法律上の休憩時間とは?
労働基準法の内容・計算方法・
タイミングなどを分かりやすく解説!

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この記事のまとめ

休憩時間とは、労働者が労働時間の途中でとる、休息のための時間をいいます。

労働基準法(労基法)では、労働者を保護するための労働時間制度が定められており、使用者は労働者に一定のルールに従って休憩時間を取得させなければなりません。

この記事では、法律上定められている休憩時間についての規制とその例外、休憩時間を与えるタイミングやルール、休憩時間のルールに違反した場合の罰則などについて詳しく解説します。

ヒー

はあ…お昼休みが仕事で潰れてしまいました…。休憩時間のルールって、法律で決まっているんですか?

ムートン

休憩は法律にルールが定められています。会社側に取得させる義務があるので、休憩は取ってくださいね。ルールの内容を確認しましょう!

※この記事は、2025年2月25日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。

  • 労基法…労働基準法
  • 労基則…労働基準法施行規則

休憩時間とは

労働時間制度とは

労働時間制度は、法律により労働時間に上限を設けることで、長時間労働を防止し、労働者の健康を保護する制度です。

労働時間制度は、主に労働基準法(労基法)で定められており、休憩に関する規定のほか、法定労働時間法定休日についての規定があります。
労基法で定められている法定労働時間と法定休日の日数は、原則として以下のとおりです(労基法32条・35条)。

法定労働時間と法定休日

法定労働時間:休憩時間を除き、1日8時間、1週40時間(特例措置対象事業場の場合は44時間)以内
法定休日:毎週少なくとも1回、または、4週間で4日以上

法律上必要な休憩時間

休憩時間とは、労働者が労働時間の途中休息のために労働から完全に解放されることを保障されている時間をいいます。

労基法では、労働者に与えなければいけない休憩時間について、以下のように決められています(労基法34条1項)。

労働時間休憩時間
6時間以内不要
6時間を超え、8時間以内45分以上
8時間超60分以上

上記のとおり、労働時間が6時間超~8時間以内であれば、法律上は45分の休憩で足りますが、休憩時間を45分と定めると、8時間を1分でも超えて残業させる場合には、別途15分の休憩を取らせることが必要なため、効率性の観点から、あらかじめ休憩時間を60分としている企業が多くなっています。

ムートン

以上が休憩時間の基本的なルールです。例外として、このルールが適用されない労働者についても以下でご説明します。

休憩時間の規定が適用されない場合

以下に定める労働者に対しては、休憩時間の規定は適用されません

① 一定の業種に従事する労働者
② 管理監督者、機密事務取扱者
③ 監視・断続的労働従事者のうち、使用者が許可を受けたもの
④ 高度プロフェッショナル制度の対象労働者

①一定の業種に従事する労働者

以下の業務に従事する労働者については、天候、季節などの自然状況に強く影響されたり、公衆の不便を避ける必要性があるため、労基法34条1項が適用されず、同条に定められた基準で休憩を付与する必要はありません。

  • 農業、畜産、水産業に従事する者(労基法41条1号)
  • 旅客運送、貨物運送、郵便、信書便事業の長距離乗務員(労基則32条1項)
  • 屋内勤務者30人未満の郵便局で郵便窓口業務に従事するもの(労基則32条1項)

また、旅客運送、貨物運送、郵便、信書便事業に従事する長距離乗務以外の乗務員のうち、業務の性質上休憩時間を与えることができない者に対しては、その勤務中の停車時間、折り返しによる待ち合わせ時間等の合計が労基法に定める休憩時間に相当するときは、それ以外に休憩時間を与える必要はありません (労基則32条2項)。

②管理監督者・機密事務取扱者

管理監督者機密事務取扱者については、労働時間の規制が適用されないため、労基法34条1項に定められた基準で休憩を付与する必要はありません(労基法41条2号)。

管理監督者とは、事業主に代わり労務管理を行う地位にあり、労働者の労働時間を決定し、労働時間に従った労働者の作業を監督する者をいいます。
管理監督者は、自らの労働時間を自ら決めることができ、また、地位に応じた高い待遇を受けるため、労働時間の規制を適用する必要がありません。

機密事務取扱者とは、秘書などの職務が経営者または管理監督者の活動と一体不可分で、出社退社等について厳格な制限を受けない者をいいます。

機密事務取扱者の活動は、経営者・管理監督者と一体不可分のため、管理監督者と同様に労働時間の規制が適用されません。
そのため、通常は、職務手当などにより特別の処遇が行われています。

