産業廃棄物とは?
種類・マニフェスト・処理の手順と基準・
注意点などを分かりやすく解説!
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- この記事のまとめ
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「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた一定の廃棄物、または一部の例外を除く輸入された廃棄物を指します。一例として、製品製造の過程で発生した燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類などが挙げられますが、その他にも幅広い事業上の廃棄物が産業廃棄物に当たります。
産業廃棄物については、収集・保管を経て、処分のために運搬した後に、中間処理および最終処分が行われます。各段階においては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)および関連法令で定められた基準やルールを遵守しなければなりません。
この記事では産業廃棄物について、定義・種類・処理の手順と基準・注意点・違反時の罰則などを解説します。
※この記事は、2024年2月6日に執筆され、同時点の法令等に基づいています。
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
- 法、廃掃法…廃棄物の処理及び清掃に関する法律
- 令、廃掃法施行令…廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令
- 規則…廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則
目次
産業廃棄物とは
「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた一定の廃棄物、または一部の例外を除く輸入された廃棄物を指します。
産業廃棄物の定義・種類
廃掃法において、「廃棄物」は汚物または不要物であって、固形状または液状のもの(放射性物質およびこれによって汚染された物を除く)と定義されています(法2条1項)。
そして、廃棄物のうち以下のいずれかに該当するものが「産業廃棄物」と定義されています(同条4項)。
(a) 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他廃掃法施行令2条で定める廃棄物
(b) 輸入された廃棄物((a)の廃棄物、航行廃棄物、携帯廃棄物を除く)
廃掃法施行令2条では、事業上の廃棄物が幅広く挙げられています。具体的には、以下の廃棄物が産業廃棄物に当たります。
- 産業廃棄物の種類
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① あらゆる事業活動に伴うもの
・燃え殻
・汚泥
・廃油
・廃酸
・廃アルカリ
・廃プラスチック類
・ゴムくず
・金属くず
・ガラス、コンクリート、陶磁器くず
・鉱さい
・がれき類
・ばいじん② 業種等が限定されるもの
(a) 紙くず
・建設業に係るもの(工作物の新築、改築、除去に伴って生じたものに限る)
・パルプ、紙または紙加工品の製造業に係るもの
・新聞巻取紙を使用して印刷発行を行う新聞業に係るもの
・印刷出版を行う出版業に係るもの
・製本業、印刷加工業に係るもの
・ポリ塩化ビフェニルが塗布され、または染み込んだもの(b) 木くず
・建設業に係るもの(工作物の新築、改築、除去に伴って生じたものに限る)
・木材または木製品の製造業、パルプ製造業、輸入木材の卸売業、物品賃貸業に係るもの
・貨物の流通のために使用したパレットに係るもの
・ポリ塩化ビフェニルが染み込んだもの(c) 繊維くず
・建設業に係るもの(工作物の新築、改築、除去に伴って生じたものに限る)
・繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く)に係るもの
・ポリ塩化ビフェニルが染み込んだもの(d) 動物系固形不要物
・と殺または解体し、食鳥処理をした食鳥に係るもの(e) 動植物性残さ
・食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業において原料として使用した動物または植物に係るもの(f) 動物のふん尿
・畜産農業に係るもの(g) 動物の死体
・畜産農業に係るもの③ ①または②の産業廃棄物を処分するために処理したもので、①または②に該当しないもの
(例)コンクリート固形化物
産業廃棄物と一般廃棄物の違い
産業廃棄物以外の廃棄物は「一般廃棄物」に当たります(法2条2項)。
一般廃棄物は、市町村の区域内で処理することが原則とされており、市町村に統括的な処理責任があります。したがって、一般ごみとして地域のごみ集積場に出すことが可能です。
これに対して産業廃棄物は、事業者自らに処理責任があります。
また、原則として市町村の区域内で処理される一般廃棄物とは異なり、産業廃棄物は都道府県境を超えた広域移動も認められています。
特別管理産業廃棄物とは
