都市計画法とは?
都市計画区域と準都市計画区域・
用途地域などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「都市計画法」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、都市計画に関する事項を定めた法律です。
各都道府県は、市町村の中心となる市街地を含む地域を「都市計画区域」、その周辺等で多くの建築物の建設等が見込まれる地域を「準都市計画区域」に指定します。都市計画区域・準都市計画区域では、開発行為や建築等について、都市計画法および建築基準法に基づく規制が適用されます。
さらに都道府県や市町村(または国土交通大臣)は、都市の整備計画を詳細に定めた都市計画を決定します。都市計画においては、都市計画区域・準都市計画区域に設定される「用途地域」が特に重要で、その種類によって建築物の形状などが制限されます。
この記事では都市計画法について、目的・都市計画区域と準都市計画区域・都市計画の内容などを解説します。
※この記事は、2023年8月16日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法…都市計画法
目次
都市計画法とは
「都市計画法」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、都市計画に関する事項を定めた法律です。
都市部を中心に幅広い地域が、都市計画法に基づく都市計画区域や準都市計画区域として指定されています。
都市計画法の全体像(概要)
都市計画法は、附則を除いて全9章から成り立っています。
第1章 総則
法の目的、用語の定義、都市計画区域および準都市計画区域の指定など、都市計画法に関する基本的な事項を定めています。
第2章 都市計画
都市計画に定めるべき内容や、都市計画の決定・変更手続きを定めています。
第3章 都市計画制限等
都市計画区域および準都市計画区域において、開発行為や建築などに適用される規制を定めています。
第4章 都市計画事業
都市計画事業(都市計画施設の整備・市街地開発)の認可・施行などに関する手続きやルールを定めています。
第5章 都市施設等整備協定
都道府県・市町村が、都市施設等の整備を委託する事業者との間で締結する協定(=都市施設等整備協定)に関する事項を定めています。
第6章 都市計画協力団体
市町村において都市計画に関する業務をサポートする、都市計画協力団体に関する事項を定めています。
第7章 社会資本整備審議会の調査審議等及び都道府県都市計画審議会等
国土交通省の調査・諮問機関である社会資本整備審議会と、都道府県の調査・諮問機関である都市計画審議会に関する事項を定めています。
第8章 雑則
都市計画法に関する行政機関の権限・監督などに関する事項を定めています。
第9章 罰則
都市計画法に違反する行為に対する罰則を定めています。
上記のうち、事業者が特に留意すべきなのは第1章から第4章の規定です。本記事でも、第1章から第4章の規定を中心に解説します。
都市計画区域・準都市計画区域とは
都市計画法の規制を理解するためには、まず「都市計画区域」と「準都市計画区域」について理解する必要があります。
① 都市計画区域
市または一定規模以上の町村の中心の市街地を含み、一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要があるものとして、都道府県が指定した区域です。
② 準都市計画区域
都市計画区域外の区域のうち、相当数の建築物等の建築・建設・敷地の造成が現に行われ、または行われると見込まれる区域を含み、何らの措置を講じることなく放置すれば、将来的に都市の整備・開発・保全に支障が生じるおそれのあるものとして、都道府県が指定した区域です。
都市計画区域・準都市計画区域において適用される規制
都市計画区域・準都市計画区域において行われる開発行為や建築等には、主に以下の規制が適用されます。
① 開発行為の許可制
② 区域・地域・地区に応じた建築等の規制
③ 建築基準法に基づく建築規制
開発行為の許可制
都市計画区域または準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、原則として、あらかじめ都道府県知事(指定都市・中核市においては市長)の許可を受けなければなりません(法29条1項)。
都道府県知事(または市長)は、開発許可の基準(法33条)に適合しているかどうか審査を行った上で、許可または不許可を判断します。
区域・地域・地区に応じた建築等の規制
都市計画の対象である都市計画区域または準都市計画区域内では、区域・地域・地区に応じて、建築等に対する規制が適用されます(法52条~58条の4)。
一例として、以下の区域では、建築等が許可制とされています。
- 田園住居地域内の農地の区域内(法52条)
