【2025年4月施行】
建築基準法・建築物省エネ法改正とは?
省エネ基準適合義務化・4号特例縮小などの
変更ポイントを分かりやすく解説!

この記事のまとめ

2025年4月から、改正建築基準法および改正建築物省エネ法が施行されます。

今回の建築基準法・建築物省エネ法改正の目的は、建築物分野における省エネ対策を加速させること、および木材利用を促進することです。
2025年4月から施行される改正法では、主に以下の3点が変更されます。
✅ 4号特例の見直し
✅ 構造規制の合理化
✅ 省エネ基準への適合義務化

この記事では、2025年4月から施行される建築基準法・建築物省エネ法改正の内容を解説します。

ヒー

2025年に建築物省エネ法が大きく変わると聞きました。どんな内容でしょうか?

ムートン

省エネ対策として、主に新築住宅などに適用される制度が変更され、義務化も行われます。確認していきましょう。

※この記事は、2024年10月24日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 改正建築基準法…「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」による改正(2025年4月施行分)後の「建築基準法」
  • 建築物省エネ法…「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(法改正前後の同法律を総称して言います)
  • 改正建築物省エネ法…「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」による改正(2025年4月施行分)後の、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」

【2025年4月施行】建築基準法・建築物省エネ法改正とは

2025年4月から、改正建築基準法および改正建築物省エネ法が施行されます。

改正の目的

今回の建築基準法・建築物省エネ法改正の目的は、建築物分野における省エネ対策を加速させること、および木材利用を促進することです。

国際的な枠組みにより、2050年のカーボンニュートラルおよび2030年度の温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現が目標に掲げられています。それらを踏まえて、政府は2021年10月、地球温暖化対策等の削減目標を強化しました。

建築物分野は、日本におけるエネルギー消費の約3割、木材需要の約4割を占めています。建築物分野における省エネ対策と木材利用の促進は、上記の目標達成を目指す上で効果が大きいと考えられるため、建築基準法および建築物省エネ法が改正されることになりました。

出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料」2頁

公布日・施行日

改正建築基準法および改正建築物省エネ法の公布日および施行日は、以下のとおりです。

公布日・施行日

公布日|2022年6月17日
施行日|2025年4月1日
※改正法の一部は2024年4月1日までに施行されていますが、本記事では2025年4月1日に施行される改正法の内容を紹介します。

過去に施行済の改正内容

【2022年9月1日施行】
・住宅の省エネ改修に対する住宅金融支援機構による低利融資制度

【2023年4月1日施行】
・住宅トップランナー制度の拡充
・採光規制等の合理化
・省エネ改修や再エネ設備の導入に支障となる高さ制限等の合理化
など

【2024年4月1日施行】
・建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示
・再エネ利用促進区域制度
・防火規制の合理化
など

改正の3つのポイント

今回の建築基準法・建築物省エネ法改正では、主に以下の3つのポイントが変更されます。

① 4号特例の見直し・縮小
建築物の省エネ基準や構造安全性基準への適合を、審査プロセスを通じて確実に担保するため、いわゆる「4号特例」の見直し・縮小が行われます。

② 構造規制の合理化
建築物への木材利用を促進するため、簡易な構造計算で建築可能な3階建て木造建築物の範囲を拡大するなどの改正が行われます。

③ 省エネ基準への適合義務化
建築物の省エネ化を促進するため、全ての新築住宅・非住宅について、省エネ基準への適合が義務付けられます。

ヒー

小規模な建築物の施工に関係する事業者には影響が大きそうですね。

ムートン

特に①の4号特例の見直しと③の省エネ基準への適合義務化は、影響が大きいため、注意が必要です。

改正ポイント1|4号特例の見直し・縮小

建築基準法・建築物省エネ法改正の1つ目のポイントは、「4号特例の見直し・縮小」です。小規模建築物について建築確認審査の一部を省略できる「4号建築物」の区分が廃止され、「新2号建築物」と「新3号建築物」へ再分類されます。

引用元|国土交通省「4号特例が変わります」

4号特例とは

4号特例」とは、小規模建築物について建築確認審査の一部を省略できる特例です。経済成長に伴って住宅の着工件数が急増し、建築確認審査が追い付かなくなる状況を緩和するため、1983年に導入されました。

