申込書とは?
目的・契約書との違い・文例・
記載事項・作成時の注意点・
印紙などを分かりやすく解説!
- この記事のまとめ
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「申込書」とは、契約の締結を申し込むために、相手方に対して交付する書面です。
契約の申込みは口頭でも行うことができますが、申込書を作成・交付すれば、申込みをしたことの証拠を残すことができます。申込書には、主に申込年月日・申込者および相手方の情報・申込みの内容などを記載します。契約締結に関する申込書には、締結する契約を明確に指示することが大切です。
申込書の送達は、日本郵便(郵便局)以外の業者に委託してはなりません。宅配業者などは利用せず、郵便やメールなどを利用して申込書を送付しましょう。
申込書には原則として収入印紙の貼付を要しませんが、申込書が契約書に当たると評価される場合は、収入印紙の貼付が必要になることがあります。
この記事では申込書について、目的・契約書との違い・文例・記載事項・作成時の注意点などを解説します。
※この記事は、2024年7月31日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
目次
申込書とは
「申込書」とは、契約の締結などを申し込むために、相手方に対して交付する書面です。習い事やジムなどへの入会を申し込む際に作成・交付する申込書も、法的には契約の締結を申し込むものに当たります。
申込書を作成・交付すれば、証拠が残る形で契約の申込みをすることができます。
申込書を作成する・提出させる目的
申込書を作成する目的は、証拠が残る形で契約の締結などを申し込むことです。
契約の締結などの申込みは口頭でも行うことができますが、書面がなければ後から申込みをした事実を立証することは困難です。申込書を作成・交付すれば、申込みをした事実の証拠を残すことができます。
反対に、契約の締結などの申込みを受ける側としても、申込みを受けた事実の証拠を残すために、口頭ではなく申込書の提出を求めるケースがよくあります。
申込書と契約書の違い
申込書は、契約の締結などを希望する側が、相手方に対して交付する書面です。したがって申込書は、契約当事者となる者のうちいずれか一方が単独で作成します。
また、申込書を交付しただけで契約が成立するわけではありません。相手方が申込みを承諾した時点で、はじめて契約が成立します。
これに対して契約書は、契約成立の証として当事者が共同で作成する書面です。契約書が有効に作成された時点で、契約が成立します。
ただし「申込書」という名称であっても、実質的に見て契約の成立等を証する文書であれば、印紙税法との関係で「契約書」として取り扱われることがあります(後述)。
申込書を作成するケースの具体例
申込書を作成するケースとしては、以下の例が挙げられます。
(例)
・習い事を始める際に、教室に対して申込書を提出した。
・ジムの月額会員になるために、ジムに対して申込書を提出した。
・住宅ローンの審査を申し込むために、金融機関に対して申込書を提出した。
・会社で使用するシステムのサブスクリプション利用を申し込むために、運営会社に対して申込書を提出した。
など
申込書の文例(テンプレート)
一般的な申込書の文例(テンプレート)を紹介します。
入会申込書の文例(テンプレート)
習い事やジムなどの会員になろうとする人が、運営会社に対して提出する入会申込書の文例(テンプレート)です。
○○入会申込書 申込日:○年○月○日 ○○株式会社 御中 私は以下のとおり、○○への入会を申し込みます。なお、当該申込みに係る契約条件は、裏面の利用規約に従うものとします。 氏名:○○ ○○ |
契約の締結に関する申込書の文例(テンプレート)
契約の締結を希望する者が、相手方となる者に対して交付する申込書の文例(テンプレート)です。
○○契約の締結に係る申込書 申込日:○年○月○日 ○○株式会社 御中 ○○県○○市…… 当社は貴社に対し、××に関する○○契約の締結を申し込みます。当該申込みに係る契約条件は、別添の契約条項に従うものとします。 以上 |
申込書の主な記載事項
申込書に記載すべき主な事項は、以下のとおりです。
① 申込年月日
② 申込者の情報
③ 相手方の情報
④ 申込みの内容
申込年月日
申込書には、申込みをした年月日を記載する必要があります。
申込年月日が記載されていないと、契約がいつ成立したのか不明確になってしまうおそれがあります。
申込書を提出する際には、必ず申込年月日を記載しましょう。また、申込書を受け取る側も、申込年月日が記載されているかどうかを必ず確認しましょう。
申込者の情報
申込書には、申込者に関する情報を記載する必要があります。
習い事やジムなどの入会申込書には、氏名・住所・電話番号・メールアドレスなどを記載するのが一般的です。
これに対して、契約の締結に関する申込書については、当事者同士がすでに連絡先を知っている場合には、電話番号やメールアドレスなどの記載は省略されることが多いです。
申込書に記載する氏名については、印字ではなく署名を行うことが望ましいでしょう。
申込者本人の署名がなされていれば、申込書が真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。
なお、申込者が法人である場合は、本店所在地(住所)・法人名・代表者の肩書と氏名を印字した上で、実印を押印するのが一般的です。
相手方の情報
契約の締結などを誰に対して申し込んでいるかが分かるように、申込書には相手方の情報も記載しましょう。申込書を受け取る側がテンプレートを用意する場合は、自社の情報を忘れずに記載しておきましょう。
申込書に記載する相手方の情報は、氏名または法人名のみとするケースが多いですが、住所を併せて記載することも考えられます。
申込みの内容
申込書には、申込みの内容を明確に記載しなければなりません。
