【2025年5月までに施行】
流通業務総合効率化法・
貨物自動車運送事業法改正とは?
改正の背景・変更点などを分かりやすく解説!
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 10分で読める!2024年施行予定の法改正まとめ |
- この記事のまとめ
-
2024年4月26日に、国会において「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が可決・成立し、改正法(令和6年法律第23号)が同年5月15日に公布されました。
同法は、「2024年問題」による物流停滞への懸念や、軽トラック運送業における死亡・重傷事故の増加に対処するため、運送事業の効率化や業務の適正化に関する新たな規制を定めるものです。
併せて、流通業務総合効率化法は「物資の流通の効率化に関する法律」へと題名(名称)が改正されます。
この記事では流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正について、改正の背景や変更点などを解説します。
※この記事は、2024年5月15日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 改正法…「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」
- 流通業務総合効率化法…改正法による改正前の「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」
- 物資流通効率化法…改正法による改正後の「物資の流通の効率化に関する法律」(「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から題名変更)
- 改正貨物自動車運送事業法…改正法による改正後の「貨物自動車運送事業法」
目次
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正とは
2024年4月26日に、国会において「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が可決・成立し、改正法(令和6年法律第23号)が同年5月15日に公布されました。
改正法は、「2024年問題」による物流停滞への懸念や、軽トラック運送業における死亡・重傷事故の増加に対処するため、運送事業の効率化や業務の適正化に関する新たな規制を定めるものです。
流通業務総合効率化法とは
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(流通業務総合効率化法)とは、流通業務の総合化および効率化の促進を図ることを目的とした法律です。
国による総合効率化計画の認定制度、総合化・効率化に必要な許認可の特例、中小企業者による流通業務に関する資金調達の円滑化に関する措置などを定めています。
改正法により、流通業務総合効率化法は「物資の流通の効率化に関する法律」(物資流通効率化法)へと題名が改められます。
貨物自動車運送事業法とは
「貨物自動車運送事業法」とは、貨物自動車による輸送の安全と、貨物自動車運送事業の健全な発達を図ることを目的とした法律です。
主に、貨物自動車運送事業の許可制や行為規制などを定めています。
改正法の公布日・施行日
改正法の公布日と施行日は、以下のとおりです。
公布日|2024(令和6)年5月15日
施行日|公布日から1年以内の政令で定める日 ※一部例外あり
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法が改正される背景
流通業務総合効率化法および貨物自動車運送事業法が改正される背景には、主に以下の2つの事情があります。
① 「2024年問題」による物流停滞への懸念
② 軽トラック運送業における死亡・重傷事故の増加
「2024年問題」による物流停滞への懸念
物流業界では、2024年4月からドライバーの労働時間に関する規制が強化されました。
規制強化に伴うドライバーの労働時間短縮により、労働力が不足して物流が停滞することが懸念されています。短くなる労働時間をカバーするため、物流業務の効率化が求められている状況です。
物流業界におけるドライバーの労働時間規制の強化に関する詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
軽トラック運送業における死亡・重傷事故の増加
軽トラック運送業では近年、死亡・重傷事故の件数が大幅に増加しています。
法案の概要においては、軽トラック運送業における死亡・重傷事故件数が、最近6年で倍増したことが指摘されています。
こうした状況を踏まえて、軽トラック事業者における死亡・重傷事故の件数を減らすため、事業者に対する安全対策規制等の強化が求められています。
流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正の概要
改正法による流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法改正のポイントは、以下の3点です。
① 物流事業者・荷主に対する施策
② トラック事業者間の取引に対する施策
③ 軽トラック事業者に対する施策
変更点1|物流事業者・荷主に対する施策
物流業務全体を効率化するため、改正法では、物流事業者および荷主に対して以下の新たな規制が設けられました。
(a) 物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務化
(b) 特定事業者の指定・義務付けなどの規制強化
物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務化
物流事業者(トラック・鉄道・港湾運送・航空運送・倉庫)は、雇用する運転者への負荷の低減に資するように、運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物重量の増加を図るため、輸送網の集約・配送の共同化その他の措置を講ずることが努力義務となります(物資流通効率化法34条、52条)。
また、荷主も、運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物重量の増加を図るため、物流事業者への協力につながる一定の措置を講ずることが努力義務となります(同法42条)。
国土交通省「『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案』概要」
加えて、連鎖化事業者(フランチャイザー)は、貨物を運送する運転者の荷待ち時間の短縮および運転者1人当たり・1回の運送ごとの貨物重量の増加を図るため、貨物の受渡しを行う日時等について一定の措置を講ずることが努力義務となります(物資流通効率化法61条)。
物流効率化措置に関する国の判断基準の策定
物流事業者および荷主において講ずべき物流効率化措置に関しては、主務省令において判断基準を定めるものとされています(物資流通効率化法35条、43条、53条、62条)。
物流効率化措置に関する国の指導・助言・調査・公表
