反社条項(暴排条項)とは何?
契約書に定めるべき条項の例文(ひな形)・
理由を解説!

この記事のまとめ

反社条項(反社会的勢力の排除に関する条項)とは、契約を締結する際、反社会的勢力ではないことや、暴力的な要求行為等をしないことなどを、相互に示し保証する条項です。

暴排条項(暴力団排除条項)」とも呼ばれます。

コンプライアンスや企業の社会的責任などの観点から、企業が締結する契約には反社条項を盛り込むことが推奨されます。

相手方が反社条項に違反した場合、直ちに契約を解除できるようにして、反社会的勢力とのつながりの一切を断ち切りましょう。

今回は反社条項(暴排条項)について、契約書に定めるべき理由・モデル条項例(ひな形)などを解説します。

ヒー

現代だと、取引先が反社というのはかなりレアな気がしますが、反社条項って重要でしょうか。

ムートン

とても重要ですよ。反社条項を盛り込む以外にも「反社チェック」を行い、反社会的勢力とのつながりを徹底的に遮断していくことが企業には求められているんです。

※この記事は、2022年8月10日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

反社条項(暴排条項)とは

「反社条項(反社会的勢力の排除に関する条項)」とは、契約を締結する際、反社会的勢力ではないことや、暴力的な要求行為等をしないことなどを、相互に示し保証する条項です。「暴排条項(暴力団排除条項)」とも呼ばれます。

<反社条項(暴排条項)の例>

上記イメージのように、通常は、契約書の中に一つの条項を設けて記載します。

しかし、金額の大きい契約や継続的な取引を想定した契約などでは、より詳細に反社条項の内容を定める観点から、別途「反社会的勢力の排除に関する覚書」として締結する場合もあります。

「反社会的勢力の排除に関する覚書」の作成に困っている方は、無料配布中の以下のひな形をご活用ください。

反社会的勢力とは

「反社会的勢力」とは、

暴力
威力(言葉や行動などで圧力をかけ、人の意思を制圧するに足る力)
詐欺的手法
を駆使して、経済的利益を追求する集団・個人

を意味します。(法務省「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」

ヒー

「反社会的勢力」と「暴力団」って、どう違うんですか?

ムートン

「反社会的勢力」の一例として、「暴力団」があるという位置づけですね。かつては、暴力団が不法行為をするというのが主流でしたが、近年は暴力団に限らず、様々な組織が不法行為をするようになってきたので、「反社会的勢力」という言葉が使用されるようになってきました。

反社会的勢力の典型例は、以下のいずれかに該当する者です。

反社会的勢力に該当する者の例

✅  暴力団
✅  暴力団員
✅  暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者
✅  暴力団準構成員
→暴力団構成員ではないが、暴力団と関係を持ち、その威力を背景に暴力的不法行為などを行うおそれがある者

✅  暴力団と関係のある企業
→暴力団員が実質的に経営に関与している企業、資金提供などを通じて暴力団の維持・運営に協力・関与する企業など

✅  総会屋
→株主総会において株主の権利を濫用して、会社から不当な利益を得ようとする者

✅  社会運動等標ぼうゴロ
→社会運動や政治活動を掲げつつ、不正な利益を求めて暴力的不法行為などを行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者

✅  特殊知能暴力集団
→暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的なつながりを有し、構造的な不正の中核となっている集団(法律などの専門知識を悪用するのが特徴)

など

また、上記のような「属性」で判断する以外にも、「行為」に着眼して反社会的勢力と判断すべき場合があります。具体的には、以下の行為をする者も反社会的勢力に該当します。

反社会的行為の例

✅  暴力的な要求行為
✅  法的な責任を超えて、不当な要求をする行為
✅  取引に関して、脅迫的な言動や暴力を用いる行為
✅  風説の流布(虚偽の情報を流す)、偽計(人を欺くこと)などを用いて、相手の信用を損なわせたり、業務の妨害をしたりする行為
など

ムートン

まとめると、「反社会的勢力」に当たるのは、以下の各要件の少なくともどちらかを満たす者です。

反社会的勢力の要件

✅  属性要件|暴力団・総会屋などの反社会的な「属性」に該当すること
✅  行為要件|暴力的な要求行為などの反社会的な「行為」を行っていること

反社条項と暴力団排除条例の関係

暴力団排除条例(暴排条例)とは、各都道府県が、暴力団を

✅ 自治体の事務・事業
✅ 住民・事業者の経済取引や事業活動

から排除するためのルールを定めた条例です。2022年7月29日現在、47都道府県全てで制定・施行されています。

暴排条例では、事業者に対して反社会的勢力の排除に関する一定の対応を義務付けている(又は努力義務としている)ケースがあります。暴排条例によって事業者に求められる対応の中には、契約を締結する際に反社条項を定めることという内容が含まれている場合が多いです。

