【2022年4月施行】未成年とは?
民法のルール・成人との違い・
未成年者取消権などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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民法では、成年年齢(成人年齢)が18歳とされており、18歳未満の者は「未成年者」と呼ばれます。2022年4月に施行された改正民法により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
そのほかにも、未成年者と成人の間には、法的な取り扱いの違いがあります。一例として、パスポートの有効期間、性別変更審判の申立て、国家資格の取得、児童を対象とした性犯罪などについて、未成年者と成人で取り扱いが異なっています。
未成年者について特に重要なのは、未成年者の法律行為について認められている取消権(=未成年者取消権)です。
未成年者が法律行為をする際には原則として、法定代理人(=親権者など)の同意を得る必要があります。法定代理人の同意がない未成年者の行為は、原則として取り消すことが可能です。
企業が未成年者と契約を締結する際には、必ず法定代理人の同意書面を取得しましょう。この記事では未成年(未成年者)について、成人との違い・未成年者取消権・企業の注意点などを解説します。
※この記事は、2024年5月21日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 児童買春・児童ポルノ禁止法…児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
目次
未成年とは(未成年者とは)
民法では、成年年齢(成人年齢)が18歳とされており、18歳未満の者は「未成年者」と呼ばれます。
未成年者は、成人に比べてまだ判断能力が十分でないと考えられます。そのため未成年者には、契約などの法律行為が制限されているなど、成人にはない特別の法規制が適用されます。
2022年4月施行|民法改正により未成年は20歳未満から18歳未満に
2022年4月に施行された改正民法により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成年年齢の引き下げは、若者の自己決定権を尊重して積極的な社会参加を促すこと、および18歳から成年とする例が多い世界的な傾向に合わせることを目的とするものです。
成年年齢の引き下げにより、現在では18歳未満(17歳以下)の人が未成年者として取り扱われています。
未成年者と成人の主な違い
未成年者と成人の間で、法律上の取り扱いとして異なる点としては、主に以下の例が挙げられます。
① 単独での法律行為の可否|未成年者の場合、原則として法定代理人の同意が必要
② パスポートの有効期間|未成年者は期間10年のパスポートを取得できない
③ 性同一性障害者の取り扱い|性別変更審判の申立ては成人のみ可能
④ 国家資格の取得可否|公認会計士・司法書士・行政書士など
⑤ 児童を対象とした性犯罪の成否|児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法など
単独での法律行為の可否|未成年者の場合、原則として法定代理人の同意が必要
未成年者が法律行為(契約など)をするには、原則として法定代理人(=親権者など)の同意を得なければなりません(民法5条1項本文)。
必要な法定代理人の同意を得ることなくなされた未成年者の法律行為は、取り消すことができます(=未成年者取消権。同条2項)。未成年者取消権は、判断能力が十分でない未成年者が、適切な検討を行わずに法律行為をした結果、予期せぬ不利益を被る事態を防ぐことを目的とするものです。
ただし例外的に、未成年者取消権の行使が認められない場合もあります(後述)。
パスポートの有効期間|未成年者は期間10年のパスポートを取得できない
海外旅行や海外出張などをする際に必要となるパスポート(旅券)の有効期間には、5年と10年の2種類があります。
成人は5年・10年のいずれも選択できますが、未成年者が取得できるのは、有効期間5年のパスポートのみです。
性同一性障害者の取り扱い|性別変更審判の申立ては成人のみ可能
生物学的性と性自認が一致しない性同一性障害者(トランスジェンダー)の方は、家庭裁判所に対して性別の取扱いの変更の審判を申し立てることにより、戸籍上の性別を変更することができます。
ただし、性別の取扱いの変更の審判を申し立てることができるのは、18歳以上の方のみです。したがって、未成年者は性別の取扱いの変更の審判を申し立てることができません。
なお現行法上、性別の取扱いの変更の審判の要件としては、18歳以上であることのほかに以下の各点が挙げられています。
- 2人以上の医師により、性同一性障害であることが診断されていること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
- 生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態であること
- 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
国家資格の取得可否|公認会計士・司法書士・行政書士など
公認会計士・司法書士・行政書士・社会保険労務士などの職業に就くには、対応する国家資格を取得する必要があります。
これらの国家資格を取得できるのは18歳以上の方のみです。したがって、未成年者はこれらの国家資格を取得できません。
児童を対象とした性犯罪の成否|児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法など
児童福祉法や児童買春・児童ポルノ禁止法では、未成年者を対象とする性犯罪を防止するため、以下の行為を犯罪として禁止しています。
これらの犯罪は、児童(=18歳未満の者)を被害者とする場合に限って適用されます。
禁止行為 | 法定刑 |
---|---|
児童に淫行をさせる行為 | 10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科(児童福祉法34条1項6号・60条1項) |
児童買春 | 5年以下の懲役または300万円以下の罰金(児童買春・児童ポルノ禁止法4条) |
児童買春周旋 | 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科(同法5条1項) ※児童買春周旋を業とした場合は、7年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(同条2項) |
児童買春勧誘 | 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科(同法6条1項) ※児童買春勧誘を業とした場合は、7年以下の懲役および1000万円以下の罰金(同条2項) |
