トランスジェンダーとは?
定義・性同一性障害との関係・性別変更手続き・
職場トラブル・セクハラ防止措置などを
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この記事のまとめ

トランスジェンダーTransgender)」とは、生物学的性と性自認が一致していない人をいいます。レズビアン(Lesbian)・ゲイ(Gay)・バイセクシュアル(Bisexual)・クエスチョニングまたはクィア(Questioning, Queer)とともに「LGBTQ」と総称されています。

トランスジェンダーは、一定の要件を満たせば裁判所に性別変更を求めることができます。ただし、性別変更を申し立てるか否かは任意であり、かつ生殖機能を完全に失っていることなどが条件とされているため、性別と性自認が一致しない状態で過ごしているトランスジェンダーの方は多い状況です。

トランスジェンダーの労働者については、本人に無断でトランスジェンダーであることを暴露する(アウティング)、トランスジェンダーをからかうような言動を受ける、トランスジェンダーを理由に不利益な取り扱いを受けるなどのトラブルが職場で起こりがちです。

企業は、トランスジェンダーに対する正しい理解に基づき、トランスジェンダーの労働者に対するハラスメント等を防止するため、必要な措置を講じなければなりません。

この記事ではトランスジェンダーについて、定義・性別変更手続き・職場で起こりがちなトラブル・セクハラ防止措置などを解説します。

ヒー

社員に「自分はトランスジェンダーだから、トイレは性自認に合うものを使いたい」と言われたら、どう対応すればよいのでしょう。

ムートン

基本的には、プライバシーに配慮しつつ、よく事情を聴くところからですね。話も聞かずに不利益な取り扱いをすることは厳に慎みましょう。

※この記事は、2023年10月17日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。

※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・LGBT法…性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律

トランスジェンダーとは

トランスジェンダーTransgender)」とは、生物学的性と性自認が一致していない人をいいます。「性自認」に着目した性的マイノリティである点が、トランスジェンダーの特徴です。

トランスジェンダー=生物学的性と性自認が一致していない人

生物学的性(Biological Sex)」とは、外性器・内性器・性染色体・性ホルモン分泌など、身体的な特徴に基づいて決まる性です。
これに対して「性自認(Gender Identity)」とは、自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無または程度に係る意識をいいます(LGBT法2条2項)。言い換えれば、「自分を男性・女性のどちら(またはどちらでもない)と認識しているか」が性自認です。

トランスジェンダーは、生物学的性と性自認が一致していません。つまり、生物学的な男性が自らを女性であると考えている状態、または生物学的な女性が自らを男性であると考えている状態がトランスジェンダーです。

性的指向と性自認の違い|トランスジェンダーは性自認に着目

性自認と並んで、性のあり方の主な構成要素に挙げられるのが「性的指向(Sexual Orientation)」です。

性的指向とは、恋愛感情または性的感情の対象となる性別についての指向をいいます(LGBT法2条1項)。言い換えれば、「誰を(男女どちらを)好きになるか」が性的指向です。

性的指向性自認は、個々に異なります。
性自認が男性である人の性的指向は、男性・女性のどちらもあり得ます。性自認が女性である人も同様に、性的指向は男性・女性のどちらもあり得ます。

トランスジェンダーの定義は、「生物学的性と性自認が一致していない人」です。つまり、トランスジェンダーは性自認に着目した分類となります。
これに対して、トランスジェンダーの性的指向は特に限定されていません。性的指向が男性・女性(あるいは両性)のいずれであっても、生物学的性と性自認が一致していなければ「トランスジェンダー」と呼ばれます。

トランスジェンダー以外の性的マイノリティ(LGBTQ)

トランスジェンダーは、「レズビアン(Lesbian)」「ゲイ(Gay)」「バイセクシュアル(Bisexual)」「クエスチョニングまたはクィア(Questioning, Queer)」とともに「LGBTQ」と総称されています。

各性的マイノリティは、性的指向性自認に応じて分類されています。

性的指向性自認
レズビアン女性女性
ゲイ男性男性
バイセクシュアル男性・女性(両性)どちらもあり得る(または決まっていない)
トランスジェンダーどちらもあり得る生物学的性と異なる性(生物学的性が男性であれば性自認は女性、生物学的性が女性であれば性自認は男性)
クエスチョニング(クィア)どちらもあり得る(または決まっていない)どちらもあり得る(または決まっていない)

レズビアンとは

レズビアン(Lesbian)」とは、女性を恋愛対象とする女性をいいます。

レズビアンの生物学的性は女性で、性自認も女性です。その一方で、性的指向が女性である点に着目して、レズビアンは性的マイノリティとされています。

ゲイとは

ゲイ(Gay)」とは、男性を恋愛対象とする男性をいいます。

ゲイの生物学的性は男性で、性自認も男性です。その一方で、性的指向が男性である点に着目して、ゲイは性的マイノリティとされています。

バイセクシュアルとは

バイセクシュアル(Bisexual)」とは、両性を恋愛対象とする人をいいます。

バイセクシュアルの生物学的性は、男性・女性のどちらの場合もあります。性自認は生物学的性と一致していることも、異なることもあります。
特に性的指向が両性である点に着目して、バイセクシュアルは性的マイノリティとされています。

クエスチョニング・クィアとは

クエスチョニング(Questioning)」とは、性的指向や性自認が定まっていない人をいいます。

また、性のあり方が非常に多様であることを考慮して、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーには当てはまらない性的少数者を総称する「クィア(Queer)」という呼称が用いられることもあります。

