建築基準法とは?
規制の全体像・改正の沿革・
用途規制などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「建築基準法」とは、建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低の基準を定めた法律です。建築物の安全を確保することにより、国民の生命・健康・財産の保護を図り、公共の福祉を増進させることを目的としています。
建築基準法では、建築物を建築する際の最低基準として、「単体規定」と「集団規定」が定められています。
単体規定は、建築物の安全性や衛生の確保を目的としており、全国的に適用されます。これに対して集団規定は、計画的な都市運営を目的としたもので、都市計画区域よび準都市計画区域に限って適用されます。都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区において建築される建築物については、単体規定および集団規定の遵守状況について、建築確認と検査を受けなければなりません。また、その他の地域における建築物についても、一定規模を超える場合は建築確認と検査が必要です。
建築基準法に違反して建築物を建てた場合、特定行政庁による措置命令の対象となるほか、刑事罰が科される可能性もあります。
この記事では建築基準法について、規制の全体像や単体規定・集団規定・建築確認・検査・罰則などを解説します。
※この記事は、2023年7月5日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…建築基準法
目次
建築基準法とは
「建築基準法」とは、建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低の基準を定めた法律です。建築物の安全を確保することにより、国民の生命・健康・財産の保護を図り、公共の福祉を増進させることを目的としています。
主な建築基準法改正の沿革
建築基準法については、これまで主に以下の改正が行われています。また下記のほかにも、震災の発生や不祥事などをきっかけとして、不断に建築基準法の改正が行われている状況です。
1950年 | 建築基準法制定 |
1970年 | 北側斜線制限の新設 |
1976年 | 日影規制の新設 |
1981年 | 旧耐震基準から新耐震基準への変更 |
1999年 | 建築確認・検査の民営化 |
2000年 | 建築時の地盤調査の義務化 耐震等級の導入(住宅の品質確保の促進等に関する法律) |
2006年 | アスベスト規制の強化 |
建築基準法と関係の深い法令
建築基準法と同じく、建築物の建築等に関する規制を設けた法令として、以下の例が挙げられます。
① 消防法
→建築物等における火災を予防し、火災や地震等の災害発生時の被害を軽減するため、消防設備などに関する規制を設けています。
② 建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)
→地震による建築物の倒壊等の被害から国民の生命・身体・財産を保護するため、耐震改修などに関する規制を定めています。
③ 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)
→高齢者や障碍者などの建築物等における移動を円滑化するため、公共性の高い建築物を対象にバリアフリー化の規制を定めています。
④ エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネルギー法)
→持続可能なエネルギー利用の観点から、エネルギー使用の合理化および非化石エネルギーへの転換に関する規制を定めています。
⑤建設業法
→建設業の質の向上を目的として、建設業者に適用される規制を定めています。
⑥都市計画法
→都市の健全な発展と秩序ある整備を目的として、都市計画に関連する規制を定めています。
など
建築基準法で押さえておきたい基本用語
建築基準法の規制内容を理解するに当たっては、最低限以下の用語を理解しておきましょう。
① 建築物(法2条1号)
→土地に定着する工作物のうち、屋根および柱もしくは壁を有するものと、これに附属する以下の施設の総称です。
・門、塀
・観覧のための工作物
・地下または高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設
・建築設備(建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙もしくは汚物処理の設備または煙突、昇降機もしくは避雷針)
② 建築(同条13号)
→建築物を新築し、増築し、改築し、または移転することです。
③ 大規模の修繕(同条14号)
→建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕です。
④ 大規模の模様替(同条15号)
→建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替です。
⑤ 都市計画区域(同条20号)
→一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要があるものとして、都道府県により指定された区域です。
