【2024年4月施行予定】改善基準告示とは?
基準の概要・2022年改正のポイントを
分かりやすく解説!

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10分で読める!2024年施行予定の法改正まとめ
この記事のまとめ

改善基準告示」とは、トラック、バスおよびタクシー・ハイヤーのドライバーの労働時間に関する基準で、正式名称は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」といいます。

改善基準告示は、2022(令和4)年に改正され、2024年4月1日から施行されます。
現段階から改正の概要を知っておくことで、適用までに余裕をもって告示の内容に沿った労働環境を整備することができます。

この記事では「改善基準告示」について、主に2022年に行われた改正の概要を基本から分かりやすく解説します。

ヒー

トラックなどの運輸業界には「2024年問題」があると聞きました。関係しているのは、この「改善基準告示」ですか?

ムートン

そうですね、働き方改革でドライバーの長時間労働が是正されるのはよいことですが、実務への影響も大きいため、ルールがどう変わるのか、早めに確認しておきましょう。

※この記事は、2023年4月7日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名等を次のように記載しています。

  • 改善基準告示、告示…自動車運転者の労働時間等の改善のための基準

改善基準告示とは

改善基準告示」は、正式名称を「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」といい、トラック、バスおよびタクシー・ハイヤーのドライバーの労働時間に関する上限などを定める基準です。

改善基準告示の概要

拘束時間

改善基準告示では、始業時刻から終業時刻までの時間を拘束時間といいます。拘束時間には、労働時間のほか、休憩時間も含まれます。

また、労働時間は、以下の2つの時間に分類されます。

労働時間の分類

作業時間:運転や車両の整備、荷扱いをする時間
手待ち時間:バスやタクシーの運転手における客待ち、トラック運転手における荷待ちの時間

各日の拘束時間が改善基準告示を満たしているかどうかは、始業時刻から起算した24時間以内の拘束時間を確認する必要があります。

ムートン

注意点として、例えば、1日目が9時~21時(12時間)の始業・終業で、翌日の2日目に7時から始業すると、翌日7時~9時の2時間も24時間以内としてカウントされ、1日目の拘束時間は14時間となります。

一方、各月の拘束時間が改善基準告示を満たしているかどうかは、1カ月間の各勤務の拘束時間の合計を確認すれば足ります。

休息期間

勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間を休息期間といいます。

ムートン

これらをまとめると以下のようになります。

【2024年4月施行予定】改善基準告示の改正

厚生労働大臣は、2022(令和4)年12月23日に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」により、改善基準告示を改正しました。改正改善基準告示は、2024(令和6)年4月1日から適用されます。

公布日・施行日

公布日:2022(令和4)年12月23日
施行日:2024(令和6)年4月1日

改正の概要|ドライバーの拘束時間上限が短縮、勤務間インターバルの適用など

改正改善基準告示では、従前の基準と比べ、ドライバーの拘束時間の上限が短縮されました。また、勤務と次の勤務の間に必要な休息期間が延長されました。
以下では、改善基準告示のうち2022(令和4)年に改正された内容について、現行基準と比較しながら具体的に解説します。

タクシー運転者

日勤勤務者

タクシー運転者の日勤勤務者とは、一般的な働き方と同じように、1日のうちに8時間労働などの形態で働く者のことです。1日単位であれば夜勤も含まれます。

現行基準

現行の基準は、

・1カ月の拘束時間|299時間が限度
・1日の拘束時間|13時間が基本(延長する場合は16時間が限度)
・1日の休息期間|勤務終了後継続し8時間以上必要

であるとされています。

改正基準|拘束時間上限が月288時間に

改正後の基準は、

・1カ月の拘束時間|288時間が限度
・1日の拘束時間|13時間が基本(延長する場合は15時間が限度であり、14時間超の拘束は週3回までが目安
・1日の休息期間|勤務終了後継続して11時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないことが必要

であるとされました(改正改善基準告示2条1項1号~4号)。

隔日勤務者

タクシー運転者の隔日勤務者とは、2歴日(2日分の勤務時間)の長時間勤務をしたのち、日勤勤務よりも長い休息期間をとる働き方をする者のことです。概ね、丸1日近く勤務し、翌日は1日休業というサイクルで働きます。

現行基準

現行の基準は

・1カ月の拘束時間|262時間(特別な事情がある場合は労使協定により270時間まで延長可能)が限度
・2暦日の拘束時間|21時間が限度
・休息期間は勤務終了後継続して20時間以上必要

であるとされています。

改正基準|最低休息期間が22時間に

改正後の基準は、

・1カ月の拘束時間|262時間から限度の変更無し
・2暦日の拘束時間|22時間が限度であり、かつ、2回の隔日勤務を平均した1回当たりの拘束時間は21時間が限度
・2暦日の休息期間|勤務終了後継続して24時間以上与えるように努めることを基本とし、22時間を下回らないことが必要