- 市街地開発事業等予定区域に関する都市計画において定められた区域内(法52条の2)
- 都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内(法53条)
- 施行予定者が定められている都市計画施設の区域等内(法57条の3)
- 条例で定められた、地区計画の区域内の農地の区域内(法58条の3)
建築基準法に基づく建築規制
建築基準法41条の2以下では、都市計画区域および準都市計画区域内における建築物に適用される以下の規制を定めています。これらの規制は「集団規定」と総称されています。
① 接道規制(道路に関する制限)
② 用途規制(用途地域に関する制限)
③ 形態規制(建物の容積率・建ぺい率などに関する制限)
集団規定を含む建築基準法の詳細については、以下の記事を併せてご参照ください。
建築基準法・暴力団排除条例との関係
建築基準法や、各都道府県が定める暴力団排除条例では、都市計画法に基づく区域・地域を基準とした規制が定められています。
(例)
・都市計画区域および準都市計画区域において建築物を建てる際には、接道要件を満たす必要がある(建築基準法43条)
・都市計画法に定める住居系用途地域、商業系用途地域、工業系用途地域(工業専用地域を除く)では、暴力団事務所を開設してはならない(大阪府暴力団排除条例18条2項)
したがって、建築基準法や暴力団排除条例の規制を正しく理解するためには、都市計画法の規制についても理解しておかなければなりません。
都市計画とは
都市計画区域については「都市計画」において、その整備・開発・保全の方針を定めるものとされています(法6条の2第1項)。
都市計画を定める者
都市計画のうち、広域的・根幹的な都市計画は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定めます(法15条)。
都市計画区域が2以上の都府県にわたる場合は、国土交通大臣および市町村が定めます(法22条1項)。ただしこの場合、都市計画の原案は都府県が作成します(同条2項)。
都市計画の内容
都市計画には、以下の事項を定めます。
①都市計画区域の整備・開発・保全の方針(法6条の2)
②区域区分(法7条)
③都市再開発方針等(法7条の2)
④地域・地区・街区(法8条~10条の4・12条の2)
⑤都市施設(法11条)
⑥市街地開発事業(法12条)
⑦地区計画等(法12条の4~12条の13)
① 都市計画区域の整備・開発・保全の方針
都市計画には必ず、対象となる都市計画区域の整備・開発・保全の方針が定められます(法6条の2第1項)。
さらに、以下の事項についても定めるよう努めるものとされています(同条2項)。
- 区域区分の決定の有無、決定する場合はその方針
- 都市計画の目標
- 土地利用、都市施設の整備および市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針
② 区域区分
都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることができます(法7条1項)。
(a) 市街化区域
すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(同条2項)
(b) 市街化調整区域
市街化を抑制すべき区域(同条3項)
③ 都市再開発方針等
都市計画区域における再開発等について、以下の事項を定めることができます(法7条の2第1項)。
- 都市再開発の方針
- 住宅市街地の開発整備の方針
- 拠点業務市街地の開発整備の方針
- 防災街区整備方針
都市計画区域について定められる都市計画は、上記の都市再開発方針等に即したものでなければなりません(同条2項)。
④ 地域・地区・街区
都市計画区域については、用途などに応じた地域・地区・街区を定めることができます(法8条~10条の4・12条の2)。また準都市計画区域においても、一部の地域・地区・街区を定めることが認められています(法8条2項)
各地域・地区・街区においては、その種類に応じて建築等が制限されます。
都市計画における地域・地区・街区の中では、特に13種類の「用途地域」が重要です(後述)。
⑤ 都市施設
都市計画区域については、以下の都市施設を定めることができます。また、特に必要があるときは、都市計画区域外においても都市施設を定めることが可能です(法11条)。
- 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
- 公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
- 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設または処理施設
- 河川、運河その他の水路