都市計画区域における建築・大規模の修繕・大規模の模様替については、建築確認および検査が必須となります。
⑥ 準都市計画区域(同条20号)
→都市計画区域外の区域のうち、そのまま土地利用を整序し、または環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発および保全に支障が生じるおそれがあると認められるものとして、都道府県により指定された区域です。
準都市計画区域における建築・大規模の修繕・大規模の模様替についても、都市計画区域と同様に、建築確認および検査が必須となります。
建築基準法による規制の全体像
建築基準法による規制は、「単体規定」と「集団規定」の2つに大別されます。建築物に適用される単体規定・集団規定が遵守されているかどうかは、「建築確認」および「検査」によってチェックされます。
「単体規定」と「集団規定」
「単体規定」は、建築物の安全性や衛生状況などに関する規定です。地域を問わず、全国の建築物に適用されます。
これに対して「集団規定」は、計画的な都市運営を目的とした規定です。都市計画区域および準都市計画区域に存在する建築物についてのみ適用されます。
「建築確認」と「検査」
周囲に与える影響が大きいと考えられる建築物につき、建築・大規模の修繕・大規模の模様替をする際には、事前に「建築確認」を経て確認済証の交付を受けることが義務付けられています(法6条1項)。
また、建築確認がなされた建築物の工事が完了した際には、建築主事の「完了検査」を受けなければなりません(法7条1項)。工事の中に複雑な工程が含まれる場合は、工事の途中の段階で「中間検査」が義務付けられることもあります(法7条の3第1項)。
建築確認や検査においては、主に建築基準法に基づく単体規定や集団規定が遵守されているか否かがチェックされます。
単体規定の主な内容
全国的に適用される単体規定としては、主に以下の規制が設けられています。
① 敷地に関する規制
② 構造耐力に関する規制(耐震基準など)
③ 防火・避難に関する規制
④ その他の一般構造・設備に関する規制
敷地に関する規制
建築物の敷地の地盤強度を確保し、排水を円滑化する観点から、以下の規制が設けられています。
① 敷地の高さ(法19条1項)
建築物の敷地は、接道の境界線よりも高くなければなりません。また、建築物の地盤面は、接している周囲の土地より高くなければなりません。
※排水に支障がない場合、建築物の用途により防湿の必要がない場合を除く
② 衛生・安全上の措置(同条2項)
湿潤な土地、出水のおそれの多い土地、埋め立て地で建築物を建築する際には、盛土・地盤改良など衛生・安全上必要な措置を講じなければなりません。
③ 雨水・汚水の排出・処理施設(同条3項)
建築物の敷地には、雨水・汚水の排出・処理施設を設けなければなりません。
④ がけ崩れなどの防止措置(同条4項)
建築物ががけ崩れ等の被害を受けるおそれがある場合は、擁壁の設置など安全上適当な措置を講じなければなりません。
構造耐力に関する規制(耐震基準など)
地震や台風などの自然災害に備えるため、建築物は構造耐力基準に適合している必要があります(法20条)。
また、以下のいずれかに該当する大規模な建築物の場合、より厳しい構造耐力基準が適用されます(法21条)。
- 地階を除く回数が4以上である建築物
- 高さが16メートルを超える建築物
- 倉庫、車庫、自動車修理工場などの特殊建築物で、高さが13メートルを超えるもの
- 延べ面積が3000平方メートルを超える建築物
防火・避難に関する規制
防火および火災等発生時の避難の円滑化を図るため、建築物の規模や構造などに応じて、以下の規制を遵守する必要があります。
・屋根の防火性能(法22条、62条)
・外壁の防火性能(法23条、25条、61条、63条)
・防火壁の設置義務(延べ面積が1000平方メートルを超える建築物が対象。法26条)
・特殊建築物における耐火性(法27条)
・電気設備(法32条)
・避雷設備の設置(法33条)
・昇降機の設置、防火構造(法34条)
・避難および消火上必要な経路の確保(一定規模以上の建築物などが対象。法35条)
など
その他の一般構造・設備に関する規制
上記のほか、建築物の利用者や近隣にいる人の安全・衛生を確保するため、建築物の一般構造・設備に関して以下の規制が設けられています。
・居室の採光、換気(法28条)
・アスベストなどの飛散防止(法28条の2)
・地階の居室(法29条)
・便所(法31条)
・建築材料の品質(法37条)
など
集団規定の主な内容
都市計画区域・準都市計画区域に適用される集団規制としては、主に以下の3つが設けられています。
① 接道規制(道路に関する制限)
② 用途規制(用途地域に関する制限)
③ 形態規制(建物の容積率・建ぺい率などに関する制限)
接道規制(道路に関する制限)
「接道規制」とは、災害時の避難経路の確保や、緊急車両(消防車・救急車など)の接近経路の確保を目的とした規制です。
都市計画区域・準都市計画区域における建築物の敷地は、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません(法43条1項)。