とされました(改正改善基準告示2条2項2号・4号)。

車庫待ち等の自動車運転者

車庫待ち等の自動車運転者とは、常態として車庫等において待機する働き方をする者のことです。

現行基準

車庫待ち等の自動車運転者についても、原則として上記の基準が適用されます。
しかし、改善基準告示では、車庫待ち等の自動車運転者の拘束時間について下記の特例が設けられています。

・日勤勤務者との間で労使協定を締結し、1カ月における拘束時間の限度等を定めた場合、1カ月の拘束時間を322時間まで延長することができる

・①勤務終了後継続20時間以上の休息期間を与えること、②1日の拘束時間が16時間を超える回数が1カ月につき7回以内であること、③1日の拘束時間が18時間を超える場合には夜間4時間以上の仮眠時間を与えることとの要件のもとに、1日の拘束時間を24時間まで延長することができる

・隔日勤務者との間で労使協定を締結し、1カ月における2暦日の拘束時間が21時間の勤務を超える回数(1カ月につき7回以内)等を定めた場合、夜間4時間の仮眠時間を与えることにより、2暦日の拘束時間を24時間まで延長できる

・隔日勤務者との間で労使協定を締結し、1カ月における2暦日の拘束時間が21時間の勤務を超える回数(1カ月につき7回以内)等を定めた場合、1カ月の拘束時間を、262時間(労使協定により270時間までの範囲内で延長した場合は当該時間)に20時間を加えた時間まで延長することができる

改正基準

改正改善基準告示では、車庫待ち等の自動車運転者の拘束時間に関する特例が以下の通り改正されました(改正改善基準告示2条1項1号・2号・同条2項3号)。

・日勤勤務者との間で労使協定を締結し、1カ月における拘束時間の限度等を定めた場合、1カ月の拘束時間を300時間まで延長することができる

・隔日勤務者において、労使協定を締結し、2暦日の拘束時間を22時間超および2回の隔日勤務の平均が21時間超の回数が1カ月について7回以内とすること、および夜間4時間以上の仮眠時間を与えることを定めた場合、2暦日の拘束時間を24時間まで延長できる

・隔日勤務者との間で労使協定を締結し、2暦日の拘束時間を22時間超および2回の隔日勤務の平均が21時間超の回数が1カ月について7回以内とすること、および夜間4時間以上の仮眠時間を与えることを定めた場合、1カ月の拘束時間を262時間(労使協定により270時間までの範囲内で延長した場合は当該時間)に10時間を加えた時間まで延長できる

なお、1日の拘束時間に関する特例は変更されていません。

ハイヤー運転者

ハイヤーとは、タクシーのような流し営業を行わず、認可を受け、営業所のみで予約を受け付けるものをいいます。

現行基準

ハイヤー運転者には、拘束時間や休息期間等の規制は適用されません。
しかし、改善基準告示では、ハイヤー運転者の時間外労働に関して、

・1カ月50時間または3カ月140時間
・1年間450時間の目安時間

の範囲内で労使協定を締結するよう努めなければならないとされています。

改正基準|時間外労働時間上限が月45時間、年360時間(原則)に

改正改善基準告示では、時間外労働に関し、

1カ月45時間
1年間360時間

の範囲内で労使協定を締結するよう努めなければならないとされました(改正改善基準告示2条5項・3条)。

トラック運転者

現行基準

原則

1カ月の拘束時間は原則として293時間が限度とされています(労使協定を締結した場合には、1年のうち6カ月までは、1年間の拘束時間が3,516時間を超えない範囲内において、1カ月の拘束時間を320時間まで延長可)。

1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合であっても16時間が限度とされています。なお、1日の拘束時間の延長については、15時間を超える回数は1週間につき2回を限度としなければなりません。

1日の休息期間は、勤務終了後継続して8時間以上必要であるとされています。

特例

トラック運転手の拘束時間や休息期間については、下記の特例が定められています。

・勤務終了後、継続して8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、一定期間(2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上の休息期間を、拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して与えることができる

・身体を伸ばして休息することができる設備のある車両に運転者が2人以上乗務する場合、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、休息期間を4時間まで短縮できる

・業務の必要上やむを得ない場合、①2暦日における拘束時間が21時間を超えないこと、②勤務終了後継続20時間以上の休息期間を与えることとの条件の下の、隔日勤務に就かせることができる

・運転者が勤務の途中においてフェリーに乗車する場合、フェリーの乗車時間は休息期間として扱う

改正基準|拘束時間上限が月284時間(原則)、年3,300時間(原則)に

原則

1年の拘束時間は3,300時間が限度、1カ月の拘束時間は原則として284時間が限度とされました。なお、労使協定を締結した場合には、1年の拘束時間を3,400時間、1カ月の拘束時間を310時間(年6カ月まで。284時間以上は連続3カ月まで)まで延長することができます(改正改善基準告示4条1項1号・2号)。