児童ポルノ所持 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法7条1項) |
児童ポルノ提供 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(同条2項) ※提供の目的による製造・所持・運搬・輸入・輸出・電磁的記録の保管なども同様(同条3項~5項) |
児童ポルノの不特定多数の者に対する提供、公然陳列 | 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科(同条6項) ※不特定多数の者に対する提供・公然陳列の目的による製造・所持・運搬・輸入・輸出・電磁的記録の保管なども同様(同条7項・8項) |
児童売春等目的人身売買等 | 1年以上10年以下の懲役(同法8条1項) ※外国に居住する児童で略取・誘拐・売買されたものを居住国外に移送した日本国民については、2年以上の有期懲役(同条2項) |
未成年者取消権について
企業が未成年者と取引するに当たっては、特に未成年者取消権に関する民法のルールに留意する必要があります。
未成年者取消権を行使した場合の効果
未成年者取消権が行使されると、契約などの法律行為は初めから無効であったものとみなされます(民法121条)。
取り消されて無効となった契約などに基づいて、未成年者側から何らかの給付(代金など)を受領している場合は、その給付を返還しなければなりません(民法121条の2第1項)。
他方で、未成年者側に対して何らかの給付(商品の引き渡しなど)を行った場合には、その給付の返還を請求できます。
ただし、未成年者取消権を行使した者は、現に利益を受けている限度において返還の義務を負うにとどまります(同条3項)。
例えば、未成年者が受け取った商品をすでに使い切ってしまっていた場合、商品が第三者に無償で譲渡された場合、商品が壊れてしまった場合などには、その商品の返還を求めることはできません。
未成年者取消権の行使方法
未成年者取消権は、未成年者またはその代理人、承継人もしくは同意をすることができる者が、法律行為の相手方に対して意思表示をする方法によって行使します(民法120条1項・123条)。
未成年者取消権の行使が認められないケース
以下のいずれかに該当する場合には、未成年者取消権を行使することができません。
① 未成年者が単独で法律行為をすることができる場合
② 未成年者が詐術を用いた場合
③ 取り消せる法律行為を追認した場合
④ 取消権が時効により消滅した場合
未成年者が単独で法律行為をすることができる場合
以下の行為については、未成年者でも法定代理人の同意を得ることなく単独で行うことができるため、未成年者取消権の行使は認められません。
- 単に権利を得、または義務を免れる法律行為(民法5条1項但し書き)
- 法定代理人が目的を定めて処分を許した財産につき、その目的の範囲内で処分する行為(同条3項)
- 法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産を処分する行為(同項)
- 一種または数種の営業を許された未成年者が、その営業に関してする行為(民法6条1項)
未成年者が詐術を用いた場合
未成年者が成人であると信じさせるために詐術(うそをつく、だますなど)を用いたときは、未成年者取消権を行使できません(民法21条)。
「詐術」とは、自らが成人であることについて、他の言動などと相まって相手方を誤信させ、または誤信を強める行為を意味します(最高裁昭和44年2月13日判決)。単に黙秘するだけでは詐術に当たりませんが、積極的詐術を用いないときでも、詐術が認定されることがあります。
取り消せる法律行為を追認した場合
未成年者取消権の行使が認められるケースでも、その法律行為を追認した場合には、以後未成年者取消権を行使することはできません(民法122条)。
追認の意思表示も取り消しと同様に、未成年者またはその代理人等が、法律行為の相手方に対して意思表示をすることにより行います(民法123条)。
追認ができるのは、未成年者が成人(18歳以上)になり、または未成年者取消権を有することを知った後に限られます(民法124条1項)。ただし、法定代理人が追認する場合や、未成年者が法定代理人の同意を得て追認する場合は、この限りではありません(同条2項)。
なお、追認をすることができる時以後に、未成年者取消権を行使できる行為について以下の事実があったときは、追認したものとみなされます。ただし、異議をとどめたときはこの限りではありません(民法125条)。
- 全部または一部の履行
- 履行の請求
- 更改
- 担保の供与
- 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部または一部の譲渡
- 強制執行
取消権が時効により消滅した場合
未成年者取消権は、追認することができる時(18歳になった時または取消権を有することを知った時)から5年間行使しないと、時効によって消滅します。法律行為の時から20年を経過したときも、同様に時効消滅します(民法126条)。
時効により消滅した未成年者取消権は、行使することができません。
未成年者と契約を締結する企業の注意点
企業が未成年者と契約を締結する際には、必ず法定代理人(=親権者など)の同意書面を取得しましょう。法定代理人の同意があったことを証明できれば、未成年者との契約が取り消されるリスクを回避できます。
また、特にインターネット上での取引については、契約者の年齢確認をどのように行うかが重要な課題となります。
前述のとおり、未成年者が成人であると信じさせるために詐術を用いた場合は、未成年者取消権を行使することができません。ただし、未成年者を保護する未成年者取消権の趣旨に鑑み、詐術の認定は慎重に行われる傾向にあります。
インターネット上での取引については、経済産業省が公表している「電子商取引及び情報財取引に関する準則」により、以下のような個別具体的な事情を総合的に考慮した上で実質的な観点から詐術に当たるかどうかを判断すべきものとされています。
① 未成年者の年齢
② 商品・役務が、未成年者が取引に入ることが想定されるような性質のものか否か
③ ①②の事情に対応して事業者が設定する、未成年者か否かの確認のための画面上の表示が、未成年者に対する警告の意味を認識させるに足りる内容の表示であるか
④未成年者が取引に入る可能性の程度等に応じて、不実の入力により取引することを困難にする年齢確認の仕組みとなっているか
など
ECサイトにて商品やサービスを販売する事業者は、上記の考慮要素を踏まえた上で、契約者の年齢確認を適切な方法によって実施することが求められます。多段階の確認ステップを設けて、契約者が未成年者であるかどうかを注意深く確認する仕組みを導入しましょう。
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