敷地に接した道路の幅員が4メートルに満たないときは、原則として道路中心線から2メートル後退した位置に敷地の縁を設定し、特定行政庁の指定を受ける必要があります(法42条2項)。
用途規制(用途地域に関する制限)
都市計画では、計画的な市街地形成を目的として、以下の13種類の用途地域を設定できます(都市計画法8条1項1号)。
① 第一種低層住居専用地域
② 第二種低層住居専用地域
③ 第一種中高層住居専用地域
④ 第二種中高層住居専用地域
⑤ 第一種住居地域
⑥ 第二種住居地域
⑦ 準住居地域
⑧ 田園住居地域
⑨ 近隣商業地域
⑩ 商業地域
⑪ 準工業地域
⑫ 工業地域
⑬ 工業専用地域
各用途地域において建築される建築物については、種類や規模などに関して対応する規制を遵守しなければなりません(法48条)。
形態規制(建物の容積率・建ぺい率などに関する制限)
都市計画区域・準都市計画区域は、多くの場合人口密集地域であるため、防災や住環境保全に関する高度の必要性が認められます。
そのため、都市計画区域・準都市計画区域にある建築物については、以下の事項について厳格な制限が設けられています。
・容積率(法52条)
・建ぺい率(法53条)
・建築物の敷地面積(法53条の2)
・外壁の後退距離(法54条)
・高さ制限(法55条、56条、56条の2など)
など
建築確認・検査の対象建築物・手続き
単体規定・集団規定の遵守状況は、一部の建築物に限り、建築確認および検査でチェックされます。
建築確認・検査の対象建築物および手続きの概要は、以下のとおりです。
建築確認・検査の対象となる建築物
建築・大規模の修繕・大規模の模様替に当たって建築確認および検査を要するのは、以下のいずれかに該当する建築物です(法6条1項、7条1項)。
① 以下のいずれかの用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの
・劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会堂など
・病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎など
・学校、体育館など
・百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場など
・倉庫など
・自動車車庫、自動車修理工場など
② 木造の建築物で、以下のいずれかに該当するもの
・3階建て以上
・延床面積500平方メートル超
・高さ13メートル超
・軒の高さ9メートル超
③ 木造以外の建築物で、以下のいずれかに該当するもの
・2階建て以上
・延床面積200平方メートル超
④ ①~③に該当しない、以下のいずれかの区域に所在する建築物
・都市計画区域
・準都市計画区域
・準景観地区
・都道府県知事が指定する区域
※④については、建築の場合のみ(大規模の修繕および大規模の模様替は対象外)
建築確認と検査の手続き
建築確認の対象工事に着工する際は、事前に建築主事による建築確認を受け、確認済証の交付を受けなければなりません(法6条1項)。
建築主事は、①~③の建築物については受理日から35日以内、④の建築物については7日以内に審査を行い、適合性が確認できれば確認済証を交付します(同条4項、5項)。
工事が完了したら、原則として工事完了から4日以内に、建築主事に対して完了検査を申請する必要があります(法7条1項)。
建築主事は、受理日から7日以内に審査を行い、適合性が確認できれば検査済証を交付します(同条4項)。
検査済証が交付されると、建築物を使用収益できるようになります(同条5項)。
違反建築物に対する罰則(ペナルティ)
建築基準法に違反する建築等がなされた場合、建築主などは以下のペナルティを受ける可能性があります。
① 特定行政庁による措置命令
② 刑事罰
特定行政庁による措置命令
違反建築物またはその敷地については、建築主・工事の請負人・現場管理者、または敷地の所有者・管理者・占有者に対して、特定行政庁が工事の施工停止または是正措置を命じる場合があります(法9条1項)。
是正措置等が講じられない場合は、行政代執行法に基づき、特定行政庁が主導して強制的に当該措置を講じることができます(同条12項)。
刑事罰
建築基準法に基づく確認・検査義務に違反した者は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されます(法99条1項1号、3号)。
また、特定行政庁の工事施工停止命令または措置命令に違反した者は、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます(法98条1項1号)。
罰則の対象となるのは主に設計者・工事施工者ですが、建築主の行為による場合は、建築主も処罰の対象となります(法98条2項、99条2項)。
さらに、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が上記の違反を犯した場合は、両罰規定により法人も罰せられます(法105条)。
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