【2021年4月施行】
労働施策総合推進法改正
「中途採用比率の公表義務化」とは?改正ポイントを解説!
- この記事のまとめ
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改正労働施策総合推進法(2021年4月1日施行)のポイントを解説!
2020年3月31日に改正労働施策総合推進法が公布されました。
この改正により、大企業(労働者数301人以上)に対し、中途採用者数の割合の定期的な公表が義務付けられます。
この記事では、2021年4月1日に施行される「改正労働施策総合推進法」の中途採用比率の公表について解説します。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 労働施策総合推進法…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)
- 労働施策総合推進法施行規則…労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和41年労働省令第23号)
(※この記事は、2021年5月19日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。)
目次
公布日・施行日
雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)により、労働施策総合推進法が改正されます。
公布日と施行日は以下のとおりです。
- 公布日・施行日
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公布日|2020年3月31日
施行日|2021年4月1日
また、この法改正に伴い、労働施策総合推進法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第 210 号 2020年12月28日公布)によって労働施策総合推進法施行規則も改正され、2021年4月1日に施行されます。
労働施策総合推進法改正(2021年4月1日施行)の概要
今回の改正により、常時雇用する労働者が301人以上の企業は、直近の3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率を公表することが必要となります。
改正の趣旨
この改正の趣旨ですが、厚生労働省が公開している資料によると、以下のように説明されています。
- 改正の趣旨
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✅人生100年時代において職業生活の長期化が見込まれる中、労働者の主体的なキャリア形成による職業生活の更なる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備をさらに推進していくことが必要である。
✅(このため、中途採用に関する情報の公表を求めることにより、企業が長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供している状況を明らかにし、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進していく。引用元 | 厚生労働省「中途採用に関する情報公表について(労働施策総合推進法関係)」
中途採用比率の公表義務化とは?
今回の改正について、内容を詳しく解説します。
まず、労働施策総合推進法の改正により27条の2が新設され、同条1項によって、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主は、中途採用により雇い入れられた者の数の割合を定期的に公表することが義務となりました。
また、上記の法改正を踏まえて労働施策総合推進法施行規則も改正され、9条の2が新設されました。この規則において、公表の具体的な方法等が定められています。
労働施策総合推進法
第七章 中途採用に関する情報の公表を促進するための措置等
第27条の2
1 常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の職業選択に資するよう、雇い入れた通常の労働者及びこれに準ずる者として厚生労働省令で定める者の数に占める中途採用(新規学卒等採用者(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(小学校及び幼稚園を除く。)その他厚生労働省令で定める施設の学生又は生徒であつて卒業することが見込まれる者その他厚生労働省令で定める者であることを条件とした求人により雇い入れられた者をいう。)以外の雇入れをいう。次項において同じ。)により雇い入れられた者の数の割合を定期的に公表しなければならない。
2 国は、事業主による前項に規定する割合その他の中途採用に関する情報の自主的な公表が促進されるよう、必要な支援を行うものとする。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)– e-Gov法令検索 –電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
労働施策総合推進法施行規則
(中途採用に関する情報の公表)
第9条の2
1 法第27条の2第1項の規定による公表は、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の三事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように行わなければならない。
2 法第27条の2第1項の通常の労働者に準ずる者として厚生労働省令で定める者は、短時間正社員(期間の定めのない労働契約を締結している労働者であつて、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短く、かつ、通常の労働者と同等の待遇を受けるものをいう。)とする。
3 法第27条の2第1項の厚生労働省令で定める施設は、専修学校とする。
4 法第27条の2第1項のその他厚生労働省令で定める者は、次のとおりとする。
⑴公共職業能力開発施設(職業能力開発促進法第15条の7第1項各号(第4号を除く。) に掲げる施設をいう。次号ロにおいて同じ。)又は職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を受ける者であつて修了することが見込まれるもの
⑵次に掲げる者であつて、学校の生徒若しくは学生又は専修学校の生徒であつて卒業することが見込 まれる者及び前号に掲げる者に準ずるもの
イ 学校又は専修学校を卒業した者
ロ 公共職業能力開発施設又は職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を修了した者
ハ 学校教育法第134条第1項に規定する各種学校に在学する者であつて卒業することが見込まれるもの又は当該各種学校を卒業した者
ニ 学校若しくは専修学校に相当する外国の教育施設に在学する者であつて卒業することが見込まれるもの又は当該外国の教育施設を卒業した者
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省令第二百十号)– e-Gov法令検索 –電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
今回の改正の内容をまとめると、以下のようになります。
「正規雇用労働者」とは、通常の労働者(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律2条)及び、短時間正社員をいいます。
通常の労働者とは、いわゆる正社員のことを指します。雇用形態や賃金体系などを総合的に考慮して「通常の労働者」にあたるか否か判断します。
「中途採用」とは、新規学卒等採用者以外の雇入れをいいます(労働施策総合推進法27条の2第1項)。
「新規学卒等採用者」とは、労働施策総合推進法27条の2第1項によると、以下の者をいいます。
大企業の定義である「常時雇用する労働者が301人以上」における「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、以下の者を指します。
また、「直近の3事業年度」とは、事業年度における正規雇用労働者の採用活動が終了し、正規雇用労働者に占める中途採用者の割合を「見える化」することができる状態となった最新の事業年度を含めた3事業年度を指します。
さらに、公開の方法について、労働施策総合推進法施行規則9条の2第1項においてはインターネットの利用が例示されていますが、それ以外の方法でも、例えば事業所への掲示や書類の備え付け等、求職者等が容易に閲覧できる方法での公表も認められます。
中途採用比率の公表義務化による実務への影響
中途採用比率の公表義務への違反について罰則は定められていませんが、対象となる事業主においては、労働施策総合推進法及び同法施行規則に従った方法での中途採用比率の公表が求められます。
具体的な公表の方法ですが、一例として以下のような形で中途採用者の割合を自社のホームページ等で公開することが考えられます。
参考文献
厚生労働省ウェブサイト「正規雇用労働者の中途採用比率の公表」
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「リーフレット:正規雇用労働者の中途採用比率の公表」
厚生労働省「中途採用比率の公表における解釈事項等について」(2021年2月9日公開)
厚生労働省「中途採用に関する情報公表について」(労働施策総合推進法関係)
厚生労働省職業安定局長通達「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(職発0209 第3号)」