トランスジェンダーと性同一性障害の関係

トランスジェンダーは、「性同一性障害」と同じ意味で用いられることがありますが、両者のニュアンスは若干異なります。

トランスジェンダー」は、生物学的性と性自認が一致しない客観的な状態を意味します。
トランスジェンダーであることについて、本人の受け止め方はさまざまです。トランスジェンダーのままで問題ないと考えている方もいる一方で、生物学的性と性自認を一致させたいと考えている方もいます。

これに対して「性同一性障害」は、生物学的性と性自認が一致しない点はトランスジェンダーと同様ですが、不一致について本人が何らかのネガティブな認識感情を持っているのが大きな特徴です。
性同一性障害の方の多くは、精神療法・ホルモン治療・外科的治療(性別適合手術)などによって、生物学的性と性自認を一致させたいと考えています。

このように、トランスジェンダーが中立的・客観的側面の強い用語であるのに対して、性同一性障害は本人の意思や価値判断を含んでいるという違いがあります。

トランスジェンダーについて認められている性別変更手続き

性同一性障害の方は、以下の要件を全て満たす場合に限り、家庭裁判所に戸籍上の性別変更を申し立てることができます。

戸籍上の性別変更手続きの要件

① 2人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること
② 18歳以上であること
③ 現に婚姻をしていないこと
④ 現に未成年の子がいないこと
⑤ 生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
⑥ 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

参考:
性別の取扱いの変更|裁判所

ムートン

なお、⑤の要件については、最高裁の判断を受けて、今後見直しが行われることとなるでしょう。(2023年10月25日追記)

トランスジェンダーについて職場で起こりがちなトラブル

トランスジェンダーの従業員については、職場において以下のようなトラブルが発生することがあります。会社としては、これらのトラブルの発生を防止するため、社内における啓発などの対策に取り組まなければなりません。

① 本人に無断でトランスジェンダーであることを暴露する(アウティング)
② トランスジェンダーをからかうような言動を受ける
③ トランスジェンダーを理由に不利益な取り扱いを受ける

①本人に無断でトランスジェンダーであることを暴露する(アウティング)

本人に無断で、その性的指向や性自認を暴露することを「アウティング」といいます。

アウティングは、パワハラセクハラに当たり得るため、会社としては防止のための啓発などに取り組まなければなりません。従業員によってアウティングが行われた場合、会社は本人に対して、安全配慮義務違反(労働契約法5条)や使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負う可能性があるので要注意です。

②トランスジェンダーをからかうような言動を受ける

トランスジェンダーであることをからかうような言動も、パワハラやセクハラに当たることがあります。

他の従業員がトランスジェンダーの従業員をからかい、精神的損害を与えた場合には、会社も安全配慮義務違反や使用者責任に基づく損害賠償責任を負うおそれがあります。アウティングと同様に、トランスジェンダーであることを揶揄するような言動は厳に慎むべきことを、従業員に対して徹底的に教育しましょう。

③トランスジェンダーを理由に不利益な取り扱いを受ける

トランスジェンダーであることを理由とした、解雇や左遷などの不利益な取り扱いは、公序良俗違反により無効となるおそれがあります(民法90条)。

特に解雇に関するトラブルが生じると、会社は対応に大きなコストを割かなければなりません。実際に解雇が無効となってしまうと、復職に関する対応や未払い賃金の支払いも生じます。

このような事態を避けるためには、トランスジェンダーであることを理由に、従業員に対して不利益な取り扱いをしないようにしましょう。

企業が講ずべきセクハラ防止措置|トランスジェンダーも対象

厚生労働省が公表しているセクハラ防止指針では、セクシュアルハラスメントは同性に対するものも含むほか、被害者の性的指向または性自認を問わない旨が明記されています。

2 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容
⑴ ……なお、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。また、被害を受けた者(以下「被害者」という。)の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。

事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号)【令和2年6月1日適用】  – 厚生労働省

したがって、会社はトランスジェンダーが被害者となる事態も想定して、セクシュアルハラスメントを防止するための措置を講じなければなりません。具体的には、以下の措置を講じることが求められます。

会社がとるべき措置

①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
④その他、併せて講ずべき措置

①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発

職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針の明確化、および労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じることが求められます。

事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発に関する措置

・職場におけるセクシュアルハラスメントの内容と、セクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する。

・職場におけるセクシュアルハラスメントに当たる言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針と対処の内容を就業規則等に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する。

②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じることが求められます。

相談・苦情に応じる体制の整備に関する措置

・相談への対応窓口をあらかじめ定めて、労働者に周知する。

・相談窓口の担当者が、相談に対して、内容・状況に応じ適切に対応できるようにする(被害を受けた労働者が相談を躊躇する例があることなども踏まえ、広く相談に対応する)。

③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

実際にセクシュアルハラスメントの相談を受けた場合において、次の措置を講じることが求められます。

セクハラ発生時の迅速・適切な事後対応に関する措置

・セクシュアルハラスメントに関する事実関係を迅速・正確に把握する。

・セクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う。

・セクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、行為者に対する措置を適切に行う。

・改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発するなど、再発防止に向けた措置を講じる。

④その他、併せて講ずべき措置

上記のほか、次の措置を併せて講じることが求められます。

その他の措置

・セクシュアルハラスメントに関する事後対応に当たり、相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に対して周知する。

・セクシュアルハラスメントの相談をしたことなどを理由として、労働者が解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する。

ムートン

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