したがって、契約に反社条項を規定することは、暴排条例を遵守した取組を徹底することにもつながります。

東京都の暴排条例における事業者の努力義務

例えば「東京都暴力団排除条例」では、①契約締結前に反社チェックを行うこと、②契約中に反社条項を定めることが事業者の努力義務とされています。

(事業者の契約時における措置)

第18条  事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。

2  事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。

一  当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。

二  工事における事業に係る契約の相手方と下請負人との契約等当該事業に係る契約に関連する契約(以下この条において「関連契約」という。)の当事者又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約の相手方に対し、当該関連契約の解除その他の必要な措置を講ずるよう求めることができること。

三  前号の規定により必要な措置を講ずるよう求めたにもかかわらず、当該事業に係る契約の相手方が正当な理由なくこれを拒否した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約を解除することができること。

「東京都暴力団排除条例」– 警視庁

契約書に反社条項(暴排条項)を定めるべき理由

事業者が契約書に反社条項を定めるべき理由としては、主に以下の各点が挙げられます。

コンプライアンスを徹底するため
反社会的勢力への資金提供を拒否し、社会的責任を果たすため
反社会的勢力からの不当な要求を回避するため
自社が反社条項に抵触することを防ぐため

コンプライアンスを徹底するため

前述のとおり、各都道府県の暴排条例では、事業者に反社チェックや反社条項の規定を求めています。したがって、契約に反社条項を定めることは、すなわち自社のコンプライアンスを強化することに繋がります。

事業者にとって、反社会的勢力とつながりを持っている状態はトラブルのリスクが高く、社会的なレピュテーションの観点からも望ましくありません。したがって、反社条項によりコンプライアンスを強化することは、リスクマネジメントの観点からも重要と言えます。

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反社会的勢力への協力を拒否し、社会的責任を果たすため

反社会的勢力と取引を行った場合、取引によって提供される商品・サービス・金銭等は、反社会的勢力の活動に利用されてしまいます。

反社会的勢力の活動を助長しかねない取引を拒否することは、事業者のCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)の一つとも言うべきでしょう。CSRの重要性が注目されている昨今では、反社条項を定めることの重要性も高まっています。

反社会的勢力からの不当要求を回避するため

反社会的勢力は、暴行・強迫・詐欺的手法などを用いて、取引相手の弱みに付け込んで不当に利益を得ようとする傾向にあります。反社会的勢力からの不当な要求を回避するためには、契約に反社条項を規定して、取引自体を一切拒否することが必要不可欠です。

反社会的勢力による不当要求の手口

法務省が公表している「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説」では、反社会的勢力による不当要求の手口として、「接近型」「攻撃型」の2種類があることを指摘しています

接近型とは

一方的なお願い、勧誘という形で近づいてきて不当要求を行うパターンです。反社会的勢力に攻撃の口実を与えないように、理由を付けずにきっぱり断ることが適切とされています。

(例)
・機関誌の購読要求
・物品の購入要求
・寄付金や賛助金の要求
・下請契約の要求
など

攻撃型とは

事業者側のミスや不祥事に付け込んで不当要求を行うパターンです。速やかに事実関係を調査した上で、ミスや不祥事が真実であれば適切な開示や再発防止策の徹底等で対応しつつ、不当要求自体はきっぱり拒絶しなければなりません。

(例)
・公開質問状を公表した上で、裏で金銭を要求する
・街宣車よる街宣活動をしながら、裏で金銭を要求する
・商品の欠陥や従業員の対応不備などを理由にクレームを付けて、金銭を要求する
など

自社が反社条項に抵触することを防ぐため

後述の「反社条項の内容・モデル条項例(ひな形)」でも紹介しますが、反社会的勢力と密接な関連性を有していると認められれば、自社が反社条項に違反することになってしまいます。

最近では、事業者が締結する取引契約のほとんどに反社条項が規定されています。もし反社会的勢力とのつながりがあることが世間に知れ渡ってしまえば、取引先から一斉に契約を解除され、経営破綻に追い込まれてしまうでしょう。

