改訂コーポレートガバナンス・コード
(2021年6月11日施行)のポイントを解説!

この記事のまとめ

企業を巡る変化が加速する中、「攻めのガバナンス」や「持続的成長、中長期的な企業価値の向上」の実現に向け、企業がガバナンス改革を進めることが急務となっています。そこで、この課題を解決するため、コーポレートガバナンス・コードが改正されました。

この記事では、改訂コーポレートガバナンス・コードについて、以下の4つのポイントを解説します。

ポイント1
取締役会の機能発揮

✅ポイント2
企業の中核人材における多様性の確保

✅ポイント3
サステナビリティを巡る課題への取組み

✅ポイント4
その他の主な課題

具体的なコーポレートガバナンス・コードの改訂前からの変更点は、株式会社東京証券取引所が公表しているこちらにてご確認ください。

ヒー

先生、コーポレートガバナンス・コードが改訂されたようですが、実務に影響はあるのでしょうか?

ムートン

もちろん、ありますよ。東京証券取引所の新市場区分の導入に当たり、今回の改訂がなされています。プライム市場への上場を希望する企業は、これまでと比較して、より高度なガバナンスの発揮が期待できる人材育成体制・経営体制の構築などが、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の枠組みの中で要求されるようになります。

※この記事では、略称を次のように記載しています。

  • 上場規程…有価証券上場規程(東京証券取引所)

(※この記事は、2021年8月12日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)

2021年の改訂コーポレートガバナンス・コードとは?

コーポレートガバナンス・コードとは

ヒー

そもそも、コーポレートガバナンス・コードとは何ですか?

ムートン

株式会社東京証券取引所が公表している、「コーポレートガバナンス・コード」では、以下のように、説明されています。

コーポレートガバナンス・コードについて
本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。
本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。

株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)」

コーポレートガバナンス・コードには、5つの基本原則があります。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則

①株主の権利・平等性の確保
②株主以外のステークホルダーとの適切な協働
③適切な情報開示と透明性の確保
④取締役会等の責務
⑤株主との対話

ヒー

上場企業が、コーポレートガバナンス・コードに従わなかった場合、どのような処罰をうけるのでしょうか?

ムートン

コーポレートガバナンス・コードに従わなかったからといって、必ずしも処罰を受けるわけではありません。

コーポレートガバナンス・コードは、法令とは異なり法的拘束力を有する規範ではなく、その実施に当たっては、いわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用しています。

すなわち、コーポレートガバナンス・コードの各原則(基本原則・原則・補充原則)の中に、自らの個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを「実施しない理由」を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことも想定しています。

したがって、コーポレートガバナンス・コードに従わないことをもって、直ちに、何らかの処罰を受けることはありません。

もっとも、コーポレートガバナンス・コードにおいて示される原則を実施しない場合、その理由が十分に示されなければ、「コンプライ・オア・エクスプレイン」について定めた、上場規程436条の3柱書に違反することになります。

この場合、上場規程436条の3柱書に違反した旨が公表されるという処罰を受ける可能性があります(上場規程508条1項2号)。

有価証券上場規程(東京証券取引所)
(コーポレートガバナンス・コードを実施するか、実施しない場合の理由の説明)
第436条の3
上場内国株券の発行者は、別添「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を第419条に規定する報告書において説明するものとする。この場合において、「実施するか、実施しない場合にはその理由を説明する」ことが必要となる各原則の範囲については、次の各号に掲げる上場会社の区分に従い、当該各号に定めるところによる。
(1)本則市場及びJASDAQの上場会社
基本原則・原則・補充原則
(2)マザーズの上場会社
 基本原則
(公表措置)
第508条
1 当取引所は、次の各号に掲げる場合であって、当取引所が必要と認めるときは、その旨を公表することができる。
(1)~(1)の3   (略)
(2) 上場会社が第4章第4節第1款の規定に違反したと当取引所が認める場合
(3) (略)
2 第435条から第439条までの規定のいずれかに違反した場合又は前項第3号に該当した場合は、上場会社は、直ちに当取引所に報告するものとする。

日本取引所グループ「有価証券上場規程(東京証券取引所)」

改訂の目的

今回の改訂コーポレートガバナンス・コードは、金融庁及び東京証券取引所が事務局をつとめる「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」からの提言を踏まえ、当該提言に沿って改正を行うものです。

コーポレートガバナンス・コードと併せて、「投資家と企業の対話ガイドライン」も改訂されています。

スチュワードシップ・コードとは?