なお、「秘書」の名称であっても、オフィスに常駐し、時間管理が可能な場合は経営者・管理監督者と一体不可分といえないため、労働時間の規制が適用されます。

③監視・断続的労働従事者のうち、使用者が許可を受けたもの

監視・断続的労働従事者のうち、使用者が労働基準監督署長から許可を受けたものについても労働時間の規制が適用されないため、労基法34条1項に定められた基準で休憩を付与する必要はありません(労基法41条3号)。

監視労働」とは、一定部署で監視することを本来の業務とし、常態として身体または精神的緊張の少ない労働をいいます。

また、「断続的労働」とは、実作業が間欠的に行われ、待機時間の多い労働をいいます。
待機時間が実作業時間を超えるか、それと等しいことが目安となります。

守衛や、学校の用務員、マンション管理人、隔日業務のビル警備員などが該当します。

監視・断続的労働従事者として労働時間の規制の適用外とするためには、使用者が労働基準監督署長から許可を得る必要がありますが、一般的に、実作業時間の合計が8時間を超えるときには許可されません。

④高度プロフェッショナル制度の対象労働者

2019年に始まった高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者は、使用者から具体的な指示を受けることなく、裁量的に業務を行います。

このような労働者は、自己の裁量により労働時間を決めることができるため、労働時間の規制が適用されず、労基法34条1項に定められた基準で休憩を付与する必要はありません(労基法41条の2)。

休憩の三原則|与えるタイミングやルールを解説

休憩については、以下の原則があります。

  • 途中付与の原則
  • 一斉付与の原則
  • 自由利用の原則

途中付与の原則

休憩時間は労働時間の途中に与えなければなりません(労基法34条1項)。
労働時間の途中で与えれば、どの段階で与えてもかまいません。
また、休憩時間を分割して小刻みに与えることもでき、休憩時間の位置を一定する必要もありません。

一斉付与の原則

休憩時間は、事業場ごとに一斉に与えなければなりません(労基法34条2項)。
これは、休憩時間の効果を上げるためや労働時間や休憩時間を適切に管理するためです。

なお、以下のサービス業種については、利用客の便宜のため、一斉付与原則が適用されません(労基則31条)。

  • 運輸交通業
  • 商業
  • 金融・広告業
  • 映画・演劇業
  • 通信業
  • 保険衛生業
  • 接客娯楽業
  • 官公署の事業

また、労使協定を締結することにより一斉付与の原則を適用除外とすることができます。

自由利用の原則

休憩時間中、使用者は労働者の行動に制約を加えることはできず、労働者は休憩時間を自由に使うことができます(労基法34条3項)。

休憩時間中の外出も原則として自由で、外出に際し届出を義務付けるなどの規制は、合理的な理由がある場合に最小限の範囲でのみ認められます。

なお、以下の業種については、公共性の観点から、自由利用の原則の適用外となっています(労基則33条)。

  • 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員、児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
  • 乳児院、児童養護施設や障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
  • 居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者

休憩に関する労使協定・就業規則

休憩に関する労使協定

前述のとおり、休憩は、原則として事業場すべての労働者に一斉に与えなければなりませんが、交替勤務を採用する等、一斉に与えることが困難な場合には、過半数労働組合または労働者の過半数代表者と書面による労使協定を結ぶことで、交替で休憩を与えることができます(労基法34条2項)。

この場合、労使協定では、以下の事項を定めなければなりません(労基則15条1項)。

  • 一斉に休憩を与えない労働者の範囲
  • 一斉休憩の対象外の労働者に対する休憩の与え方

休憩に関する就業規則

休憩に関する事項は、就業規則絶対的必要記載事項に当たります(労基法89条1号)。

ムートン

就業規則には、休憩時間について必ず記載しましょう。

労基法上は、休憩時間の位置(時刻)をあらかじめ特定しておく必要はありませんが、全く特定しないと労働者の予測可能性がなくなるため、以下のように、一定程度の幅を設けつつ、ある程度特定して記載するのが一般的です。

  1. 休憩時間は、午前11時30分から午後1時30分の間の1時間とする。
  2. 会社は業務上の必要性がある場合、前項に定める休憩時間の位置を変更することがある。

また、交替休憩についての労使協定を締結している場合には、その内容も記載します。
この場合、就業規則本文に記載する代わりに、締結した労使協定を就業規則に添付することで、労使協定の内容を就業規則の一部とすることができます。

労基法違反となりうる事例

待機時間

待機時間とは、勤務中に特にすることがないものの使用者の指示があれば直ちに業務に従事できるような状況の時間をいいます。手待ち時間ともいいます。

待機時間では、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態のため、労働時間に当たり、休憩時間ではありません