習い事やジムなどの入会申込書において、複数のコースが存在するときは、どのコースに申し込むのかを明記しましょう。
また、申し込む契約に関する詳細な条件についても明示する必要があります。
習い事やジムなど、事業者が不特定多数の人に向けてサービスを提供する業態であれば、利用規約を作成した上で申込書の裏面などに印字するのが一般的です。
これに対して、事業者間で締結する契約の申込書については、別途作成した契約条項を添付する方法が考えられます。
申込書を作成・送付する際の注意点
申込書を作成および送付する際には、以下の各点に注意しましょう。
① 申込書は「信書」|郵便局以外の業者によって送付してはならない
② 申込書に対する承諾を受けた時点で契約が成立する
③ 申込書は撤回できない場合がある
④ 申込内容が相手によって訂正された場合は、新たな申込みとなる
申込書は「信書」|郵便局以外の業者によって送付してはならない
契約の締結などに関する申込書は「信書」に当たります。
「信書」とは、特定の受取人に対して差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書です(郵便法4条2項)。申込書は、契約の締結などの意思を表示する書面なので、信書に該当します。
信書の送達を業として行うことができるのは、日本郵便株式会社(郵便局)のみとされています(同条1項)。
その他の宅配業者などは、不特定多数の人に向けてDM(ダイレクトメール)などを送達することはできますが、信書を送達することはできません。
申込書を送る側としても、日本郵便株式会社以外の業者に対して、信書である申込書の送達を委託することは禁止されています(同条4項)。
この規定に違反して申込書の送達を委託した場合は、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されるので注意が必要です(同法76条1項)。
申込書を相手方に交付する際には、郵便局または郵便ポストを通じて発送するか、対面で直接渡すか、または電子メールなどを利用しましょう。
申込書に対する承諾を受けた時点で契約が成立する
契約は、締結の申込みに対して相手方が承諾をしたときに成立します(民法522条1項)。
したがって、申込書に対して相手が「承諾します」と返事をしたら、その時点で契約が成立します。承諾書などの交付は必須ではなく、口頭でも契約は成立します。
契約の締結を申し込む側としては、申込書の内容でそのまま契約が成立する可能性が高いことを意識すべきです。申込書に添付する利用規約や契約条項は、相手方に交付する前にきちんと精査しましょう。
申込書は撤回できない場合がある
承諾の期間を定めてした申込みは、原則として撤回できません(撤回=申込みをやめること。なお、期間が経過すると、申込みは効力を失います。民法523条)。
また、承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、原則として撤回できません(民法525条1項)。
申込書による契約の申込みにも、上記のルールが適用されるため、撤回できないケースが多いことに留意しましょう。
ただし例外的に、申込者が撤回する権利を留保したときは、申込みを撤回することができます(民法523条1項但し書き・525条1項但し書き)。
申込内容が相手によって訂正された場合は、新たな申込みとなる
申込書を受け取った相手方が、その申込みに条件を付すなど変更を加えて承諾したときは、当初の申込みが拒絶されるとともに、相手方側から新たな申込みがなされたものとみなされます(民法528条)。
この場合、最初に申込書を交付した側は、相手方によってなされた新たな申込みを承諾するか否かの選択を求められます。
新たな申込みを承諾すれば、当該申込みの内容で契約が成立します。
これに対して、新たな申込みを訂正した場合には、訂正後の内容でさらに新たな申込みがなされたことになります。この場合は、当事者間で交渉を続けて、契約内容をすり合わせていくことになるでしょう。
最終的に契約が成立するのは、申込みに対して無条件での承諾がなされたときです。
申込書に収入印紙を貼る必要はある?
申込書には原則として、収入印紙を貼る必要はありません。ただし、申込書が契約書に当たるときは、例外的に収入印紙を貼るべき場合があります。
申込書への収入印紙の貼付は不要(原則)
申込書への収入印紙の貼付は、原則として不要です。
収入印紙を貼る必要があるのは、印紙税法に基づく課税文書です。
一部の契約書は課税文書とされていますが、契約締結を申し込むに過ぎない申込書は、課税文書に挙げられていませんので、原則として収入印紙を貼付する必要はありません。
印紙税の課税文書の種類については、以下の記事を併せてご参照ください。
申込書が契約書に当たるときは、収入印紙を貼るべき場合がある(例外)
印紙税の課税文書に当たるかどうかは、その文書の記載文言などによって客観的に判断されます。
「申込書」というタイトルの文書であっても、その記載内容から契約の成立等を証する文書と判断される場合には、印紙税が課されることがあるので注意が必要です。
例えば、申込書の提出によって自動的に契約が成立することになっている場合には、その申込書は契約書として取り扱われます。
何らかのサービスの利用に関する申込書は、事業者側によって受理されてそのまま入会扱いとなる場合は、契約書として取り扱われる可能性が高いでしょう。
これに対して、事業者側で審査を行った上で入会させるかどうかを決める場合は、申込書が契約書として取り扱われることはないと考えられます。
また、先に相手方から見積書を受け取った上で、見積内容をそのまま反映した申込書(注文書)を相手方に交付する場合も、その申込書は契約書として取り扱われます。
そのほか、契約当事者双方の署名または押印がある申込書についても、契約書として取り扱われます。
なお、申込書が契約書として取り扱われるとしても、収入印紙を貼付する必要があるのは、その種類の契約書が課税文書に該当する場合のみである点にご注意ください。