本コードにおいて、「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味する。
本コードは、機関投資家が、顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ、「責任ある機関投資家」として当該スチュワードシップ責任を果たすに当たり有用と考えられている諸原則を定めるものである。本コードに沿って、機関投資家が適切にスチュワードシップ責任を果たすことは、経済全体の成長にもつながるものである。

引用元│金融庁「『責任ある機関投資家』の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫」

「投資家と企業の対話ガイドライン」とは?

本ガイドラインは、コーポレートガバナンスを巡る現在の課題を踏まえ、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードが求める持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた機関投資家と企業の対話において、重点的に議論することが期待される事項を取りまとめたものである。機関投資家と企業との間で、これらの事項について建設的な対話が行われることを通じ、企業が、自社の経営理念に基づき、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現し、ひいては経済全体の成長と国民の安定的な資産形成に寄与することが期待される。
本ガイドラインは、両コードの附属文書として位置付けられるものである。このため、本ガイドラインは、その内容自体について、「コンプライ・オア・エクスプレイン」を求めるものではないが、両コードの実効的な「コンプライ・オア・エクスプレイン」を促すことを意図している。企業がコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施する場合(各原則が求める開示を行う場合を含む)や、実施しない理由の説明を行う場合には、本ガイドラインの趣旨を踏まえることが期待される。
なお、コーポレートガバナンスを巡る課題やこうした課題に対処する際の優先順位は、企業の置かれた状況により差異があることから、対話に当たっては、形式的な対応を行うことは適切でなく、個々の企業ごとの事情を踏まえた実効的な対話を行うことが重要である。

引用元│金融庁「投資家と企業の対話ガイドライン」

施行日

東京証券取引所は、コーポレートガバナンス・コードの改訂に係る有価証券上場規程の一部の改正を行いました。

施行日は、次の通りです。

施行日

施行日|2021年6月11日

改訂の概要

コーポレートガバナンス・コードの改訂の主なポイントには、大きく分けて4つのポイントがあります。

改正ポイント(4つ)

ポイント1|取締役会の機能発揮

ポイント2|企業の中核人材における多様性の確保

ポイント3|サステナビリティを巡る課題への取組み

ポイント4|その他の主な課題

改訂のポイント

4つのポイントについて、一つ一つ解説いたします。

ポイント1|取締役会の機能発揮

デジタライゼーションが加速し、企業活動と社会の持続可能性の両立を求める声が急速に高まる中で、企業が今までの経営人材だけでこうしたコロナ後の経営課題を先取りすることは容易でないという観点から、より充実した取締役会の機能発揮が求められています。

以上の観点から、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の4点が要求されています。

市場区分の見直しについて、現在は、東京証券取引所には、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード・グロース)の4つの市場区分があります。

この市場区分の見直しがなされ、2022年4月4日から、「プライム市場、スタンダード市場、グロース市場」の3つの市場区分へと変更されます。

プライム市場とは?

2022年4月4日より東京証券取引所において適用が開始される新市場区分であり、「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」とすることが期待されています。

新市場区分の概要については、日本取引所グループのこちらのサイトをご確認ください。

事業環境が不連続に変化する中においては、取締役会が経営者による迅速・果断なリスクテイクを支え重要な意思決定を行うとともに、実効性の高い監督を行うことが求められる。

そのためには、「我が国を代表する投資対象として優良な企業が集まる市場」であるプライム市場の上場会社においては、独立社外取締役を3分の1以上選任するとともに、それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える場合には、独立社外取締役の過半数の選任の検討が行われることが重要となる。