- 学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
- 病院、保育所その他の医療施設または社会福祉施設
- 市場、と畜場または火葬場
- 一団地の住宅施設
- 一団地の官公庁施設
- 一団地の都市安全確保拠点施設
- 流通業務団地
- 一団地の津波防災拠点市街地形成施設
- 一団地の復興再生拠点市街地形成施設
- 一団地の復興拠点市街地形成施設
- その他政令で定める施設
⑥ 市街地開発事業
都市計画区域については、以下の事業を定めることができます(法12条1項)。
- 土地区画整理事業
- 新住宅市街地開発事業
- 工業団地造成事業
- 市街地再開発事業
- 新都市基盤整備事業
- 住宅街区整備事業
- 防災街区整備事業
⑦ 地区計画等
都市計画区域については、以下の計画を定めることができます(法12条の4~12条の13)。
- 地区計画
- 防災街区整備地区計画
- 歴史的風致維持向上地区計画
- 沿道地区計画
- 集落地区計画
都市計画区域・準都市計画区域に設定できる「用途地域」とは
都市計画区域および準都市計画区域には、都市計画によって13種類の「用途地域」を指定できます(法8条1項1号・同条2項)。用途地域の種類によって建築等が制限されるので、建物などを建築する際には注意しなければなりません。
用途地域の区分
用途地域は、以下の13種類に区分されています。
① 第一種低層住居専用地域
低層住宅に特化した住宅地です。建築が認められるのは原則として住宅等のみで、厳格な高さ制限や日影規制などが適用されます。
② 第二種低層住居専用地域
低層住宅に特化した住宅地ですが、第一種低層住居専用地域に比べると、建築制限が一部緩和されています。小規模であれば、コンビニなどの店舗も建築可能です。
③ 第一種中高層住居専用地域
分譲マンションなど、中高層住宅に特化した住宅地です。高さ制限が適用されず、建築可能な店舗の規模もやや大きくなります。
④ 第二種中高層住居専用地域
分譲マンションなど、中高層住宅に特化した住宅地です。第一種中高層住居専用地域よりも建築制限が緩やかで、中規模の店舗や2階以下の事務所も建築できます。
⑤ 第一種住居地域
住宅地です。住居専用地域に比べると建築制限が緩やかで、密集した住宅の建築も可能であるほか、比較的大きな規模の店舗や遊戯施設なども建築できます。
⑥ 第二種住居地域
主に住宅地ですが、第一種住居地域よりもさらに建築制限が緩やかです。
⑦ 準住居地域
道路の沿道で、住環境と利便性の調和を図る地域です。第二種住居地域よりもさらに建築制限が緩やかとなっています。
⑧ 田園住居地域
田園と市街地の共存を図る地域です。建築制限は第二種低層住居専用地域に準じますが、農産物直売所や農家レストラン、農産物の貯蔵倉庫や処理工場などが建築できます。
⑨ 近隣商業地域
近隣住民のための商業地域です。幅広い建物を建築可能ですが、風俗施設・危険性の高い工場・危険物処理施設などは建築が制限されています。
⑩ 商業地域
商業地域です。近隣商業地域よりもさらに建築制限が緩やかで、風俗施設なども建築できます。
⑪ 準工業地域
環境の悪化をもたらすおそれのない工業施設のための地域です。風俗施設などは建築できませんが、危険性の高い工場や危険物処理施設などは建築可能です。
⑫ 工業地域
工業施設のための地域です。工場や倉庫などの建設が無制限に認められる一方で、店舗やホテルなどの建築が制限されており、工業に特化されています。ただし、高層マンションなどは建築されることがあります。
⑬ 工業専用地域
完全に工業に特化した地域です。工業施設の建設が無制限に認められますが、住宅を建築することはできません。
都市計画の決定手続き
都市計画は、以下の流れで決定に至ります。
① 原案の作成
② 公聴会等による住民意見の反映
③ ②を反映した都市計画案の作成
④ 都道府県が定める場合は区市町村の意見聴取、区市町村が定める場合は都道府県との協議
⑤ 都市計画案の公告・縦覧(2週間)
⑥ 住民等による意見書の提出
⑦ 都市計画審議会
⑧ (都道府県が定める場合)国への協議・同意
⑨ 都市計画の決定
⑩ 告示・縦覧
都市計画と都市計画事業の違い
都市計画法では、都市計画とは別に「都市計画事業」が定義されています。
都市計画は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用・都市施設の整備・市街地開発事業に関する計画です(法4条1項)。
都市計画事業は、都市計画法に基づく認可または承認を受けて行われる、都市計画施設の整備に関する事業および市街地開発事業をいいます(同条15項)。
都市計画は、都市整備の青写真に過ぎません。これに対して都市計画事業は、施行されると土地収用などの法的強制力が発生します。
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