産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の有害物として政令で定めるものは「特別管理産業廃棄物」に当たります(法2条5項、令2条の4)。
区分 | 主な分類 | 概要 | |
---|---|---|---|
特別管理 産業廃棄物 | 廃油 | 揮発油類、灯油類、軽油類(難燃性のタールピッチ類等を除く) | |
廃酸 | 著しい腐食性を有するpH2.0以下の廃酸 | ||
廃アルカリ | 著しい腐食性を有するpH12.5以上の廃アルカリ | ||
感染性産業廃棄物 | 医療機関等から排出される産業廃棄物であって、感染性病原体が含まれ、または付着しているおそれのあるもの | ||
特定有害 産業廃棄物 | 廃PCB等 | 廃PCB(=ポリ塩化ビフェニル)およびPCBを含む廃油 | |
PCB汚染物 | ・PCBが染み込んだ汚泥、木くず、繊維くず ・PCBが塗布され、または染み込んだ紙くず ・PCBが付着し、または封入されたプラスチック類、金属くず ・PCBが付着した陶磁器くず、がれき類 | ||
PCB処理物 | 廃PCB等またはPCB汚染物を処分するために処理したものでPCBを含むもの | ||
廃水銀等 | ・特定の施設において生じた廃水銀等 ・水銀またはその化合物が含まれている産業廃棄物 ・水銀使用製品が産業廃棄物となったものから回収した廃水銀 | ||
指定下水汚泥 | 下水道法施行令13条の4の規定により指定された汚泥 | ||
鉱さい | 重金属等を一定濃度を超えて含むもの | ||
廃石綿等 | ・石綿建材除去事業に係るもの ・大気汚染防止法の特定粉じん発生施設が設置されている事業場から生じたもので飛散するおそれのあるもの | ||
燃え殻 | 重金属等、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの | ||
ばいじん | 重金属等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの | ||
廃油 | 有機塩素化合物等、1,4-ジオキサンを含むもの | ||
汚泥、廃酸、廃アルカリ | 重金属等、PCB、有機塩素化合物等、農薬等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの |
産業廃棄物については、廃掃法および関連法令によって処理基準や保管基準が定められていますが、特別管理産業廃棄物については、より厳しい「特別管理産業廃棄物処理基準」と「特別管理産業廃棄物保管基準」を遵守しなければなりません(法12条の2第1項・2項、令6条の5、規則8条の13)。
産業廃棄物のマニフェストとは
事業者が排出した産業廃棄物の運搬・処分を他人に委託する場合、産業廃棄物の引渡しと同時に、受託者に対して所定の事項を記載した「産業廃棄物管理票(=マニフェスト)」を交付することが義務付けられます(法12条の3)。
交付したマニフェストの写しは、5年間保存しなければなりません(規則8条の21の2)。また事業者は、4月1日から翌年3月31日までに交付したマニフェストの交付等の状況につき、同年6月30日までに事業場の所在地を管轄する都道府県知事に報告する義務を負います(規則8条の27)。
ただし例外的に、市町村または都道府県に産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合などには、マニフェストの交付は不要です(規則8条の19)。
産業廃棄物の処理手順と従うべき基準・ルール
産業廃棄物の処理等を行う際には、廃掃法および関連法令で定められた基準やルールに従わなければなりません。
産業廃棄物の収集・保管
産業廃棄物の収集・保管に当たっては、産業廃棄物保管基準を遵守しなければなりません。また、事業場外で産業廃棄物を保管する場合は、都道府県知事に届け出るべき場合があります。
産業廃棄物保管基準
産業廃棄物保管基準(規則8条)では、主に以下の事項が定められています。
① 産業廃棄物の保管場所に関するルール
② 作業廃棄物の飛散・流出・地下への浸透・悪臭の発散を防止するための措置を講じること
③ 産業廃棄物の保管場所において、ねずみの生息や蚊・はえなどの害虫の発生を防止すること
④ 石綿(アスベスト)を含有する産業廃棄物につき、その他の物との混合・飛散を防止すること
⑤ 水銀使用製品産業廃棄物について、その他の物との混合を防止すること
事業場外で保管する場合の届出義務
事業場外に所在する300㎡以上の場所にて産業廃棄物を自ら保管する場合は、原則としてその旨を都道府県知事に届け出なければなりません。届出事項を変更しようとするときも、同様に届出が必要です(法12条3項、規則8条の2の3)。
ただし、非常災害のため応急的に事業場外で産業廃棄物を保管する場合は、保管開始日から起算して14日以内に届出を行えば足ります(法12条4項・12条の2第4項)。
なお特別管理産業廃棄物の事業場外における保管については、通常の産業廃棄物とは別途の方式による届出が必要です(法12条の2第3項、規則8条の13の5)。
産業廃棄物の運搬・処分
産業廃棄物については、まず脱水・焼却・中和などの中間処理を行った後、埋め立てや海洋投入などの最終処分を行います。中間処理や最終処分が行われるまでには、産業廃棄物を運搬するプロセスも生じます。
