【最判令和8年2月20日】
死者に関する情報が遺族本人の
保有個人情報に当たらないとされた事例
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- この記事のまとめ
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最高裁令和8年2月20日判決では、刑務所に収容されていた女性受刑者Aが同室者から受けていたいじめにつき、Aの死亡後にその子であるXが、調査記録の開示を求めた事案が問題になりました。
最高裁は、すでに死亡しているAに関する情報は、本件の事実関係の下では開示請求の対象に含まれないとして、原審の結論を維持してXの上告を棄却しました。
その理由として最高裁は、Xはいじめに関するAの損害賠償請求権が発生している可能性を主張しているにとどまり、損害賠償請求権を有しているとはいえないので、Xを本人とする保有個人情報に当たらないことなどを挙げています。本件における最高裁の判断はあくまでも一つの事例に対して示されたものに過ぎず、死者に関する情報全般に当てはまるものではない点に注意を要します。個人情報の開示請求を受けた事業者は、本判決を一つの参考事例としつつ、個別具体的な検討を慎重に行うことが求められます。
※この記事は、2026年9月28日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- ・個人情報保護法…個人情報の保護に関する法律
目次
事案の概要
刑務所に収容されていた女性受刑者Aが同室者から受けていたいじめにつき、Aの死亡後にその子であるXが、調査記録の開示を求めた事案です。
Aは平成30年5月に刑務所に収容され、平成31年4月に刑の執行停止により釈放されましたが、令和元年12月に死亡しました。
Aは収容中、Xとの面会の際に、同室者からいじめられている旨を述べていました。Xは令和2年8月、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(当時。以下「旧法」という。なお、旧法は令和4年4月に廃止され、個人情報保護法に一本化)12条1項に基づき、刑務所が作成したいじめに関する調査記録(以下「本件調査記録」という)に記載されている情報(以下「本件情報」という)の開示を請求しました。
(定義)
第2条 略
2 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの
3~11 略(開示請求権)
第12条 何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる。
2 略
処分行政庁(近畿矯正管区長)は、Aが死亡しているため本件情報は生存する個人に関する情報ではなく、X自身を本人とする保有個人情報にも当たらないとして、本件情報の全部を開示しない決定をしました。Xは、裁判所に不開示決定処分の取消しを求める訴訟を提起しました。
原審の大阪高裁は、いじめに関するAの損害賠償請求権を相続し得るXにとって、本件調査記録はその請求権の存否を判断するための最も重要な証拠の一つであるから、本件情報はXを本人とする保有個人情報に当たるとしました。
しかし、刑の執行に係る保有個人情報が開示されれば、生死を問わず受刑者のプライバシー権や名誉権が著しく侵害されるおそれがあることなどから、本件情報は旧法45条1項により開示請求の対象外となるとして、Xの取消請求を棄却しました。
(適用除外等)
第45条 第4章の規定は、刑事事件若しくは少年の保護事件に係る裁判、検察官、検察事務官若しくは司法警察職員が行う処分、刑若しくは保護処分の執行、更生緊急保護又は恩赦に係る保有個人情報(当該裁判、処分若しくは執行を受けた者、更生緊急保護の申出をした者又は恩赦の上申があった者に係るものに限る。)については、適用しない。
2 略
Xは大阪高裁の判決を不服として、最高裁に上告しました。