4号特例の対象とされている建築物(=4号建築物)は、下表の条件を満たすものです(建築基準法6条1項4号)。

木造建築物以下の条件を全て満たすもの
・2階建て以下
・延べ面積500平方メートル以下
・高さ13メートル以下または軒高9メートル以下
非木造建築物以下の条件を全て満たすもの
・平屋
・延べ面積200平方メートル以下

4号建築物については、以下の項目などが建築確認審査の対象外とされています。

4号建築物について建築確認審査が不要となる項目例

・建築設備の構造強度
・居室の採光
・換気設備の技術基準
・地階における住宅等の居室
・電気設備
・廊下
・天井
・床高
・除湿
・遮音
など

また、4号建築物の建築確認申請に当たっては、構造計算書の提出が不要とされています。

改正法により「4号建築物」の区分が廃止|「新2号建築物」と「新3号建築物」へ

改正建築基準法により、従来の「4号建築物」の区分が廃止され、「新2号建築物」と「新3号建築物」に再分類されます。新2号建築物については、従来よりも建築確認申請時の審査項目や提出書類が増える点に注意が必要です。

新2号建築物とは

新2号建築物」に当たるのは、従来から全ての項目が建築確認審査の対象となっていた建築物(2号・3号建築物)と、従来の4号建築物のうち以下の要件のいずれかに該当する建築物です。

  • 木造2階建て
  • 延べ面積200平方メートル超

新2号建築物については、全ての項目が建築確認審査の対象となります。また、建築確認申請を行う際に、省エネ基準および構造安全性基準への適合性を示す図書の提出が必要となります。

新3号建築物とは

新3号建築物」に当たるのは、従来の4号建築物のうち、平屋かつ延べ面積200平方メートル以下の建築物です(木造・非木造を問いません)。

新3号建築物については、従来の4号建築物と同様に、建築確認時の審査項目が一部免除されるほか、省エネ基準および構造安全性基準への適合性を示す図書の提出も不要とされています。

改正ポイント2|構造規制の合理化

建築基準法・建築物省エネ法改正の2つ目のポイントは、「構造規制の合理化」です。建築物への木材使用を促進するため、以下の規制緩和が行われます。

(a) 木造建築物の仕様の実況に応じた壁量基準等の見直し
(b) 階高の高い木造建築物等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化・二級建築士等の業務独占範囲の見直し

木造建築物の仕様の実況に応じた壁量基準等の見直し

現行の基準では、「軽い屋根」「重い屋根」の区分に応じて必要な建築物の壁量および柱の小径を算定しています。

しかし、このような画一的な基準では、近年多様化している木造建築物の仕様に応じた適切な算定ができないおそれがあります。
特に、省エネ性能のニーズへ応えるために、断熱性能の向上や階高の引き上げ、トリプルガラスサッシや太陽光発電設備等の設置が行われる建築物は、従来に比べて重量が大きいため、地震動等に対する影響にいっそう配慮が必要です。

上記の事情を踏まえて、今回の建築基準法・建築物省エネ法改正では、木造建築物の仕様の実況に応じて必要壁量・柱の小径を算定できるような見直しが行われました。

階高の高い木造建築物等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化・二級建築士等の業務独占範囲の見直し

現行の建築基準法では、高さ13メートルまたは軒高9メートルを超える木造建築物を建築する場合、高度な構造計算によって構造安全性を確認する必要があり、一級建築士でなければ設計・工事監理ができません。

しかし近年では、建築物の断熱性向上等のために、階高を高くした建築物のニーズが高まっています。
そこで今回の建築基準法・建築物省エネ法改正では、安全性検証の結果を踏まえて、3階建て以下かつ高さ16メートル以下の建築物については高度な構造計算を不要とし、二級建築士でも設計・工事監理ができるものとされました。

他方で、近年増加している大空間を有する建築物につき、構造安全性の確保が必要となっている状況もあります。
従来は、2階建て以下の木造建築物について構造計算が必要となるのは、延べ面積500平方メートル超の場合に限られていました。今回の建築基準法・建築物省エネ法改正では、延べ面積300平方メートル超であれば構造計算を必要とし、構造安全性確保の要請が強化されています。