このような事態を防ぐためには、締結する全ての契約に反社条項を定めて、反社会的勢力との取引を一切拒否することが大切です。

反社条項の例文(ひな形)とレビューポイント

反社条項の中に定めるべき内容について、条項の例文(ひな形)を紹介します。自社の反社会的勢力の排除に関する方針に合わせて、適宜アレンジしてご活用ください。

反社会的勢力の排除に関する覚書の作成を担当している方は、無料配布中の「ひな形」をぜひご活用ください。

反社会的勢力の定義/反社会的勢力に該当しないことの表明・確約

反社会的勢力に該当しないことの表明・確約の条項例

1. 本契約の当事者は、それぞれ相手方に対し、自らが、本契約の締結日において、次の各号に掲げる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
(1)暴力団
(2)暴力団員
(3)暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者
(4)暴力団準構成員
(5)暴力団関係企業
(6)総会屋
(7)社会運動等標ぼうゴロ
(8)特殊知能暴力集団
(9)その他前各号に準ずる者

まずは、反社会的勢力に当たる者の定義を明確化するため、典型的な「属性」を列挙する必要があります。その上で、現在から将来にかけて、これらのいずれにも該当しないことを相互に表明・確約する旨を定めておきましょう。

なお、契約当事者が法人の場合には、表明・確約の範囲を役員などにまで拡大することも考えられます。

(例) 「本契約の当事者は、それぞれ相手方に対し、自ら及び自らの役員が…」

反社会的勢力と密接な関係性を有しないことの表明・確約

反社会的勢力と密接な関連性を有しないことの表明・確約の条項例

2. 本契約の当事者は、それぞれ相手方に対し、自らが、本契約の締結日において、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
(1)反社会的勢力によって経営を支配されていること
(2)反社会的勢力が経営に実質的に関与していること
(3)自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していること
(4)反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていること
(5)自らの役員又は経営に実質的に関与している者が、反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること

相手方自身が反社会的勢力に該当しなくても、反社会的勢力と密接な関係を有している場合には、直ちに取引を中止すべきです。

そのため、現在から将来にかけて、反社会的勢力と密接な関係を持たないことを相互に表明・確約する旨を定めておきましょう。

暴力的な要求行為等をしないことの確約

暴力的な要求行為等をしないことの確約の条項例

3. 本契約の当事者は、それぞれ相手方に対し、自ら又は第三者を利用して、次の各号に該当する行為を行わないことを確約する。
(1)暴力的な要求行為
(2)法的な責任を超えた不当な要求行為
(3)取引に関して脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
(4)風説を流布し、偽計又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為
(5)その他前各号に準ずる行為

反社会的勢力の排除は、属性のみならず「行為」にも注目して徹底的に行う必要があります。

反社会的行為をする相手方との取引は、直ちに中止すべきです。そのため、典型的な反社会的行為を列挙した上で、将来にわたって反社会的行為をしない旨を規定しておきましょう。

違反時の契約解除

違反時の契約解除の条項例

4. 本契約の当事者は、相手方が本条の表明に関して虚偽の申告をし、又は本条の確約に違反したことが判明した場合には、催告を要することなく直ちに本契約を解除できるものとする。

相手方が表明・確約に違反した場合、直ちに契約を解除できるようにしておくことが、反社条項の中でもっとも重要なポイントです。事前予告をせず解除できる旨(無催告解除)についても、念のため明記しておきましょう。

違反時の損害賠償(違約金)

違反時の損害賠償の条項例

<違約金を定めない場合>
5. 前項に基づく契約の解除が行われた場合、本条の表明に関して虚偽の申告をし、又は本条の確約に違反した当事者(以下「違反当事者」という。)は、解除を行った相手方(以下「解除当事者」という。)に対して損害賠償を請求できないものとする。
6. 第4項に基づく契約の解除によって、解除当事者が損害を被った場合には、違反当事者は解除当事者に対してこれを賠償する責を負うものとする。

<違約金を定める場合>
5. 同上
6. 第4項に基づく契約の解除が行われた場合、違反当事者は解除当事者に対して、違約金として○万円を支払うものとする。なお本項の規定は、解除当事者の違反当事者に対する別途の損害賠償請求等を妨げない。

反社条項違反を理由に契約が解除された場合に、違反した側からの損害賠償請求を禁止する一方で、解除を行った側からの損害賠償請求は可能とする旨を定めます。

なお、反社条項違反の違約金を定めることも考えられますが、その場合には、違約金とは別途の損害賠償請求を認める旨を明記しておきましょう。

反社条項(暴排条項)のまとめ

反社条項(暴排条項)の記事は以上です。最新の記事に関する情報は、契約ウォッチのメルマガで配信しています。ぜひ、メルマガにご登録ください!

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参考文献

法務省ウェブサイト「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」

一般財団法人地方自治研究機構ウェブサイト「暴力団排除条例」