加えて、取締役会において中長期的な経営の方向性や事業戦略に照らして必要なスキルが全体として確保されることが重要である。そのためにも、上場会社は、経営戦略上の課題に照らして取締役会が備えるべきスキル等を特定し、その上で、いわゆる「スキル・マトリックス」をはじめ経営環境や事業特性等 に応じた適切な形で社内外の取締役の有するスキル等の組み合わせを開示することが重要である。この際、独立社外取締役には、企業が経営環境の変化を見通し、経営戦略に反映させる上で、より重要な役割を果たすことが求められるため、他社での経営経験を有する者を含めることが肝要となる。これらのスキル等については、取締役会の機能発揮の実現のために、各取締役の職務において実際に活用されることが重要である。

なお、独立社外取締役には、形式的な独立性に留まらず、本来期待される役割を発揮することができる人材が選任されるべきであり、また、独立社外取締役においても、その期待される役割を認識しつつ、役割を発揮していくことが重要となる。

また、経営陣において特に中心的な役割を果たすのはCEOであり、その選解任は、企業にとって最も重要な戦略的意思決定である。こうした点も踏まえ、前回の本コードの改訂においては、指名委員会・報酬委員会など独立した諮問委員会の設置に向けた記載が盛り込まれた。しかし、委員会に期待される機能の発揮のためには、その独立性の確保が重要な要素の一つであるにもかかわらず、現状十分でないのではないかとの指摘や、国際的に比較してもその独立性 を更に高めることが重要であるとの指摘がされている。

そこで、取締役会の機能発揮をより実効的なものとする観点から、プライム市場上場会社においては構成員の過半数を独立社外取締役が占めることを基本とする指名委員会・報酬委員会の設置が重要となる。

加えて、指名委員会や報酬委員会は、CEOのみならず取締役の指名や後継者計画、そして企業戦略と整合的な報酬体系の構築にも関与することが望ましいが、実際にはこれらの委員会にいかなる役割や権限が付与され、いかなる活動が行われているのかが開示されていない場合も多いとの指摘もある。そうした指摘も踏まえれば、指名委員会・報酬委員会の権限・役割等を明確化することが、指名・報酬などに係る取締役会の透明性の向上のために重要となる。

そして、CEOや取締役に関しては、指名時のプロセスが適切に実施されることのみならず、取締役会・各取締役・委員会の実効性を定期的に評価することが重要となる。

また、独立社外取締役を含む取締役が対話を通じて機関投資家の視点を把握・認識することは、資本提供者の目線から経営分析や意見を吸収し、持続的な成長に向けた健全な企業家精神を喚起する上で重要であるが、依然、独立社外取締役との建設的な対話が進まないとの指摘もされているところである。株主との面談の対応者について、株主の希望と面談の主な関心事項に的確に対応できるよう、例えば、筆頭独立社外取締役の設置など、適切に取組みを行うことも重要である。

そのほか、各社ごとのガバナンス体制の実情を踏まえ、必要に応じて独立社外取締役を取締役会議長に選任すること等を通じて、取締役会による経営に対する監督の実効性を確保することも重要である。この点についても、機関投資家との対話等を通じて検討が進められることが期待される。

金融庁「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

ポイント2|企業の中核人材における多様性の確保

ヒー

企業の中核人材における多様性は、どのような観点から求められているのですか?

ムートン

企業がコロナ後の不連続な変化を先導し、新たな成長を実現する上では、取締役会のみならず、経営陣においても多様な視点や価値観の存在が必要であるという観点から求められています。

取締役・経営陣において、多様な視点や価値観の存在を保持するためには、我が国の企業を取り巻く社会経済状況を十分に認識し、取締役会や経営陣を支える管理職層においてジェンダー・国際性・職歴等の多様性を確保し、それらの中途人材が経験を重ねながら、取締役や経営陣に登用される仕組みを構築することが重要です。

そこで、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の2点が要求されています。

我が国企業を取り巻く状況等を十分に認識し、取締役会や経営陣を支える管理職層においてジェンダー・国際性・職歴・年齢等の多様性が確保され、それらの中核人材が経験を重ねながら、取締役や経営陣に登用される仕組みを構築することが極めて重要である。こうした多様性の確保に向けては、取締役会が、主導的にその取組みを促進し監督することが期待される。そこで、多様性の確保を促すためにも、上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況の開示を行うことが重要である。また、多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示することも重要である。

金融庁「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

ポイント3|サステナビリティを巡る課題への取組み

ヒー

サステナビリティを巡る課題への取組みについては、どのような背景から要求されたのですか?