このような時間を休憩時間としてカウントし、他に休憩時間を与えない場合、労基法違反となります。

電話・来客対応

休憩時間は、労働から完全に開放され、労働者が自由に使える時間である必要があります。

しかし、休憩時間とされている時間に電話や来客があったときには対応するよう命じられていた場合、その時間に労働から完全に開放されているとは言えないため、休憩時間とは認められず、別途休憩時間を与える必要があります

なお、明確に命じられていなくとも、その時間帯に他に電話・来客対応をできる者がおらず、事実上対応せざるをえない状況にある場合にも休憩時間と認められない可能性があります。

ランチミーティング

ランチミーティングについては、会社業務としての性格が強いか否かで判断が分かれます。

ランチミーティングへの参加が義務の場合には、会社業務となり、休憩時間とみなすことはできません。
また、義務と明記されていなくとも、参加しないと上司に注意を受けたり評価が下がったりといった不利益を受ける場合には、会社業務としての性格が強いとして休憩時間と認められない可能性があります。

他方、スキル向上のための情報提供や親睦などの福利厚生が主目的であり、参加が任意で、不参加による不利益がないようなものは休憩時間として認められます。

休憩時間のルールに違反した場合の罰則等

休憩時間に関する規定に違反した場合、労働基準監督署からの是正勧告指導の対象となります。

また、以下の者に、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性もあります(労基法119条1号・10条)。

  • 事業者
  • 事業の経営担当者
  • その他の事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者

さらに、休憩時間を適切に取らせることは経営者の安全配慮義務の一部ですので、休憩時間を適切に取らせないことで安全配慮義務違反を問われる可能性があります。
労基法上、安全配慮義務違反についての罰則はありませんが、民法に基づき損害賠償を請求される可能性があります。

なお、休憩時間違反となりうる事例記載の基準により、電話・来客対応ランチミーティングが休憩時間ではなく労働時間とされた場合、当該時間分の給料や残業代を支払う必要があります。

休憩時間を管理する際のポイント

使用者が適切に休憩時間を管理する際のポイントとしては、主に以下の4点があります。

① 休憩に関する社内ルールを策定する
② 休憩に関するルールを周知徹底する
③ 休憩を確実にとれるような業務管理をする
④ 実際に取得した休憩時間を把握できるシステムを構築する

①休憩に関する社内ルールを作成する

休憩時間管理のためにまず必要なのは、休憩に関する社内ルールを作成することです。
いままで記載したとおり、休憩については労基法上守らなければならない制約があります。

そこで、その制約と会社の実情を合わせ、労働者にどのような形で休憩を取らせるかのルールを策定する必要があります。
策定したルールについては、就業規則規定集ガイドラインなどの形で明文化しておくとよいでしょう。

また、ルール策定に当たり、労働基準監督署長の許可労使協定の締結などの手続きが必要な場合、その手続きをきちんと行うことも重要です。

②休憩に関するルールを周知徹底する

休憩の三原則」で述べたとおり、「休憩」には守らなければならない原則があり、待機時間や義務的なランチミーティングは休憩時間に含まれないなど、労基法上の「休憩」といえるための一定の基準を満たさなければなりません。

また、策定した休憩についての社内ルールも周知しなければ、管理職や従業員が把握することができません。

そこで、定期的に研修を行うなどの方法により、「休憩」の概念や休憩についての社内ルールを、労務管理を行う管理職や従業員に対し周知徹底することが重要です。

③休憩を確実にとれるような業務管理をする

休憩のルールが周知されていても、休憩時間に他に電話番をする人がいないなど、実務上、休憩時間に業務から離れられない体制となっている場合には、適法な休憩時間を確保することはできません。

そこで、各部署に、休憩時間を確保するために必要な人員を配置したり、各人の業務量配分を適切に行ったうえで、予め、休憩時間を織り込んだシフト表を作成するなど、休憩を確実に取らせることができる業務管理をする必要があります。

④実際に取得した休憩時間を客観的に把握できるシステムを構築する

休憩を取らせることは法律上の義務であり、また、安全配慮義務の観点からも、会社は、労働者が適切な休憩をとっているかを確認する必要があります。

そこで、タイムカードICカード、PCの使用時間の記録等の客観的な記録により休憩時間を把握できるシステムを構築したうえで、定期的に各労働者の休憩の取得状況を確認し、必要な休憩時間が取得できていない場合には、その原因を洗い出し、再度、人員配置、業務量配分、シフトを見直すなどの業務管理を行うことにより、必要な休憩を取らせるという一連のサイクルを構築するとよいでしょう。

ムートン

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参考文献

菅野和夫・山川隆一著『労働法 第13版』弘文堂、2024年

石嵜信憲編著『就業規則の法律実務 第6版』中央経済社、2024年

神内伸浩著『これ1冊でぜんぶわかる!労働時間制度と36協定 第2版』労務行政、2021年