1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合であっても15時間が限度とされました。なお、1日の拘束時間の延長については、14時間を超える回数は1週間につき2回を目安としなければならないとの制限があります(同項3号・4号)。

1日の休息期間は、勤務終了後継続して11時間以上が基本で、9時間を下回ってはならないとされました(同項5号)。

特例

トラック運転手の拘束時間や休息期間に関する特例は、休憩の分割について、

・勤務終了後、継続して9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、一定期間(1カ月程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、1回当たり継続3時間以上、2分割する場合は合計10時間以上、3分割する場合は合計12時間以上の休息期間を、拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して与えることができる(休憩を分割して与える場合は、3分割が連続しないよう努める必要有

と改正されたのみで(改善基準告示4条4項1号)、2人乗務およびフェリーに関する特例に大きな変更はありません。

バス運転者

現行基準

原則

4週間を平均した1週間当たりの拘束時間は、65時間が限度とされています。
ただし、貸し切りバスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸し切りバスに乗務する者および高速バスに乗務する者との間で労使協定を締結した場合には、52週間のうち16週間までは、4週間を平均した1週間当たりの拘束時間を71.5時間まで延長することができるとされています。

1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合であっても16時間が限度とされています。なお、1日の拘束時間の延長については、15時間を超える回数は1週間につき2回が限度としなければならないとの制限があります。

1日の休息期間は、勤務終了後継続8時間以上必要とされています。

特例

バス運転手の拘束時間や休息期間については、下記の特例が定められています。

・勤務終了後、継続して8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、一定期間(2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上の休息期間を、拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して与えることができる

・身体を伸ばして休息することができる設備のある車両に運転者が2人以上乗務する場合、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、休息期間を4時間まで短縮できる

・業務の必要上やむを得ない場合、①2暦日における拘束時間が21時間を超えないこと、②勤務終了後継続20時間以上の休息期間を与えることとの条件の下の、隔日勤務に就かせることができる

・運転者が勤務の中途においてフェリーに乗船する場合には、フェリー乗船時間のうち2時間については拘束時間として取扱い、その他の時間については休息期間として取り扱う

改正基準|拘束時間上限が月281時間(原則)、年3,300時間(原則)に

原則

拘束時間については、

・1年3,300時間以内および1カ月281時間以内
・52週3,300時間以内および4週間を平均した1週間当たり65時間以内

のいずれかを選択できることとなりました(改正改善基準告示5条1項1号)。

なお、貸し切りバスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸し切りバスに乗務する者および高速バスに乗務する者との間で労使協定を締結した場合には、拘束時間を、

・1年3,400時間および1カ月294時間(年6カ月まで。281時間は連続4カ月まで)
・52週3,400時間および4週間を平均した1週間当たり68時間(65時間超は連続16週まで)

に延長することができます(同項1号イ但し書き・ロ但し書き・同項2号)。

1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合であっても15時間が限度とされました。なお、1日の拘束時間の延長については、14時間を超える回数は1週間につき3回を限度としなければならないとの制限があります(同項3号)。

1日の休息期間は、勤務終了後継続11時間以上が基本で、9時間を下回ってはならないとされました(同項4号)。

特例

バス運転手の拘束時間や休息期間に関する特例は、以下の通り改正されました(改正改善基準告示5条4項1号・2号・4号)。

・勤務終了後、継続して9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、一定期間(1カ月程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、1回当たり継続4時間以上、合計11時間以上の休息期間を、拘束時間の途中および拘束時間の経過直後に分割して与えることができる。なお、トラック運転者の場合と異なり、休息期間を3回以上に分割することはできない

・身体を伸ばして休息することができる設備のある車両に運転者が2人以上乗務する場合、1日の最大拘束時間を29時間まで延長でき、休息期間を5時間まで短縮できる

フェリーの乗船時間は、原則として休息期間とすることができる

なお、隔日勤務に関する特例は変更されていません。

ムートン

2024年問題といわれる理由は、トラックやバスはドライバーの拘束時間が短くなっても、それに合わせて輸送距離を短くするということがなかなかできないからです。
荷待ち・積み下ろしなどを短縮する業務効率化や、中継地点の設定、2人以上の乗務などの対応が必要になるといわれています。

改善基準告示に違反した場合の罰則

改善基準告示は法律ではなく、違反した場合に罰則はありません
しかし、改善基準告示に違反した場合、国土交通省により行政処分が下される可能性があります。
行政処分の内容は、一定期間の車両の使用の制限の他、重いものでは、一定期間の事業停止などがあります。

上記のような処分を受けないためにも、事業者は改正基準告示の内容を確認し、ドライバーの労働環境を整備する必要があります。

ムートン

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参考文献

厚生労働省ウェブサイト「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」