主務大臣は、物流効率化措置の適確な実施を確保するために必要があると認めるときは、物流事業者または荷主に対して必要な指導・助言をすることができます(物資流通効率化法36条、44条、54条、63条)。
また国は、貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送・荷役等の効率化のために必要があると認めるときは、物流効率化措置に関する判断基準となるべき事項について調査を行い、その結果を公表するものとされています(同法71条)。
特定事業者の指定・義務付けなどの規制強化
改正法により、一定規模以上の物流事業者および荷主を特定事業者として指定するものとされています。特定事業者には、物流効率化に関する中長期計画の作成および定期報告等が義務付けられます。
また、特定事業者である荷主および連鎖化事業者においては、物流統括管理者の選任が義務付けられます。
特定事業者とは
特定事業者に当たるのは、以下のいずれかに該当するものとして、主務大臣によって指定された物流事業者または荷主です。具体的な指定基準は、今後制定される政令によって定められます(物資流通効率化法37条、45条、55条、64条)。
- 特定事業者に当たる者
-
✅ 特定貨物自動車運送事業者等
→貨物自動車運送事業者等のうち、輸送能力が一定以上であり、その雇用する運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物の重量を特に増加させる必要がある者✅ 特定荷主
→運送を委託した貨物の合計重量が一定以上であり、運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物の重量の増加に特に寄与する必要がある者✅ 特定倉庫業者
→倉庫業者のうち、貨物の保管量が一定以上であり、運転者の荷待ち時間の短縮に特に寄与する必要がある者✅ 特定連鎖化事業者
→連鎖化事業者のうち、運転者から受け取る貨物などの合計重量が一定以上であり、運転者の荷待ち時間の短縮および運転者1人当たり・運送1回ごとの貨物の重量の増加に特に寄与する必要がある者
中長期計画の作成・定期報告の義務付け
特定事業者として指定された物流事業者・荷主は、物流効率化措置に関する中長期的な計画を作成し、主務大臣に提出しなければなりません(物資流通効率化法38条、46条、56条、65条)。
また特定事業者は、指定を受けた翌年度以降は毎年度、物流効率化措置の実施状況を主務大臣に報告しなければなりません(同法39条、48条、57条、67条)。
物流効率化措置の実施状況が著しく不十分な特定事業者は、主務大臣による勧告・公表・措置命令の対象となります(同法40条、49条、58条、68条)。
✅ 荷待ち・荷役時間の削減|年間125時間/人削減
✅ 積載率向上による輸送能力の増加|16パーセント増加
(2019年度比)
物流統括管理者の選任の義務付け(特定荷主・特定連鎖化事業者)
特定事業者のうち特定荷主および特定連鎖化事業者は、その指定を受けた後、速やかに物流効率化のために必要な業務を統括管理する者(=物流統括管理者)を選任しなければなりません(物資流通効率化法47条、66条)。
物流統括管理者が統括管理すべき業務としては、物流効率化措置に関する中長期的な計画の作成や、物流効率化に取り組むための体制整備などが挙げられます。
物流統括管理者を選任または解任した場合には、主務大臣に届け出なければなりません。
変更点2|トラック事業者間の取引に対する施策
物流業務に関する元請事業者と下請事業者の取引を適正化するため、改正法では以下の新たな規制が設けられました。
① 実運送体制管理簿の作成の義務付け
② 運送契約締結時の書面交付等の義務付け
③ 下請け適正化の努力義務化・一定規模以上の事業者への義務付け
実運送体制管理簿の作成の義務付け
元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、原則として以下の事項を記載した実運送体制管理簿を作成することが義務付けられます(改正貨物自動車運送事業法24条の5)。これは、運送体制の明確化を図ることを目的とするものです。
- 実運送体制管理簿の記載内容
-
(a) 真荷主から引き受けた貨物の運送について、実運送を行う貨物自動車運送事業者の商号または名称
(b) (a)の貨物自動車運送事業者が実運送を行う貨物の内容および区間
(c) (a)の貨物自動車運送事業者の請負階層(=下請けに出した回数)
(d) その他省令で定める事項
運送契約締結時の書面交付等の義務付け
元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、原則として下請事業者に対して以下の事項を記載した書面を交付することが義務付けられます(改正貨物自動車運送事業法24条2項)。
- 運送契約締結時に交付する書面の内容
-
(a) 運送の役務の内容およびその対価
(b) 運送の役務以外の役務が提供される場合は、その内容および対価
(c) その他省令で定める事項
下請け適正化の努力義務化・一定規模以上の事業者への義務付け
元請事業者が、真荷主から受託した運送業務を下請けに出すときは、下請け発注に関する一定の健全化措置を講ずることが努力義務となります(改正貨物自動車運送事業法24条1項)。
- 健全化措置の内容(努力義務)
-
・運送に要する費用の概算額を把握し、当該概算額を勘案して利用の申込みをすること
・荷主が提示する運賃・料金が上記概算額を下回る場合は、荷主に対し、運賃・料金について交渉をしたい旨を申し出ること ・下請事業者に2段階以上の再委託の制限などの条件を付すること
・その他省令で定める措置
また、一定規模以上の下請け発注を行う元請け事業者においては、①健全化措置に関する規程(=運送利用管理規程)、および②健全化措置の実施等を管理する運送利用管理者を定めて国土交通大臣に届け出ることが義務付けられます(同法24条の2、24条の3)。
変更点3|軽トラック事業者に対する施策
軽トラック運送業における死亡・重傷事故を抑制するため、改正法では、軽トラック事業者(貨物軽自動車運送事業者)に対して、新たな規制が設けられました。
軽トラック事業者は、事業の届出を行った後、速やかに貨物軽自動車安全管理者1人を選任し、国土交通大臣に届け出ることが義務付けられます。貨物軽自動車安全管理者を解任した場合も、同様に届出が必要です(改正貨物自動車運送事業法36条の2第1項、第2項)。
また軽トラック事業者は、貨物軽自動車安全管理者に定期講習を受けさせる義務を負います(同条3項)。
上記のほか、軽トラック運送業における死亡・重傷事故の抑制策として、国土交通大臣に対する事故報告が義務付けられます。
さらに、軽トラック事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報が、国交省ウェブサイトの公表対象として新たに追加される予定です。
おすすめ資料を無料でダウンロードできます ✅ 10分で読める!2024年施行予定の法改正まとめ |
参考文献
国土交通省ウェブサイト「『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案』を閣議決定」