、広島高裁に控訴を提起しました。

判決の要旨

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