産業廃棄物の運搬・処分については、事業者が自ら行う場合は「産業廃棄物処理基準」、外部委託する場合は外部委託に関する基準やルールを遵守しなければなりません。
事業者が自ら運搬・処分を行う場合|産業廃棄物処理基準
事業者が自ら産業廃棄物の運搬・処分を行う場合には、「産業廃棄物処理基準」を遵守しなければなりません(法12条1項、令6条)。
産業廃棄物処理基準には、主に以下の事項が定められています。
① 収集・運搬の方法に関するルール
② 処分・再生の方法に関するルール
③ 埋立処分の方法に関するルール
④ 海洋投入処分の方法に関するルール
⑤ 埋立処分に特に支障がないと認められる場合は、海洋投入処分を行わないようにすること
運搬・処分を外部委託する場合|遵守すべき基準・ルール
産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合は、都道府県知事の許可を受けた業者に委託しなければなりません(法12条5項、規則8条の3)。
また、運搬・処分の委託に当たっては、産業廃棄物の委託に関する基準に従う必要があります(法12条6項、令6条の2)。
産業廃棄物の委託に関する基準には、主に以下の事項が定められています。
① 運搬・処分・再生を委託できる事業者の基準
② 原則として、輸入された廃棄物の処分・再生を委託しないこと
③ 委託契約書を書面で締結すること、および委託契約書の添付書面に記載すべき事項
④ 委託契約書および添付書面等の保存
産業廃棄物の処理に関する注意点
産業廃棄物の処理に関しては、特に以下の3点に注意しましょう。
① 産業廃棄物は公共のごみ収集場に出せない
② 多量排出事業者には特別の義務が課されている
③ 産業廃棄物の輸入・輸出は規制されている
産業廃棄物は公共のごみ収集場に出せない
産業廃棄物は一般ごみと異なり、事業者に処理責任があります。そのため、産業廃棄物を公共のごみ収集場に出すことはできません。以下のいずれかの方法をとりましょう。
✅ 事業者が自ら保管・運搬・処分を行う
✅ 都道府県知事の許可を受けた外部業者に委託する
多量排出事業者には特別の義務が課されている
産業廃棄物の排出量が多い事業者(=多量排出事業者)は、以下の義務を遵守する必要があります。該当する事業者は、各義務を適切に履行しましょう。
- 多量排出事業者の義務
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・前々事業年度における特別管理産業廃棄物の排出量が50トン以上
→電子マニフェストの使用義務(法12条の3)・前年度における産業廃棄物の発生量が1,000トン以上である事業場を設置している
→産業廃棄物処理計画の提出義務、実施状況の報告義務(法12条9項・10項)・前年度における特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である事業場を設置している
→特別管理産業廃棄物処理計画の提出義務、実施状況の報告義務(法12条の2第10項・11項)
産業廃棄物の輸入・輸出は規制されている
航行廃棄物および携帯廃棄物を除く廃棄物を輸入しようとする者は、環境大臣の許可を受けなければなりません(法15条の4の5第1項)。産業廃棄物の輸入についても、許可制の対象です。
また、産業廃棄物を輸出しようとする者は、処理基準への適合性などについて、環境大臣の確認を受ける必要があります(法15条の4の7・10条)。
産業廃棄物の処理等のルールに違反した場合の罰則(ペナルティ)
産業廃棄物の処理等のルールに違反した事業者は、都道府県知事による勧告・公表・命令の対象となります(法12条の6・19条の3第2号・19条の5)。
さらに、違反の態様が悪質な場合には、刑事罰が科されることもあり得ます。主な廃掃法違反の行為に対する刑事罰(法定刑)は、以下のとおりです。
行為 | 法定刑 |
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・措置命令違反 ・産業廃棄物の運搬、処分に関する委託基準違反 ・産業廃棄物の無確認輸出 ・違法焼却 ・指定有害廃棄物の保管、処分違反 | 5年以下の懲役または1000万円以下の罰金(法25条、併科あり) |
・一般廃棄物の運搬、処分に関する委託基準違反 ・改善命令違反 ・廃棄物の無許可輸入 ・不法投棄、不法焼却を目的とする収集、運搬 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法26条、併科あり) |
・産業廃棄物の無確認輸出の予備行為 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰金(法27条、併科あり) |
・マニフェストの交付義務違反、記載義務違反、虚偽記載、保存義務違反など ・マニフェストに関する措置命令違反 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(法27条の2) |
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