改正ポイント3|省エネ基準への適合義務化

建築基準法・建築物省エネ法改正の3つ目のポイントは、「省エネ基準への適合義務化」です。建築物の省エネ化を加速させるため、原則として全ての住宅・建築物について、省エネ基準への適合が義務付けられます。

新たな省エネ基準適合義務は、2025年4月以降に着工される建築物について適用される予定です。

原則として全ての住宅・建築物について、省エネ基準への適合が義務付けられる

従来は、省エネ基準への適合が義務付けられているのは、非住宅かつ300平方メートル以上の中規模・大規模建築物に限定されていました。
300平方メートル未満の住宅および非住宅については説明義務のみ、300平方メートル以上の住宅については届出義務のみにとどまっています。

今回の建築基準法改正により、原則として全ての住宅・建築物について、省エネ基準への適合義務付けられました。

引用元|国土交通省ウェブサイト「令和4年度改正建築物省エネ法の概要」

増改築部分についても、省エネ基準への適合が必要になる

省エネ基準への適合義務は、建築物を新築する場合に加えて、増改築を行う場合にも適用されます。

従来は、増改築時には既存部分を含めた建築物全体について、省エネ基準への適合性が判定されていました。
しかし今回の建築基準法改正では、増改築部分だけで省エネ基準への適合性が判定されることになった点に注意が必要です。

省エネ基準の概要

省エネ基準適合性は、「外皮性能基準」と「一次エネルギー消費量基準」の2つによって判定されます。住宅の場合は両方、非住宅の場合は一次エネルギー消費量基準に適合させなければなりません。

外皮性能基準|UA値とηAC値で判定

外皮性能基準は、外皮外壁など)の表面積当たりの熱の損失量が、基準値以下となることを求めるものです。住宅のみに適用されます。

住宅の外皮性能は、UA値(ユー・エー値)とηAC値(イータ・エーシー値)によって計算します。UA値とηAC値はいずれも、地域区分別に定められている基準値以下となることが必要です。

UA=単位温度差当たりの外皮総熱損失量÷外皮総面積

ηAC=単位日射強度当たりの総日射熱取得量÷外皮総面積×100

ムートン

平たくいうと、外壁や窓などに一定の断熱性能を持たせることが必要となります。

一次エネルギー消費量基準|BEI値で判定

一次エネルギー」とは、加工されない状態で供給されるエネルギーをいいます。石油・石炭・原子力・天然ガス・水力・地熱・太陽熱などが一次エネルギーに当たります。

一次エネルギー消費量基準は、以下の設備機器等における一次エネルギー消費量が、基準値以下となることを求めるものです。住宅・非住宅の両方に適用されます。

一次エネルギー消費量の算定対象となる設備機器等

・空気調和設備(暖冷房設備)
・換気設備
・照明設備
・給湯設備
・昇降機(非住宅のみ)

建築物の一次エネルギー消費量は、BEI値(ビーイーアイ値)によって計算します。BEI値は1.0以下となることが必要です。

BEI=設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量

※設計一次エネルギー消費量=省エネ手法(省エネ建材・設備等の採用)を考慮したエネルギー消費量
※基準一次エネルギー消費量=標準的な仕様を採用した場合のエネルギー消費量

ムートン

平たくいうと、省エネの設備機器を導入しましょう、という内容です。外皮性能とも連動します。

省エネ基準適合の確認方法|原則として「省エネ適判」が必要

省エネ基準への適合を確認するためには、新3号建築物を除き「エネルギー消費性能適合性判定(省エネ適判)」を受ける必要があります。省エネ適判は、所管行政庁(市町村長もしくは都道府県知事)または国土交通大臣の登録を受けた建築物エネルギー消費性能判定機関が行います。

ただし以下のいずれかに該当する住宅については、省エネ基準への適合性判定が比較的容易であるため、省エネ適判を省略し、建築確認審査と一体的に省エネ基準への適合性が確認されます。

省エネ適判が省略される住宅

① 仕様基準に基づき外皮性能および一次エネルギー消費性能を評価する住宅
② 設計住宅性能評価を受けた住宅の新築
③ 長期優良住宅建築等計画の認定または長期使用構造等の確認を受けた住宅の新築

ムートン

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参考文献

国土交通省ウェブサイト「R4年建築基準法・建築物省エネ法等改正 新旧対照条文等」

国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料」