ムートン

「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連サミットで採択され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同機関数が増加するなど、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)が重大な経営課題であるとの意識が高まっているという背景があります。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)とは?

・G20各国の中央銀行総裁および財務大臣からなる金融安定理事会(FBS)の下部組織であり、投資家に適切な投資判断を促すための、効率的な気候関連財務情報開示を企業へ促す民間主導のタスクフォース
・2017年6月に、自主的な情報開示のあり方に関する提言(TCFD最終報告書)を公表
・TCFDへの賛同企業・期間は特に欧米と日本で増加しており、日本では環境省、金融庁、経済産業省、経団連も賛同機関に含まれる

参照元|環境省「【参考資料】気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の概要」

中長期的な企業価値の向上に向けては、リスクとしてのみならず収益機会としてもサステナビリティを巡る課題へ積極的・能動的に対応することの重要性は高まっています。

そして、投資家と企業との間のサステナビリティに関する建設的な対話を促進するためには、サステナビリティに関する開示が行われることが重要といえます。

そこで、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の2点が要求されます。

ポイント4|その他の主な課題

ヒー

「その他の主な課題」としては、どのような改訂がされたのでしょうか?

ムートン

グループガバナンスのあり方やプライム市場の導入に当たっての株主総会の運営方法などについての改訂がされています。

グループガバナンス

株式の所有者である株主は、自己の利益のために、権利を行使することが原則として認められるべきです。

しかし、支配株主が、自己の利益の追求のみを目的として権利を行使した結果、他の株主が、不当に不利益を被るようなことは認められるべきではありません。

支配株主は、会社及び株主共同の利益を尊重しなければならず、他の株主を不公正に取り扱ってはなりません

とりわけ支配株主を有する上場子会社は、より高度な他の株主の保護が要求されます

そこで、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の点が要求されています。

グループガバナンスに関しては、グループ経営の在り方を検討する昨今の動きなどを踏まえると、上場子会社において少数株主を保護するためのガバナンス体制の整備が重要、などの指摘がされた。支配株主は、会社及び株主共同の利益を尊重し、少数株主を不公正に取り扱ってはならないのであって、支配株主を有する上場会社においては、より高い水準の独立性を備えた取締役会構成の実現や、支配株主と少数株主との利益相反が生じ得る取引・行為(例えば、親会社と子会社との間で直接取引を行う場合、親会社と子会社との間で事業譲渡・事業調整を行う場合、親会社が完全子会社化を行う場合等)のうち、重要なものについての独立した特別委員会における審議・検討を通じて、少数株主保護を図ることが求められる。特に、支配株主を有する上場会社においては、独立社外取締役の比率及びその指名の仕組みについて、取締役会として支配株主からの独立性と株主共同の利益の保護を確保するための手立てを講ずることが肝要である。なお、支配株主のみならず、それに準ずる支配力を持つ主要株主(支配的株主)を有する上場会社においても、本改訂案を基にした対応が取られることが望まれる。

金融庁「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

監査に対する信頼性の確保

企業の不正事案を防止するために、監査に対する信頼性を確保することが重要となります。

この観点から、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の点が要求されています。

中長期的な企業価値の向上を実現する上では、その基礎として、監査に対する信頼性の確保が重要である。特に、2019 年4月に公表された「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(4))においては、内部監査部門が、CEO等のみの指揮命令下となっているケースが大半を占め、経営陣幹部による不正事案等が発生した際に独立した機能が十分に発揮されていないのではないかとの指摘がされている。

こうした指摘も踏まえれば、上場会社においては、取締役会・監査等委員会・監査委員会や監査役会に対しても直接報告が行われる仕組みが構築されること等により、内部監査部門と取締役・監査役との連携が図られることが重要である。加えて、内部通報制度の運用の実効性の確保のため、内部通報に係る体制・運用実績について開示・説明する際には、それが分かりやすいものとなっていることも重要である。

「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

内部統制・リスク管理

内部統制リスク管理については、取締役会による内部統制やリスク管理体制の適切な整備が重要となります。

改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の点が要求されています。

内部統制やリスク管理については、取締役会による内部統制やリスク管理体制の適切な整備が求められているところ、その際には、企業価値の向上の観点から企業として引き受けるリスクを取締役会が適切に決定・評価する視点の重要性や、内部統制やリスク管理をガバナンス上の問題としてより意識して取締役会で取り扱うことの重要性を念頭に置いた指摘がされている。加えて、グループ経営をする上場会社においては、グループ会社レベルでの視点に立った取組みが重要であるとの指摘もある。

そこで、取締役会は、グループ全体を含め、適切な内部統制、全社的リスク管理や内部通報に係る体制の構築やその運用状況について監督を行うことが重要となる。また、こうした体制の重要性を鑑みれば、その構築と運用に必要な資源が投入されていることも重要となる。

金融庁「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

株主総会運営方法

プライム市場は、多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場です。

プライム市場の上場企業には、国内全国各地の法人・投資家はもちろん、外国法人・投資家まで投資家になることが想定されます。

そのため、プライム市場の上場会社は、株主総会での意思決定のためのプロセス全体を建設的かつ実質的なものとすべく、株主がその権利を行使することができる適切な環境の整備と、情報提供の充実に取り組むことが求められます。

そこで、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の点が要求されています。

上場会社は、株主総会での意思決定のためのプロセス全体を建設的かつ実質的なものとすべく、株主がその権利を行使することができる適切な環境の整備 と、情報提供の充実に取り組むことが求められる。そのためには、プライム市場上場会社は、必要とされる情報についての英文開示や議決権電子行使プラットフォームの整備を行うことが重要である。なお、株主の利便性に配慮した媒体で株主総会資料の電子的公表を早期に行うことや、決算・監査のための時間的余裕の確保等の観点も鑑みて株主総会関連の日程の設定を行うことについても検討が進められることが望ましい。その際、基準日の変更を検討する上場会社に対しては、これを後押しすることが重要である。加えて、株主総会において相当数の反対票が投じられた会社提案議案について、機関投資家との対話の際に原因分析の結果や対応の検討結果について分かりやすく説明することや、株主総会前に有価証券報告書を開示することも投資家との建設的な対話に資すると考えられる。また、株主の出席・参加機会の確保等の観点からバーチャル方式により株主総会を開催する場合には、株主の利益の確保に配慮し、その運営に当たり透明性・公正性が確保されていることが重要である。

金融庁「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

その他

より不確実性を増している社会において、経営戦略、経営計画の策定・公表について、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、以下の点が要求されています。

コロナ禍により企業を取り巻く環境変化が加速し、不確実性も高まりを見せている中、事業セグメントごとの資本コストも踏まえた事業ポートフォリオの検討を含む経営資源の配分が一層必要となる。

そこで、取締役会(グループ経営をする上場会社においては、グループ本社の取締役会)は、事業ポートフォリオに関する基本的な方針の決定・適時適切な見直しを行うべきであり、これらの方針や見直しの状況を株主の理解が深まるような形で具体的に分かりやすく説明することが求められる。また、グループ経営をする上場会社は、グループ経営に関する考え方・方針について説明する場合も、具体的に分かりやすく行うことが重要である。

金融庁「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

参考文献

株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」

金融庁「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(フォローアップ会議意見書)」

金融庁「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方」

金融庁「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(5))」

金融庁「投資家と企業の対話ガイドライン」